【DbD】学術書Ⅴ-解放のストーリーまとめ
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DBD(デッドバイデイライト)の学術書Ⅴ-解放のコレクションを掲載中!ネア・カールソンの物語についても掲載しているため、ストーリーを読みたい方は是非どうぞ!
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ネア・カールソンのストーリ一
ストーリー1「記憶 683」
「記憶 683」 |
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ネアはフォールズシティ・パークまでスケボーを走らせ友人のケイシーを探したが、見つけられなかった。そのままケイシーの家を訪れると、母親曰く、ケイシーはナローズで「生命の雫」という草の根組織と共に、ペットボトルの水を配っているらしい。「生命の雫」?ナローズ?ケイシーったら、今度は一体どんな面倒に巻き込まれたんだろう?ケイシーのことだ。どうせまた世界の仕組みを理解できない、蜂を救う会みたいなものだろう。アメリカンドリームなんて、もはや存在しない。あるのは企業が掲げる夢だけ。そして企業が掲げる夢とアメリカンドリームは、まったくの別物だ。ナローズの事は読んだことがある…確かフォールズシティで最も貧しく、最も汚染された地区だったはずだ。どこよりも貧しいからこそ、同時にどこよりも汚染されているのかもしれない。腐敗した政策を変えたり、立ち向かったりするためにまともな弁護士を雇えない人間に対する、堕落しつつも合法な政策のせいかもしれない。製紙工場。自動車工場。有毒廃棄物処理施設。どれも土地や水にゴミをぶちまけている。一握りの政治家がドル建て価格を決めて環境を汚染し、ブルーカラー業界全体がその代償を支払うのだ。最終的にはその健康と命をもって。目新しい事は何もない。ずっと前からそうだった。金持ちと官僚はそれができるから、そうし続けているにすぎない。世界を汚染することが金になるなら、いつだって誰かが儲けようと動く。どこでもやっている事だ。今まで聞いてきたどの街でもそうだった。フォールズシティだって例外ではない。関心を持っていた頃もあったが、あまりに大きすぎる問題で、無関心でいたほうがラクだと判断するに至った。実に面白い結果だ。今やスケボーをする事と、誰もタギングできない所にタギングすることだけが全てだ。まあいい、ナローズにもタギングできる所があるかもしれない。ネアはフォールズ川の上流に向かって滑り出した、フォールズシティで最も貧しく、最も汚染された地区を目指して。 |
ストーリー2「記憶 684」
「記憶 684」 |
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そのおばさんたちと何をしているの?ネアは住民たちにペットボトルやケースで水を配るケイシーと、中年女性の方に歩み寄った。ケイシーがネアに顔を向ける。何をしてるかって?手伝えることは何でもよ。ネアは笑って、ケイシーを肘で軽く突いた。公園に行こう。ケイシーが肘で突き返す。今日はだめよ、ネア。大事なことなの…また今度ね…ネアはケイシーと女性らが、貧しい人々に水を手渡す様子を眺める。家にお子さんは何人?3人?じゃあ、ボトルを1ダース。4人じゃあ追加で渡すわね。この辺の水はいつになったら安全になる?わからないわ。シャワーは危険?洗濯は?水質はどれだけ悪いの?だいぶ悪いわ。水のせいで子供たちが死んでしまう。汚染された患者を治療するための施設が要るわ…交わされる会話を、ネアは恐怖と疑念を持って聞いていた。これまで水ほど基本的で、必要不可欠なものの心配などしたことがなかった。だが今は…水の事を考えざるを得なくなっていた…汚染された水…そして、自分の住む街の貧しい人々の事を。この国で起きた、ミナマタ病の最悪のケースだと言われている。ネアそれが何かわからなかった…ミナマタ…良くない響きだ、すごく悪いものなんだろう。ミナマタって何?ケイシーは新鮮な水を住人に手渡しながら、気分を害したか動揺したような顔をした。人間が水銀に侵されるとなる病気よ。ネアはため息をつき、住民たちに同情した。だがひどいことはどうしたって起きるものだし、やれる事なんてたかが知れてるとネアは思っていた。私たちに世界は救えないんだよ、ケイシー。何箱か水を配ったくらいでどうなるの?ケイシーは固まり、よくわからないと言いたげな目でネアを見た。一瞬の間の後で、彼女は答えた。そうね。たしかに世界は救えないかも。それでもね、ネア。間違いなくほんの少しはマシなんだよ。私にはそれで十分。 |
