【ミラクルニキ】イベント「新世界」ストーリーまとめ(夜)
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ミラクルニキにおけるイベント「新世界」の夜ストーリーをまとめてご紹介。話の内容が気になる方は、参考にどうぞ!
ネタバレを含んでいます |
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こちらの記事はネタバレを含んでおります。事前に内容を知りたくない方は、閲覧をお控え下さいますよう、よろしくお願い致します。 |
昼ストーリー |
夜ストーリー |
1「夢から覚めて」
再度世界の底に落ちて 何も掴むことは出来ず |
暗闇から逃げられない 悪夢のように絡みつく |
何に抗うのかも分からず 全身の力をただ振り絞り 彼女はやっと目を開けたーー |
【数枚の新聞記事】 |
(ニキとモモは様々な方法で連絡を試みたが繋がらず、エリスを最近見かけたと言っていたのはデーヴィーだけだった) |
デーヴィーはカルファ王国連合図書館に来るように言っていたわ。出発よ! | |
わかったにゃ〜! | |
ニキ、すぐに動きやすい服に着替えて出発しよう! |
2「夢に落ちる」
(カルファ王国連合図書館) |
(オーレン) |
デーヴィーによれば、この辺りのはず……。 | |
あれかな? |
(モモが指さす方向を見やると、小さくて素朴な劇場があった) |
エリスはよくここに来ているの? | |
デーヴィーが言うには、エリスはよくここに遊びに来るんだって。公演がない時でも、中にいるらしいよ。 | |
じゃあ、さっそく中に入ってみましょう! |
(ニキは劇場を探し歩き、ようやく休憩室の片隅でエリスを見つけた) |
(エリスはベンチに横たわり、眠っている) |
エリス! |
(ニキの呼びかけが届くことはなく、エリスは深い眠りについたままだ) |
(ニキはベンチの隣に座ると、エリスの手を取って目を閉じた。 |
(そして、会いたいという気持ちを集中させ、心でエリスに語りかける) |
(目を閉じた闇の中に、ありありと浮かぶエリスとの記憶) |
(次の瞬間、ニキが感じたのは暖かい気配だった。意識が柔らかいものの中に落ちていく) |
(すると視界の中央にエリスが現れ、光の中に入っていくのが見えた) |
(ニキが再び目を開けると、劇場の入口に戻っていた) |
(あれ……劇場から出ちゃった?) | |
(違う、ここは……エリスの夢よ!) |
(劇場から聞こえる楽しげな音楽。もうすぐ芝居が始まろうとしている) |
3「アビスの夢」
(劇場の中を覗くと、舞台上に紫色の髪をした女の子が二人見えた。一人はドレスに身を包み、もう一人は鎧兜と手には剣と盾を携えている) |
(あれは……エリス?それにアイリ王女!?) |
(幼いエリスは果敢にハリボテのドラゴンと戦っている。その後ろには幼いアイリが控えていた) |
(小さな騎士は果敢にも小さなお姫様を守り、ドラゴンと戦った) |
(騎士はついにはドラゴンを討伐し、お姫様を城へと連れ帰った) |
(芝居が終わると、騎士はお姫様の手を取り、客席に向かって丁寧にお辞儀した) |
(客席に居た王冠を身に着けた二人が立ち上がり、微笑みながら拍手を送った。姉妹に注がれるのは愛情のこもった眼差し) |
(……先代の王様と王妃様?) | |
お姉様はお姫様、私はお姉様を守る騎士! |
(スポットライトに負けないくらい、エリスの笑顔は眩しい) |
(しかし、周囲の景色はそこで静止すると、歪みながら綺麗な宮殿へと変貌する。途端、楽しげな雰囲気も重苦しいものへと変わった) |
(国王は思い病に伏せっていた) |
(幼いエリスの泣き声に、目覚める先代国王。エリスは涙を引っ込めて笑顔を見せた) |
