【陰陽師】真実の羽ストーリーまとめ【ネタバレ注意】
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『陰陽師』の真実の羽イベントの昔の月ストーリー(シナリオ/エピソード)をまとめて紹介。
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序章ストーリー
序章ストーリー |
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【かぐや姫】 「ここを彷徨う人々には、長い間心の奥に仕舞い込んでいる願いがあるのかな?この祈念の力を受けて、林の上に浮かぶ月もより一層輝いてる。」【かぐや姫】 「水中にある月の影が、私の切なる思いを映し出しているみたい。みんなの力、ちゃんと届いてるよ。」【かぐや姫】 「わあ、こんなに大勢の人が香道大会に来ていたの?」【聆海金魚姫】 「人以外にも、小さな兎がいっぱい。」【煙々羅】 「小さな兎たちは手伝いに来たのかもしれないね。」【かぐや姫】 「見覚えのある子が何匹かいる。」かぐや姫は一匹の兎を抱き上げて、その背中を撫でた。」【かぐや姫】 「あなたたちも、人々の願いに応えているの?」 |
真実の記憶ストーリー
招待、帰路
招待、帰路ストーリー |
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今年の香道大会は往年通り、無限岳で開催される。静謐な竹林の中、月の影が清らかな池に映る。因幡かぐや姫が丁寧に一本のお香に火を点ける。煙が立ち上ると、彼女は物思いに耽った。」【因幡かぐや姫】 「あれから、もうこんなに時が経ったのね……」笹が風に揺られ、かさかさと音を立てる中、彼女は水面に映る月の影を静かに眺めた。【因幡かぐや姫】 「前回の香道大会では色んな事があったけど、なんだか朧げに感じる。あの時、金魚姫はまだ旅立ってなかったし、私も……月の宮殿に関することを思い出していなかった。」因幡兎は未だ、彼女の腕の中で安らかに眠っているようだ。【因幡かぐや姫】 「因幡、あなたの願いはもう叶ったよ。」かぐや姫の言葉を感じ取ったかのように、因幡兎の耳がぴくりと動いた。因幡かぐや姫が軽く手を振ると、水に映る月の影がますます明るくなり、金色の波紋を描きながら水中から上がってきた。煙が立ち込める中、過去の記憶が月の蛹にちらちらと浮かび上がった。 |
香道大会
第一節
第一部ストーリー |
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かぐや姫の誘いを受けた一同は、初めての香道大会に参加するべく、無限岳へ向かっていた。【聆海金魚姫】 「前回祭典に参加したのが、遠い昔の事のように感じるね。」【煙々羅】 「そうね、貴重な機会だわ。」横にいるかぐや姫はただ静かに皆と共に歩くだけで、心ここにあらずといった感じだった。【聆海金魚姫】 「かぐや姫?どうしたの?」【煙々羅】 「満月が出て、ゆっくり寛げる時間なんだから、もっと楽しまなくちゃ。」【因幡兔】 「あ~ああ~」【かぐや姫】 「うん、私も結構楽しんでるよ……」かぐや姫は満月を見上げ、一瞬恍惚とした。【??】 「かぐや……」【かぐや姫】 「(またあの声だ。私を呼んでいるのは、恐らく……昔の記憶も徐々に蘇ってきた。ここから旅立つ時が来たのかもしれない。「旅立つ」?でも一体どこへ……だめ、やっぱり思い出せない。)」【聆海金魚姫】 「かぐや姫がまたぼーっとしてる!体調が悪いの?」【かぐや姫】 「大丈夫……私、あんまり遠出しないから、少し慣れてないだけ。みんな、心配しないで。」かぐや姫はいつもの笑顔を見せた。だが金魚姫は依然心配そうに彼女を見つめた。【煙々羅】 「そういえば、私たちだけではなく、他の人も招待したようね。彼らはどこにいるの?」【かぐや姫】 「多分……」無限岳の崖は大勢の人で賑わっていた。そこには、かぐや姫と彼女の招待を受けた仲間以外にも、名を慕って多くの民が都から駆け付けていた。人混みの中、晴明たちは一際目立っていた。【小白】 「無限岳の香道大会は予てより有名ですよね!「お香作り」を主題としているので、普通のお祭りとはなんだか一味違う気がします。折角かぐや姫さんのお誘いを受けたんですから、お香作りで勝負しませんか?」【源博雅】 「お香作りには緻密な作業が必要だぞ、犬っころの肉球で出来るのか?」【小白】 「小白をバカにしないでください!!セイメイ様、小白と一緒に組んで、博雅様を仰天させるようなお香を作りましょう!」【晴明】 「ああ、たまにはこんな勝負に参加するのも悪くない。」【小白】 「ふふん、博雅様の負ける姿が今から待ち遠しいですね。」【源博雅】 「おい!!」【山兔】 「うーん、孟婆ちゃんはまだ冥府で孟婆茶を煮ているから、ここに来れなくて残念。私たちならきっと一位を獲れたのに!私と蛙さんは勝負事に強いの。私と一緒にお香を作ったら、絶対一位になれるよ!」【桃の精】 「あんたが年中してはる駆けっこは、お香作りとそない関係あらしまへん。そやけど、なんぼか作って桜に持って帰ろかな。兎はん、うちが一緒に組んでもええどすえ。」【萤草】 「あの、白狼様、お香作り……ご一緒してもよろしいでしょうか?」【白狼】 「私が得意なのは弓道であって、香道ではない。あまり役に立てないかもしれないが。」【神楽】 「お香作り?八百比丘尼はやったことある?」【八百比丘尼】 「ありませんよ。では一緒に挑戦してみませんか?ふふ、人生は学ぶに値する新しいことばかりですから。それに、しばらくここに居れば、面白いものを沢山見れるかもしれません。」【神楽】 「え?」【源博雅】 「何?お前らもう……ゴホン、大天狗。肩を並べて戦える機会はそうそうない。どうだ、俺と組むか?」【大天狗】 「…………我がここに来たのは、このような下らぬ勝負に参加するためではない。」【源博雅】 「だけど、折角来たんだし……」【大天狗】 「……まあ良いだろう、当面のところは他の用が無いからな。」【小白】 「大天狗さんは相変わらず素直じゃないですね……あ、かぐや姫さんたちです!かぐや姫さん、小白たちを香道大会に誘ってくださってありがとうございます!」【かぐや姫】 「いえいえ、私もずっと、みんなとお祭りに参加できることを楽しみにしていたの。だって、もしかすると……ううん、何でもない。」【煙々羅】 「あら?高貴な神使様も、人間界の祭りに参加するのかしら?」【荒】 「祭り自体に左程興味はない。ここに来たのは、起こり得る事を見届けるためだ。」【かぐや姫】 「……わ、私がお誘いしたの!あの、来てくださってありがとうございます、とても嬉しいです。」【荒】 「…………そうか。」月明りが銀色に輝き、地面を照らす。皆頭を上げて、曇りのない空に浮かぶ月を堪能した。無限岳の崖から銀色の月を眺めると、まるで手を伸ばせば届きそうなほど、近くにあるように感じた。【かぐや姫】 「あの……みんな、私のお誘いに応じてくれてありがとう!私、本当にとっても嬉しい!」【聆海金魚姫】 「かぐや姫?どうして急に……?」【かぐや姫】 「何でもない。ただこうしてみんなと一緒に月を眺めているだけで、私は満足なの。だから……」【煙々羅】 「これから香道大会の日には、毎年みんなで月を見に来ましょう?」【かぐや姫】 「うん!(あと数日経ち、月が満ちる時、恐らく何かが起きる。まだ完全には思い出せないけど、心の奥で蠢く不安は到底拭えない。耳元に纏わりつく声は、帰ることを促すばかり。私もそろそろ決断を下さないと。これは私が向き合うべきこと、これ以上逃げてはだめ……みんなを香道大会に誘ったのも、最後まで一緒に見届けたいからなのかもしれない。目覚めてから、都でみんなと会えたことが、私の一番の幸せ。だから……何が起こったって……)」かぐや姫が明るい月を見つめると、疎らな記憶が浮かび上がる。 |
第二節
第二節ストーリー |
