【陰陽師】「彼方の蓮華」ストーリーまとめ
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『陰陽師』の「彼方の蓮華」のストーリー(シナリオ)をまとめて紹介。
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待機の花ストーリー
三途の底
三途の底 |
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三途の川へ向かう途中。【小白】 「セイメイ様、この道の先にあるのが三途の川です。」【晴明】 「ああ、人間界からここに来るのにはかなり苦労した。警戒を怠るな、小白。ここに来たのは、天人の居場所へ行く方法を見つけるためだということを忘れるな。源氏の権力者の話によると、何者かが鬼域で巨大な結界を利用し、天人の居場所を隠しているらしい。その結界の中に入るには、陰界と陽界の隙間を通らなければならない。陰界と陽界の隙間はいくつかある、三途の川もその一つだ。」【小白】 「セイメイ様、小白はなんだか妙な視線を感じます、気味が悪いです。」【晴明】 「ここは陰と陽が交差する場所だ。ここにいるのは、亡くなりはしたがまだ陰界に辿り着いていない存在だ。朽ちた死物が、我々に興味を持つのも不思議ではない。」【小白】 「うう、でも小白は他の理由だと思います、例えば……孤独のせいでしょうか?ここは寒くて、見渡す限り何もありません。荒廃していて、虚しいです。ずっとここで彷徨っていれば、すごく悲しくなると思います。小白はセイメイ様と一緒にいるから、孤独だとは感じませんけど。」【晴明】 「未知の危険が潜んでいるかもしれない、あまり離れるな。」」……三途の川が流れる場所で、夜溟彼岸花は流れてきた彼岸花を拾った。【夜溟彼岸花】 「あら?これはまた珍しいお客様ね。亡霊達が生者の気を感じて興奮している。いいえ、理由は別にあるのかもしれない。あの青い狩衣を着ている人間は、都の陰陽師かしら。ふふ、都の陰陽師はいつも、この陰陽の境目が気になるのね。でも、あの二人の気配は、今まで見てきた陰陽師達とは違うわ。彼らを花海に留まらせることができれば、とても珍しい光景になるかもしれないわね。」【小白】 「セイメイ様、ここを真っ直ぐ進むと三途の川です。」【晴明】 「一見何の変哲もない三途の川だが、実のところ、支流は多数の隠り処へと通じている。」【小白】 「小白は確か、案内人の力を借りずに、三途の川を渡って目的地に着くのはとても困難だと耳にしたことがあります。」【晴明】 「ああ、もう少し進んでみよう。」幽霊が花海から一斉に湧き出し、晴明と小白に襲い掛かった。しかし、次の瞬間には一刀両断され、あっけなく消滅した。【夜溟彼岸花】 「平安京の陰陽師が、わざわざこの僻地へ何の御用ですか?話の続きは、邪魔な奴らを倒してからにしましょう。」【小白】 「亡霊達は変な消え方をしています。まるで誰かの養分になるかのように、煙となって土に入っていきます。まさか……」【晴明】 「君が閻魔大王が言っていた、三途の川に住んでいる妖怪彼岸花だな。陰陽の境目で、生死循環の秩序を乱すのは楽しいか?」【夜溟彼岸花】 「そうだと言ったら、どうするおつもり?夜になると亡霊達は三途の川を渡り、地獄で贖罪し苦しむか、新たな人生に向かって歩み始める。私の花海に留まれば、生前の夢に浸り、今生での心を守ることができる。私の花泥になる、それも幸せなことかもしれないわよ?」【小白】 「でもその者達はあなたの力の一部となり、消えてしまいます。小白はそれがいい結末だとは思いません!」【夜溟彼岸花】 「彼ら皆は喜んでいたわよ?私が最後の願いを叶えてあげたから。あなた、いい目をしているわね。執念の光が見えるわ。私とちょっとした取引をしません?あなたの魂をくれれば、どんな願いでも叶えてあげるわよ?」【小白】 「……近寄らないでください!セイメイ様、早く彼女を止めてください!危険な匂いがします!」【夜溟彼岸花】 「ふふ、私は本気だけれど、このくらいにしておきましょう。わざわざ遠くからいらっしゃったお客様ですもの。お茶でも飲んで、ここに来た目的を教えてくださいな。」花海から骸骨がゆっくりと立ち上がり、茶具を持ってきた。【小白】 「なんだか奇妙な場面ですね……う、このお茶、甘すぎますよ。」【晴明】 「小白、大丈夫か?君は……」【小白】 「すみません、セイメイ様!また人にもらったものを食べてしまいました!ただ、ただ、ただ甘すぎます、舌が痺れるくらいです。」【晴明】 「三途の川は陰陽の境目、ここではよく奇妙なものが誕生すると聞く。」【夜溟彼岸花】 「それは間違いありません。そう……少し前に奇妙なことがあった。「賽の河原」に似た歪んだ空間が、再び三途の川に出現しました。今の三途の川はとても危険です。あなた達は、三途の川を渡りたいのかしら?」【晴明】 「その通りだが……」【夜溟彼岸花】 「三途の川の流向は一つだけではありません、よく未知の地へと流れていきます。あなた達は三途の川をよく知る水先案内人の助けが必要で、私がその案内人みたいね。」【小白】 「ふん、素直に手を貸してくれるとは思えませんけど。」【夜溟彼岸花】 「助けを求めるなら、対価を支払うのが当然ではないかしら?こんな荒れ果てた地で話をしてくれたお礼に、今回はただで案内してあげましょう。」【小白】 「(小声)セイメイ様、大丈夫でしょうか?あの笑顔、何かを企んでるに違いありません。小白のもふもふな尻尾にかけて保証します!」【晴明】 「……」三途の川の岸辺で、夜溟彼岸花が皆を小舟に招いている。【夜溟彼岸花】 「二人はどこに行きたいのかしら?」【晴明】 「鬼域には巨大な結界によって隔絶された地があると、聞いたことはあるか?」【夜溟彼岸花】 「私の知らない地域で、少し厄介だけど、方法がないわけではないわよ。三途の川の流れは遅いけれど、目には見えない危険がたくさん潜んでいます。お気をつけください。川を渡る彷徨える亡霊にぶつかっても、川底から形の無い手が伸びてきても、見ず、聞かず、考えずにいれば、問題はありません。」【小白】 「見ない見ない見ない見ない……セイメイ様、小白は息が苦しいです、もう無理です!」【晴明】 「……息は止めなくていい。」【小白】 「え?何か小白の尻尾を触っています!?くすぐったいです、あはは……セイメイ様、水の中に何かあるようです。水面に映っているのは小白の記憶なのですか?これと、それと、あとあれも……」【夜溟彼岸花】 「あれは走馬灯です、これ以上深入りしないでください。」【晴明】 「落ちた。」【夜溟彼岸花】 「ここで川に落ちると、どこに流されるかわかりませんわ。あらあら、言ってる傍から陰陽師も落ちてしまいました。三途の川の底で待っているのは良い夢かしら、それとも悪夢かしら?」……そこは寒く、景色は三途の川によく似ている。【小白】 「セイメイ様?小白達はどこに来たのでしょう?さっきまで、彼岸花の船に乗っていたはずですが。」【晴明】 「小白は三途の川の水流を見つめていて、形の無い手に引きずり込まれてここに来たんだ。私は小白を追ってきた。」【小白】 「また小白のせいでセイメイ様が危険な目に……」【晴明】 「気にするな、まずは今の状況を把握しよう。」【小白】 「セイメイ様!蛇、蛇です!」闇に潜む蛇の群れが牙を剥き、緑色の目が彼らを見つめ、取り囲んでいる。どういうわけか、虎視眈眈としていた蛇達が退いていく。その時、突如現れた刀が蛇の首を切り落とし、遠くの髑髏侍がゆっくりと目覚めた。【髑髏侍】 「答えろ、お前達はこの夢境の客人か、それとも敵か?」【小白】 「うわ、大きい髑髏!それにすごく威厳のある声です。」【晴明】 「この夢境の主は誰だ?」【髑髏侍】 「三途の川で誕生した、妖怪彼岸花。ここは三途の川の底、彼女の夢境だ。」【餓者髑髏】 「我が名は餓者髑髏、彼女との契約通り、忠誠を捧げ、この寂しい夢境を守る。」餓者髑髏はそう言いながら、骨しかない手を伸ばして、終わりのない夜に火を点した。暖かい火が人を安心させる。 |
