【陰陽師】修羅狩戯ストーリーまとめ【ネタバレ注意】
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『陰陽師』の修羅狩戯イベントのストーリー(シナリオ/エピソード)「狩猟再臨」をまとめて紹介。岐道回顧(メインストーリー)と狩場の微光(欠片ストーリー)をそれぞれ分けて記載しているので参考にどうぞ。
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かすかに聞こえる泣き声、刃がぶつかり合う音、そしてどこからともなく聞こえてくる耳をつんざくばかりの轟音。【晴明】 「どうやらすでに「懲戒」は始まっているようだ。ここはもう救えない。」空、正確には頭上の結界が、眩しい光に照らされた。まるで眩しい光を放つ隕星がまもなく落ちてくるかのようだ。強風と見えない力に巻き込まれた城の楼閣は、地面から浮き上がった。晴明が残した道案内のための座標と結界も、混乱に落ちた城の中で引き裂かれた。晴明は急に手足に痛みを覚えた。落ちてくる金色の光は、光を撒き散らしながら、鋭い矢となって彼に襲いかかる。防御結界を設置したが、不思議な力を宿す強風はすぐに結界を切り裂いた。一瞬のうちに、晴明は素早く術を発動して動いた。次の瞬間にはもうその場を離れ、最も近い楼閣の中に隠れた。幾千万の金色の矢が、雨のごとく降り注ぐ。さっきまでいた場所は、忽ち眩しい光に包まれた。光が目に見えるすべてを呑み込む。眩しい光を遮った晴明は、周囲の無数の妖鬼が闇の中に逃げていくのを感じた。背後から声が聞こえる。【音声】 「おめでとう、晴明。城主は君をこの城の敵だと認めた。」少し前………… 鬼域の奥、赤い霧が辺り一面に立ち込めている。晴明の霊符の光を浴びると、霧の中に隠されていた目的地が次第に姿を現した。城門前には人も妖鬼もいなかったが、突然扉が開いた。扉の向こう側は霧が立ち込めていて、数人の朧な人影だけが見える。【晴明】 「下手な罠だな……」城の周囲は不気味なほど荒れ果てている。しかし近くには砕かれた法陣があった。古い法陣の中には、賀茂家の家紋がある。法陣に宿っていた術の力は跡形もなく消えていて、なんのために使う法陣だったのかを知ることはできない。壁の霊符が、突然彼の頭をよぎった。長い間、妖鬼の大群が現れたり、異変が起きると、人々は手紙を出し、陰陽師に調査を依頼した。しかし今回、その情報は賀茂家の壁に現れた。その燃え盛る霊符は、一同の目の前で次第にはっきり見えるようになった。誰もこの霊符のことを知らず、解析はできなかった。しかし晴明が霊符の模様を見た時、突然旧い記憶が蘇った……以前学堂で修行していた時、賀茂忠行は時折、伝承が途絶える寸前の、古の霊符について教えてくれた。これらの霊符は特別な模様を用いて、特定の手がかりや情報を伝える。そして目の前の霊符は、こんな情報を伝えていた。「今一度賀茂忠行に会いたければ、一人で修羅鬼道の最北の地を訪れよ。」この数年間、賀茂忠行は行方不明だった。しかしこの情報は、彼の行方を知っているようだ。【晴明】 「先生……」晴明は誰にも告げずに、一人で旅に出た。この時、城門の内側で立ち込める霧の中から、突然懐かしい人影が現れた。鎖が地面をひっかく耳障りな音が聞こえた後、人影は足を止め、霧の中から晴明を見ているようだ。なぜかわからないが、晴明は相手が不気味な笑顔を浮かべたような気がした。人影は晴明に向かって手を振っているようだ。そしてまた、霧の奥に消えた。目の前にある城には、幻境である痕跡は全く見当たらない。唯一の例外は、城の上空だ。晴明が霊符で調べると、結界らしいものが現れた。事情がわかった晴明は、さっき城門の方で出会った懐かしい人影を思いだした。【晴明】 「そうか……お前が私のために用意した罠が何か、もう分かったぞ。」