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【煙々羅】 「みんな、最近お香作りは順調?今日は月が綺麗だし、月に関する伝説を教えてあげるわ。」おもむろに腰を下ろした煙々羅がお香を焚く。皆が彼女を囲むように机の傍に座った。煙がゆらゆらと立ち昇る中、彼女は意味ありげにかぐや姫に一瞥した。【煙々羅】 「伝説によると、月の上は争いも、戦乱もない楽土らしいわ。そして楽土には神々がいる。神々は優雅に振る舞い、汚れのない美しい瓊宮に住んでいる。」立ち昇る煙に気を取られるかぐや姫の頭の中で、遥かなる記憶の音が響く。【司正】 「月宮に祈念の力を捧げん、それは汝の使命、汝の誕生の真意なり。他は全て無意味だ。考える必要もない。」【かぐや姫】 「……はい。(これは……私の過去の記憶?私はそのために存在していたのね……ああ、美しい楼閣はあまりにも静かで、笑い声一つ聞こえない……あそこは月宮ね。祈願…「祈念の力」?みんなの切なる願いを、そんな風に扱ってはいけない。)」【煙々羅】 「しかし人々の願いによって生まれた神々も、人々の願いを叶えることはできない。情欲より生を得ながら、無情無欲と名乗り出る。彼らはもう自分たちがどうやって生まれたのか、忘れたのかもしれない。願いから力を得ながら、願いを唾棄する。それでも神と呼べるのかしら?どうかしらね……」かぐや姫はただ目の前で立ち昇る煙を見つめている。煙々羅の声が次第に遠のいていき、記憶の中の冷たい声だけが鳴り響く。【司正】 「彼女を捉え、月の竹林に拘束する。汝は月宮を失望させたのだ、かぐや。日を改めて追放せよ!」【かぐや姫】 「(そうだった、私は自分の務めを果たせなかった。だから罰として、月宮を追われた……罰?今振り返ってみれば、そのおかげで、私はやっと……でも追放された私は、いつか必ず連れ戻される。その時、私はどうすれば……世間の悲哀や歓喜に触れた「心」も、冷たく静寂に支配される月宮に帰れば、もう一度昔の形を取り戻せるの?)」煙々羅はまだ語り続けているが、その声は優しくなった。【煙々羅】 「……彼らには「虚飾」という言葉がふさわしいのかもしれないわね。そしてそんな虚飾に満ちた神々ではなくて……月には、真の月宮の神が存在しているという可能性はないかしら?月はこんなにも純潔で綺麗なんだもの。偽善的な「神」に使われるだけなんて、もったいなさすぎるわ。」冷たく真っ白な記憶に、似つかわしくない一片の闇が溶け込んだ。慈しみ溢れる優しい声が響き出す……「お願い、彼らを助けて、ここに囚われている……を助けて……どうか……どうか耐えてください。月宮の姫たるあなたは、偽りの民の希望ではなく、この月の希望なのです。」」【かぐや姫】 「(私が「希望」……?でもみんなの願いを集めることしかできない私に、一体何ができるのでしょう……月宮で唯一「心」を持つ私ですら、自分の願いを見つけ出せずにいる。)」過去にも同じような問いかけをしたことがあったのか、記憶の中の声が彼女に答えを与えてくれた。「誰かになる必要はない。あなたは月でただ一人のかぐや姫、それで十分。この荒んだ世界では、色は見えない。でもかぐや、私の目に映るあなたは、昔からこの純白の中で一番絢爛な色彩だ。ここから離れて、もっとたくさんの色に触れて。そして……」記憶の中の声は弱くなっていく。すぐに懐かしい倦怠感に襲われた。【かぐや姫】 「(そのあと、私は現世にやって来て、長い間眠っていた。記憶の中の月宮と月の暗面、本当の闇は一体どっち?無垢に見える月は薄暗くて、純白の礎の下は私欲や虚飾でいっぱい。己を神だと嘯く月人は、死への一本道を突き進むだけ……彼らの唾棄する凡人と、一体どこが違うのでしょう?あなたは……私を「希望」と呼ぶけれど、私は一体どうすればいいのでしょう?もしここを後にして、再びあの空白の中に戻ったら、私は……)」五里霧中に追い込まれたかぐや姫が、突然声を出し、煙々羅の語りを遮った。【かぐや姫】 「月宮の神は……実在する。」月の暗面から聞こえる優しい声は次第に消え、最後はため息と化した。【かぐや姫】 「でも、月宮の神々はもう……」かぐや姫は少し恍惚とした表情になり、困惑した目をしている。【煙々羅】 「そうね、清く美しい月には、きっと本当の神がいるわね。神の眼差しは、もう優しい月光に紛れ込んで、空から人の世にやって来ているのかもしれないわね。……今は人々の言葉に耳を傾け、全ての小さな願いに心を打たれているかも。」【聆海金魚姫】 「かぐや姫?どうしたの…?」【かぐや姫】 「え?私……どうして?」世界が霞んでいると訝り、顔を触ってみて、かぐや姫はようやく自分が泣いていることに気がついた。【かぐや姫】 「どうして?あれ?私、どうして……ううん、なんでもないの!でも、あれ……あれ、おかしいな、涙が止まらない…」【聆海金魚姫】 「何か思い出したの?」【かぐや姫】 「ううん、私はただ……一人で月宮に取り残されるところを想像して、悲しくなっただけ。どうして?」【聆海金魚姫】 「心配しないで、私たちがそばにいるよ。」【かぐや姫】 「うん、そうね。」かぐや姫が泣き出したことで、皆は控え目にお喋りしたあと、早めに話を切り上げ、各々の部屋に帰って休むことにした。心配そうな顔の金魚姫と別れたあと、かぐや姫はいつも黙って彼女たちの話を聞いている荒に呼び止められた。【荒】 「一番重要なのは、君が誰であるかではなく、君が何を選択するかだ。」その一言を言い終えると、神使は去った。【かぐや姫】 「私の……選択。」かぐや姫は空を見上げた。満月の日が日に日に近づく。記憶が鮮明になるにつれて、彼女は悟った。帰る日が、もうすぐ訪れると。月光が降り注ぎ、ため息だけが聞こえる。 |
第三節
第三節ストーリー |
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静まり返った部屋にかすかな香りが漂う。聆海金魚姫は腕で頭を支えながら、お香作りに集中するかぐや姫を眺める。【聆海金魚姫】 「かぐや姫、本当に大丈夫なの?」【かぐや姫】 「うん、平気。私にもよく分からないの。どうして昨日、物語を聞いた後に泣いてしまったのか。見て、平気どころか、私たちが一緒に作ったお香が、もうすぐ完成する。」【聆海金魚姫】 「あなたがお香作りも上手だなんて、知らなかった。あ、そういえば、このお香に名前はあるの?」【かぐや姫】 「私も分からないの……ただ、お香を作りたいと思った瞬間、当たり前のように頭に浮かんだの。(まるで……私は生まれた時からこのお香の作り方を知っているかのように。)」【聆海金魚姫】 「へえ!そうだったんだ。」【かぐや姫】 「…………あの……金魚姫は……本当に、香道大会に付き合ってくれるの?」【聆海金魚姫】 「何を言ってるのよ?もちろん……」【かぐや姫】 「私は大丈夫。ここに来てくれただけで、私はもう嬉しいの。だから、無理して笑わなくてもいいよ。ここにいるのは私たち二人だけ。少しでもいいから、ちょっとだけ休んでみて。二人きりの時は、もう少しわがままになって。」【聆海金魚姫】 「かぐや姫、あなたは……」聆海金魚姫はそっとお香を嗅いで、少し恍惚とした表情になった。【聆海金魚姫】 「私は大丈夫よ。……「わがまま」?どうしてかな、このお香を嗅ぐと、昔のことを思い出す。」彼女の弱々しい声は、すぐ香りに溶け込んだ。窓の外、明るい月光に照らされ、竹林が楼閣の地面に影を落としている。【聆海金魚姫】 「はは……振り返ってみると、昔の私は本当にわがままだったな。世界中にわがままを押し付けてた。あとで分かったの、皆は私に気を使っていただけだったって。あなたもそう……」手の動きを止め、立ち上がったかぐや姫は聆海金魚姫のそばに座り直し、優しく彼女の手を握って、静かに彼女の言葉の続きを待つ。【聆海金魚姫】 「私は海に出るよ。なすべきことがあるから。」【かぐや姫】 「「あなたのなすべきこと」……?」【聆海金魚姫】 「うん。昔、私はいつも外ばかり見ていた。でも後になって、ようやく気づいたの……遥かな世界の果てを征服するより、責任を果たてし、周りの人たちの「世界」を支えるほうが、もっと大事なんだって。それこそが、「英雄」のなすべきこと。その……私は彼みたいな英雄じゃないけど、それでも試してみたいの。うう、自分でいうのはちょっと恥ずかしいけど……時々思うの、それが私の使命や存在意義かもしれないって。」【かぐや姫】 「(「使命」……金魚姫の使命が荒川を守ることなら、私の使命は一体何?月宮には、私の使命があるの?あの声が言ったように、私が月宮の「希望」なのだとしたら、あの時月宮を離れた私は、果たして自分の使命を果たせたの?あそこの、あの月の民……彼らの存在は、悲しすぎる。空に浮かぶ月は、私に何を期待しているの?)」【聆海金魚姫】 「かぐや姫……私がさっき話したこと、単純だと思う?」【かぐや姫】 「まさか!私はわかってる。単純で優しいからこそ、金魚姫は金魚姫なんだって。それに、金魚姫は自分が思っているよりも勇気がある。だから、あまり自分を責めないで。あなたが海に出る日には、お見送りさせてね。もし泣いても、みんなには内緒にするから。」【聆海金魚姫】 「泣いたりなんか…………う、こほん、泣いたりしないわ。」【かぐや姫】 「うん、知ってる。」【聆海金魚姫】 「(しばらく黙っていた)かぐや姫、ありがとう。」ゆっくりと体を伏せた彼女は、無言で揺らめく灯りを眺める。彼女の目に映る灯りは、星海と見間違えるほど美しい。風が竹林を駆け抜け、サァーッと葉が揺れる。竹の影に囲まれた人物が、月を見上げる。【大天狗】 「このお香の匂い、懐かしいな。」月を見詰める彼の目に、迷いの色が滲む。 |
第四節
第四節ストーリー |