彼の選択
彼の選択 |
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【小白】 「餓者髑髏という名前を、小白は何処かで聞いたことが、うう……」【晴明】 「黒無常が教えてくれた冥界の情報の中に、この鬼将軍の話もあったな。」【小白】 「あ、そうですそうです、三途の川の花海を守るおっかない大妖です。」【晴明】 「生前は草木も靡く将軍、不屈の軍隊を率いていた。破竹の勢いで進軍し、鬼神の如く戦場を駆け巡る、負け知らずの軍隊だった。」【餓者髑髏】 「それは全て過去のことだ。」【小白】 「セイメイ様、この鬼将軍は人間だった頃の話をあまりしたくないみたいですね。」【晴明】 「誰だって人に言いたくない事くらいあるさ、将軍もそうなのだろう。 |
触れられたくない過去を思い出してしまうと、人は悔恨の念にかられてしまう。最悪、自分を殺すことになる。」【小白】 「過去ですか……小白もわかる気がします。鬼将軍とは違いますが、小白にも思い出したくない過去があります。なんだか寒くなってきました、小白が冷たい思い出に浸っているせいでしょうか……」【晴明】 「寝るな、小白。」【小白】 「うう……」【餓者髑髏】 「もうすぐ火が消える。夜になると寒さが増して、蛇共がまた集まり、獲物を探しに行く。」【晴明】 「蛇の群れか?我々を敵だと認識していたようだった。」【餓者髑髏】 「あの蛇共は攻撃的だ。躊躇なく自分以外の生物を攻撃する。お前達は運がいい、襲われずに済んだからな。この夢境に来る者は、「彼女」の契約者でなければ、「彼女」の敵だ。蛇共は夢境の敵だ。お前達は何だ?」【晴明】 「我々は三途の川を通って、鬼域にある封鎖された結界に向かうつもりだった。彼岸花が案内人になってくれた。船に乗って三途の川を渡っていた時に、ちょっとした事故でここに落ちてしまった。」餓者髑髏は、何故か彼らをよく観察してから、ようやく口を開いた。【餓者髑髏】 「この夢境は無関係な者は歓迎しない。お前達の取引は既に始まっている。その取引の内容は……蛇をすべて殺すことだ。取引を完了させれば、三途の川から鬼域に向かう流れが見つかるだろう。」【晴明】 「あの蛇達の習性を知っているか?」【餓者髑髏】 「あいつらは決まった巣を持たない。どこから現れてもおかしくはない。今回目覚めてから、山ほど蛇を斬ったが、蛇の数は減らなかった。もっと花が必要だ。すべての命の花を点し、この夢境の守護の力を強める必要がある。そうでなければ、蛇の群れを撃退することはできぬ。」餓者髑髏が刀を抜き、皆を連れて出発した。風にはためく衣のせいか、彼の後ろ姿がより大きく見える。【小白】 「セイメイ様、餓者髑髏は目覚めてからずっと蛇を斬り、花を探す生活を送っていたのでしょうか?なんだか可哀想です。」【晴明】 「彼なりの理由があるのだろう。」【餓者髑髏】 「……それは私がここで生きる意味だ、理由などいらない。」話をしながら、餓者髑髏は土から出てきた蛇を斬った。【小白】 「やっぱり餓者髑髏さんはすごいですよ!太刀筋が乱れているように見えますけど、実は確実に蛇の急所を狙っていますね!これを見ていると小白はなぜか快感と恐怖を感じます……うう。」【晴明】 「彼を敵に回さない限り、斬られる心配はないだろう。」【小白】 「そうですね、小白達は餓者髑髏さんと協力していますもんね〜」餓者髑髏が荒野に咲く白い彼岸花の傍に来てしゃがむと、彼の骨から粉末が滑り落ちた。【小白】 「白い花が餓者髑髏さんに触られると、まるで燃えているかのように、一瞬で赤色になりましたよ。あれ?あの真っ赤な光の中に何か見える気がします!【餓者髑髏】 「夢境にいる記憶達だ。その殆どは彼女と取引をした人間の記憶だ。彼女は彼らの魂をこの夢境に収めている。記憶は信仰となり、彼女の力となる。」【晴明】 「妖怪の力は普通の人間にとって、壊滅的な強さを意味する。即ち、「神」と同じだ。」皆が記憶の渦に巻き込まれていく。とある墓前で、ある人間が美しい妖怪に向かって物語を話している。」【富商】 「俺は兵士だった。あの日の夜、俺は野営地の火を消すと、こっそり逃げ出した。意気地なしの脱走兵ってやつだ。俺と一緒に脱走したやつはいなかった。やつらは皆狂っている。あのイカれた将軍に続いて、死を恐れない野郎共だった。俺は軍を抜けた後、名を隠し、商人になった。幸い俺は商人としての才能があり、すぐに金持ちの商人になった。俺は戦争がもたらした苦痛を忘れ、戦争で金儲けをしていた。あの日、退役した負傷兵が一人、この村に引っ越してきた。俺は彼がかつての戦友だったとすぐにわかった。もう昔のことなど気にならないと思っていたが、それでも人に頼んで彼のことを調べた。あの戦争の最後、皆奇跡的に生き残ることができた。あのイカれた将軍を除いて。俺は裏でその負傷兵に金を送った、彼がもっといい生活を送れるように。彼はかつて自分の食糧を俺に分けてくれた。だから俺は最高級の料理、最も豪華な邸宅、最も贅沢な玉器を彼に贈った。しかし彼は全て拒否した。受け取ったのは玉一枚だけ。友人が付けていた物に似ているかららしい。それは昔俺が付けていた、大した価値もない物だった。富を拒否するなんて、彼はやはり馬鹿だ。遠出していた俺が戻ると、彼は死んだと使用人に告げられた。村に盗賊がやってきて、その玉を奪うために彼を殺したんだ。彼がずっと手を離さなかったから。……やっぱり馬鹿だ。」【夜溟彼岸花】 「「それがこの墓の主の物語ね。では、あなたは?あなたはどんな願いを叶えてほしいのかしら?過去に時間を戻すとか、死んだ人間を蘇らせたいだなんて、馬鹿なことは言わないでしょう?」【富商】 「俺はずっと考えていた。俺が間違った選択をしたせいで、他人が不幸になったのではないかと。もしあの時、俺が逃げていなければ、最後まで一緒に戦っていたら、彼が尊敬していた将軍は死なずに済んだかもしれない。もしあの時、俺が偽善と罪悪感から彼を助けていなければ、彼が盗賊に殺さることはなかった。俺が憎いのは戦場での敵でも、盗賊でもない。俺自身だ。俺はずっと探していたが、どうしてもあの盗賊達を見つけることはできなかった。やつらは世界各地を巡って、悪事を働いてきた。俺の魂を取る前に、やつらを……」【夜溟彼岸花】 「ふふ、また復讐のお話ね。」【富商】 「これは復讐ではない、臆病で、自己満足の偽善者の贖罪だ。」