晴明は調査をやめ、そのまま城門の内側にある霧の中に入っていった。しかし、城内に立ち込める霧は、無限に広がっているわけではなかった。数歩歩くと、晴明はもう霧を通り抜け、城の中にやってきた。この時、城の上空は赤色に染められ、絶え間なく流れる雲が立ち込めていた。振り返ると、霧も城門も最初から存在していなかったかのように、周囲には無数の屋敷とそれらを囲んだ街道が広がっていた。建物と地面には飛び散った赤い液体がついていて、生臭い悪臭を放っている。不思議なことに、晴明の頭上、重なり合う街道の上空にも空を飛ぶ建物の影が見える。そして赤い結界に囲まれるそれらの建物は、地面にも繋がっていた。城全体で、不気味な沈黙がずっと続いている。頭上に並ぶ建物は、呼吸すらできなくなるほどの威圧を放っている。城は巨獣の開いた口のようだ。恐ろしく不気味な牙の奥で、何者かが晴明を見つめている。近くの楼閣の中、とある影が素早く窓辺を通り過ぎた。晴明がすぐに追いかける。少し押すと、扉は開いた。屋敷の中は、街道ほど有益な情報が残っているわけではなさそうだ。そんな直感が頭をよぎった後、晴明は和室の引き戸にある者の影が映っていることに気がついた。扉を軽く叩いてみると、驚いたことに、賀茂忠行の声が聞こえた。【賀茂忠行】 「晴明、君か?」【晴明】 「先生?」晴明がその者の姿を確認しようとしていると、数本の鎖が扉の後ろにいる晴明を襲った。不測の事態に備えていた晴明は、霊符で鎖を防いだ。よく見ると、さっき引き戸に影を落としていたのは、人間であるかのように偽装された妖鬼の死骸だった。死骸は手足を鎖に操られ、不気味でぎこちない動きをしている。晴明は思わず振り返った。いつの間にか和室に現れた鬼童丸が、晴明が使った霊符を拾い上げ、自分の手に染み付いた赤い痕跡を拭っていた。【鬼童丸】 「客をもてなす礼儀を忘れたのかい、晴明。僕がこうしてここにいるのに、お茶の一つも出さないなんて。」【晴明】 「久しぶりだな、鬼童丸。」晴明はこっそり指で印を結んだ。この城は危険な場所だが、目の前にいる鬼童丸は、その中でも一番厄介かもしれない。【晴明】 「お前は先生に成り済ます遊びが本当に好きだな。あの手紙は一体どういうことだ?」【鬼童丸】 「手紙?手紙なんて出してないよ。」鬼童丸は昔話に飽きたようだ。彼が持つ鎖が突然動き出し、彼らの後ろにある和室の引き戸を壊した。和室の外にある長い廊下の奥から、断末魔のような悲鳴が聞こえた。同時に、紙人形を調査に遣わした晴明は、ちょうど付近をうろついていた数匹の妖鬼が、鬼童丸の鎖に貫かれるのを見た。【晴明】 「やはり鬼の城だな。」【鬼童丸】 「さっき手紙と言っていたけど、何の手紙だ?先生と関係あるのか?」【晴明】 「この世で、先生を除けば、あんな手紙を出すことができるのは、私の知る限り我々二人しかいない。」鬼童丸が素早く廊下に飛び出す。鎖を振りかざす彼は、文句を言っているようだ。【鬼童丸】 「手紙は持ってきたのか?」【晴明】 「持ってこれなかった。」【鬼童丸】 「なら中身を教えろ。」鬼童丸は少し苛ついたようだ。晴明は手紙の内容を伝えようとしていたが、突然気が変わった。【晴明】 「本当にお前ではないのか?」もし本当に鬼童丸でないなら、賀茂忠行がこの城の中にいるかもしれないことを彼に教えてはならない。【鬼童丸】 「言いたくないなら別にいい、こっちにも考えがある。」晴明は無数の鎖が廊下の中を飛び回るのを見た。廊下がますます賑やかに、騒々しくなっていく。【鬼童丸】 「晴明、匂いを嗅ぎつけた妖鬼どもが集まってきたぞ。ここで囲まれて死ぬつもりか?もしそうだとしたら、この遊びは全然面白くないね。」【晴明】 「一体何が目的だ?この怪しい城も、お前が作ったのか?」【鬼童丸】 「買いかぶりすぎだよ。