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香道大会はまだまだ続く。無限岳の山頂に白い煙が立ち込め、まるで極楽浄土のように美しい。崖に立つかぐや姫は月を見上げ、人間界の友達に別れを告げる言葉を考えあぐねる。かぐや姫の後ろから、懐かしい声が聞こえる。【煙々羅】 「このまま悲しみに浸り続けると、余計みんなに心配をかけるわよ?」【かぐや姫】 「煙々羅……ごめんなさい、みんなに心配をかけるつもりはないの。」【煙々羅】 「馬鹿ね。みんな心配しているのに、どうして謝るの?もう、せっかく月がこんなに美しいのに、そんな水臭いことばっかり言ってると白けちゃうわよ。どうしたの?あなたの…あなたの知っていることを、思い出したの?」【かぐや姫】 「あなたはいつも、なんでも知ってる。でも私は……私自身のことが、まだよく分からないの。でもあなたの物語のおかげで、大切なことを思い出した。煙々羅、とにかく、ありがとう。」真剣な態度のかぐや姫の頬を指で突いて、煙々羅は満足したように呆然としたかぐや姫を眺める。【煙々羅】 「何だか私たちが出会った時と似ているわね。あの時も、あなたは黙り込んで、一人で竹林の中でぼうっと月を見上げてた。かぐや姫、あなたは何を考えているの?」【かぐや姫】 「私はただ……別れの時が来た気がするの。」【煙々羅】 「……あら。どうしても行かなきゃだめなの?」【かぐや姫】 「月と、あそこにいるみんなが、私を呼んでるの。私がすべきことは、あそこにある。たくさんのことを思い出したの。月宮、月の民、因幡。」ぽつりぽつりと言葉を紡ぐかぐや姫を、煙々羅は横槍を入れることなく、根気よく待っている。【かぐや姫】 「あの冷たい世界には、私の過去と責任が隠されてる。私の誕生の理由、私の存在意義、私の……私の居場所は、全部あそこにあるの。あそこの人々のためにも、私の「心」を高鳴らせてくれたあの人のためにも、私は帰らなきゃいけない。……金魚姫みたいに、私も勇気を出して使命に向き合わなくちゃ。勇敢で健気な彼女に、私も負けていられない……」【煙々羅】 「そう?それじゃ、かぐや姫、教えて。どうしてあなたの笑顔は、まるで泣いてるみたいなの?さっきの言葉、本当にそう思ってる?……それともただ私と、あなた自分を説得するためだけの言葉?あなたはどうしたいの?」【かぐや姫】 「私は……」なかなか見ることのない真剣な様子の煙々羅に、かぐや姫は緊張を抑えきれず服の裾をいじり始めた。【煙々羅】 「月での生活は、本当に物語と同じなの?どうしてあなたは、そんなひどい場所に帰ろうとしてるの?」【かぐや姫】 「だって……だってあそこは、私の故郷なの。私はあそこで生まれた。みんなの願いを集めるために、みんなを支えるために生まれた……私は月宮の姫だから。私がいなければ、みんな祈念の力を手に入れることができなくなって、月宮は……」【煙々羅】 「……かぐや姫!!!」言葉は遮られたが、俯いたままのかぐや姫に煙々羅を直視する勇気はなかった。【煙々羅】 「あなたはそう教えられてきたのかもしれない。あるいはあなたの優しさが、考えることを諦めさせたのかもしれない。でもね……かぐや姫、「理由」のために生まれた人なんていないの。その逆で、私たちは誕生してから、「理由」を探し始めるのよ。あなたは自分の人生を手に入れるべきなの。あなたの判断を尊重する。ここに残っても、帰っても、あなたの意志である限り文句は言わない。でも、あなたが後悔しないことを祈っているわ。仮に出ていくと決めても、別れを告げる時はあなたの笑顔が見たい。」【かぐや姫】 「私は……私……もう少し考えさせて……」俯いた彼女は頭を上げ、目を赤くして目の前の煙々羅に目線を向ける。【かぐや姫】 「煙々羅、まだみんなには秘密にしてくれる?みんなせっかくお祭りを楽しんでるのに、心配をかけたくないの。」【煙々羅】 「いいわ、ただ一つだけ覚えておいてね。平安京はあなたの居場所よ。あなたが出ていくと決めても、ここに残ると決めても、それだけは変わらないから。」 |
第五節
第五節ストーリー |
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近くの竹林の中、誰かが足を止め、息を殺してさっきの会話を聞いていたようだ。【山兔】 「かぐや姫ちゃん、最近ずっと悩んでるみたい……でも孟婆ちゃんは冥府の用事が忙しくて来れないみたい。そうじゃなかったら彼女のために孟婆茶を作ることもできるのに!孟婆茶を飲んだら絶対に悩みを忘れられるのになぁ。」【桃の精】 「忘れるのは悩みだけとちゃうけどな……そやけどまあ、かぐや姫を喜ばせる方法を考えましょか。ふっ、かぐや姫はうまく誤魔化せたと思っとるんやろな。あんな無理に作った笑顔、ちっともかぐや姫らしくあらへんのに。」【萤草】 「私たちの贈り物を受け取って、喜んでくれるといいな……」【山兔】 「ちょっと、金魚姫ちゃん?サボっちゃだめだよ?」考え事をしていた聆海金魚姫は、急に呼ばれて驚いた。【聆海金魚姫】 「ごめん、考え事してた。贈り物は、ちゃんと用意するわ。でも他の用事があるから、ちょっと失礼。また後で合流する。」人気のない片隅で、聆海金魚姫は荒を見つけた。【聆海金魚姫】 「見つけた、ここにいたのね。」【荒】 「…………」【聆海金魚姫】 「突然だけど……お願いがある。」聆海金魚姫の目には、焦りの色が見える。【荒】 「言ってみろ。」【聆海金魚姫】 「今の私には分かる、あなたはすごい人だって。……そして分かってる、私が今から言うことは、とてもわがままなこと。お願い、かぐや姫を助けて。」聆海金魚姫の握り締めた拳が、小振りに震えている。一方、荒はただ彼女の次の言葉を待っている。【聆海金魚姫】 「かぐや姫は、あの冷たい月宮に帰るかもしれない。煙々羅が月宮の伝説について話したのは、ただの偶然じゃない。あそこは……かぐや姫の「故郷」。そうだとしても、彼女はあんな場所に帰るべきじゃない。彼女にふさわしいのは、平安京でもっとたくさんの優しい人たちに出会って、もっとたくさんの面白いことに出会う日々。氷のように冷たい表情は、かぐや姫に似合わない。彼女は色とりどりの世界で、屈託のない笑顔を咲かせるべきなの。ううん……正確にいうと、彼女が月宮みたいな場所に帰るなんて、私は嫌。全部私の一方的な願いかもしれない。こんな風に考えるのは、かぐや姫の中に、かつて漆黒の悪夢の中で頭を抱えて号泣していた「金魚姫」の姿を見出しただけなのかもしれない。それでも……「金魚姫」の失った笑顔は、まだかぐや姫の中に残っているかもしれない。この前、彼女に自分の気持ちを打ち明けた。でも、私は間違ったことを言ってしまった……ううん、違う、あの言葉自体は間違ってない。でもあの時、言うべきじゃなかった。私は何も知らないくせに、かぐや姫に「己のなすべきこと」なんて嘯いた…それがあなたに会いに来た理由。もうすれ違ったりしたくない……彼女を失いたくない。」彼女の言うように、いつもわがままだった女の子は、「頼もしい大人」の見た目で迷子になると、泣きながらただ見つけてもらうのを待っているのかもしれない。【聆海金魚姫】 「私にできることは全部やってみる。でも…………自分が無力でちっぽけな存在だってことはとっくに理解した。私ではどうにもならないこともある。己の無力さを悔やみながら、あなたに頼むしかない……少しだけでもいいから、彼女を喜ばせてあげたい、彼女が笑い続けられるように。お、お願い、彼女を助けて。」聆海金魚姫は髪の毛で赤くなった目を隠そうとする。その肩はしきりに震えている。【荒】 「約束してもいい。」【聆海金魚姫】 「?!」【荒】 「ただし前提として。彼女自身が、ここに残ることを選ばなければならない。選択をするのは、私でも君でもない。彼女を助けるのは、彼女が選択した後だ。」【聆海金魚姫】 「わかった。ありがとう……ありがとう!」聆海金魚姫はすぐに去った。考えを打ち明けたあと、彼女の信念はもっと揺るぎのないものになったようだ。【煙々羅】 「彼女が頼みに来ることは、とっくに予想できてたんでしょう。あなたが手を貸そうと思っていなければ、あの子にあなたを見つけることはできなかった。そうでしょ?もとい、あなたがここに現れたこと、それ自体がもうこの先起きることを証明しているわね。」【荒】 「……そうではない。」【煙々羅】 「ある意味、これも神使様が彼女たち二人に与えた試練なの?もし金魚姫が己の過去や心の底の無力感に縛られたまま、偽りの自分から脱出できていなければ……彼女はここに来ないわね。そしてかぐや姫の運命は、一体どうなるのかしら……」【荒】 「これは、とっくに決まっていたことだ。」【煙々羅】 「ふうん?神使様は本当にそう思ってるの?」【荒】 「…………」荒は突然消えた。遠くの聆海金魚姫の後ろ姿を眺め、煙々羅はくすっと笑った。【煙々羅】 「あらあら、これが神使様の優しさなのかしら?金魚姫、かぐや姫、成長の途中には様々な困難が立ちはだかっているわよ。悲しい別れや、他人を道具としか思っていない偽善の神。あなたたちの力ではどうにもならないことが、必ずある。でも、あなたたちが知っているかどうかは別として…あなたたち二人は、間違いなくみんなに愛されているわ。少なくとも、私は、あなたたちの笑顔が好き。」 |
第六節
第六節ストーリー |