【夜溟彼岸花】 「いい執念ね、花泥にする価値がありそう。」赤い花海が一瞬で成長し、枝が人間に絡みつき、喰らう。そして彼もまた、妖怪彼岸花の花泥となった。彼女は盗賊達を見つけ、命を奪った。そして最後に一枚の玉を、墓前まで持ってきた。回想が終わり、赤い光が消えていく。餓者髑髏は大きな骨の手で花びらの露を拭き、夢境で咲く彼岸花を摘んだ。【小白】 「セイメイ様、重いお話でしたね。見てください、餓者髑髏さんも悲しんでいます。餓者髑髏さんのあの仕草は、あの花の涙を拭いているみたいです。」【晴明】 「人は追い詰められた時だけ、妖怪の力を頼る。彼は昔の自分を思い出したのかもしれない。」【餓者髑髏】 「行こう、さらなる花を灯しに。」【晴明】 「餓者髑髏、どうして花を灯すことで蛇の群れを撃退できると思うんだ?」【餓者髑髏】 「花には契約者の記憶が保存されている。記憶は即ち信仰、眠っている信仰を起こせば彼女はより強くなり、夢境の力も強くなる。夢境で彼女に勝てるものはいない。蛇が滅びるのも、時間の問題だ。だが長引いて好ましくない事態にならぬよう、私の流儀は速戦即決だ。」次の花を探して、餓者髑髏は二人を連れて荒野を旅している。 |
失われた矢
失われた矢 |
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【小白】 「小白は少し疲れました……セイメイ様、餓者髑髏さんは、以前もこうして軍隊を率いていたのでしょうか?殆ど不眠不休で旅をしています。速く歩いているわけではないですが、小白は眠いです。それに喉も渇きました!ここには三途の川のような川しかありませんが、水を飲みに行ってもいいででしょうか?」【晴明】 「小白、得体の知れないもの口にしてはいけない。」【餓者髑髏】 「夢境にいる時は眠気や空腹について考えるな。そうすれば眠気はもちろん、腹が減ることもない。」【晴明】 「君は「今回目覚めてから、山ほど蛇を斬った」と言っていたな。それはどういうことだ?」【餓者髑髏】 「私の役目は夢境を守ることだ。彼女に危険が及ぶと、私は呼び起こされる。この夢境にある生命の花を灯し、信仰を力に変えて彼女に送る。」【小白】 「餓者髑髏さんは、元々花海を守る妖怪ではなかったのですか?今はどうしてここに住んでいるのですか?」【餓者髑髏】 「閻魔が花海を燃やした時、私はここに引きずり込まれた。彼岸花は散ったが、彼女は死んではいない。夢境の中で、私は彼女の力を取り戻し、蘇らせた。彼女は散っては咲き、それを繰り返す。そうなってから、もう随分長い時間が経っただろう。」【小白】 「餓者髑髏さんは彼岸花に抗って、この夢境から脱出しようとは思わないんですか?それとも彼女に特別な期待をしているんですか?」【餓者髑髏】 「……私は彼女との契約に従う。彼女は私の兵士たちを生かした、故に私は彼女の守護者となった。忠誠が、私が支払う代償だ。」【晴明】 「本当にそれだけなのか?」餓者髑髏は答えず、川の岸辺にある白い彼岸花を灯す。記憶がまた蘇った。今回は山にある古い茅屋だった。【狩人】 「私は射手だった。戦場にいる時、矢を一本放つだけで、敵の命を奪うことができる。将軍は私に言っていた、戦場は命がけの場所だと。気を抜くと命を落とすことになる。一つ一つの攻撃を、最後の一撃だと思え。矢筒に残る矢の数だけ、私は人の命を奪うことができる。軍を抜けた後、私は狩人になり、山で一人暮らしをしていた。私にとって、狩りで生活するのに難はない。冬が訪れた時、私は熊を狩っていた。風向きが急に変ったせいで、しくじってしまった。傷を負った熊が私に最後の攻撃を仕掛け、目の前に迫っていた。これが私が見る最後の光景だと思った。しかしもう一人の狩人が、私を助けてくれた。彼の矢が、完璧に熊の急所に命中した。私は彼と友達になった。彼は動きが素早く、騎射の腕が立ち、狩りの知識を多く教えてくれた。それに美味しい調理法も。私たちは世間から離れた山で暮らし、お互い助け合って生きていた。そんな平穏な日々は、ある日を境に終わりを告げた。あの日、軍の友人が私を尋ねてきた。私の同居人が、戦場で我々の友人を殺した敵だったと、彼は気づいた。戦場での殺し合いと生死、それは立場の違いのよるもの。各々の正義を貫くための犠牲。それを受け入れよう。戦場を離れた時点で、軍人ではなくなる。新たな生活を始めるべきだ。私はそう言って彼を説得し、戦場での苦痛を忘れさせようとした。彼が帰った後、私は悩んだ。かつて多くの命を奪った己の手、そして壁にかけた弓矢を見た。あの夜、私は悪夢を見た。同居人を殺す夢だ。その夢はやがて現実となり、狩りの最中、私は同居人に矢を向けた。私が彼にあの頃のことを無理矢理吐かせようとすると、彼は認めた。怒りと衝動で私は弓を引いた、しかしなぜか……放った矢は彼の後ろの木に当たった……私は彼を殺せなかった。その矢が近くの野獣達を刺激し、我々は野獣に追われ、必死に走った末、何とか逃げ切った。その後、私はまた悪夢を見た。しかし何かが変わっていた。また冬が訪れ、彼は病に冒され、寝床で虫の息になっていた。」【夜溟彼岸花】 「死の気配に満ちた場所でしか、赤い彼岸花は咲きませんわ。あなたは私とどんな取引をしたいのかしら?冥府の無常がこちらに向かっています。あなたの友人を連れて行く気よ。」【狩人】 「私の命を彼に……あげることはできるか?」【夜溟彼岸花】 「あなたの命と引き換えに?私に旨みがないし、無常と戦う羽目になっても困るわね。でも、私は命を救える薬を持っている。あなたの友人も、これで助けられるかもしれないわよ。試してみない?」【狩人】 「お願いだ、その薬をくれ!結果がどうであれ、私は契約を守る……」妖怪は微笑んでいる。部屋に大きな彼岸花が咲き、一人は目覚め、一人は眠りについた。その後、目覚めた者が眠った者に熊の毛皮を被せた。それが彼らの因縁の始まりだった。彼は眠っている者にこう言った。最初に彼と接触したのは復讐のためだった、彼の軍隊との戦争で自分の親友を失ったのだと。しかし復讐の心は日々の生活の中で少しずつ解けていき、新たな絆となった。【夜溟彼岸花】 「最後のお話もこれでお終い、帰りましょう。」彼女の手の中で浮かんでいた魂は、彼女に礼を告げると、煙と化し土に溶け込み、彼女の花泥となった。回想が終わり、赤い光が消えていく。餓者髑髏は大きな骨の手で花びらの露を拭き、夢境に咲く彼岸花を摘む。」【小白】 「また悲しい物語でしたね。小白はセイメイ様と離れる日が来ないことを願います……でも小白は、彼岸花はそんなに悪い妖怪ではないと思います。」【晴明】 「妖怪は人間とは違う。彼らに人間の善悪の概念は通用しない。あくまで自分の利益のために動く。他人からの崇拝、尊敬、感激もその利益の内に入っている。妖怪は純粋だ、ある意味優しくもある。」【小白】 「だからセイメイ様は、人と鬼は平和に共存できるという信念を貫いてきたのですか?」【晴明】 「ああ、存在は理に適っている。」【小白】 「餓者髑髏さんは、彼岸花のことをどう思いますか?【餓者髑髏】 「……」【小白】 「うわ!また蛇が来ました!」【晴明】 「夢境では私の陰陽道は制限されている。小白、動けるか?」【小白】 「何があっても、小白はセイメイ様をお守りします!」餓者髑髏が勇ましく敵をやっつけている。彼が動き回る蛇に気を取られている間に、死んだふりをした蛇に不意打ちされ、肋骨の一部が噛み砕かれてしまった。彼の心の空洞が、さらに大きくなった。【小白】 「餓者髑髏さん!小白が助けに参ります!」【餓者髑髏】 「こっちにくるな、お前はお前の主人を守れ。」餓者髑髏が手で蛇を捻り潰す。肋骨はゆっくり再生している。【餓者髑髏】 「いつからか、蛇共は知恵を得て、力が強くなった。お前達が来てすぐのことだ。」【晴明】 「我々の到来によって、夢境が変化しているということか?」【餓者髑髏】 「生物の生存本能は生物を強くする。残酷な生存環境に適応するためにな。人間も同じだ。死にたくなければ様々な手段を尽くし、なんとしても生き残る。」【小白】 「……重い話ですね。 |
