【デスストランディング】作品の考察(ネタバレ込み)|テーマ・世界観・設定

編集者
神ゲー攻略班
最終更新日

『デスストランディング(デススト)』における、作品の考察(ネタバレ込み)|テーマ・世界観・設定について記載している。ヒッグスやミュール、カイラルの言葉の意味や、安部公房とブレイクの作品についても解説しているため、デスストを楽しむ際にどうぞ。

作品の考察(ネタバレ込み)|テーマ・世界観・設定

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ネタバレを含む記事です
この記事には、デスストのネタバレを含む考察を記載しているので、閲覧の際はご注意ください。
世界観の解説と
デススト用語集
ストーリーのネタバレと登場人物 作品の考察
(ネタバレ込み)

テーマ「つながり」の考察

「つながり・ストランド」というテーマ

「つながり・ストランド」というテーマ

デス・ストランディングの作品全体において、小島秀夫監督は「つながり=ストランド」がテーマだと発言している。「つながり」は、ゲームの醍醐味である配達(人と人を繋げる)システムから、「手錠端末」「臍帯」といったモチーフに至るまで、暗喩的に語られる。

ファミ通誌のインタビューにおいて、小島監督は「インターネット等の最先端の技術で世界中どこにでも繋がっているのに、ネット恐怖症になりかけている人たちに向け、人間の原始的なコミュニケーションを疑似体験してもらいたかった」と語っている。

小島監督のインタビューの言葉通り、ゲームは「配達」を通して、人と人を直に繋げながら世界を繋げていく。しかも序盤は普通に歩くこともままならない、泥臭い苦労を強いられる。つまり「最先端の技術」と逆行する、極めてアナログで原始的な体験だ。

安部公房の「なわ」から受けた影響

小島監督は、デススト制作にあたって、安部公房の「なわ」という短編小説にも影響を受けたと公言している。とりわけ小島監督が惹きつけられたのは、「棒は悪いものを遠ざけるための道具(武器)で、なわは善い空間を引き寄せるための道具だ」という安部公房の定義だった。

そして小島監督は、ユーザーに「なわ」を使ってもらおうと欲した。武器ではなく、なわ(Strand)的に「つながる」ことで、ゲームをクリアしていく。これまでのゲームにおける、バトルでの勝利といった他者との「分離」ではなく、「接続」によってクリアできるシステムにしたのだ。

勝敗ではなく「遊ぶ」世界への飛躍

勝敗ではなく「遊ぶ」世界へ

「棒」で殴って勝利する世界ではなく、「なわ」で繋がり、良き世界をたぐり寄せる(遊ぶ)世界を、小島監督はデスストで目指した。なお、KOJIMA PRODUCTIONSのHPでも、「私たちはホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」という言葉が掲げられている。

実際、ゲーム中で敵を「殺す」場面は少ない。ミュールの殺害は可能だが、殺害によるデメリットが大きいため、気絶させるに留めるしかない。デスストにおける勝利は、敵を倒すことではなく、人に物資を運んで人を繋ぐという極めて「まっとうな行為」で達成される。

筆者はこのシステムが、とても斬新だと思った。分かりやすいバトルでの勝利などではなく、極めてまっとうな「人助け」によってのみ、サムは評価される。既存のゲームや、あるいは社会における戦争やテロリズムへの反駁が、ゲームを通して表現されているのではないだろうか。

ネクローシスと「絶滅」の考察

近未来で描かれる日本的な死生観が面白い

近未来で描かれる日本的な死生観が面白い

デスストは近未来の北アメリカを舞台にしている。ただし、死体を焼却しなければ成仏できないBTや、三途の川的な「結び目」の表現など、ゲーム中の死生観が極めて日本的であることが面白い。

また、大量の人間が恐怖と共に死ぬと集合的ビーチ(クリフの戦場)を形成するという表現も、日本的な「怨恨」や「地縛霊」に近い。BBがカイラル通信端末に埋め込まれた「人柱」だという設定も、土着的な文化の影響が感じられる。

最先端テクノロジーに支えられた世界観の中でのこうした土着的な死生観との対比が面白い。また、近未来の世界設定だからこそ生々しい死生観を設定することにより、世界のリアリティが増しているのではないだろうか。

「絶滅期」=種全体のアポトーシス?