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【月の民】 「司正様、かぐや姫様は追放される前に、何度も月の竹林に行かれ……月の境目を越え、月の暗面に行こうと試みていたことが判明しました。」【司正】 「全て知っている。だがあの時、彼女の力はまだ覚醒していなかった。例え異常に気づいたとしても、何の意味もない。だからこそ、私は彼女を追放できた。」【月の民】 「かぐや姫様を追放なさったことは……本当に正しい選択でしょうか?」【司正】 「彼女は成長し始めた。前回月姫の招いた力が覚醒したことにより、彼女はもう月の羽衣の洗礼を拒めるようになった。彼女を人間界に追放してはじめて、彼女が力を取り戻すことを阻止できる。」司正は振り返って月宮を見定める。長い時間が経ったが、月宮の建物にはまだあの災害の痕跡が残っている。そしてかぐや姫を失った月宮は、目に見えるほどの速度で衰えていった。【司正】 「月の姫を追放したことに対し、重い対価を払ったことは事実だ。月相は長い間揺らめき、ようやく落ち着いた。通常通り下界に降りて祈念の力を集めることができず、多くの月の民が帰らぬ人となった。今度は必ずかぐや姫を連れ戻す。」【月の民】 「かぐや姫様が拒否された場合は、いかがいたしましょうか。」【司正】 「彼女は必ず帰ってくる……月から生まれた彼女は、月の召喚を断れない。それに、誕生してからずっと、彼女はそのように教えられてきた。そして……人間界風に言うと、彼女は優しい子だ。彼女は善良で優しく、己の故郷が月の暗面に呑み込まれるのを黙って見過ごすことはできない。彼女だけが持つ「心」は、月宮の希望であり、彼女の弱点でもある。もし彼女が本当に断るなら、以前のように……射殺す。」【月の民】 「しかし万が一、かぐや姫様が亡くなられたら……」【司正】 「彼女は死なない。今の我々の力では、深手を負わせることしかできないだろう。あの「心」が彼女に与えた力は、我々の創造を遥かに超えるものだった。」【月の民】 「はっ。もう一つ、月の暗面のことですが……」【司正】 「どうした?」【月の民】 「月の境目付近の侵食はまだ続いております。もし祈念の力が補充できなければ、恐らく…………月宮は持ちこたえられないでしょう。そして月宮の火が消える時……真の月隕が訪れると思われます。」【司正】 「分かった。」祈念の力を掌に集め、司正は呟いた。【司正】 「満月の時は間もなく訪れる。」天上の月に限りなく近い無限岳の山頂で、少女が扉を叩く音は風に遮られる。【かぐや姫】 「金魚姫、どうして外に立っているの?何かあったの?早く中に……」【聆海金魚姫】 「私は……ううん、なんでもない。」【かぐや姫】 「お香はもう出来たよ、試してみない?」【聆海金魚姫】 「え?なに?うん、いいよ。」共に座った二人は、昇っていく煙を眺める。誰も口を開かなかった。【聆海金魚姫】 「私……私が海に出る日が決まった。ちょうど新年の日。その時は見送りに来てね。……私たち、約束したでしょ。」【かぐや姫】 「うん。」【聆海金魚姫】 「約束、破らないでね。」【かぐや姫】 「そんなことしないよ。」【聆海金魚姫】 「…………」【かぐや姫】 「どうしたの?」【聆海金魚姫】 「……ゆ、指切り。」【かぐや姫】 「えっ?いいよ。」金魚姫は小指を出し、かぐや姫の小指とからみ合わせ、上下にゆらす。【聆海金魚姫】 「指切りげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます。」【かぐや姫】 「嘘ついたら、針千本飲ます。」【金魚姫】 「もう!私の話はもういいでしょ!私もみんなの話が聞きたい……かぐや姫かぐや姫、あなたの将来の夢は?」【かぐや姫】 「え?私?」【金魚姫】 「そうだよ、いつか世界征服を果たす金魚姫の友達なら、かっこいい夢を持っててくれなきゃ。」【かぐや姫】 「でも夢は口にしても叶うとは……うっ、痛っ、扇子で頭を叩くのはやめて。でも……私は目覚めたあと、以前の記憶を全て失ったから、夢なんて……考えたこともなかった。」【金魚姫】 「もう、仕方ない、特別に今はこのままでも許してあげる。でも今後大きな目標とか、やりたいことができたら、一番最初に金魚姫様に教えてね!」【かぐや姫】 「「金魚姫様」って……」【金魚姫】 「あなたは臆病な姫だから、私が起こしてあげないと、夢を追い求める途中で、また竹の中で眠ってしまうかもね。あなたを呼び起こす役目は、私に任せて。」【かぐや姫】 「うん、わかった。」【金魚姫】 「じゃ指きりするよ!指切りげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます!」【かぐや姫】 「「針千本飲ます」?恐ろしい罰、痛そう。」【聆海金魚姫】 「これは以前オオバ、もとい、あの人に教えられた。恐ろしい罰が待ってるから、指切りする人は絶対に嘘をついちゃだめなの。」【かぐや姫】 「うん、安心して、約束する。」金魚姫はまだ何か言いたい様子だが、それはとても言いにくいことのようだ。長く躊躇したあげく、彼女は元気なく机に伏せた。金魚姫が、煙越しにかぐや姫を見つめる。時折珍しく子供っぽくなって、かぐや姫の存在を確かめるように彼女の名前を呼ぶ。【聆海金魚姫】 「かぐや姫。」【かぐや姫】 「うん。」【聆海金魚姫】 「かぐや……」【かぐや姫】 「ここにいるよ。」【聆海金魚姫】 「かぐやちゃん?」【かぐや姫】 「聞こえてるよ。」【聆海金魚姫】 「……臆病姫。」【かぐや姫】 「その呼び方は久しぶりね。」【聆海金魚姫】 「かぐや姫、あなた……平安京は好き?」【かぐや姫】 「どうしてそんなこと聞くの?もちろん好きよ。でも一番好きなのは、やっぱり平安京のみんな。」【聆海金魚姫】 「じゃ、約束して。私が海から帰ってくる時、岸辺で待っていてくれるって。」【かぐや姫】 「今日の金魚姫は、昔みたいにわがまま……」【聆海金魚姫】 「あなたが言ったのよ。あなたの前なら少しわがままになってもいいって。かぐや姫、私は出ていくことを選んだ理由は、私がそうしたいから、そうすべきだから。誰かに言われたからじゃない、私が選んだの。でも……あれは、あなたがしなければいけないことじゃない。苦しみの中に飛び込むことは、決して聖なる犠牲なんかじゃない!もし選択の余地があるなら、私は大人になりたくないかもしれない……ううん、違う、そうじゃない!その……ほら……自分を愛してくれる人々に、屈託のない笑顔を見せることは罪なんかじゃない!あなたが言ってくれたのよ、「あまり自分を責めないで」って。だからあなたも……」【かぐや姫】 「分かった。約束する、あなたが帰ってくる時、絶対に迎えに行く。私だけじゃなくて、女子会のみんなも。」【聆海金魚姫】 「約束ね。」金魚姫を見送った後、かぐや姫は扉にもたれかかり、空に浮かぶ月を見上げる。」【かぐや姫】 「金魚姫、あなたの言いたいことは分かってる。でも、あなたも言ったように、「私がなすべきこと」は…私は月宮で生まれた。無情無欲の生活を送っているけれど、あそこの……月宮の人々には、養ってもらった恩がある。あなたが私の気持ちを知ったら、きっと怒る。「希望」……生まれたときからそんな使命を与えられ、その後彼女から新しい期待を受け取った……やっぱり私は、もう少し頑張ってみたい。私は多くの人々の願いを耳にした。でも周りの月の民は心や欲を持たない。願いを手に入れたことすらないのに、彼らは願いを唾棄する。私は月宮の姫、月宮の「希望」。例え彼らの行いが全て間違いだったとしても、死の道を辿るのを、私は見過ごすわけにはいかない。……空に浮かぶ麗しき月よ、あなたは私の選択に賛成してくれる?それとも、私の甘さを指摘する?どちらにせよ、私は……」 |
第七節
第七節ストーリー |
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かぐや姫は別れすら告げずに出ていった。【かぐや姫】 「深い眠りから目覚め、突然平安京に現れた私には、こうして去るのがふさわしい。みんな……さようなら。いつも優しくしてくれて、ありがとう。」竹林の中から懐かしい笛音が聞こえてきて、かぐや姫は驚いた。笛音のする方向に目を向けてみても、笛を吹く人の姿は見えない。【かぐや姫】 「あなたも私の招待に応じて、ここに来てくれたのね……よかった、これであなたにお礼を伝えて……お別れをすることができる。竹林の中で笛音に呼び起こされたのが、まるで昨日のことみたい。あの時と比べたら、私も少しは成長した?」笛音に包まれ山道を歩いていると、平安京での様々な出来事がかぐや姫の頭に浮かんでくる。【かぐや姫】 「今度は、私が務めを果たして、みんなを守る。」【金鱼姬】 「女子会も知らないって……かぐや姫はいつも部屋に引きこもってるからよ!かぐや姫はもっと外に出なきゃ、みんなきっと付き合ってくれるよ!」【煙々羅】 「お姫様はまた一人で月を見ているの?」【荒】 「…………」【山兔】 「あはは、かぐや姫も私くらい運動しないと背が伸びないよ!え?運動してるのは蛙さんでしょって?そんな細かいことは気にしないで!」【蛍草】 「綺麗な玉枝だね、私のと交換してみない?」【桃の精】 「月見団子なんて、別に好きやあらへん……でも、どうしても食べてほしいんやったら、一口くらい食べてもええどす。」【御饌津】 「春になったら、一緒に花見に行きましょう。」【日和坊】 「自分で手紙用の紙を作るの?じゃあてるてる坊主をあげる、これがあればいつも晴れだよ!」【煙々羅】 「平安京はあなたの居場所よ。これだけは、あなたが何を選んでも変わらないわ。」【聆海金魚姫】 「いくつか……私がなすべきことがあるの。」【荒】 「一番重要なのは、君が何を選択するかだ。」無言の涙が頬を伝って落ちる。風の叫びに紛れた香道大会の喧騒も、次第に聞こえなくなる。道の終わりが見えてきた。【かぐや姫】 「みんな、ありがとう。私はもう戻ってこれないかもしれない。みんなのこと、平安京の全てを忘れてしまうかもしれないけれど……この大切な思い出は、もう私の「心」に刻み込んだから、再会の時にはきっと思い出せる。ああ……ここにいたいな……はあ、今さら自分の選択に怖気づくなんて…もし金魚姫がここにいたら、また扇子で私の頭を叩くのかな。