蛇毒蔓延
蛇毒蔓延 |
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三途の川の岸辺で、夜溟彼岸花と孟婆がお茶を楽しんでいる。【夜溟彼岸花】 「また来たのね。あなたたちがこの無法の地に来ることを、冥界の主人は嫌がると思うけれど。」【孟婆】 「お礼をしに来たの、私が迷っていた時に助けてくれたお礼!これは私が作った薬、飲んだら悲しいことを忘れられるよ~あなた……色々ありそうだし。この花海はいつも突然枯れて、そしてある時突然咲き乱れる。」【夜溟彼岸花】 「ふふ、私には忘れたいことなどないわ。悲しいこと、憤ること、幸せなこと……忘れられない過去があってこそ、今の「私」がいる。何事も順調に行き過ぎる人生なんて、かえってつまらないわよ。悲しみがあってこそ、執念が生じる。それが命の持つ、最も強い力。完璧ではない命が完璧を求めると、一番肥沃な花泥になる。怖いかしら?私は花泥にするために、あなたを助けてあげたのかもしれないわよ?」【判官】 「孟婆、そっちに行くなと閻魔様に言われただろう。この妖怪に惑わされるぞ。拙者と一緒に帰るんだ。」【夜溟彼岸花】 「早速、冥界の忠犬の登場ね。感情を出さず、掟に従う冥界の秩序の守護者。私にはあなたの心がわかる。抑制すればするほど、耐えられなくなった時の反動が大きいわよ。」【判官】 「お前……惑わすな!掟がなければ話にならぬ。冥界には冥界の法則がある。お前のように勝手ばかりする者には、いずれ罰が下される。花海を燃やしても、お前に深刻な打撃は与えられなかったどころか、新たな姿に変わっていたとは。だがお前の花海を見てみろ、蛇が潜伏している。」【夜溟彼岸花】 「それがどうかしたのかしら?」夜溟彼岸花の後ろにいる髑髏侍が、花海から出てきた蛇を斬った。【孟婆】 「喧嘩しないで!」【判官】 「自重せよ、冥界の秩序を乱す者。行くぞ、孟婆。」【孟婆】 「(小声)私……また来るね!」【夜溟彼岸花】 「ふふ、ここに来るのは面白い人ばかりね。」三途の川に、客がまた二人訪れた。【煉獄茨木童子】 「友よ!来たぞ!」【鬼王酒呑童子】 「やっぱりあの程度の罠じゃおまえは止まらねえよな。追いついたか、茨木童子。」【煉獄茨木童子】 「もちろんだとも、友が危険な地に向かうのに、私だけ安心して大江山で星熊童子と酒を作れるわけがないだろう?」【鬼王酒呑童子】 「俺様が帰った時に、お前が作った酒を飲むのも悪くはねえけどな。」【煉獄茨木童子】 「そう言うと思って、酒を持ってきたぞ、友よ。」【鬼王酒呑童子】 「……」【煉獄茨木童子】 「酔うまで飲むか?」【鬼王酒呑童子】 「目的地に着いてからだな。生死の境目となる三途の川は分流がないように見えるが、知られてねえだけで、多くの場所へ流れている。三途の川をよく知る水先案内人が必要だ。」【夜溟彼岸花】 「大江山の鬼王酒呑童子と大妖茨木童子、お二人がここに来るなんてどういう風の吹き回しかしら?」【煉獄茨木童子】 「この女の背後にいる髑髏……」【鬼王酒呑童子】 「鬼域にある巨大な結界のせいで、天人の領地が隔絶されている。俺様は三途の川を通って、その結界に入る。三途の川で誕生した妖怪彼岸花だな。三途の川の秘密もよく知ってるんじゃねえか?」【夜溟彼岸花】 「あなたも私に案内させたいのね。今日鬼域の結界に行く客人は、あなたたちで二組目よ。」【鬼王酒呑童子】 「他に誰が?」【夜溟彼岸花】 「都から来た陰陽師と、その式神かしら。」【煉獄茨木童子】 「友よ、この女ははっきり話さない、何か企んでいるようだ。」【鬼王酒呑童子】 「俺様はその企みってやつを見てみてえな。」三途の川の岸辺で、夜溟彼岸花が皆を小舟に招いている。」【煉獄茨木童子】 「水面に映っているのは何だ?」【夜溟彼岸花】 「川を渡った人々の生前の記憶、「走馬灯」。」煉獄茨木童子は、彼が黒い木箱を奪った記憶を見つけた。彼が目を凝らすと、水中から形の無い手が現れ、彼を川に引きずり込もうとした。煉獄茨木童子が形の無い手を避けると、鬼王の妖火がその手を燃やした。」【鬼王酒呑童子】 「余計なことはするな、目的を言え。」【夜溟彼岸花】 「さすがは大江山の鬼王、そう簡単には騙されないわね。鬼域の結界に行く方法は知っているわ、でも水面からではないわよ。」【煉獄茨木童子】 「三途の川の底から行けというのか?」【夜溟彼岸花】 「その通り、秘密の近道があるのよ。その近道は三途の川の底、私の夢境の中にある。私の夢境の「毒」を駆除してくれれば、私の下僕である餓者髑髏が、あなたを近道まで導いてあげましょう。」三途の川から大きな手が現れ、手のひらを上に向けて開いた。そこには転送陣が光っている。【夜溟彼岸花】 「あの法陣から、あなた達をを夢境に転送できるわ。試してみない?」【煉獄茨木童子】 「友よ、三途の川の底にまつわる伝説は、いくつか聞いたことがある。近道は本当に存在しているかもしれない。」【鬼王酒呑童子】 「ああ、時間が惜しい、試してみるか。」鬼王酒呑童子と煉獄茨木童子が巨大な手に乗る。手が握られ、彼らを三途の川の底へ転送した。手が開くと、二人は既に彼岸花の夢境に入っていた。真っ黒で寒い、静かな場所だ。彼らが周囲の状況を観察していると、影から無数の蛇が湧いてきて、矢の雨のように襲いかかる。」【鬼王酒呑童子】 「この蛇達は危険だ。明らかに俺達に敵意を向けている。彼女の言っていた「毒」だな。」【煉獄茨木童子】 「蛇といえば、あの女の後ろにいた髑髏の腕に、蛇の鱗がついていた。」【鬼王酒呑童子】 「よくわかったな、茨木童子。あの女の手にもついてた、彼女は隠していたが。まずは彼女が言っていた餓者髑髏を探そう。 |
荒野の悲鳴
荒野の悲鳴 |