これだけの数の妖鬼をここに閉じ込めてから狩りするなんて、手間がかかりすぎる。」和室の外で、どこからともなく現れた妖鬼の群れが廊下になだれ込んだ。【鬼童丸】 「もし僕の獲物になりたいなら、混ぜてやってもいい。僕が罠を仕掛け、この地の城主を狩るのを見ていてくれ。」【晴明】 「城主とは何者だ?お前にとって特別な存在なのか?」【鬼童丸】 「この城を見てくれ。こんなものでは楽しむこともできないし、城主にお礼をする価値もないと思わないか?」鬼童丸が持つ鎖が鞭のように無数の妖鬼の体を引き裂く。瞬く間に、廊下と引き戸は鮮血の海の没した。血を浴びた鬼童丸は、楽しんでいるようだ。妖鬼の血があちこちに噴き出す。血を浴びた場所は蝕まれ、狂気が漂う。周囲のまだ生きている妖鬼は狂気に取り憑かれると、より一層乱暴になった。鎖が容赦無く妖鬼の体を貫く中、鬼童丸は赤色の霧のような狂気を漂わせている。晴明は急にわからなくなった。それが血に飢えた鬼童丸の本性なのか、それとも彼も妖鬼のように狂気に支配されているのか。廊下と周囲の和室は無限に広がっているようだ。しかし晴明ははっきりと覚えている。この楼閣の中に、こんなに長い廊下はないはずだ。晴明は赤い霧を避けながら、妖鬼の包囲網を突破できる他の道を探している。光を放っている赤い窓が、彼の注意を引いた。」 |
狂気浸食
狂気浸食ストーリー |
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一瞬にして、空から頬を撫でる冷たい夜風が吹いてきた。今の鬼城は徹底的に様変わりした。晴明が来た時とは何もかもが違う。彼は空の上にいた。見下ろすと、足元には赤い灯りが灯された城が広がっている。目の前の無数の建物は地面に立っているのではなく、逆さまになって空から吊るされている。壊れた建物から、無数の廊下、和室、そして机や椅子などの家具が、むき出しになって内蔵のように建物の外に垂れ下がっている。空に浮かぶ廊下や机などは桟橋のような役割を担っている。無数の妖怪がそこを彷徨い、建物の間を行き来している。それは空を繋ぐ通路のようだ。遠くの街はすでに夜闇に融けた。さらに先を見ようとしても、何も見えない。長い翼廊は、知らないうちに彼を高空に導いていた。遠くの楼閣もまるで迷宮のように繋がっている。遠方を眺める晴明は、よく見えない雲の中に巨大な人影を見つけた。人影は城の上で、雲越しに静かに彼を観察しているようだ。【鬼童丸】 「晴明よ、この城は平安京のような平和な場所ではないぞ。この前修羅鬼道に見知らぬ妖鬼の気配が現れた。気配を辿ってここに来てみたら、賀茂家の壊れた封印を見つけた。この法陣の下には、賀茂家に封印された修羅鬼城が隠されている。ふふふ、鬼城を戻すために、僕が一肌脱いで法陣を破壊したんだ。修羅鬼道そのものは牢獄だ。ここの城主は幻境や奇景を利用して無数の罠を仕掛けた。獲物たちが様々な殺戮に身を投じるのを見るのは、彼のお気に入りの遊びなのさ。」【晴明】 「ならばお前は?深入りすれば、ここから出られなくなるかもしれないとは考えなかったのか?」【鬼童丸】 「君は僕を理解してくれてると思ってたんだけどね、晴明。網の外を彷徨うだけじゃ、獲物はつまらない血肉にすぎない。網にかかった後、生き残るための決死の足掻きこそが、面白い狩りを生み出すんだ。僕は修羅鬼道での遊びに飽きていた。でも鬼城がこうして現れた……まだよくわからないけど、ここは僕のためだけに用意された遊び場みたいだと思わないかい?」晴明は沈黙を貫いた。この前会った時に比べて、再会した鬼童丸は、狂気に満ちた深淵により深く踏み込んでいる。晴明は思わず独り言を漏らした。【晴明】 「これがお前の求めるものか……」軽やかな足取りで狩りという遊びを楽しむ鬼童丸を見ながら、晴明は周囲のますます濃くなっていく狂気から自分を守るために、次々に霊符を発動した。