ううん、そんなことしない。彼女はもう……自分の運命を受け入れた、大人になった。私も負けてられない。因幡兎……ごめんね、またあなたを置き去りにすることになる。だって、これは危険な試み。私が一人で向き合うべき運命だから。戻ってこれるかどうか分からないし、あなたまで危険な目に遭わせるわけにはいかない。幸い、平安京は賑やかだから、きっとまた新しい仲間に出会えるはず。」満月が浮かぶ空に波紋が広がり、その中から月の民が現れた。【月の民】 「かぐや姫様、月にお帰りください。」【かぐや姫】 「ええ、帰るわ。でも、もう月宮の奥に座って、あなたたちのために祈念の力を集めるだけの瑠璃の傀儡の私ではない。」【月の民】 「…………」【かぐや姫】 「私は月宮に生まれ、あなたたちと共に、静かな天上の月で暮らしている。「無情無欲、故に完全無欠」?一度も情に触れたことのない、生まれたときから「欠陥」を理解したことのないあなたたちには、真の無欠を知る由もない。世を渡り、願いを吸い取りながら、衆生を見下ろすだけ。一度も人々の心を理解しなかった。」【月の民】 「かぐや姫様、月にお帰りください。」【かぐや姫】 「あなたたちは反論すらできない。」【月の民】 「かぐや姫様、月にお帰りください。」【かぐや姫】 「もちろん帰るわ。私が月宮の「希望」である以上、私があなたたちを導く。幼い私の世話をしてきた「家族」たち、私の祈念の力を受け取る民よ。よく見なさい、我々の故郷である月は、すでに陰り、牢獄となった。」【月の民】 「かぐや姫様、月にお帰りください。」【かぐや姫】 「…………これでもだめなの?」月の民に渡された羽の衣を拒まなかったかぐや姫は、最後に名残惜しく無限岳に目を向けた。香りが山頂の雪に溶け込み、雪は煙となり、煙は雪となる。消えることのないそれは、無限と名付けられた。【かぐや姫】 「あなたたちも無限を望んでいる……でもこの世に真の無限なんて存在しない。」【月の民】 「かぐや姫様、司正様がお待ちです。」【かぐや姫】 「……分かった。」無限の景色を見納め、かぐや姫は振り返った。しかし遠くから、空を切り裂くような声が聞こえた。【??】 「かぐや…………」 |
寒月の出会い
寒月の出会いストーリー |
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祈念の力がかぐや姫の体に満ち溢れる。優しくて暖かい力は、かぐや姫の傷を癒してもまだ果てしなく湧いてくる。【因幡かぐや姫】 「因幡……私は……そう……これが、あなたがくれた最後の力なの?ありがとう、私は……あなたの期待を裏切らない。」因幡かぐや姫は月の民を見上げた。相変わらず降り注いでくる矢も、もう彼女を傷つけることはできない。背中の翼を羽ばたかせて、因幡かぐや姫は天上の月に向かって飛んでいく。残りの矢を抱えた月の民が、かぐや姫を襲う。【因幡かぐや姫】 「どいて……みんなを傷つけるつもりはないの、私はただ……司正様と話がしたいだけ!待って!」かぐや姫は目を閉じ、力いっぱい羽ばたいたが、それでも際限なく現れる月の民を突破することができない。無情無欲の者には、自分の死すら無に等しい。自身の危険を顧みない月の民が、次々とかぐや姫にぶつかってくる。しかし想像していた痛みはなかった。目を開けると、妖力でできた魚尾が代わりに攻撃を受け止めていた。【聆海金魚姫】 「かぐや……!!大丈夫!!?」【因幡かぐや姫】 「金魚姫……ありがとう、私は大丈夫。みんな……」無限岳の崖では、皆迎撃の構えを取り、月の民に攻撃を仕掛けている。【因幡かぐや姫】 「待って!これは私の問題、みんなを巻き込むわけには……」【煙々羅】 「今さら何を言ってるの?あなたと友達になった時から、私たちはもう「あなたの問題」の一部でしょう?それに、こういう時に水臭いことを言ったり、謝ったりなんかしたら、私だけじゃなくて、金魚姫も怒るわよ?」【因幡かぐや姫】 「ごめん……あ、違う、ごめん、私はただ…… |
」【聆海金魚姫】 「かぐや姫、月の上に、まだやるべきことが残ってるんでしょ?行きなさい!周りは心配しなくていいから!」【因幡かぐや姫】 「金魚姫……」【聆海金魚姫】 「私たちの約束を忘れないで!これが終わったら、港であなたを待ってるから!あなたが見送りに来ないなら、私も海に出ないから!」【因幡かぐや姫】 「うん、必ず戻ってくる。」妖力でできた波が因幡かぐや姫を前へ押し出し、煙が彼女を連れて月の民の包囲網を突破した。天に向かう途中では、星が降り注ぎ、襲ってくる月の民を因幡かぐや姫の代わりに止めてくれた。仲間たちに助けられ、因幡かぐや姫は星夜の中にある月宮に向かって飛んでいく。【煙々羅】 「まっすぐ月宮に向かって飛んでいったね。あら、この姿になっても、あなたはまだ昔の甘えん坊の金魚姫のままなのね。」【聆海金魚姫】 「……ち、違う!さっきはただ……彼女を安心させるために、ああ言っただけ。」【煙々羅】 「でも「あなたが見送りに来ないなら、私も海に出ないから」っていうのはあなたの本音でしょう。」【聆海金魚姫】 「……(少し黙った後、近くの月の民に向かっていき、戦い始めた。)」【煙々羅】 「うふふ、本当に素直じゃないわね。そしてもう一人は……」煙々羅は側に立っている荒に目を向けた。襲ってくる月の民を目の前にしても、彼は相変わらず冷たい表情をしている。【煙々羅】 「こちらの素直じゃない神使様に、一つ聞きたいことがあります。満月の夜、夜空は月に奪われ、星を見ることはできない。でも今夜は珍しい星月夜。満天の星に、何か心当たりはないですか?」【荒】 「…………彼女が選択した、それを助けたまでだ。それに、私も好きではないのだ。月宮を占拠し、元の住民を追放して、新たに独立した……」彼が手を軽く振ると、襲ってきた月の民は一瞬で撃退された。【荒】 「……偽りの神が。」【煙々羅】 「満月なのに、月の民の力はこんなにも弱い……」【荒】 「星月は同じ空を分け合い、力をも分け合っている。月隕の相は星の軌跡に影響できるが、星もまた月華に影響を与えることができる。ふん、こんなもの余興に過ぎない。」【煙々羅】 「なんだか意味ありげに聞こえるわね?神使様は過去に何かあったのかしら?」【荒】 「何でもない。」無限岳の崖での戦闘はまだ続いている。月の民は次から次へと現れる。戦っている聆海金魚姫と煙々羅は背中を預け合い、周りの敵を睨んでいる。【聆海金魚姫】 「煙々羅……あなたに、お礼が言いたい。あなたがいなければ、私が月宮の伝説を知ることはなかった。かぐや姫とずっとすれ違ったままだったかも……」【煙々羅】 「ふふ、感謝の気持ちは受け取るわ。でもあなたが心配していることは、きっと起きなかったと思うわ。金魚姫ちゃん、あの子との友情を疑ったりしないで。」今だってそう。あの子が月宮に帰ることになった経緯を知らなくても、あなたはあの子の味方をする。そうでしょ?【聆海金魚姫】 「私は……ただ……え?」【煙々羅】 「恥しがってるの?可愛いわね。」【聆海金魚姫】 「ううん、違うの、さっき……遠くでもう一つの影が、月宮に向かって飛んで行ったのを見た気がして。あそこは……かぐや姫よりも月宮に近い……」【煙々羅】 「あら?もしかして……」羽ばたきするたびに、月宮に積もった埃が舞う。ある人影が、空からゆっくりと降りてきた。【大天狗】 「ここが……月宮か?あの口うるさい神の言葉が正しければ、ここにあるはずだ……黒晴明様と雪女に隠れて、一人で香道大会に潜り込んだ努力が報われた。我はついに月宮に入り込む機会を手に入れたのだ。しかし、ここの気配はおかしい。なぜ人の住む気配すら感じられない?誰だ?」月宮を守る月の民が大天狗に攻撃を仕掛けた。戦いの音で人が集まることを恐れ、大天狗は風刃で包囲を突破し正殿を後にした。【大天狗】 「随分廃れているな。道理で一族は月宮から引っ越したわけだ。さっきの連中は人間にも、妖怪にも、神にも見えない。強いて言うなら彷徨う亡霊だろう。ふん、遠くからは神聖な場所に見えるが、こんな住民が住んでいるのか。あまりにも昔のことだから、一族の痕跡は見当たらないな……ちっ、また骨折り損のくたびれ儲けか?」死のような静寂に包まれる月宮に、突然笛音が響いた。美しい調べだが、広々とした月宮では不気味でしかない。笛音のする方向に向かって月宮から出た大天狗の目に、竹林が映った。【大天狗】 「竹林……なぜ月の上に竹林が?どう考えても普通ではない、気をつけなければ……周囲を彷徨っている他の敵は、放っておこう。」ほんの一瞬、笛音がより鋭くなった。その不愉快な音は、人の神経を逆なでする。【大天狗】 「ふん、下手な演奏だ。」大天狗は竹林の奥に足を踏み入れた。その瞬間、竹林は目標を得たかのように、竹の葉を揺らした。それはまるで満足げなため息のようだった。月の表面に突然風が吹き、竹の葉を飛ばす。その葉は無数の刃の如く前に進む大天狗に襲いかかる。【大天狗】 「罠か?こんなもので我を止めるつもりか?甘い。刃羽の嵐!!!」羽の刃と竹の葉がぶつかり合った瞬間、竹の葉は砕け、煙となって消えた。生い茂る竹林の細道は人が一人通れる程度で、分かれ道はないが、果ても見えない。【大天狗】 「目くらましの術に過ぎぬ。破!!」目を閉じた大天狗は周囲の竹葉の音に耳を傾け、次の瞬間振り返った。