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ナレーション 三途の川の底にある夢境の中、餓者髑髏、晴明、小白は花を探している。【小白】 「セイメイ様、ここは昼と夜が入れ替わる時間が、現世とは違うみたいです。小白たちがここに来て、どれくらい経ったでしょうか?」【晴明】 「そうだな。ここに長居しすぎると、これから鬼域で起きることに間に合わないかもしれない。この先に彼岸花がある。餓者髑髏はもう先に行った。」岸辺の傍で餓者髑髏が白い彼岸花を灯すと、記憶が再生される。とある老人が、ボロボロな寺院で己の人生を振り返っていた。【老人】 「幸せでも、不幸でもある人生だった。私が崇拝していた将軍様は、私達を率いて戦場を駆け巡り、次々と功績を手にした。将軍様が戦死した後、私は彼の意志を継ぎ新たな指揮者となり、彼のように軍を率いていた。私は彼の代わりになれると思っていた。しかしある雨の夜、私達は困難に直面した。窮地に陥った時、通りかかった髑髏の妖怪が敵を殺してくれて、私たちはまた生き延びることができた。その後も多くの戦を経験した。諦めたくなると、いつも将軍様の言葉を思いし、粘り続けることができた。それから……それから、私たちは戦が終わるまで生き延びて、楽しく家に帰った。私の一生はここで終わるが、まだ一つ心残りがある。私の魂を持って行ってくれてもいい。」【夜溟彼岸花】 「ふふ、人間は欲張りね。だから私のような妖怪に、付け入る隙を与えてしまうのよ。聞かせて、あなたの最後の望みを。」【老人】 「もう一度将軍様に会いたい。会わせてくれないか?」彼女は面白そうに老人を見ていた。彼女が手を振ると、無数の赤い彼岸花が咲き、老人の魂を花海に引きずり込んだ。【夜溟彼岸花】 「あなたの望みは、もう叶ったわよ。」餓者髑髏は記憶を見終わると、ため息をついたようだった。彼は今回も、この彼岸花を摘んだ。【小白】 「セイメイ様、餓者髑髏さんはどうしてあの彼岸花を持っていくのでしょう?彼は毎回彼岸花を摘んでいるわけではありません、何か特別な儀式なんでしょうか?」【晴明】 「ここは思い出に満ちた夢境だと、餓者髑髏が言っていた。長い時間の中で、孤独を感じたのだろう。あの花の記憶の主は……彼の知り合いなのかもしれない。餓者髑髏の話は黒無常から聞いた。話によると、彼は配下の兵士を活かすために、自分の魂を捧げ、彼岸花と契約したそうだ。彼にとって、兵士達は命より大事な存在だ。死んだ後も、彼らを守りたいと思っていた。」【小白】 「なんだか……厳しい父親みたいですね。生前はきっと厳しい顔で未熟な新兵を教育し、残酷な戦争の中でも生き残れるように育てあげる、そんな人だったに違いありません。彼らが挫折した時は、密かに彼らを心配し、面倒をみてあげたのでしょう。餓者髑髏さんって、いい人ですね。」【晴明】 「ああ。」【小白】 「あ!勘違いしないでください、小白はセイメイ様も素敵だと思っていますよ!」【晴明】 「……考えすぎだ。」餓者髑髏は彼らの話を聞いているようだが、何も言わずに手の中の彼岸花を見つめている。【小白】 「餓者髑髏さん!土の中に蛇が!」小白の声が餓者髑髏に届いた。しかし彼はすぐに反応できず、蛇は凄まじい勢いで、彼の持っている彼岸花を狙って口を開いた……餓者髑髏は素早く姿勢を変え、自分の体で花を守ろうとする。蛇が剣のように彼の胸骨を貫き、彼を荒野に挿した。【餓者髑髏】 「……」【晴明】 「意識を失っている。小白、蛇を抜いてくれ。」【小白】 「小白は頑張っています!うう、蛇の鱗が硬すぎて、歯が痛いです!」【晴明】 「餓者髑髏の言った通り、蛇が強くなっている。このままでは……」荒野の中で巨大な髑髏侍が蛇に挿されているところに、あちこちから蛇が集まってくる。【小白】 「セイメイ様、まずいですよ!餓者髑髏さんの意識がまだ戻りません。さっきみたいに体を修復できたとしても、意識が戻らないことには……」【晴明】 「小白、餓者髑髏が言っていた、我々と彼岸花との契約の話について、どう思う?」【餓者髑髏】 「この夢境は無関係な者は歓迎しない。お前達の取引は既に始まっている。蛇をすべて殺すことだ。取引を完了させれば、三途の川から鬼域に向かう流れが見つかるだろう。」【小白】 「うう……小白はやっぱり変だと思います。ここが「彼岸花」の夢境だからでしょうか。彼女のように何らかの目的を隠し、つかみ所のない謎と危険を感じます。小白が花海で飲んだお茶ですよ!あのお茶のせいで、小白は三途の川を見ていたのです。小白自身も不思議だと思いましたよ。」【晴明】 「言われてみると、確かに怪しいな。餓者髑髏は夢境の守護者、彼岸花がすることは、全て知っているはずだ。」【小白】 「うわわ……蛇の群れが集まってきました!セイメイ様!セイメイ様!早く逃げてください!」餓者髑髏が倒れた時、地鳴りのような音がして、その震動は鬼王酒呑童子と煉獄茨木童子のいる場所まで届いた。【煉獄茨木童子】 「この振動……何か倒れたのか、悲鳴が聞こえた気がする。」【鬼王酒呑童子】 「この蛇共を見ろ。元々は身を隠していたが、今はそれどころではないようだ。堂々とある方向に向かっって集まっている。震源の方向だな。俺様の推測が正しければ、奴らの向かう先に、あの「餓者髑髏」がいる。」【煉獄茨木童子】 「まさかさっき倒れたのは「餓者髑髏」だというのか?友よ、急ごう。」 |
復興の夢
復興の夢 |
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集まってきた蛇の群れが髑髏巨人の体に登り、彼を蝕んでいる。晴明と小白は蛇の群れを阻止しようと試みたが、蛇の群れは彼らのことは気にせず、死角を通り抜け、餓者髑髏へと這っていく。蛇の群れに蝕まれた餓者髑髏は徐々に意識を取り戻し、胸に突き刺さった蛇を抜き取り、怪物のように叫んだ。【小白】 「セイメイ様、餓者髑髏さんが目覚めました!」【晴明】 「餓者髑髏、大丈夫か?君の叫びで蛇は退き、遠くで警戒している。」【餓者髑髏】 「長い夢を見ていた気がする。懐かしい夢だった、あれは私が人間だった頃の記憶だ。」【小白】 「え?餓者髑髏さん、こんな時に話を始めるつもりですか!まだ蛇がいます!たくさんの蛇が、宴の料理を見ているかのように小白たちを睨んでいますよ!」【餓者髑髏】 「……」【晴明】 「小白の言う通りだ、まずは蛇を撃退しよう。」晴明が振り向こうとした途端、餓者髑髏が彼に向けて刀を振り下ろした。何もなかったはずの眼窩に、まるで蛇の目のような緑の光が閃く。【晴明】 「餓者髑髏?」【小白】 「え?!餓者髑髏さん、どうして急に刀を抜くんですか!え?!殺気に満ちた餓者髑髏さんが小白たちを襲ってきます!セイメイ様!」【晴明】 「彼の気配が変わった、どうやら何者かに支配されているようだ。」丁度その場にやって来た鬼王酒呑童子と煉獄茨木童子が、それを目撃していた。【煉獄茨木童子】 「おかしい、晴明は防御に特化した結界術が使えるはずだ、なぜ使わない?」【鬼王酒呑童子】 「なるほどな。」【煉獄茨木童子】 「何か気づいたか、友よ?」【鬼王酒呑童子】 「ああ、晴明は俺たちに気づいて、助けを待っているようだ。」餓者髑髏はいつの間にか体を蛇の群れに乗っ取られ、意志を失っていた。蛇の群れは餓者髑髏の体を使って、めちゃくちゃに刀を振っている。煉獄茨木童子の鬼の手が餓者髑髏の刀を受け止め、乱撃から晴明と小白を救った。【晴明】 「ありがとう。茨木童子、酒呑童子、どうしてここに?」【煉獄茨木童子】 「お前達と同じだ。私達も三途の川を通って天人の領地に行こうとしていたが、あの女に夢境へ送られたのだ。」【小白】 「送られた?小白とセイメイ様は落ちてきたんですけど!」【鬼王酒呑童子】 「あの暴走してる髑髏巨人が「餓者髑髏」なんだな?やつの案内が必要だ。殺さずに、意識を取り戻させねえと。何か手はあるか?」