2027年夏にNintendo Switch 2とPC(Steam)向けに発売予定の新作アドベンチャー、『Lost Museum -カイガミ追想譚-』。

2026年9月17日から20日まで幕張メッセで開催された、東京ゲームショウ(TGS)2026で初めて試遊版が出展された作品だ。名画から生まれた異形頭の存在「カイガミ」たちとの交流を描く作品で、すでに多くの注目を集めている。

『Lost Museum』インタビュー 画像1

今回、ブース会場にて、本作のプロデューサーであるハピネットの大原氏にインタビューを実施。美術館好きだからこそ生まれた企画の発想、カイガミのデザインに込めた名画のエピソードなど、『Lost Museum』制作秘話を伺った。

公募企画から生まれた挑戦。名画×異形頭で絵画の魅力を届けたい

――『Lost Museum』はハピネットさんとしては珍しい、社内発のオリジナルタイトルとのことですが、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

大原氏:社内の公募企画がきっかけでした。私は入社してから、営業としてゲームソフトの流通に関わる業務をしていました。ただ、コンテンツや物を生み出す仕事に関わってみたいというのはずっと考えていたので、公募企画のお話を聞いて「これはチャンスだ」と思い、参加したんです。

――公募に出した企画から『Lost Museum』になっていったんですね。作品の原型は、どのような発想から生まれたのですか?

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大原氏:私自身が美術館を好きなことから始まりました。そこで「なぜ自分は美術館に行くのが楽しいんだろう?」と考えた時、飾られた絵の説明を読んだり、絵を単体で見るだけでは分からない情報を得られるのが好きなんだなと思ったんです。

でも、私は上京してから美術館によく行くようになったのですが、東京には魅力的な展示を頻繁に行っていて、電車でアクセスしやすい美術館がたくさんあるのに、意外と周りには行っている人がいなくて…。「美術館は少しハードルが高いと思われているのかもしれない」と思っていたんです。それなら、美術館をテーマにしたゲームがあれば、もっと身近に感じてもらえるのではと考えたのがきっかけです。

――美術館に通うようになったきっかけは何だったのですか?

大原氏:ある作品の影響で、最初は刀を見に行っていたんです(笑)。その時に置いてあったチラシを見て、「こんな展示をやっているんだ」と絵画の方にも足を伸ばしてみたら「楽しいな」と思って。刀は今も見に行っていますが、絵もよく見に行くようになりました。

――絵画は、描いた人の記憶を読み取っていくような面白さがありますよね。

大原氏:そうなんです。ゴッホの『花咲くアーモンドの木の枝』などは、何も知らなかった時は「きれいな花の絵だな」としか思っていなかったのですが、絵の説明を読んで、弟のテオの息子の誕生祝いに描いた花だと知って。そうやって新しい視点を一つ得るだけで、絵画の見方が変わるんですよね。

絵画は、鑑賞して楽しむだけでなく、描いた人や、それを見た人の想いを乗せて、後世につないでいく役割があるのではないかと感じています。そういうところを作品に盛り込めたらいいなと思っています。

――ゲーム内に出てくる絵画も油絵のようなタッチになっていて、非常にリアルに作り込まれている印象を受けました。美術好きの方の目も気になるところだと思いますが、どのような姿勢で取り組まれているのでしょうか?

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大原氏: 『Lost Museum』は美術をあまり知らない方にも入ってきてほしいという気持ちと同時に、美術が好きな方にもお届けしたいと考えています。

だからこそ、美術好きの方にも認めていただくためには私たちがきちんと美術について学ばなければと思い、日々勉強しながら制作を続けています。どうしたら絵画好きの方にも認めていただけるのか、試行錯誤しながら取り組んでいるので、そういった切り口からも興味を持ったり、手に取ったりしていただけたら嬉しいです。

――大原さんご自身も、これまでに絵を描いたり創作をしたりといった経験があったのでしょうか?