ストーリー3「記憶 685」
「記憶 685」 |
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世界は救えなくてもほんの少しマシな場所にはできる。私にはそれで十分。ネアは水俣病の恐ろしさについて調べながら一晩中、ケイシーの答えについて考えていた。運動能力の低下。歩行能力や会話能力の退化。不規則な痙攣。麻痺。捻れた四肢を持って生まれる子供たち。全て水銀中毒の永続的な副作用だ。市長が飲料メーカーと協定を結んだのだ。水の権利を買ったその企業のために、綺麗な湖から汲み上げた質のいい、身体に害のない水を運ぶ経路に変更を加え、その代わりにナローズは川と繋がった古い装置をあてがわれた。誰にも気づかれないと考えたのだそこまで悪い事態にはならないはずだと。だが、それは間違いだった。母親たちが流産を繰り返し、人々の髪が抜けるようになって5万人の住民たちは気づいた。気づいた人々は声を上げ始めたが、誰も何もしなかった。普段と変わらない時が過ぎた。ネアは深く息を吸い込み、ゆっくり吐き出した。水の事などこれまで考えたこともなかったのに、今ではその事ばかり考えている。 |
ストーリー4「記憶 686」
「記憶 686」 |
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ねえ、気味の悪い廃工場にタギングしたの。見にきてよ。ケイシーは肩をすくめた。あんたのエゴに付き合ってる暇はないの。エゴ?何の話?ケイシーはあきれて頭を振った。それが何だって言うの、ネア。壊れた壁だかなんだかに、あんたの名前が書かれてるだけ。それが何なの。何かのために戦おうとは思わないの?声を上げようとは思わないの?不気味な場所にタギングしたって言うためだけに、時間と労力をたっぷり注ぎ込んだんでしょ。すごいよね、ホント立派だよ。ネアは顔を思いっきりしかめた。ネアは攻撃されている気分になった。どうしちゃったの?ケイシーは肩をすくめた。わからない…これでせめて独裁者の一人も怒らせたんなら、意味もあったかもね…このアート…かなんだか知らないけど。ネアは何も言わなかった。何を言えばいいのかわからなかった。彼女はスケボーを手に取って、ナローズに向かった。川沿いに並ぶ、大きくなりすぎた廃工場を見つめた。奴らはこの地にやってきて、儲けて、去っていった。あまりにもバカげていて、そして単純だ。水に毒を撒いたら、人が死ぬ。金も権力も法律も、それを変えることはできない。 |
ストーリー5「記憶 687」
「記憶 687」 |
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サイダー生産工場。やるなら、あそこがいい。何年も川にゴミを捨てまくって、全国のキャンプ業界や水産業を崩壊させたんだ。20年もすれば、ナローズは苦痛に満ちた緩やかな死を遂げるだろう。そこに正義はないし、恐らくこの先もずっとない。調整すら行われず、中毒患者たちを治療するための病院や施設もない。環境局は何の問題もないとのたまうが、そんな事はない。全く大丈夫じゃない。誰も水銀中毒だと言いたくないのだ水銀中毒だと認めたら、過失も認めることになる。過失を認めればナローズの救済と汚染除去の費用を出すことになる。市は起訴など起こされたくない。誰も動かず、何もしない一方で、子供たちが苦しみ、死んでいく。子供たちが苦しみ、死んでいくのだ…なのに、誰も何もしない…ネアは彼らのことを考えるのをやめられなかった。子供に毒を盛るなんて、並大抵の悪ではない。この一件の何かが、ネアを関わりたい気持ちにさせた。友人のケイシーのように、本気で関わりたいと。公僕を名乗りながら、自身にしか仕えない奴らにこそタギングするべきなのかもしれない。 |
ストーリー6「記憶 688」
「記憶 688」 |