生い茂る竹林を一本の羽が通り抜け、竹の上の唯一の黄ばんだ葉に刺さった。周囲に聳える竹は、忽ち煙となって消えた。竹林の本当の様子があらわになった。竹に囲まれた中に、石机が見える。笛音が再び響き出し、あらゆる方向から大天狗を襲う。急な出来事に、大天狗は耳を塞ぎながら、見えぬ刃を打ち落とすべく翼で旋風を引き起こす。跳ね返った刃が大天狗の翼に刺さった。致命傷ではないが、傷口から血が流れる。【大天狗】 「面倒なやつだ。似た芸当は、一度で十分だ!「見ざる、聞かざる、言わざる」と言ったな。もしさっきの幻が「見ざる」だったとすれば、今度は……聞かざるか?ふっ、ならばより大きい音で遮るのはどうだ?」翼が再び嵐を巻き起こす。竹は割れ、石机も吹き飛ばされ、月に轟音が響き渡った。【大天狗】 「大したことはなかったな。ん、これは……?」幻が再び消え去った。同時に砕けた石机も彼の傷も、跡形もなく消えた。【大天狗】 「見ざる、聞かざる……ふん、次は「言わざる」か?しかし、一体誰が隠れてこんな罠を仕掛けた……?どんな意味があるのだろうか。ん?我の声が……」彼の声は口を出た瞬間に消えた。辺りは静まり返っていて、さっきまでの耳をつんざくばかりの轟音も消えた。大天狗は何度も口をパクパクさせたが、全く声を出せなかった。【大天狗】 「(この罠……まさか一族の者が仕掛けたものか?しかしあの笛音は下手すぎる、天狗一族は皆音楽に熟達している。やつは一体……)」「ちょっと待て、それは聞き捨てならない。」大天狗がそう思った時、目の前に誰かが現れた。顔ははっきり見えないが、声だけははっきり聞こえる。【大天狗】 「(お前は……)」月宮は因幡かぐや姫の記憶通り、静かだ。記憶と違うのは、建物が既に神聖な雪のような白色を失い、廃れた感じがする点だ。月宮には戦闘の痕跡があるが、なぜか守護者の月の民の姿はどこにも見当たらない。辺りには禍々しい気配が漂っている。広々とした正殿を通る因幡かぐや姫の足音がやけに大きく聞こえる。そして次の瞬間、もう一つの足音が聞こえた。【司正】 「かぐや、来たか。」【因幡かぐや姫】 「司正様、帰りました。」【司正】 「その姿……」心に俗世の染みがついた上、自ずから純潔の体を捨てたか。あの妖魔に蠱惑されたな……【因幡かぐや姫】 「因幡は妖魔ではありません!」彼女に比べ、神と名乗り、見た目だけは麗しく、中身は傲慢なあなたたちの方が、よっぽど妖魔のようです!【司正】 「月宮と私は、あなたに失望した。」人間界へ追放され、己の使命すら忘れたか?【因幡かぐや姫】 「いいえ、司正様、私は昔の記憶を全て取り戻しました。」私の誕生、月の民、月宮と竹林、そして月姫のことも……あなたが私を追放したことは、罰というよりも、褒美のようです。追放されていなければ、平安京のみんなと出会うこともなかったでしょう。みんなと出会わなければ……私はまだ臆病で困惑し、ただ願いを集めるだけの琉璃の傀儡でいられたかもしれません。【司正】 「無礼者。」【因幡かぐや姫】 「今、私は帰ってきました。連れ戻されたのではなく、みんなに助けられ、自分のやりたいことのために、正々堂々とあなたの前に立っています。月より生まれた私はここを捨てたくありません。だからあなたにお伝えします……月の民が従っていること、あなたに教えられたことは全て、最初から間違っています!」 |
真実の顔
真実の顔ストーリー |
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竹林の奥、静寂が続く。【大天狗】 「(なぜ我の考えが筒抜けに?まさかこれが「言わざる」なのか?しかし……)」「その通りだ、天狗一族の子よ。」人影は竹林の中に溶けていく。大天狗は急いで追いかけるが、次々と生えてくる竹に進路を阻まれた。「私はあなたを知っている。追いかけなくていい、この私は昔の記憶の残像に過ぎない。連中が月宮を占拠してから、この竹林は益々つまらなくなり、話し相手すらいなくなった。久しぶりの遊びに付き合ってくれてありがとう。」【大天狗】 「(待て、行くな!我の封印について……そして我の出身について、何か知らないか……族長は……)」「族長?どの族長のことだ?一族にはたくさん族長がいた……この私も族長だ。封印に関しては、解ける者はいるが、それは私ではないし、この場所にはいない。」【大天狗】 「(この場所にはいない……やはり!さっき出会った連中は、月宮が廃れたあと、ここで新しく生まれた他の種族なのか……最後の質問だ……月宮で、一体何が起きた?)」「連中の遊びは度が過ぎていた。願いを糧としているのに、月の願いは見て見ぬふりをする。その反動として罰を受けたまでだ。」【大天狗】 「(反動……月の暗面か?それが月宮が静まり返っている原因か。これがかぐや姫を取り戻そうと焦っている原因かもしれない。おそらくもう時間がないのだろう。仮にも一族が住んでいた場所なのに、こんなにも落ちぶれてしまうとは。実に無様だ。)」「月宮を救いたいのか?放っておけ。月の光が消える時は、派手に消え、そして落ちるべきなのだ。盛衰の流転を見届ける、それこそ風雅というものだ。」【大天狗】 「(……おかしなやつだ。)」「聞こえている……これは月の事情だ、だから月と月の姫に任せろ。もしかしたら彼女は月の願いを叶え、そして……」【大天狗】 「月の願い?月が自分の意志を持っていると言いたいのか……?声が!「言わざる」は解除されたのか?」竹林を駆け抜ける人影が急に近づいてきて、大天狗に何か言おうとしたが、その声はすでに消え始めていた。「見ているがいい、涙が零れ落ちる時、もしかしたら……」幻影は跡形もなく消えてしまった。大天狗は頭を上げると、まだ竹林の入り口に立っていて、中には一歩も踏み入れていなかったことに気づいた。さっき見たものは、全て幻か。【大天狗】 「どの先祖様かは分からないが、情報をありがとう。そして……うむ……お前の笛音は、本当に耳障りだ。」彼の言葉に不満を覚えたのか、「ドン」と音がして、竹林の中から古い絵巻が飛んできて、大天狗の足元に転がり落ちた。【大天狗】 「…………先祖様の絵、確かに預かった。骨を折った割に、あまり封印に関する情報は手に入らなかった。変な先祖様には出会ったが。いや……最初に気づくべきだった!あの笛音は月宮中に響き渡っていたのに、月の民は誰一人として気づいていない様子だった……我は最初から竹林へと誘導されていたのか!ちっ、目的は彼の絵巻をここから持ち出すことか?まあいい、少なくとも空回りではなかった。」月の暗面の侵食は広がり続けている。幻の世界に入り込んでいた短い時間で、月の民はかなり少なくなった。【大天狗】 「ここはもう天狗一族の縄張りではない。月宮や己の民を救う役目は、月の姫に任せるべきだろう。」竹林の波動を感じる。月の奥に潜む何かも、同時に呼び起こされたようだ。月の暗面の侵食はまだ続いている。その存在はただ、無欠とうぬぼれる月の民が、汚れに侵される光景を傍観している。以前は、月宮はこんな風に静まり返った場所ではなかった。月の光もこんなに冷たいものではなかった。「かぐや……かぐや姫……」誰かが繰り返しかぐや姫の名前を呼んでいる。彼女は何度もその名前を口にした。月で誕生した少女、優しい月の子を呼び続ける。静まり返った月宮の中、自分の願いを聞いてくれるかもしれないのは、この少女だけ…………それはとても悲しくて、同時にとても優しい願い。かつて彼女は置き去りにされ、捨てられた。民は華やかな月宮を立てた。しかし長きに渡り……彼女の願いは、全ての子供たちが幸せであること、彼らが自由で雄大な世界で暮らすこと、ただそれだけだ。涙が雨の如く降り注ぐ。月に霧雨が降り始めた。しかし雨に月の暗面の侵食を止めることが、重ねられてきた罪を償うことができるだろうか。 |
天上の香り
天上の香りストーリー |
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広々とした正殿で、因幡かぐや姫は司正を見つめている。かぐや姫は物心がついた時から、一度も彼の感情の変化を目にしたことがなかった。悲しみも喜びもない、無情無欲。【因幡かぐや姫】 「……月宮は、私の記憶の中よりもずっと廃れています。」【司正】 「あなたのせいだ。」【因幡かぐや姫】 「私を追放したから、月宮は祈念の力を得られなくなったのですか……?でも一番の原因は、あなたにあります、司正様。」【司正】 「私?」【因幡かぐや姫】 「はい。お聞きください。あの「追放の旅」で、私が何を見たのか。月宮には色も、声も、温度も存在しません。ここで暮らす月の民も同じです。しかし現世は違います。あなたたちが掃き溜めと見下す場所は、美しい存在に満ち溢れています。あそこには鮮やかな色や薄暗い色、笑顔や泣き声があり、とても賑やかです。」【司正】 「それがどうした?それゆえ、あそこで暮らす者は皆汚れた身で、苦楽悲喜の輪廻を繰り返し、永遠に解脱できない。」【因幡かぐや姫】 「あなたの仰ることも、確かに存在しているのかもしれません。でもそれが存在するからこそ、彼らは幾度も苦痛を乗り越え、新しい喜びを見つけ出し、手に入れたものを大切にすることができます。それこそが……月の民に欠けている「心」です。」【司正】 「問答無用。俗世の汚れはあなたの目を欺いた。