絶滅期」=アポトーシス?

ところで「ネクローシス(壊死)」の対義語に「アポトーシス」という言葉がある。アポトーシスも細胞の死滅という意味ではネクローシスと相似だが、アポトーシスの細胞死滅は、個体がより良い状態を保つために行われる。

デスストにおける絶滅期(DS)も、アポトーシスなのではないかと筆者は考えた。BTとの接触で起こるヴォイドアウトは、全ての生命を崩壊させる種の「ネクローシス」に近いが、アメリが阻止しようとしていた「絶滅期」は、人類進化の推進に必要なアポトーシスの暗喩ではないか。

物語において、いきなり「人類の絶滅」という壮大なモチーフが出てきた時は筆者は驚いたが、作品を通して描かれる土着的な死生観を顧みて、小島監督は生と死において新概念を提示したと考えた。つまり死はネガティブなものではなく、種全体にとって必要なもの、という観点だ。

クリフと父性の解説

サムに「つなげる」ことを託した父

クリフ

クリフは物語冒頭から登場し、物語の大きな謎の中核をなす人物だが、最終的にはサムを暖かく見守る父として存在感を残す。様々な伏線の果てにクリフの深い父性に触れ、クリフのファンになったプレイヤーも多いのではないだろうか。

エンディングにおいてクリフはこう語る。「俺はクリフ(崖)で、橋にはなれなかった。サム、世界を繋ぐ本物の橋になれ」と。クリフのこのセリフに、デスストのテーマが凝縮されている。つまりクリフは戦場で銃を操る兵士であり、「棒」と「なわ」なら「棒」側の人間なのだ。

対して、サムは「つなげる」ことを父クリフから託された。そして配達という行為を通して人々をつなげることで、世界を平和へ導く。つまり「なわ」側の人間だ。棒からなわへの変遷が、父と子というモチーフを通して描かれているのだ。

デスストにおける極めて優しい父性

デスストにおける極めて優しい父性

また筆者は、エンディングにおけるクリフの優しさが描かれるまで、ずっと「母性」の方が強く描写されていることに注目していた。ブリジットやアメリ、またママーのエピソードなどはすべて「母」に類するものである。

そして「母」たちはサムに何かを押し付け、時にはコントロールしようとする恐ろしい存在でもある。対してクリフの「父性」は、サムに未来を託し、そっと手放す優しさがある。息子を遠い場所から見守る父性の表現は、小島監督の独特のセンスだろう。

ヒッグスとテロリズムの考察

DSにおける最も悲しい被害者

DSにおける最も悲しい被害者

ヒッグスは、サムの前に立ちはだかる敵として特に印象的なキャラクターだ。強大なDOOMSとしてBTを操りサムを攻撃するヒッグスだが、その裏には人と繋がり、自分の価値を感じたいという欲望があった。その欲望をアメリに利用されたため、ヒッグスはDSの被害者と言えないだろうか。

根拠は、DOCUMENTSのヒッグスの手記だ。手記によれば、ヒッグスはシェルターで生まれたが、幼少期に親を失い、伯父に暴力を振るわれながら育った。ヒッグスは暴力から逃れるために伯父を殺してシェルター外に出、生計のために配達業を始めた。

そしてヒッグスは配達業で自分の価値を見出し、配達にのめり込んでいく。なお、小島監督が影響を受けたとされる安部公房の「なわ」でも、幼い姉妹が、粗暴な父から逃れるために父を殺す描写がある。ヒッグスは「なわ」の姉妹のイメージから来ているのではないだろうか。