(しかし幼いアイリは拳を握りしめ、密かな決意を抱いた) |
(景色は再び変わり、16歳のアイリは9日間戦争で遺作二点を獲得し『再生の女神』と呼ばれていた) |
(その4年後、アイリは王位を継承し『鉄血の女王』の時代が到来する) |
(次に現れた見覚えある景色に、ニキはドキリとさせられた……王宮の塔の上で、エリスがアイリに反旗を翻した景色だ) |
(目まぐるしく変わる記憶の中でアイリは強く、そして冷酷になり、エリスと疎遠になっていった) |
(幼い日々をともにした姉妹は、袂を分かったのだ) |
(そして最後に、空っぽで真っ暗な部屋の中で、記憶の景色は止まった。釘が打ち付けられた窓の隙間から、幾筋かの光が漏れている) |
(ニキは窓の隙間から室内を覗き込んでいた。おぼろげな光の中、室内で倒れているエリスを発見する) |
エリス! |
(だがエリスにはニキの呼び声が聞こえないようだ。ブツブツと独り言を呟いている) |
あの時ああしていれば……お姫様と騎士の芝居を続けられたかもしれない。あの時に戻れたなら……。 | |
エリス……。 | |
(エリスはアイリ女王の記憶を戻す方法を探していた……まだ諦められない過去があるんだわ……) | |
(エリスをこのままにしておくわけにはいかない……でも、私の声が聞こえないみたい。どうしよう) |
(エリスが『あの時に戻れたら』と呟くと時空が歪み始めて、エリスはもう一つの世界へ連れて行かれた。周囲はまた先ほどの劇場に戻っている) |
(だが内容は何も変わらない。思い出が同じように上演されるだけで、相変わらずエリス本人は暗い部屋に閉じこもり幻想に浸っている) |
(ニキはエリスの居る部屋のドアをノックするが、それと同時にまた最初の思い出へと戻された) |
だめだわ……これじゃここから出られない。何とかしなくちゃ!) |
(三回目の繰り返し) |
(四回目の繰り返し) |
(……) |
(何度目かの繰り返し) |
(ニキは懸命に走り続けて、最後の記憶が終わる前に、エリスが閉じこもる部屋の前に辿り着くことに成功する) |
(エリス!待って!) |
(ニキは力いっぱい、釘が打ち込まれたドアを叩いた。痛みで感覚がなくなっていく) |
(エリスの呟く声が聞こえる) |
(エリス……) |
ガチャッ……。 |
(ついにドアが開かれ、ニキは勢い余って一歩よろめいた) |
(光はニキの背後からその部屋に差し込み、世間と隔離されたような闇を照らした。まるでニキが唯一の光になったかのように) |
(エリスは顔を上げてニキを見つめ、その一瞬だけ思考停止したように見えた。そして、素直に光に吸い寄せられた) |
後悔と憐憫は大切なことも教えてくれる……思い出に浸るんじゃなくて、その後の人生の糧にするものなんだわ! |
(エリスの目に光が映り、虚ろな表情が消えた) |
(だが次の瞬間、エリスの背後から無数の黒い触手が伸びてきて、混沌の中に引きずり戻そうとする) |
(黒い触手に方を掴まれ、エリスは、無意識に振り向いた。まるで闇に未練があるように) |
(ニキはエリスに手を差し伸べた) |
振り返らないで! |
私を見て、前を向いて行くの! |
(ニキの声に誘導されるように、エリスは光に向かって腕を伸ばした) |
4「パテール連邦へ」
(エリスの手を引いて部屋から連れ出した瞬間、辺りは光に包まれて、ニキは目を覚ました) |
(ニキは、エリスの手を握ったままだった) |
あっ!目を覚ました! | |
ん……エリスは? |
(エリスは軽く眉間に皺を寄せ、すぐに目を開いた) |
(パテール連邦、ウィルトン) |
ジョブ・ルーニーさんによれば、サクラさんは一身上の都合で、数日間会社にきていないそうよ。 | |