【小白】 「小白もよくわかりません、餓者髑髏さんが突然蛇に支配されてしまったんです!」【晴明】 「蛇は狡猾な生き物だ、利用できるものはすべて利用する。まさか……餓者髑髏が摘んでいた彼岸花と関係あるのか?赤い彼岸花が咲く時、夢境に集められた魂の記憶が蘇る。その中に餓者髑髏の知っている者の記憶があったとしたら。餓者髑髏は彼らの魂を解放するつもりなのか……だから動揺していたのかもしれない。そのせいで蛇に誘惑され、夢境の守護者から叛逆者になった。」煉獄茨木童子は暴走している髑髏侍と戦っている。彼は鬼の手で餓者髑髏の体を覆う蛇を引きはがしたが、蛇は次から次へと這い上がってくる。【煉獄茨木童子】 「餓者髑髏よ、お前の忠誠心はこの程度のものか?」【餓者髑髏】 「……」【小白】 「餓者髑髏さんが受けた傷は自動的に回復されますし、蛇もきりがありません、このままでは……」【晴明】 「埒が明かない、別の方法を考えなければ。」【鬼王酒呑童子】 「俺様がここに来た時、餓者髑髏の胸は蛇に貫かれていたが、死んではいなかった。弱点は心臓部じゃねえはずだ。三途の川で会ったあの女、その後ろに餓者髑髏に似た髑髏がいた。あの髑髏に頭はなかった、赤い花びらが浮いていただけだ。俺様の推測通りなら、本当の頭は夢境にある。よく見ろ、蛇は餓者髑髏の体を覆っているが、頭には一匹もいねえ。蛇に誘惑されても、一番大事なものは手放していねえようだな。」【晴明】 「頭を斬り落とせば、餓者髑髏を止められると言うのか?」【鬼王酒呑童子】 「試してみる価値はある。」【煉獄茨木童子】 「聞こえたぞ、友よ。お前の策、私も乗った!」煉獄茨木童子が鬼の手を操り、餓者髑髏の頭に攻撃を仕掛ける。案の定、餓者髑髏は手で頭を守った。餓者髑髏が初めて攻撃を防いだ。蛇の群れはそれに気づき、彼の頭へ這い上がろうとするが、煉獄茨木童子の次の攻撃の的となった。【鬼王酒呑童子】 「蛇は餓者髑髏を支配しきってはいねえみたいだな。」鬼王酒呑童子が鬼王座を召喚する。あっという間に鬼王の妖火が放たれ、荒野を燃やす。無数の蛇が焼かれ灰となるが、すぐにまた湧いてくる。【小白】 「セイメイ様、酒呑童子様の攻撃で蛇が僅かに隙を見せました。小白も助力してきます!」蛇の群れは夜の影のように、いくら倒しても減らず、皆の気力が徐々に消耗されていく。激戦の中、一匹の蛇が餓者髑髏の兜に入り、彼の頭蓋骨に隠されている彼岸花に触れようとした。【小白】 「これは一体なんですか?小白は尋常でない戦慄を感じました!」夢境に薄気味悪い気配が充満し、騒々しく理解不能な囁きが広がる【???】 「………………」【小白】 「この声は何ですか!耳が痛いです!」【晴明】 「何か来る。」【鬼王酒呑童子】 「もったいぶりやがって、ただの夢境の主のくせに。」その囁きを聞いたせいか、餓者髑髏が攻撃を止め、刀を土に刺した。彼の体が徐々に崩壊し、頭蓋骨の中の彼岸花が熱い炎と化す……【煉獄茨木童子】 「そんな馬鹿な、餓者髑髏が燃えている。これが守護者としての、最後の忠誠だというのか?」餓者髑髏の体が殉道の烈火に燃やされ、その骸骨の体はあっという間に消えた。彼は自身の最も忠実な信仰と蛇の群れの生命力を捧げる。烈火が果てなき紅の道を照らし、夢境の主を迎える……【夜溟彼岸花】 「私の夢境で暴れる者よ、私の花泥になる準備はできているかしら?」 |
天穹の奔流
天穹の奔流 |
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自ら夢境に現れた夜溟彼岸花は、餓者髑髏に似た首のない髑髏巨人を呼び出した。【小白】 「ええ?彼岸花様は自分の夢境に入ることができるのですか?小白はびっくりしました!」【夜溟彼岸花】 「私の僕が自身を犠牲に私を呼び起こし、この地へと招いた。この蛇達は……」話をする暇もないうちに、残りの蛇の群れが一箇所に集まる。その体が溶け合い、巨大な蛇が誕生した。巨大な体を駆使し、晴明と小白を囲む。【煉獄茨木童子】 「蛇め、晴明達を人質にするとは、卑怯な!」煉獄茨木童子が飛び出し、巨大な蛇と激突する。【鬼王酒呑童子】 「この蛇の力はとんでもなく強い。しくじったな、彼岸花。この期に及んで、まだ隠すつもりか。お前が状況を見極められないとは思えねえ。蛇はどこから来た?何故お前の夢境にいる?」【夜溟彼岸花】 「さすが大江山の鬼王ね、蛇が尋常でないことを一目で見破るなんて。三途の川は陰陽の境目にある無限の川、色々な場所と繋がっていて、怪異なものも引き寄せやすい。随分前に、私は三途の川に「賽の河原」と似た気配を感じて、その発生地へ向かった。そこでは強大な力が、三途の川を通してとある場所に送られていた。その場所こそ、あなたたちが向かおうとしている場所、天人が鬼域に張った結界。もっと調べてみようと思っていたけれど、ヤマタノオロチが術式で私を止め、攻撃を仕掛けてきた。攻撃を避けるために、私は眠りにつくことにした。けれど……私が目覚めてからも、あの術式は私の体に深刻な損傷を残したままだった。そうして蛇達が私の夢境で暴れだした。完全に取り除くことのできないの蛇の毒のように、致命傷にはならないけれど、取り除くこともできない。」【鬼王酒呑童子】 「だから晴明と俺達を夢境に引き寄せ、蛇と死闘させ、漁夫の利を狙っていたんだな。」【夜溟彼岸花】 「鬼王の力を奪う気はないわよ?あなた達の到来と共に蛇の群れに異変が生じて、前よりも強くなった。まさか私の僕が蛇の群れに誘惑されるなんて、まだ兵士達のことが忘れられないようね。可愛い執念だこと。」【鬼王酒呑童子】 「だが彼は、最後にお前を選んだ。」【煉獄茨木童子】 「友よ、蛇は晴明と彼の式神を捕らえているが、何もしてこない。何かを待っているのか?」【鬼王酒呑童子】 「茨木童子、晴明を見張れ。あいつの行動に気をつけろ。」【煉獄茨木童子】 「晴明はここでは陰陽道を使うことはできない、友は彼の安否が気になるのか?」【鬼王酒呑童子】 「あいつは思慮深い、何もせずにくたばるような人間じゃねえ。あいつは三途の川の力を借りずとも天人の結界に行くことができるはずだ、わざわざこんなことを……」【夜溟彼岸花】 「それについては同感ね、こんなことをしなければならない理由でもあるのかしら。理解し難いわ。大江山の鬼王、あの巨大な蛇を倒しさえすれば、私の体にある蛇の毒を取り除くことができる。蛇の毒を取り除くことができれば、あの蛇の体で道を開き、あなたたちはその道から行きたい場所に行くことができる。」巨大な蛇は荒野で砂を巻き上げ、皆と戦闘を繰り広げている。【夜溟彼岸花】 「ふふ、今度は私達があなたを囲む番よ。」【煉獄茨木童子】 「友よ、私が蛇の動きを止める、お前は蛇の心臓を掘り出してくれ。」鬼王の妖火が彼の手のひらに集い、蛇の心臓を狙おうとしていると、突如白い光が現れた。」【小白】 「セイメイ様!小白が助けます!」【晴明】 「……」【煉獄茨木童子】 「また人質を利用するとは、狡猾なやつめ。友よ、次の攻撃だ。」【夜溟彼岸花】 「間に合わないわ。」巨大な蛇は最後の力で拘束を解き、無我夢中で夢境の天頂にぶつかった。その衝撃で天頂に恐ろしく大きい穴が開き、三途の川の水が注がれ、あっという間に夢境を満たし、皆を蹴散らした。」