現代社会のテロリズムへの風刺

現代社会のテロリズムへの風刺

現代社会において、中東などでは依然としてテロが行われている。しかしテロの原因は主に貧困である。貧困ゆえ、他人から奪わなければ生きてゆけず、苦しい生活の怒りからテロが勃発しているという社会問題がある。

ヒッグスも、元来悪だったわけではなく、孤独ゆえに幼少期から配達業に従事し、自分の価値を見出すことにのめり込んでいった。その弱さにアメリにつけ込まれ、ヒッグスはDS首謀者として利用されてしまったのだ。

ヒッグスや、ヒッグスをはじめとする分離破壊主義者の描写も、こうしたテロリズムに対する風刺ではないだろうか。テロや戦争が絶対悪なのではなく、テロや戦争を生む背景である愛の欠如や分離こそが悪ではないか? ヒッグスというキャラを通して筆者はそう考えた。

ヒッグスの由来「ヒッグス粒子」の考察

ヒッグス

ヒッグスの名前の由来は、宇宙に存在する「ヒッグス粒子」や「ヒッグス場」のヒッグスだ。ヒッグス粒子とは「神の粒子」とも呼ばれ、物体に質量を与える性質がある。

物に質量を与えるということは、その「物」は重くなり、移動が困難になる。つまりヒッグスの存在は、物が重くなり移動が困難になる=サムの旅路の障害、の比喩ではないかと筆者は考えた(同時に、サムの歩行を困難にするタールのイメージも重なる)。

ただしヒッグス粒子がなければ物は質量を持たず、存在もできない(DOCUMENTS「ヒッグス粒子とは」より)。ゲーム中のヒッグスも、サムに困難を生じさせる存在だが、ヒッグスがいるからこそ物語に深い意味やインパクトが生じるのだ。

ミュールの考察

SNS全盛期社会への風刺

デススト_ミュール

ゲーム中何度も交戦するミュールも、デスストのテーマ「つながり」を考えるにあたって重要な存在だ。ミュールは「配達依存症」を患っている。配達依存症とは、自分たちの配送技術こそが世界のインフラを支えているというプライドが、病的に肥大した状態だ。

DOCUMENTS「いいね!はオキシトシンを分泌させる」では、ダイハードマンがDS以前の「SNS全盛期だった社会」について「いいね!をもらうとオキシトシンが分泌され、誰かに承認された幸せな気持ちになったそうだ」という旨を書いている。

ミュールの配達依存症も、「いいね!」会得でのオキシトシン分泌への依存だ。つまり、ミュールという存在を通して、現代社会の我々の「いいねをもらって承認欲求を満たすことに依存する」現状を風刺しているのではないだろうか。

カイラル=手の考察

カイラル=「手」の意味を持つ

カイラル=「手」の意味を持つ

作品中になんども出てくる「カイラル」という言葉も、デスストの世界観を語るにあたって重要な要素だ。まずカイラルとはギリシャ語で「手」を表し、科学の分野では「3次元の物体などが、その鏡像と重ねられない性質」を指し、「掌性」とも呼ばれる。

例えば右と左の手のひらは、向かい合せれば重なるが、手のひらを前に向けた状態では重ならない。両手のひらのように、形は相似でも鏡像にならない性質を、カイラリティーと呼ぶ。

相似だが同一ではない存在たち

相似だが同一ではない存在たち

DOCUMENTS「カイラル対称性とは」において、ハートマンは、BTと人間の関係を「本来なら重なり合わない存在」としている。そして重なり合わない存在が重なるために対消滅を起こすと説く。この、相似だが同一ではない存在、という点に筆者は強い関心を持った。

例えば作中の「カイラル・プリンター」は現代の3Dプリンターのように、A地点に存在するものをB地点に「コピー」する技術だ。しかしカイラルとは、形は相似だが決して同一ではないユニーク(独自)な存在である。