サクラ、最近忙しいのかな……。 | |
サクラさんは仕事に対して自分勝手な人じゃないわ……家に行ってみましょう。 | |
わかったにゃ〜! |
(サクラの屋敷) |
(ニキとモモが客間で長い間待っていると、やって来たのは慌てた様子のサクラの秘書だった) |
秘書 |
ニキさん、ごきげんよう。お待たせして申し訳ないのですが、お嬢様は……只今お会いできない状態でして。 |
どうかされましたか?サクラさんに何かあったのですか? | |
秘書 |
お嬢様は……。 |
サクラが心配なんだよ!教えてよ! |
(秘書は少し躊躇い、仕方がないというように溜息をついた) |
(寝室で、静かにベッドに横たわるサクラ。顔色はやや青白いが、呼吸は安定している) |
(ニキはサクラの枕元に歩み寄ると、額を触って熱を確かめた) |
エリスと同じく、夢に囚われてしまったみたいね。 | |
ニキ、聞きたかったんだけど、どうやって私の夢に入ったの? | |
細かいことは……私もわからないの……。 | |
でも、これは思い出に干渉する夢だと思うの。神経を集中させていたら、いつの間にか夢に入っていて……。 | |
何だか……難しそうね。十分な思い出と信頼がなければいけないってことよね? | |
詳しいことは後でわかるよ。ニキ、早く始めよう! | |
ええ。 |
(ニキは枕元に座り、サクラの手を握って、目を閉じた) |
(そして、会いたいという気持ちを集中させ、サクラに向かって念じた) |
(目を閉じた闇の中に、ありありと浮かぶサクラとの記憶) |
(次の瞬間、ニキが感じたのは暖かい気配だった。意識が柔らかいものの中に落ちていく) |
(すると視界の中央にサクラが現れ、光の中に入っていくのが見えた) |
(ニキが再び目を開けると、そこはサクラの自宅によく似た大きな屋敷の前だった) |
……サクラさん? |
(風の音しか聞こえない) |
(ニキがドアを開けると、ガチャッという音が高い天井の室内に響いた) |
(部屋の間取りはサクラの屋敷とまったく同じだが、ドアはすべて閉ざされている) |
(ニキは無意識のうちに、玄関正面の部屋の前に進んでいた。ドアの取っ手を軽く下に動かすと、ドアは簡単に開いた) |
(暖かい光がニキを包み込み、鈴の音のような少女の笑い声が聞こえた) |
お母様、ほら、綺麗でしょう! | |
もちろんよ。あなたは我が家のお姫様なんですから。 | |
そんな、お洋服のおかげよ!お母様のデザインが素敵なの! |
(優雅な女性が、少女の頭を撫でている。二人の笑顔に、ニキも思わず口元がほころんでいた) |
(親子の団らんを邪魔するのが忍びなくて、ニキはそっとドアを閉めた) |
(ニキは全ての部屋を回って現在のサクラを探したが、ドアの向こうにあるのはサクラの過去の思い出ばかり) |
(広い部屋、華やかに飾られた部屋、美しい部屋ーーどの部屋も、サクラの幸せな思い出が詰まっている) |
(思い出は、その後の人生を彩る温もりだ) |
5「白桜の夢」
(ニキが最後の部屋で見たのは、ワルツに合わせて踊るサクラの両親と、微笑むサクラだった) |
(だが、本物のサクラの姿はない) |
(サクラさん……どこにいるの?) |
(隅々まで探し回ったニキは、ついに廊下の行き止まりでサクラの姿を見つけた) |
(サクラは壁にもたれ、静かにそこに佇んでいる) |
サクラさん? |
(サクラは目を閉じ、返事をしない。まるで心を閉ざし、幸せな夢の中に浸っているかのようだ) |
サクラさんっ! |
(ニキの声を聞いて、サクラは躊躇いがちに振り向いた) |
……ニキ?どうしてここに? | |
助けに来ました!事情は後で話しますから、まずはここから出ましょう! | |
出る?どういうこと? | |