【夜溟彼岸花】 「悪くないわね、蛇の毒は取り除かれて、彼らも望み通りにあの場所へ行くことができた。」夜溟彼岸花は木の下に結界を張り、夢境に流れ込む水を遮断した。木の下には赤い彼岸花がいくつか咲いている。彼女は彼岸花を摘み、花をそよ風に乗せて、夢境の天頂の裂け目から外へ送った。【夜溟彼岸花】 「過去の仲間との思い出がいらないなら、輪廻に戻してあげましょう。あなたの忠誠に対する褒美としてね。眠るがいい。孤独な夢境の地で、あなたの誓いを果たしなさい。」……鬼域某所。【小白】 「セイメイ様!小白達は結界に入ることができたのですか……?それより、どこかで休憩しませんか、小白はもうくたくたです!」【晴明】 「私の肩に乗るといい。ここに来ることは計画の第一歩にすぎない、やる事はまだ山積みだ。」【小白】 「はいはい~セイメイ様はいつもお忙しいですもんね~」【晴明】 「ああ、今回の鬼域の旅は我々二人しかいない、十二分に気をつけなければ。」……鬼域の別の場所。【煉獄茨木童子】 「ここは何だ?空気に漂う気が、私が知っている場所とは違う。よそ者は歓迎しないといった様子だ。我が友?晴明?湧き出した水の衝撃ではぐれたか。嫌な予感がする、急いで友と合流しなければ。 |
邂逅の花ストーリー
髑髏侍
髑髏侍 |
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三途の川の底には夢の世界がある。忠実な髑髏侍は、その世界を守り続けている。 彼は妖怪の体を持ちながらも、まだ人の心を完全に捨ててはいない。 夢の世界の主である妖怪彼岸花が枯れ果てる時、そこは真っ暗な世界になる。 火のなき夜はあまりにも寒い。髑髏侍は旅立ち、夢の世界を踏破し、命の花を探す。 彼は荒野を歩き、闇に潜む妖怪を切り伏せる。一つ、また一つと、命の花に火をつけ、夢の世界に光を取り戻す。 もし髑髏侍が命の花を見つけられなければどうなるのか聞きたいなら、それはまた別の話だ。 |
未開の花
未開の花 |
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三途の川底にある夢は思い出に満ちた場所だ。かつて三途の川の彼岸花と契約を結んだ魂たちは、そこに住んでいる。 彼らの思い出にある執念は、まるで咲き誇る日を待つ花のよう。髑髏侍が火をつけると、すぐに美しい赤色の花になる。 夢から出られない髑髏侍は、ゆっくりと思い出の物語を吟味し、花弁から落ちる涙を拭き、少しだけ暖かさを与える。 荒野に座る髑髏侍は、物語を読み終えるたびに、長い間沈黙する。 彼の体には骨しか残っていない。故に表情が読めない。当然、彼の考えを推し量ることもできない。 髑髏侍はそんな生活を繰り返している。そんな彼は退屈なのだろうか?孤独なのだろうか? この質問に答えなどない。 彼は自分がまだ人であった頃のことを、懐かしく思っているようだ。彼が命をかけて救った兵士たちは、どんな最後を迎えたのだろう? ちゃんと生きて、普通に人生を終える。それが彼が兵士たちに寄せる、最後の願いだ。 |
忠義の僕
忠義の僕 |
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生死をも超える執念、それを花泥にすれば、間違いなく最高の味になる。 彼岸花という名を持つ妖怪は、現世で強い執念を抱える面白い魂を探し、煽る。その燃え盛る炎を、より激しく燃えさせるために。 彼女は悲しみが生まれる場所を訪れ、絶望に落ちた人の耳のそばで囁き、彼らの足元に赤い花の海を作る。その者達の魂はすぐに抵抗を諦め、花の海の奥へと堕ちてゆく。 それはいつもうまくいく。彼女は人の世を旅し、静かに咲き誇る日を待つ執念の種を蒔き続ける。 時々彼女は、三途の川にある花の海に戻って確認する。紅の道は、まるで花でできた大軍のようだ。そしてこの地を守るのは、骸骨の体を持つ餓者髑髏。 忠実な餓者髑髏は、彼女のためにどこまでできるのか?彼女は彼がなんでもしてくれると信じている。 故にあの大火事で、髑髏侍は終わりなき夢に引きずり込まれ、繰り返し枯れては咲く彼女の秘密を守ることになった。 |
一つの奇跡
一つの奇跡 |
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かつて俺は戦場をうろつく女を見た。 あの女の端正な顔といい、華奢な体といい、人々を魅了するものばかりだ。もし彼女の声を聞けたら、もう最高だ。 彼女は時々姿を消すから、俺は確信した。彼女が人間じゃねえ。それもそうだな、人々を問答無用で魅了できるのは妖怪ぐらいだ。 長年経ったが、俺はたまにしか彼女に会えない。彼女の行く先には、必ず死が訪れることになる。そんな彼女を追い求める俺は、同じく死を探し求めているのか? 俺の妻は、子を産んで死んだ。死と新しい命の誕生が同時に訪れて、俺に運命の理不尽さと重さを教えてくれた。 しかし俺が抱えるこの小さな命は、妻が残してくれた宝物だ。俺は彼を守り、育てあげる。 命は儚いものだ。俺の子供は不治の病にかかり、日に日に死に近づいていくが、俺にできることは何一つなかった。 俺がなぜあの女を追い続けているのか、この時俺はようやく気づいた。 彼女は人に理解できない神秘的なものを持っている。故に彼女が訪れる場所には…必ず「奇跡」が起こる。 途方に暮れた人々が彼女にを捧げた願いは、悉く実現した。なら俺も… あの女はやっと俺に目を向けた。彼女が軽く笑った後、瞬く間に、俺の視界は咲き誇る赤い花に埋め尽くされた。 これで俺の子供は助かるはずだ… |
うそと絵
うそと絵 |
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私の人生は嘘だらけだ。 任務を遂行する暗殺者は仮面をかぶり、本当の自分を隠す。 あの日私は目標を仕留めた後、仮面を外し、川で返り血を洗っていた。 まさかその光景を、通りかかった絵師に描かれてしまうとは思わなかった。絵の中の私は…意外にも、凶悪な悪人面ではなかった。 絵師はこれこそが本当の私だと言い張り、素の顔がいいから、仮面をかぶるなんてもったいないとまで言ってくれた。 故に私は、絵師を訪れる時は必ず仮面を外し、普通の人に見えるように身なりを整える。 絵師と詩と酒と本と絵の話をしているうちに、私は少しずつ自分の正体を忘れ、ここでしか得られない楽しみを手に入れた。 楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。私は新しい命令を受け、ある大人物を殺すことになった。 相手が寝ている隙に、私は容易くその命を仕留めた。 彼の邸宅の中で、私はたくさんの絵を見付けた。どれも貴重なものばかりだ。 友への土産にしたら、嬉々として絵に関する物語を聞かせてくれるのだろう。 どうせここの主は亡くなったんだ、一つ二つ持ち帰ってもいいはずだ。 なんということだろう、一番豪華な箱の中に仕舞われていた絵には、私の姿が描かれていたのだ。 狂風が全ての絵を吹き散らし、私は絵の中に咲き誇る赤い花を見た。 私は花に向かって言った、もう嘘だらけの人生には戻りたくないと。 |
私だけ
私だけ |