大原氏:私自身は、実はあまり絵を描くタイプではなく、創作もほとんどしてこなかった「見る専門」の人間で、作り手に回るのは今回が初めてです。

ゲームの開発はもちろん、絵も小説も書いたことがなくて、最初は何から始めていいか全然分かりませんでした。ですが、開発をお願いしているWit Oneさんには、デザイナーさんにも絵画好きの方がたくさんいらっしゃったので、皆さんにいろいろ相談しながら進めさせていただいています。それに、シナリオをお願いしている鈴木理香先生は皆様ご存じの通りアドベンチャーゲームを長年作ってきている方ですので、「こういうことがやりたいんです」とお話しすると「じゃあこうしてみよう」と提案していただいたり、アドバイスをくださるんです。そうやって、色々な方のお力を借りながら制作しています。

――私は鈴木さんが過去にシナリオを手掛けられた『ウィッシュルーム 天使の記憶』が大好きで、『Lost Museum』の試遊でも似た雰囲気を感じ、懐かしくなりました。鈴木さんにシナリオをお願いすることになったのは、どのような経緯だったのでしょうか?

大原氏:弊社は様々なゲームのパブリッシングや流通をお任せいただいており、そのご縁で鈴木先生に企画書をご覧いただいたのがきっかけで、シナリオをお願いすることになりました。

お話として面白いことと、ゲームとして面白いことは違うと感じていたので、ゲームならではの面白さを知っている、ゲームのシナリオを書いている方にお願いしたいという想いもありました。メインテーマも高城みよ先生にお願いすることができ、作品のイメージにぴったりな曲を作っていただけて、お二人とも本当に良いご縁をいただいたな、と思っています。

手探りの企画書から生まれたカイガミたち。デザインや設定に込めた想い

――絵画から生まれた人ならざる存在「カイガミ」のデザインは、元の絵画のイメージを残しつつも、かなり大胆なアレンジも加えられた見た目になっています。どのような意図とプロセスで形にしていったのでしょうか?

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大原氏:私自身は絵が描けないので、デザイナーさんに「この絵画の異形頭のキャラクターを描いてください」とストレートにお願いしました。いくつかのラフ案から、私たちが入れたい要素を入れてもらったり、逆にデザイナーさんからご提案いただいた絵画自体のエピソードなども盛り込んでいっています。

例えば「サニー」君は『ひまわり』がモチーフになっているんですが、おそらくゴッホの作品の中で知名度がいちばん高くて、日本のユーザーさんにとって「ゴッホといえば」になるのは『ひまわり』だろう、と。そこで、サニー君には案内人として作品の顔になってほしいと考えました。『ひまわり』の異形頭なら特徴的なのはやはり花ですから、そこはそのまま生かしています。そして、案内人ならフォーマルな格好が似合うので「であればスーツだろう」と。そこに、『芦屋のひまわり』と呼ばれる、焼失した『ひまわり』をイメージした炎や、ゴッホに寄せた色味なども取り入れてくださっています。

『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』のカイガミであるリュウは、波が爪に見えるイメージがあるので、爪のある龍のようなデザインです。今回唯一の日本の絵ですから、和風に寄せて「龍にしましょう」と。そこから、デザインに波の意匠を取り入れたり、髪は波が泡立つ白っぽい質感にしたりと、少しずつ要素を盛り込んでいます。見る人が見れば、「あ、これって!」と思っていただけるデザインになっていくように描いていただきました。

――絵画の裏話やエピソードは、デザインだけでなく、シナリオやキャラクターの性格にも反映されているのでしょうか?

大原氏:はい。シナリオやキャラクターの性格にも小ネタを混ぜ込めば、プレイしてくださった方に楽しんでいただけると思ったので。

サニー君の『ひまわり』は、ゴッホがゴーギャンを迎えるために描いた絵としてよく知られているので、おもてなしが好きなキャラクターにしよう、といった形でキャラクター造形を考えています。好きな食べ物や嫌いな食べ物も設定しているので、「あれ?これってこの画家と一緒じゃない?」とか、「あれ? このエピソードじゃない?」と気づいていただけたらとても嬉しいです。もちろん、そういった小ネタを知らなくても楽しめるようにしているので、知っている方には、より深く作品を味わっていただけるような要素になっています。

――カイガミはいずれも個性的、かつ魅力的なビジュアルや設定になっていますが、特に愛着のあるキャラクターはいますか?