サクラさん、ここは夢の中なんです。さあ、マーベル大陸に帰りましょう! | |
(小声で)……夢、全部夢なの? | |
ええ。現実世界では大変なことになっているんです。早く帰りましょう! | |
……もう少しここに居させてくれないかしら? |
(サクラはわずかにうなだれ、ニキの視線を避けた) |
(ニキはサクラに歩み寄り手を取ろうとしたが、サクラは後ずさった。ニキの手が宙を掴む) |
……サクラさん、これが夢だと認めたくないのはわかります、でも過去に縋っていても何も変わりません! |
(何か言おうとするサクラだが、言葉が紡がれることはなかった) |
(顔を上げたサクラと、ニキの視線がぶつかった) |
(サクラの瞳の中には、言葉にできない想いがあった。ニキがそれを感じ取った瞬間、サクラの姿は忽然と消えてしまった) |
サクラさん!? |
(サクラが消えると、周囲の景色もゆっくりと消えていった。ぼんやりとした白い空間の中にニキは残され、音も気配も感じられない) |
……サクラさん、どこへ行ったの? |
(一面の空白が続いている) |
(白い世界には誰もいない。足元は無限に広がっており、手を伸ばしても触れるのは虚空だけ) |
(ニキはその中で方向もわからず長い間歩き続けたが、何も見つけることはできなかった) |
(何もない……) | |
(これじゃ、サクラさんを連れ戻すどころか、自分も出られないわ……) |
(そよ風が、まるで遠くからの便りのようにニキの傍を吹き抜けた) |
(……風?ん……この匂いは?) |
(空気中に一瞬立ち込めた香り。その正体をニキは嗅ぎ分けた) |
(これは……桜の香り!) |
(香りのする方へ向かったニキの前に現れたのは、白桜の巨木だった) |
(その時、月光と夜の帳が下り、目の前が果てしない空白から、心揺さぶる美しい景色に変わった) |
(風に撫でられ、はらはらと落ちる花びら) |
(サクラは桜の木の下に立っていた。花びらがその下にある墓標に降りかかる) |
(この墓標……何か変だわ!) |
(サクラは手を伸ばし、墓標の上の花びらを払おうとしていた) |
サクラさん、だめです!それは本物じゃありません! |
(それでもサクラが墓標に触れようとしたその瞬間、桜吹雪で前が見えなくなった) |
(目の前の空間に、切り取られたような景色が幾つも浮かび上がった。ねじ曲がったそれらは、悲痛な思い出の数々であった) |
(力なく崩れ落ちる母ユミリの手。父シラーは彼女を抱いて声なき慟哭をあげる) |
(母の葬礼で、サクラはリンジーの背後に隠れるようにして、困惑気味にモノクロ写真を見つめていた) |
(白桜の木の下で、父は白桜恋歌に最後の別れを告げる) |
(場面が絶え間なく変わる中、サクラはよろよろと座り込み、とめどない涙を流した) |
サクラさん……。 |
(ニキはサクラに歩み寄り、身を屈めるとサクラの手を握った) |
(眉根を寄せたサクラの顔は、苦悶に満ちている。溢れる涙で、その視界はぼやけて見えていた) |
お母様と約束したの。早く大人になって、お父様を守るって……私、頑張ったのよ。それなのに、お母様はもういない……。 |
(サクラの声はかすれ、嗚咽混じりになっている。強気な仮面の下に隠していた彼女の哀哭だった) |
もちろん、努力はこれからも怠らないわ……だけど時々、お母様が傍にいてくださればって思うの……。 | |
私は一人で何でもできるようになったけれど……温もりと、一時でいいから全て忘れられる場所が欲しいの……。 |
(サクラの手を握り、ニキは真剣に話を聞いていた) |
(その涙を拭ってやり、まだおぼろげなサクラの瞳を見つめる) |
サクラさんは今まで、慰めの言葉なら何度も聞いてきたと思います。それでも言わせてください。 | |