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ネアはボトル製作工場の側面までスケボーを滑らせた。こいつらは新鮮な水を入れるための瓶やペットボトルを作り、化学物質や毒を川に棄てている。なんてバカな事をしているのか。市だってあまりにバカだし、こんな物を許しているあの市長はどれだけ腐っているのだろう。ネアはタギングするのに最適な場所を、最高級のキャンパスを探した。高い位置に人目に付きそうなスペースがある。あそこなら奴らも怒るだろう。ネアがそっと正面玄関に回ると、そこにはカメラがあった。そのレンズをスプレーで塗りつぶすと、タギングに取りかかった。こいつらは良質な水を入れる容器を作るために、水に毒を撒いている。不条理だ。バカげている。信じられない。ネアは時間をかけて力作を描き上げた。ペンキの残りにも余裕がある。建物を見回すと、白く大きなガレージの戸が目についた。笑みを浮かべる。完璧だ。皆に見えるよう、大きくキレイに自分の名前をタギングしてやろう。それならケイシーの言うように、独裁者を怒らせることができるだろう。この大義はネアの心境に変化をもたらした。自分のアートによって工場や市を怒らせ、川を浄化させるきっかけになってほしいと願った。希望的観測だ。奴らはここにやってきて、儲けて、去って行った…地域全体を毒に侵してそれを罰する法律があって然るべきだし、知っていたうえで子供たちに毒を盛っていた奴らには、死刑が宣告されるべきだ。 |
ストーリー7「記憶 689」
「記憶 689」 |
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奴らの建物にタギングしたって?だから?何の意味もない。たしかにあんたの名前はそこにある…あんたが望んだとおりね…だけどその名前が意味するものは?ネアはケイシーの問いにどう答えていいかわからなかった。他の皆がそうするように、自分のストリームネームにメッセージ性を持たせたことがなかった。そんな事をする日が来るなんて、微塵も思っていなかった。大事なのはメッセージじゃない。アートそのものなんだ。ケイシーは、アートはメッセージを伝えるものだという。アートは反逆だと。伝道だという人もいる。誰がでっち上げたのよ?企業よ…ネア…わかりきったことでしょ。アーティストが自分のアートを使うことを、そして奴らの不正に物申すことを恐れるように。そして奴らが勝つの。何世紀か昔、芸術家は独裁的な王様たちに抗議し、独裁者たちは貧困や市の恐怖をチラつかせながら、彼らを囲ったり抑圧することに手を尽くした。ネア…「王様」は今も存在するのよ…実在しているの…形が違うだけ。現代の王様達はCEOを名乗り、王国の代わりに企業があって、いい王様もいれば…そうでない王様もいて…そうでない王様たちはアーティストを抑えるための、新たな方法も見つけている。学校に入れて脅したり、意見を言わないように教える。何かのために立ち上がれ。万人にアピールしろ。楽しませるだけでいい。楽しませて勇気づけろ、でも何も言うな。政治的発言をするな。ネア…全ては政治的なのよ。何も言わないことも、何かを言っているのと同じ。背を向けて、腐敗を無視するのもひとつの選択で、無関心でいるという政治的な選択。ネアはため息をついた。わからない。確信が持てない。他の皆と違って、そういう事をしたことがない。そういう物には、何となく神経を逆なでされている気分になった。ケイシーはネアのタギングを嘲笑った。何かのために戦うか、何があっても戦わないか、よ。あんたのアーティストとしての選択。あんたの政治的な選択。 |
ストーリー8「記憶 690」
「記憶 690」 |
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一緒に来て。ケイシーは自分のスケボーに飛び乗り、ネアをナローズに案内した。着いた先の家では、父親がベッドにいる息子の食事を手伝っていた。たった11歳の少年だ。何のチャンスにも恵まれたことがない。たったひとつの過ちは、彼を守ってくれるはずだった人々を信じてしまったこと。少年は死にかけている。水銀中毒だ。ナローズの人々も以前は自然死を迎えていた…今は全てが水銀中毒によるものだ。ケイシーはため息をつき、頭を振った。犯人のガレージの戸にあんたのサインを描いても、あんたのストリームネームを宣伝しただけ。自分のタギングを、大義のためには使わないって戯言は聞いた。じゃあ、何のためのタギングなの?何も言わないなら、何とも戦わないのなら、何のためのタギングなの?アートは反逆を示す行動。収益を示す手段じゃない。名声を得る手段じゃない。なんとか言いなよ、ネア。あんたの心の中にあるモノを、世界に発信するの。誰かが聞いてくれるかもしれない。行動を起こすきっかけになるかもしれない。声なき人たちに、声を貸してあげて。大義なき反逆じゃなくて、大義ある反逆をするの。 |