闇に生まれた者が、日の明かりを拝み、目を焼かれてもなお、誇らしく振る舞う。闇夜こそが、我々月の民の居場所だ。」【因幡かぐや姫】 「違います!そう仰るのは、あなたが太陽を恐れ、直視するのを避け、色鮮やかなものに目もくれないからです。月の民は願いを集めるために人の世に入っても、一度も目を開けず、己が糧とする願いを直視しませんでした。天上の月、神の一族という幻に溺れるあなたは、大地に足を踏み入れたことがありますか?願いを見下し、気づくことはなかった。月の民も、地上で暮らす人々と何も違わないということに……どうして夜空だけを見ているのですか?どうして目を開け、周囲や足元を見ることを嫌がるのです?」司正は因幡かぐや姫の言葉に嫌気がさしたようで、祈念の力を集めて彼女に襲いかかった。因幡かぐや姫は全力で避けようとしたが、全ての攻撃を避けることは出来なかった。打たれた彼女は吹き飛ばされ、正殿の真っ白な地面に赤い痕跡を残した。だが次の攻撃は外れた。月宮が激しく揺れ始め、白い楼閣は崩れ去り、その裏の暗く汚いものがあらわになった。【司正】 「これは……月の暗面の侵食だ。いつの間にか、ここまで進んできていたのか。かぐや姫、月宮の姫、月宮の希望よ。どう思うかはあなたの勝手だが、今こそ汝の責任を果たす時だ。祈念の力を捧げ、侵食から月宮を守れ……さもなくば月宮は完全に滅んでしまう。ここはあなたの故郷であり、あなたの誕生の地だ。」【かぐや姫】 「いいえ。その必要はありません。まだお気づきになっていないのですか?華やかな装飾はもう剥がれ落ちました。ここの全ては、とっくに侵食されています。もう、遅いのです……」因幡かぐや姫の言葉を聞いて、司正はその場で立ち尽くした。【司正】 「それがどうした?どうしたというんだ?なぜ大人しく琉璃の人形を演じない?考えなければ、苦しみも生まれない。ただ人々から力を汲み取っていれば、それでいい。大人になれば、あなたは自分の力で月宮の全てを支えることができる。朽ち果てていようが問題ない、一体誰が真実を暴く?我が一族は月で生まれた。ここは我が一族が統治すべきだ。俗世を唾棄して何が悪い?」【因幡かぐや姫】 「いいえ、それは間違っています。そのお考え自体が、もう間違っています。今のお姿こそが、何よりの証拠です、司正様……」彼女の優しい目は悲しみに満ちている。司正の感情の変化が見えない顔に、初めてひびが入った。彼女の瞳の中に、彼は自分の顔を見た……それは月の暗面の侵食に汚された顔だった。【司正】 「は……ははは……私が?私も……ありえない、こんなことはありえない!「無情無欲、故に完全無欠。」感情など、悲喜など、私の体から出ていけ!無欠……ははは……私まで汚れた存在に成り下がってしまったのか?これは……なんと……なんと醜い色だ!」因幡かぐや姫が反応する前に、司正は振り返って正殿の柱で頭を叩き始めた。叩きながら、彼は広がっていく汚れを手で拭おうとした。しかしその努力は全部水泡に帰した…【因幡かぐや姫】 「司正様!」因幡かぐや姫が司正を引き寄せると、彼はすでに意識を失っていた。一族を治める長たる者が、わずかな汚れで動転する……これはもう彼が尊ぶ「無情無欲」ではない。もしかしたら、かぐや姫の力を利用して月宮に永遠の祈念の力を提供すると企んだ時から、彼の心にはすでに貪欲という名のひびが生まれていたのかもしれない。そしてある日、破滅を迎える。【因幡かぐや姫】 「ごめんなさい……侵食はもうここまで来ました……月宮は、救えませんでした。」自分がここで暮らした日々を、自分が「希望」だと告げられた時の喜びを思い出し、悲しみが溢れた。司正が倒れた後、月の暗面の侵食はより一層激しくなった。月の闇が一体どこから来るのか、誰も知らない。押し寄せる汚れは正殿にも広がっている。因幡かぐや姫は倒れた司正を起こしたが、振り返ると逃げ場はもうなかった。【因幡かぐや姫】 「ああ、金魚姫、もう約束は守れないみたい。幸い、月の民の多くは月宮の外にいる。災難から逃れられる……司正様を説得して、みんなを助けるつもりだったけど……やっぱり、私は甘かった。私は誰も救えなかった……あなたには……」因幡かぐや姫は辺りを見回し、ずっと自分を呼び続けている存在に謝った。【因幡かぐや姫】 「ごめんなさい、あなたの願いは、叶えてあげられない。」侵食が広がる。因幡かぐや姫の目は閉じているが、零れ落ちる涙は止められなかった。懐かしい暗闇の中、ある声が聞こえた。とても懐かしい声……それは月姫の声であり、また月姫の声ではない。その声はこう言った。「かぐや、ありがとう。あなたは私の願いを聞いてくれた。」【因幡かぐや姫】 「あなたは……月姫?ううん、これは彼女の声だけど、あなたは彼女じゃない……「願い」?ああ、私の記憶の中で聞こえているのは、あなたが願いごとをする声?あなたは誰なの?」「かぐや姫、月で生まれた、我が子よ……私は、月そのもの。あなたは私の願いを聞き、民を助けてくれた。」【因幡かぐや姫】 「違う、私は何も出来なかった……もう手遅れなの。月の姫でありながら、私はみんなを守れなかった。友達との約束も守れなかった……それに因幡の犠牲は……私……」「それは全て、あなたのせいではなかった。全て、避けられないことだった。月宮の火は消え、外に残された子たちは、いつか生きることを学び、大地を歩くことを学ぶ。」【因幡かぐや姫】 「……もうどうにもならないの?まだ私に何かできる?少しでもいい、みんなの力に、あなたの力になりたい……」「ならば、私のためにお香を焚いて。あなたが作るお香を、あなたが作るべきお香を。」返魂のお香。そのお香を焚く時、魂は返ってくる。「でも、最後にはやはりあなたが選択しなければいけない、我が子よ。」」【因幡かぐや姫】 「選択……私の選択……ああ、分かりました。ありがとう!私のなすべきことが分かった!」因幡かぐや姫は以前香道大会で作ったお香を取り出し、それを焚いた。ゆらゆらと立ち昇る煙が月宮に漂うと、月の暗面の侵食が次第に止まっていった。かつて月の民に吸収された無数の願いがお香の中で再び浮かび上がり、点々と光る灯りは暗闇の夜空を切り裂いた。【因幡かぐや姫】 「この願いは全て、私が連れてきたもの。そして今後は私が保管し、私が返していくべきもの。願いだけじゃない。ここで生まれた民も、火の消えた月宮も、全部私に任せて。私の願いを感じる「心」は、みんなの願いを繋げるために存在してる。」汚れは消えた。侵食に侵された月の民は、一斉に彼らの姫に目を向けた。月の民が長年に渡って汲み取った願い、月の願い、そしてかぐや姫自身の願い……無数の願いが彼女の元に集う。白い光の中、因幡かぐや姫は地面に倒れ込んだ月の民に手を差し伸べた。【月の民】 「…………これほど侵食された我々も、まだ救われるのですか?一度欠陥の生じた琉璃も、まだ無欠の姿に戻ることができるのですか?」【因幡かぐや姫】 「大丈夫。欠陥と無欠は、本来は同じもの。砕けた琉璃も直すことができる。この欠陥は、全て時が残した痕跡……ひびができてはじめて、「心」が生まれる可能性が芽生えるの。」【月の民】 「かぐや姫様……」【因幡かぐや姫】 「生まれた時に心を持たぬことは、あなたたちのせいではない。あなたたちを導くことこそが、私の務め。今は一旦眠って。力を取り戻したら、かつての私のように、俗世での「追放の旅」に出ましょう。何も怖くないわ、月宮の下にあるのは、残酷で美しい世界だから。あそこにはみんなが知らない愛や苦しみ、涙や喜びがある。みんなもきっと好きになる。この「追放の旅」は、私とみんなが、自分の本当の願いを見つけ出し、本当の「人」になるための旅。」人間界に追放された旅の中、何も持っていなかったかぐや姫は、最後にたくさんの宝物を手に入れた。彼女は平安京で出会った、様々な人々を思い出した……笛音が彼女を呼び起こし、波が彼女に辛さを乗り越え成長させ、煙は彼女に選択させ、都の皆は彼女に居場所を与えた。運命に従い無慈悲に巡る星の軌跡にも、優しい顔を見せる時があり、星を通して月宮へと通じる道を彼女に示した。皆がいるから、彼女はここで立って、全てに向き合い、月宮の真の神になることができた。何が起きようと、彼女が愛する人は、彼女を愛する人は、いつも彼女の傍にいる。【因幡かぐや姫】 「安心して、私はみんなのそばにいる。だって、私は月宮の姫、月の「希望」だから。」月の暗面の侵食は止まった。月宮、そして数多の侵食された月の民は、白い煙に吸い込まれ、透き通る「月の蛹」の中に入り込んだ。全てが月の蛹の中に入ると、力を使い果たしたかぐや姫は、地面に倒れた。懐の月の蛹を力強く抱きしめる彼女は、深い眠りに落ち、再び降臨する時を待っている。【かぐや姫】 「あまり眠りたくない……もし目を開けた時に、みんなのことを忘れていたら、大変なことになる。……ううん、大丈夫、そんなことは起こらない。今度は……早く目覚められたら……いいな……だって金魚姫と約束したもの。もし私が現れなかったら……彼女は怒るかもしれない。ねえ、月姫……今の私は、ちゃんとみんなの「希望」になれたかな?」深く眠った月の姫は自分の名残りや過去を全て連れて、空より落ち、星や雲の間を駆け抜ける。星の輝きは彼女の涙を拭い、煙は彼女を正しい方向へ導く。夢現の中で、彼女は懐かしい笛音を聞いた。昔あの竹林の中で聞いた笛音と同じだった。「懐かしい笛音が聞こえた、きっともうすぐ家につく。」そう考えて、かぐや姫は深い眠りに落ちた。こうして月の姫は人の世に落ちた、この残酷で美しい世界に…………懐かしくて暖かい懐の中に。……伝説によると、とある満月の日、人々は月が白い煙に包み込まれる光景を見たらしい。白い煙はゆらゆらと立ち昇り、一度は月を全て包み込んだ。ある人は言った、それは月宮の姫が民を浄化するために焚いた返魂香だと。そのお香を嗅ぐと、魂が蘇り、長生きできる。そんな伝説は、道端で煙管を持つ女性に笑われた。彼女は言った、人に永遠の命を与える返魂香など、この世に存在しないと。その後、伝説を耳にした町人は、皆笑ってこう言う……「此の香祗だ応に天上にのみ有るべし」。しかし、月はもう人の世に落ち、喜怒哀楽の中で生きる衆生の一員となった。運が良ければ、いつか出会えるかもしれない。 |