サクラさんの辛さを理解するには、私は役不足かもしれません。弱い私に言う資格はないかもしれないけれど……時々は私に甘えてくださいね。 | |
私の前では、弱さを隠さないでいいんです。 | |
ニキ……。 |
(サクラはニキをぼんやりと見つめ返した。その涙は既に止まっている) |
何があっても、私はサクラさんの傍にいますからね。 |
私たち 帰りましょう? |
6「思い出の人」
(眩しい光に包まれて、ニキは目を覚ました。その手はサクラの手を握ったままだ) |
ニキ!目覚めたんだね、どうだった? | |
サクラさん!サクラさんは!? |
(ニキに握られたサクラの手がわずかに震え、握り返してきた。そして、サクラはゆっくりと目を開いた) |
(雲上帝国、凌雲城) |
(ニキの心に悲しみが深く刻まれたあの日と同じく、凌雲城には雨が降り、憂鬱な雰囲気が漂っていた) |
(雨に混ざった冷たい空気が服や髪の毛に染み込んで、遥かな天空までも綺麗に洗い流すようだった) |
(ニキたちは通りを歩き回った。時折目を閉じて感覚を研ぎ澄ましたが、この冷たい街に思い出はなかった) |
何も……収穫はないね……。 | |
まだ行っていない場所があるわ……。 |
(一同は押し黙った) |
(無意識のうちに避けてしまったのだろうか。あの日、真っ赤な鮮血が流れた城壁を、ニキはまだ直視できなかった) |
(沈黙の後に、ニキは口を開いた) |
城壁に上がってみましょう。 |
(城壁に続く階段は、一段ずつがまるで古傷を抉るようで、一歩上がるごとに苦しい思い出を呼び覚ましていく) |
(だがニキは歩みを止めることなく、急いで何かを追いかけようとしているようにすら見えた) |
ニキ……ボク、泣きそうだよ……。 | |
モモ……あなたたちはここに残って。私一人で上がってくるわ。 | |
本当にリンレイの思い出なんてあるのかな?辛い思い出をいくつか見つけたところで、何になるの? | |
わからない……だけど上に行けばきっと何かある、そう感じるの!リンレイが呼んでる……行かなくちゃ! | |
リンレイが呼んでる……?ボクも行くよ! |
(城壁の上に着く頃には、ニキとモモの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。乱れた呼吸に嗚咽が交じる) |
もうすぐ……よ! |
(最後の一段に足を踏み出した瞬間、大雨は突然空いっぱいに舞い落ちる雪となった。辺りの景色はかすみ、まるで別世界に来たようだ) |
(雪は一瞬で長い城壁を覆い、ニキの手足にも降りかかる) |
(ニキは驚いて足元に積もり始めた雪を見つめた。そして、得体の知れない力が内側から湧いてくるのを感じる) |
(雪の粒が風に吹かれてニキの体に落ちてきた。だが、冷たいという感覚はなかった) |
(ゆっくりとその足音が近づいてくると、途端に雪が止んだ) |
(ニキが顔を上げれば、傘を差している人物がそこに) |
ニキ、久しぶりね。 |
7「意識世界」
……リンレイ? |
(ニキの目尻にどっと溢れる涙。無数の言葉が胸に込み上げてきた) |
リンレイ?本当にリンレイなの? | |
えぇ、そうよ。ずっとここで、あなたたちを待っていたの。 |
(リンレイの微笑みは昔のままで、まるで生きているかのようだ) |
(リンレイの言葉にニキは慌ててリンレイの手を取るが、リンレイは落ち着いた様子だった) |
あなたたちがどうしてここへ来たか知っているわ。もちろん、力を貸すわね。 | |
リンレイ、ありがとう……。 | |
当然よ。ニキ、目を閉じて。ここをかつての姿にしようと念じてみて。 |
(ニキが目を閉じると、すぐに長い城壁と積もった雪は消え、星空は光の道になった) |
(流れ星は空中で動きを止め、美しい放物線を描き出している。遠くでは代わる代わる輝きを放つ星々) |