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大原氏:やはりサニー君ですね。私が最初に作った、拙いパワーポイントの企画書に唯一いたキャラクターなんです。フリーイラストのスーツの男性に、ゴッホの『ひまわり』を組み合わせてコラージュしたような企画書でした(笑)。サニー君は構想の最初からずっといた存在なので、愛着があります。

――サニーという名前も、親しみやすくて素敵ですね。

大原氏:『ひまわり』と連想しやすく、分かりやすいかなと思ってつけました。太陽のように明るいキャラクターとして、プレイヤーをこの世界に引き込んでほしい、という想いも込めています。見た目は少し怖そうですが、中身はおもてなしが大好きな面白い方なんです。

――サニーのコスプレイヤーさんもサービス精神にあふれていて、カメラを向けたらかっこよくポーズを取ってくれました。

大原氏:もう、神対応をしていただきましたね。異形頭のコスプレをやるなら専門の方に、と思って今回「おしろ/OSHIRO」さんにお願いしました。

普段から異形頭のコスプレをされている方で、衣装もおしろさんに作っていただいたんですよ。三面図をお渡しして「こういうキャラなんですがいけますか…?」とお願いしたら、すべて手作りで仕上げてくださって。花びらも1枚1枚手塗りですし、頭の炎まで再現していただけるとは思っていませんでした。細部まですごくこだわっていただいています。今回こうしてコスプレもしていただいて、少しでも皆様がカイガミたちに興味を持ってくれたらいいなと思います。

TGS初試遊で大人気のブース。見えた手応えと課題、そして発売に向けて

――サニー君効果もあってか、ブースの試遊台は大人気で、60分待ちで順番を待つ方の列もできていましたね。

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大原氏:正直、ここまで反響があるとは思っていなかったので(笑)、嬉しい驚きでした。

――試遊では序章を遊ばせていただきましたが、ストーリーに引き込まれただけでなく、探索要素や謎解き要素もあって面白かったです。

大原氏:良かったです。あらすじを淡々と読み進めるだけだと、飽きてしまう方も多いと思うので、謎解きのような要素があるといいかなと思って。Wit Oneさんと相談して、ポイント&クリックや一筆書きのパズルなど、アクションの要素を入れましょうという話をして取り入れました。

――来場された方々が実際にプレイされている様子を直に見て、いかがでしたか?

大原氏:今回のTGSが初の試遊で、主人公のヴィンス君とノヴィが出会う序章部分をプレイしていただいたんですが、後ろから見ていて「謎解きで詰まっているな」「ここはうまく意図を伝えられていないな」と感じる場面がありました。

特に、一筆書きのパズルはゲーム内での説明がなく、かなり唐突に始まってしまっていたので…もう少し丁寧に説明できるようにしたいなと。UIにも「これは何だろう?」と感じる点があると思うので、こうしたイベント出展でプレイしていただいた方々の声を吸い上げて、ブラッシュアップしていきたいです。今回は試遊していただいた方に直接お話を聞くことはあまりできなかったのですが、『Lost Museum』はインディーゲームが好きな方はもちろん、普段ゲームをやらない方や、美術が好きな方にも遊んでいただきたいという想いがあります。なので、本当に幅広い方に楽しんでいただける内容にしたいな、とあらためて思いましたね。

――最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いできますか?

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大原氏:『Lost Museum』のカイガミたちは、インパクトのあるビジュアルで少し怖そうな雰囲気もありますが、全体としては優しく暖かいお話になっています。ホラー要素などはないので、怖いお話が苦手な方も安心してプレイしていただけるはずです。

私自身、絵画について知っていくことで、絵画の見え方が変わった経験があるので、カイガミたちや主人公のヴィンス君をきっかけに、元になった絵画や美術館について興味が湧くような作品にしたいと思っています。お気に入りのキャラクターを見つけて、「この元になった絵画って、どんな絵なんだろう?」と自然に興味を持っていただけたらと思いますし、遊び終えた時にいい小説を読んだあとのような読後感を味わっていただけたら嬉しいです。発売は2027年夏を予定しているので、ぜひ楽しみにお待ちください。

『Lost Museum -カイガミ追想譚-』の基本情報

ゲーム名 Lost Museum -カイガミ追想譚-
ジャンル 絵画と記憶に寄り添うヒミツアドベンチャー
プラットフォーム Nintendo Switch 2/PC(Steam)
価格 未定
リリース日 2027年夏 発売予定
公式サイト https://lostmuseum.happinet-games.com/
公式X https://x.com/lostmuseum_ofcl
コピーライト © Happinet

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