寒月の帰りストーリー
月下の竹影
月下の竹影ストーリー |
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記憶と約束は時と共に流れゆき、また時によって散りばめられる。月明りを浴びた竹の、疎らな影だけが憶えている…… 「かぐや姫は気が弱すぎるのよ!いつまでもそんな様子じゃ、他の人にいじめられるよ?」金魚姫は腰に手を当て、他人の見様見真似で説教じみたことを言った。 「なら、どうすればいいの?」彼女の話に乗ってあげたかぐや姫は、こう聞いた。 金魚姫は扇子を顎に当てながら暫く考え込むと、自分を指差して、得意気に笑った。 「あなたをいじめる奴がいたら、私に言って!だって私は、世界征服する者だもん!かぐや姫を守ることくらい、私にとっては朝飯前なんだから!」 「ごめんね、私が弱いから……」 「わあ!落ち込まないでよ、かぐや姫のことを悪く言うつもりはないの!!」 金魚姫はよくこんな事を言うが、確かに行動が伴っていた。都で様々な催し物が行われるたびに、肝試しだろうと、夏祭りだろうと、彼女はかぐや姫の手を引いて、いち早く駆け付けた。所謂「危険」が起きた時も、彼女は毎回かぐや姫を庇った。 「金魚姫、大丈夫?本当に凄いね、こんなにたくさんの悪鬼を倒しちゃうなんて……」 「へっへー!そんなの余裕よ!かぐや姫に褒められたら、なんだか痛いのも飛んでっちゃったみたい。」 「そろそろ二人で帰ろう。」 「帰ろっか!まったく、かぐや姫は臆病なんだから。今後私がいなくなったら、一人でどうするのよ……」 「ずっと一緒にいれば、大丈夫だよ……」 少女たちは笑い声と共に去っていった。 無鉄砲に喧嘩に挑む金魚姫の身には、いつも彼女の痛みを和らげ、力を増幅する月明りが纏っていた。彼女が奇襲を受けそうになった瞬間には、いつも玉枝が飛び出し、彼女を守っていた。しかしその事は、竹林のみぞ知る。 「臆病」だと言われ続けた少女は、皆が思うより勇敢なのかもしれない。 |
帰路の躊躇
帰路の躊躇ストーリー |
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私は月の宮殿で目覚めたその日から、少女の姿を保っていた。 司正様が私に放った最初の一言、それは…… 「そなたは月宮の希望だ。」 あの時私はまだ、司正様の言う「希望」が何を意味するのか分からなかった。 心を持つ私が浮世に向かい、祈念の力を手に入れる必要はなかった。長い間一人で冷たい月宮に身を置き、人々が月に捧げた願いをただ聞いていた。 長寿の願い、美貌の願い、財運の願い…… 心を持つ者は皆、月に願いを捧げる。では同じく心を持つ私は、どんな願いを持てば良いのだろう? 司正様が浮世に行った隙を見て、私は独りで月の竹林に向かった。 追放者を罰し、苦痛な記憶の中で輪廻させる竹林が私の目に映ると、忽ち月の宮殿へと変幻した。 私が月宮で過ごした記憶は全て、苦しき輪廻であるのかもしれない。 手の届かない竹林の果てには、決して解かれない封印が微かな光を放っていた。 その瞬間、私が持つ唯一無二の「心」が、初めて動き出した…… |
瑠璃の夢ストーリー
初識
初識ストーリー |
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私がかぐや姫と初めて会ったのは、ある春の夜だった。 金魚姫から彼女の言い伝えを聞いた私は、竹林から生まれたお姫様に好奇心を抱いた。故に私は煙と化し、彼女を観察した。 彼女は一人で水辺に立ち、水中に映る月の影に見とれていた。言い伝え通り、寡黙な子だった。 彼女が月の影を見ている間、私もずっと傍らで彼女を見つめていた。 虫の鳴き声が止む頃、風に吹かれた笹の音が響く中、雲が月を隠した。 私の存在に気づいたのか、彼女は私がいた方向に手を振り、淡い笑みを浮かべた。 あの夜の月は、妙に静謐だった。 |
旧夢
旧夢ストーリー |
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「海に身を投じろ!」「生贄となれ!」 暗く陰湿な夢に再びうなされた。 遠い昔の海辺にあった村が、再度夢に現れた。村に灯りは無く、死のような静寂に包まれた深海へと一直線に堕ちた。 夢の中の海底では、空一面に輝く星がはっきりと見えた。 運命の星の軌跡は、点滅する輝きの中で流れてゆく。 衆生の運命は規定の軌跡に過ぎない。神さえも例外ではない。 しかし星々の間には、月の光が照らし得る隙間がまだ残っている。ともすれば…… |
聆海
聆海ストーリー |
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私は海に出る。それはもう、世界征服の為ではない。 かぐや姫はきっと悲しむだろうな。でも私には成し遂げるべき事がある。 だから、私が旅立つまで、もっと彼女の傍にいてあげてもいいよね? 「かぐや姫に別れを告げる」、そんな日が来るなんて、一度も想像したことなかった……当たり前だった毎日が、こんなにも大切だったとは。 こうして見ると、私の考えは本当に甘かったな。みんなが永遠に私の傍に居てくれるって、当然のように信じていた。本当は、永遠なんてないのにね。 幸いなことに、月の影はいつまでも海に映し出される。 この旅の寂しさを少し紛らわせてくれる。 |
寒月
寒月ストーリー |
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かぐやはずっとこんな冷たい場所で暮らしていたのね。 紛争がなく、戦乱もなく、身寄りのない人もいなければ……感情もない。 人々は長い間月の宮殿に憧れていたけれど、その憧れの対象が実はこんなにも荒れ果てた場所にあるとは知らないでしょうね? 果てしない荒野、降り続ける雪。 かぐや……あなたは今、どこにいるの?新しい友達はできた? 昔より、少しでも楽しく過ごせているかしら? かぐや、寒い夜に空を見上げても、月は見えないのね。 |
凡思
凡思ストーリー |
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「凡人は情に流れ、欲を生み出す。欲求が満たされず、三大無安喩火宅の如し。」 「無情無欲、故に完全無欠。」 司正様は何度も何度も、私にこう教え込んだ。 彼が教える相手は私しかいなかった。何故なら私は、月の宮殿で唯一心を持つ者だったから。 心を持つ故に、無情を求められる。 しかし月宮の外には、余りにも色とりどりの世界が広がっていて、様々な声で賑わっていた。ここに住む人々もみんな、とても優しくて……一度来ると、二度と忘れられなかった。 「かぐや姫!」「かぐや姫。」「かぐや……」色んな声が私の耳元で囁く。 生まれた日から眠っていた心が、激しく動き始めた。この時私ははっきりと分かった。月宮の外にある平安京こそ、私の本当の居場所だと。 |
無心
無心ストーリー |
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かぐや様は再び月の宮殿に抗った。 無数の矢に射抜かれても、穢れた俗世に追放されても、彼女の心を凍らせることは出来ないのだろうか? 彼女が、人々が言う「心」とは、一体何なのだろう。 自分の胸元を軽く叩いたが、冷たく澄んだ瑠璃の音しか伝わってこなかった。 |
過去
過去ストーリー |
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私が追い求める答えは、あの寒月の上にあるのだろうか。 迷える過去の出来事が、時々私の脳裏で繰り返される。 遠い昔はもう手の届かない所にあるようだった。 運命とは……一体どんな形で降臨するのだろう? 天を目指し、満月に足を踏み入れることが、羽ある者の宿命なのかもしれない。 |
「因幡かぐや姫」のCG
メインCG
かぐや姫の記憶①「因幡」
かぐや姫の記憶②「孤独」
かぐや姫の記憶③「ふるさと」
真実の記憶 其の一「初願い」
真実の記憶 其の二「琉璃」
真実の記憶 其の三「映る心」
真実の記憶 其の四「君想い」
真実の羽イベント攻略情報 | |
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月白竹林 |
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