(ニキが顔を上げると、星たちもそれに応えるかのように瞬いた) |
あなたが今見つめているのは、私の星雲よ。 | |
リンレイの?不思議だね……本当にリンレイっていう感じがするよ! | |
じゃあ、隣のあれはサクラさんの星雲かしら? | |
ええ。 | |
あっちはエリスのね! | |
そうよ。 | |
あそこのは……。 |
(ニキはその小さくて暗い星雲を見て、急に黙った) |
懐かしい感じがする……。 | |
うん……ポポだよ。 |
8「漆黒の羽根」
(その星雲はわずかに煌めいて、沈黙したまま空に消えていくようだった) |
ポポ……。 | |
ポポはどうしてここにいないの? |
(誰もリンレイの質問に答えようとしなかった。重苦しい空気が流れる) |
ポポは……いなくなったんだ。 | |
え……いなくなった? | |
私がいけないの。ポポを信じてあげられなかったから……ポポが今どうしているかもわからなくて、謝ることもできないの……。 |
(ニキはうなだれ、声もだんだんと小さくなった) |
(リンレイは歩み寄ると、そっとニキの肩に触れる) |
元気を出して。ほら、顔を上げて? | |
うん……。 |
(ニキは再び顔を上げ、その薄暗い星雲を見上げた) |
ポポと過ごした楽しい時間を覚えているし、それに思い出もあるでしょう? | |
ええ、ポポは私がマーベル大陸に来てからできた最初の友達で、沢山の大切な思い出を共にしたんだもの……。 | |
それを忘れずにポポを思っていれば、ポポはいつまでもあなたの心の中にいるわ。 | |
いつか、また会える時が来るわ。あなたと私みたいにね。 | |
そうなのかな……。 |
(ニキの目に光る涙。すると、遥か彼方のあの星雲も、わずかな光を懸命に放っていた) |
ポポ……。 |
(その時、雷鳴を伴う分厚い雲が空を覆い、星を隠してしまう) |
突然、一体何なのさ!? | |
雨が……降るのかな。 | |
いいえ、奴が来たのよ。 |
(リンレイは黒雲を見つめ、眉をひそめた) |
(激しく吹き荒れる風とともに落ちてきたのは、空いっぱいの漆黒の羽根) |
リンレイ、ここはニキだけの場所じゃないの!?どうして他人が入ってくるのさ!? | |
あれは私たちと違って、ニキの記憶が作り出した存在ではないわ……。 | |
……侵入者よ。 | |
私が夢の中で感じた力に似ているわ……闇、狂暴、限りない野望……あの黒い触手みたいに。 |
(嵐の中心に黒い渦が現れ、星々を呑み込んでいく。稲光と黒い羽根が辺りに撒き散らされた |
……あれが、そうなの? |
私の作った夢を壊しておきながら、こんな場所に隠れていたのね? |
なにっ!?誰だ! | |
ニキ、すぐに逃げて! |
逃げるの?せっかく会えたのに、みすみす逃すなんてできないわ。 |
(一瞬で黒い雲が天から下りてきて、空間を包み込んだ) |
(そして夢の中の虚無のように、全ての希望を呑み込んでしまう) |
(虚無の闇は壁となり、鎖となり、城をその場に作り出すと、一同をその中に閉じ込めた。外の景色がガラス越しのように見える) |
外と断絶されてしまった。私たちをこの闇に閉じ込める気だわ! | |
だけど、ここはニキの意識世界だよ。ニキの制御下にあるんでしょ?どうやってボクたちに手出しするつもり? | |
ええ。だけど相手は、そのニキの意識に、力技で押し入ってきたのよ。 | |
このままではここが破壊されるわ!ううん、それだけじゃ済まない。ニキ本人にも大きな影響が! | |
ええ!?それはまずいよ!何とかして止めなきゃ! |
私を止める?あまりにもおめでたい思考ね。 |
(嵐の中心に集まった暗雲はますます漆黒に染まり、これから何が起きるのか予測もつかない) |