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母は女手一つで僕を育ててきた。 このぼろ屋には母の思い出が詰まっていて、ここにある物は全て美しい。 母が僕を抱え、若い頃の華やかな思い出を話す時、僕は恍惚の中で母の晴れ姿を見た。 なぜ母は、一人でこんな貧相な村のぼろ屋に住んでいるの? 大きくなるにつれて、僕は村で流れる噂を理解した。あいつらが母を虐めていたのか。 あいつらは母が捨てられた愚かな女だと言い、母の高価な首飾りを盗み、母に暴力まで振るった。 母がうまく隠していたおかげで、僕は今まで何も知らなかった。 あいつらに裁きを下すんだ。僕のことはどうでもいい、でも母を傷つけることは決して許さない。 突然、雷の音が聞こえ、あいつらの足元に赤い花が生えたのを見た。 それは死の瞬間にしか咲かない花だ。花は僕に囁いた。 赤い花は、もう誰も母を虐めないと言った。 僕は頷き、あいつらと共に、赤色の中に残った。 |
最後の一杯
最後の一杯 |
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乱世では、生き残ることすら難しい。 俺の腕がなかなか上達しないから、すぐ鍛冶屋の師匠に追い出された。 居場所をなくした俺が外でうろついていると、酒の匂いがした。誰かが酒を作っている。 その人は俺を中に招き入れ、熱い酒を御馳走してくれた。酒を飲むと、体はあっという間に温かくなった。 彼に酒造りの方法を教わった。おかげで俺は、乱世で生きていくための技術を身につけることができた。 春が訪れ、彼は出て行った。彼は俺に、毎年のこの季節に酒を作って、彼が帰るのを待っていろと言い付けた。 彼がどこへ向かうのかは知らない。彼はかつて兵士だったから、軍の招集の命令を受けて出て行ったんだと教えてくれた人がいた。 この部屋からは彼の気配を感じる。俺は彼を待つと決めた。 彼はいつか必ず帰ってくる。命令に忠実な兵士でも、戦争が終わったら、また帰ってくるに決まってるさ。 今年でもう何年目だ?毎年作った酒は、手付かずのまま全部彼の部屋に置いてある。 何度も数えたが、この酒でもう二十本目だ。 なぜか分からないが、急に悲しい気持ちになった。俺は酒を手に取り、全て飲み干した。 酒の匂いが部屋中に満ちた時、俺は彼の声を聞いた気がした。 部屋の中に赤い花が咲き、一人の女が俺に近づき、叶いたい願いはないかと聞いた。 俺は、一杯でいいから、彼が作った酒が飲みたいと答えた。 |
君と共に
君と共に |
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私は生まれつき目が見えない。私にとって、この世界はただの闇で、どんな様子なのか知ることはできない。 ある夜、室内を荒らす物音で目が覚めた。どうやら盗人のようだ。 本来はここに金目のものなどないと気づいた彼が離れるのを待つつもりだったが、血の匂いがした。彼は傷を負ったのでは? 傷薬は窓辺の箪笥の中にあると、私は彼に言った。彼は少し驚いたようだったが、半信半疑で傷薬を取りに行った。 私は彼に話しかけた。あまりにも長い間人と話をしていなかったせいで、私は寂しかったのだ。 彼は自分のことを教えてくれた。例えば、どうして盗みを働くのか。でも私達が一番夢中になって話したのは、外の世界がどれだけ美しいかについてだった。 それ以来、彼は時々私を見舞ってくれるようになり、私の唯一の友達になった。 ある日、彼の足取りはやけに重くて、とてもきつい血の匂いを身にまとっていた。私が薬を塗ってあげると言うのすら断った。 彼はこの一生でどこに行き、誰に会い、何を経験したかについて、とめどなく話し続けた。 最後に彼がありがとうと言った後、言葉が途切れた。 彼がまだ息をしているか、確かめるのが怖い。私が悲しみに溺れていると、花が咲く音が聞こえた。 私の目が見えるようになったようだ。誰かの声が言った、ここには艶かしく美しく咲き誇る花の海があり、彼がいると。 これもある意味、願いが叶ったと言えるだろう。このまま彼と一緒に眠ろう。 |
無上の宝
無上の宝 |
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私の兄は病に罹って死んだ。私達には薬を買うためのお金がなかったから。 私の友達は借金取りに殺された。彼の家には借金を返すためのお金がなかったから。 お金で人の命を買うことができる。それは私が学んだ、一番重要な理。 私はあらゆる手を使ってお金を集めた。この光る物さえあれば、もう誰もいなくならない。 そして私は、徐々にお金に惹きつけられ、金の亡者と呼ばれるようになった。 人は私のことを守銭奴、お金のためならなんでもする人でなしと罵倒した。 彼らがなんと言おうが、どうでもいい。 お金さえあれば、大切な人の命も救える。私はそのためにお金を貯める。 遠くに住んでいる妹が病にかかった。私は色んな医者を訪ね、高価な薬をたくさん買った。 今度こそ、悲劇は起こらないはずだ。私は部屋を埋め尽くすほどの薬に目を向け、安堵して笑った。 しかし彼女の容態は好転するどころか、悪化する一方だった。彼女の部屋をお金でいっぱいにしても、何の役にも立たない。 絶望の中、彼女の傍を埋め尽くす満開の赤い花が見えた。私はあの花を知っている。それは、死が間もなく訪れる場所に咲き誇る花だ。 花は私を嘲笑った。私はもう一つの理を学んだ。妹の命はお金と等価ではないと。それなら…私の命ならどうだろう? |
立身出世
立身出世 |
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父はいつも私に厳しくて、一番優秀な子供になれと言う。 私は父の厳しさの中で育った。しかし他の人がどれだけ私の知識や才能を褒めても、父は全く気にせず、私にもっと努力しろと厳しく接する。 ある時、しくじった私は父に罵倒され、あげく傷だらけになるまで殴られた。 使用人が薬を塗ってくれた時、父が私に厳しく接するのは、私のことを深く愛しているからで、愛していないからではないと言っていた。 私には分からない。父はいつも冷たい眼差しを投げてくる。その眼差しからは、全然愛を感じられない。 もしもう一度しくじったら、間違いなく父に捨てられるだろう。 私はまたしくじってしまった。今度こそ許してはもらえない。 私が流した涙は地に落ちて、赤い花を生やした。その花は、人生で一番大切な時に、私が成功するよう助けてくれると言った。 やりました、見えましたか?父上! 父上?どうして父上も泣いているのです?私は父上が望む姿になったではありませんか? でも少し眠い…お休みなさい、父上、泣かないで。 |
主な登場人物
安倍晴明 | 小白 | 夜溟彼岸花 |
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餓者髑髏(髑髏侍) | 富商/狩人/老人 | 孟婆 |
画像なし | ||
判官 | 煉獄茨木童子 | 鬼王酒呑童子 |
彼方の蓮華イベント攻略情報 | ||
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