ストーリー9「記憶 691」
「記憶 691」 |
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ネアはベッドに横たわりながら、グラスに入った水を眺め、ケイシーの言ったことを考えていた。ケイシーは正しい。ネアにもストリートアーティストとして、伝えたいことがたくさんあった時期があった。いつからか、そういう気持ちは消え失せていた。何故消えてしまったのか、思い出そうとした。唯一思い当たるのは…学校だ。メッセージは無し。政治的なものも無し。全てが無し。勇気づけて、楽しませればいい。だが企業にはメッセージも政治も存在する。売るための政治だ。ネアはアートを、政治に利用してはいけないと教わったことを思い出した。だがそれで誰が得をする?王様達だ。学校から始まり、独裁者たる王様たちは内側から洗脳することで「声」を囲い抑圧する。政治を持ち込むな!政治を持ち込むな?全ては政治だ。政治に関わらないようにするのだって、政治だ。政治…忌々しい政治…忌々しい、堕落した市長…あのクズは良質の水を、毒の水と交換しただけじゃない…良質の水を王たちに売り渡したのだ。不条理だ。バカげている。信じられない。こんな事は今まで聞いたこともない。水の権利なんて誰かが所有していいものじゃない。誰であってもだ。水はみんなのものだ。あらゆる生命のものだ。ネアは鏡台の上のスプレー缶を見つめた。発信するべき事について考えた。人々が足を止め、気に留めてくれるなにか。それがメッセージだろうが、政治的な声明だろうが構わない。そう思ったのは、ずいぶん久しぶりのことだった。高校時代の美術の教師には、自分の作品を通じて声明を出すことに、不安な気分にさせられたものだが、もはやどうでもいい事だった。水は人間に与えられた権利だ…水は人権だ…一番基本的な人権なのだ。 |
ストーリー10「記憶 692」
「記憶 692」 |
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ネアは、一握りの王様たちが良質の水の権利を買ったせいで、どれだけの貧しい人々が毒の水を使ってシャワーや入浴、料理や洗濯をするハメになっているかに驚いた。なんという不条理だろう。バカげている。信じられない。大義というものにここまで関わったのは初めてで、いい気分だった。恐らく学校を出てから初めて触れた大義だ。学校はひたすら声を抑制しようとした。間違う恐怖…声を上げる恐怖…メッセージを持つ恐怖…企業の掲げる夢に疑念を抱く恐怖。アメリカンドリームではなく、あくまで企業の夢だ。ネアはネット検索で王様たちのことを調べ、彼らが世界中の新鮮な水を奪い合っていることを知った。あまりうまく行っていないことがわかって喜ばしかった。この独裁者たる王たちは、新鮮な水を我が物にしようとした国々でことごとく民衆に追い出されている。だがこうした話を見つけるのは困難だ。王様たちが小作人たちと戦って敗北したことは、速報どころかニュースになることさえ稀だ。きっとそれによって勇気づけられ、抵抗する者たちが現れないようにしてるだろう。自らが毒で汚染せずに済んだ水を我先に買い上げようと必死なのだ。奴らは全てを欲しがっている。手に入れたものを売りたいのだ。そしてそれを小作人たちに邪魔されたくない。水は全てだ。水を所有することは、生命を所有することと同じだ。水を所有することは、誰が生きて死ぬかを決めることだ。王様たちと市長がフォールズシティでやった事は、そういう事だ。奴らは1つの地域をまるごと、強制的に毒で汚染しておいて、住民を救うようなことは何もしなかった。本当に何もしなかったのだ…ネアは所有されたり買収されたりすることのない高潔な正義を願い、市長の新しい高級車を反逆の作品に変えてやろうと誓った。世界を変えることはできなくても、ほんの少しマシな場所にはできる。ほんの少しマシに…ネアにとってはそれで十分だった。 |
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