(次の瞬間、黒雲が割れ、その中から華奢な少女が姿を現した) |
では、私が抗えない力というものを教えてあげるわ。 |
9「対峙する二人」
(ポポが手をかざすと、荒れ狂う風の渦がそこに生まれた。それは天地を滅ぼすほどの力を秘めている) |
ニキ、これはまずいわ……。 | |
ここを破壊するつもりね! | |
でも私、私……。 | |
ニキ、恐れないで。私たちはいつでもあなたの味方よ。本当の気持ちを言って。私たちも一緒に戦うわ! | |
そうにゃ!本物のポポの星は一生懸命光ろうとしているんだ!ニキ、諦めちゃだめだよ! | |
みんな、ありがとう……。 |
フンッ、無駄なあがきを。 |
いいえ!無駄じゃないわ! |
……ほぅ? |
私たちは世界の真相を知らなくて、とても愚かだけど……。 | |
誰かに服従しても、それは問題から逃げるだけ!きっと、もっといい方法があるはずだわ!試してみないでどうしてわかるの? |
だからお前たちは愚かなのだ。滅亡こそがこの大陸の運命だというのに。変えられるのは私だけ。永遠の夢という新たな運命を授けよう! |
運命を変えてみせるわ!ポポはまだ消えていないもの!だって声が聞こえるの!ポポが諦めていないのに、ここで挫けるわけにはいかないの! |
(ニキが手を伸ばすと、仲間たちが手を重ね合わせた。そこから生まれた光が、すべての闇を散らしていく) |
10「雨上がりの虹」
(暗雲が去り風が止んだ。嵐の後の星空は、ことのほか輝いている) |
(ニキは空から落ちてきた最後の黒い羽根を手を伸ばして受け止めた) |
(ポポは片手で額を押さえ、苦しそうに眉をしかめる。まるで何かと戦っているかのようだ) |
ポポ!いや……ポポじゃないのか?どうしたの? | |
気をつけて!力がまだ覚醒しきらず、不安定なんだわ。 | |
(ポポ……) |
(ニキはモモの静止を振り切って、ポポに駆け寄った) |
(ポポは冷笑した。ニキは深呼吸し、彼女にさらに一歩近づく) |
私にはわからないこともたくさんあるし、弱い存在だけど、逃げることは絶対にしないわ。 | |
苦痛から逃れられないのなら、立ち向かってみせる!幸せな夢に溺れていたって、自分の弱さを悔やむだけだもの! |
(ポポは俯いて両手で耳を塞ぐ。酷くなる痛みに耐えているようだった) |
ポポ、聞こえているのね!? | |
ポポ言ってたよね?大切なことは信じることだって!私はポポを信じてる!世界を守る為に一緒に立ち向かおう! |
(ニキは一歩ずつポポの傍に歩み寄ると、両手を広げポポを抱きしめた) |
(一瞬体をこわばらせたポポだが、必死でニキを振り払おうとする) |
(しかしニキは手を離さず、ポポを抱きしめたまま、苦痛を分かち合おうとした) |
(どのくらい経っただろうか) |
(僅かな光が指の隙間から溢れ、温もりに触れる) |
(そして、懐かしい抱擁がニキを包み込んだ) |
ニキ……。 |
(苦痛から解放され、ポポの体からは奇妙な気配が消えていた) |
(ポポはニキから離れ、顔を上げた。ニキは寂しそうな、だがそれよりも決意の勝る目をしている) |
ポポ……私、帰らないわ。 | |
……どうして? | |
お願い、元の世界に戻って?何もしなくていいから! |
(ニキはポポの手を握ると、強い意志を秘めた瞳で彼女を見つめた) |
ポポ、それは本音じゃないよね?私は……運命を背負ってこの世界に呼ばれたの。だから、一緒にいるわ。 | |
ポポの本当の目標が偽りでも、私たちが共に過ごした時間は嘘じゃないよね? | |
沢山の思い出は、ポポと私がマーベル大陸で一緒に過ごしたという確かな証だよ! | |
この世界に残って、みんなの夢や未来、大切な思い出を守りたいの。だから、ポポは一人じゃない、信じて! | |
ニキ……。 |