つまり、カイラルとは、コピー技術や転送が容易な時代において、個を主張する強い概念ではないだろうか、と考えた。他と似ているが決して同じではない独自性、というサブテーマが、カイラルという言葉に起因して作品全体に通っている。

作中に何度も現れる「手」

作中に何度も現れる「手」

カイラル=「手」の意味通り、デスストの作中には「手」が幾度も存在する。BTの手形(ステンシル)に始まり、ヴォイドアウト発生時のクレーターの形が手のひらだったり、カイラル結晶の形も人間の手の形だ。

そして「手」は、人間が自分以外の存在に触れる際に最も使用する器官だ。つまり「つながり」である。BTは人間に触れるために手を伸ばす。ヴォイドアウトの手形はまるで神が地に手を触れたかのようだ。

触れるという行為は「つながり」の最も原始的な形だ。小島監督は、カイラルという言葉にインスパイアされながら、「つながり」という当初のテーマを広げる「手のひら」というモチーフも、作中に散りばめたのではないだろうか。

ストランド=座礁の考察

作品全体を貫く座礁や海の美しいイメージ

作品全体を貫く座礁や海のイメージ

小島監督は、イルカや鯨の大量死滅「マス・ストランディング」という現象にもインスパイアされた。奇しくも「座礁」と「つながり(撚り糸)」のスペルは同じStrandで、Strandという言葉から作品のテーマが広がったと筆者は想像する(Strandはドイツ語で「浜」の意味もある)。

一番分かりやすい表現は、鯨の形をした大型BT(キャッチャー)だ。また、BBがBTを感知するのはイルカの「エコロケーション」という超音波を使った方法だという設定も、鯨・イルカの生態をモチーフにしている。

また「ビーチ」という概念も、大量の(鯨の)死体が乗り上げる岸辺、というイメージがあるのではないだろうか。そして作品全体を通した「座礁」や、それに伴う海(タール)や水のイメージが、作品全体を一貫した美しいイメージに仕上げているのだ。

ブレイクの詩の引用の考察

異質な存在との融合と共存

自分の「手」で作るつながりと未来

一粒の砂にも世界を
一輪の野の花にも天国を見、
君の掌のうちに無限を
一時のうちに永遠を握る。

ー『ブレイク詩集』(岩波文庫・松島正一編)より引用

デスストのオープニングでは、安部公房「なわ」の引用と共に、ウィリアム・ブレイクの「無垢の予兆」の最初の4行が引用される。この4行詩は、ブレイクの神秘思想が凝縮された詩だ。

ブレイクの詩では、「一粒の砂」と「世界」、「掌」と「無限」のように、「一」と「多」という対立する性質の合一が表現されている。エピソード14完了時にも、サムとルーの大小の手のひらが映ることに筆者は注目した。

「つながり」とは、自分と異なる存在との接触だ。理解し合えないかもしれず、いつか離れてしまうかもしれない(サムの妻ルーシーのように)。それでも「つながろう」、というメッセージを、ブレイクの詩との呼応により筆者は強く感じた。

自分の手で作る「つながり」と「未来」

クリア

エピソード15のタイトルは「TOMORROW IS IN YOUR HANDS(明日は君達の掌に)」だ。ここでも筆者はブレイクの詩「君の掌のうちに無限を」との呼応を感じた。

そして、小島監督がデスストを通して伝えようとしていたことは、極めてまっとうな人間性であり、性善説だと筆者は感じた。人はどんな時代にあっても直の触れ合いや、アナログなコミュニケーションを通して、自他を「つなげて」ゆくべきなのだ。

そして未来も他人との繋がりも、全て自分の「手」の中にある。未来も繋がりも、自分の手で掴み、作り出すことができる。ごく素朴で真っ当だが、人間が忘れてはならない真実が、デスストという作品を通して説かれているのではないだろうか。

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