(ポポの瞳から葛藤や苦しみが消え去っていく。再びニキを抱きしめるポポの目尻には涙が光る) |
(ポポの星雲の後ろには眩しい光が現れ、優しく包み込んでいた) |
11「跡形もなく」
(陰鬱な雲は消え去り、星々の下には希望と力が満ち、少女たちは互いに抱きしめ合った) |
ニキ……あなたを信じる! | |
ありがとう! |
(ニキは鼻の奥がツンとして、涙を流しながら笑った) |
ポポ、一緒に戻ろう? | |
うん。 |
(次の瞬間、再び闇がポポを呑み込んで痛みに体を支配される) |
(ポポはニキの腕を振り払うと、苦しそうに頭を抱えた) |
ポポ!?どうしたの? | |
あああぁぁぁ!!! |
(ポポの目は虚ろになり、苦痛に思考を支配され、次第にその体の輪郭がぼやけていく) |
どういうこと!? | |
ポポは……消えてしまうわ……。 | |
ポポが消える!?どうして!? | |
ポポも私たちと同じく、意識が具現化したものなの。本体の力が弱まったり揺らいだりすれば消えてしまうわ。 | |
ポポ……。 | |
い……いや……。 |
(最後の光がポポの体から消え、ニキが差し出した指先にはわずかな光の欠片だけが残された) |
(ポポは消えてしまった) |
(ニキは呆然として自分の指先を見つめた。光の欠片も消えている) |
ポポ……必ず見つけ出すから……。 |
(ニキは拳を握りしめ、自分と、消えてしまったポポに誓った) |
次に会えたら、二度とどこへも行かせないから。一緒にこの世界の運命に立ち向かおうね。 | |
待っていて。 |
(ニキは再び果てしなく広がる夜空を見上げた。その瞳に映るのは、流転する星々) |
(星々の光は、永久に生き続ける力の象徴のように思えた) |
12「遥かなる星」
(ニキは彼方のポポの星を見上げ、無言で立ち尽くした) |
(星はまるでニキの思いに応えるように瞬いたが、その光は相変わらず弱々しかった) |
(意気消沈するニキの肩に、温かい手が添えられた) |
ニキ、悲しまないで。 | |
リンレイ……。 | |
ポポはいなくなってしまったけれど、あなたとの絆がなくなったわけではないわ。 | |
きっといつかまた会えるわ。私とまた会えたように。 | |
ええ、私たちも力になるわ。 | |
もちろんよ。 | |
ニキ、頑張れ! | |
ボクも悲しいけど、リンレイやみんなそれにポポを失望させたくないんだ!ポポはきっとボクたちを待ってるよ! | |
ええ!頑張るわ!ありがとうみんな……。 |
(笑顔が少女たちの顔に戻ってきた。別れの悲しみも、少しは薄らいだようだ) |
じゃあ、そろそろあなたたちも現実世界に帰らないとね。 |
(重苦しい空気が残る中、ニキたちは星空の下の凌雲城に戻っていた。名残惜しい気持ちに胸がいっぱいになる) |
ボク、まだ帰りたくない……。 | |
私も……リンレイ、また会える? | |
寂しく思うことはないのよ。 | |
あなたが思い続け、私の思い出が枯れることがなければ、私はずっとここに居られるわ。 | |
もちろん!私、忘れないわ! | |
だったら心配はいらないわ。私たちはずっと一緒、そうでしょう? |
(ニキはリンレイの星を見上げた。まるで毎晩見守ってくれる、無数の星々のような懐かしさがそこにある) |
そうね……私たちはずっと一緒! |
(ニキは感情を抑えることができなくなると、その瞳を涙で濡らした。すると、リンレイが歩み寄ってきてニキを抱きしめた) |
ニキ、さようなら。 | |
さようなら、リンレイ。きっとまた会えるよね? |
(輝く星たちは広大な銀河となって美しい大陸に降り注ぎ、その光は無垢なる魂を照らす) |
(遥かなる夜空。その星雲の中で強い輝きを放つ星々が、ニキの進む先を力強く照らしていた) |