鬼童丸が呼び集めた鬼の群れの中には、か弱く、鬼童丸が一撃を加えるとすぐに命を落とすような妖鬼が何匹もいた。晴明は何度も彼らに守護結界をかけ、鬼の群れから離れるように誘導した。鬼童丸は全く気にしていない。晴明に助けられた妖鬼たちは、彼からすれば簡単に握りつぶせる虫けら同然だ。しかし突然、守護結界が人間の気配を捉えた。晴明はすぐに動き、調査用の紙人形を人間の気配がする和室の中に送り込んだ。迷宮のような地獄の中、ある和室の中には丸腰の人間がまだ隠れていた。【晴明】 「鬼域を通り抜けてここまでやってきたのか、一体どうやって……」【鬼童丸】 「いいことじゃないか?弱者にはこんな牢獄が必要なんだよ。残酷な森の中では、彼らこそが一番弱い獲物であることを分からせるためにね。」この時、和室の中の男が晴明の調査用の紙人形に気づいた。それが陰陽師の術だと見抜いた彼は、紙人形に近づいて助けを求めた。【男性】 「陰陽師……ここに陰陽師がいるのか!陰陽師様!ここから連れ出してください!」晴明は思わず足を止め、妖鬼と戦いながら進む鬼童丸に向き直った。鬼童丸の位置を確認した後、彼は真逆の方向に進んでいった。ある和室の中……晴明はある和室の中で、生存者の男を発見した。【晴明】 「君はどこから来た?どれくらいの間、ここに隠れていた?」【男性】 「外は昼も夜も同じだから、どれぐらい経ったのかはわかりませんが、陰陽師様!助けに来てくれたんですね!」晴明が周囲を見渡す。【晴明】 「外に比べれば、ここに残ったほうが安全かもしれない。君を守る式神をここに残していこう。出口を見つけたら、すぐに戻ってここから連れ出す。」助けを求める男はそれを拒絶した。【男性】 「いやです……これ以上待てません。陰陽師様、俺はここに来た後、妻と娘とはぐれてしまいました。お願いです、一緒に探してくれませんか?」懇願する男は、話しているうちに、目が次第に赤くなり、手足からも赤い狂気を漂わせ始めた。 |
狩りの鬼
狩りの鬼ストーリー |
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【男性】 「ありがとうございます……陰陽師様、お願いです、俺を連れて……」彼はまだ妻と娘のことを案じている。もしこのままここを去れば、男に憑いた狂気が再び暴れ出すかもしれない。晴明は印を結び、数体の式神を呼び出した。いくつかの術式の光が和室から周囲に拡散していき、他の人間がこの城に残した痕跡を探し始めた。【晴明】 「君は私と一緒に来てくれ。家族がどこにいるかわかるか?」【柳田】 「陰陽師様、俺のことは柳田と呼んでください!妻と娘が今どこにいるのかは……俺にもわかりません。無事なのかさえも……」【晴明】 「なぜここに来た?ここは修羅鬼道、妖鬼ですら暮らせない場所だ。」【柳田】 「少し前、俺の娘は行方不明になりました。娘は消える前、鬼域の近くで面白い童歌を聞いたといつも言っていました。娘はきっと鬼域に行ったと思い、俺と妻は勇気を出して娘を探しました。そしてついに、助けを求める娘の声が聞こえたのです。俺は声をたどって、以前陰陽師が使っていた脇道だけを通ってきました。そうすればきっと大丈夫だと思っていました。この辺りに来た時、賀茂家の家紋を見つけたので、中に入ればきっと助かると思ったんです!しかし……陰陽師様、俺たちはここから出られますか?」【晴明】 「心配するな、私の側を離れなければいい。今一番の不確定要素は……彼だ。」狩りを楽しみ、弱い命に目もくれない鬼童丸は、恣意的に殺戮から生まれてくる城の狂気を集めている。彼の行方を把握しなければ、城にいる人間たちは、おそらく生き残ることさえ困難だ。 長い廊下の中…… 鬼童丸に追いついた時、晴明ですらも彼が纏う凄まじい狂気に驚かされた。目の前の鬼童丸は体中を狂気に蝕まれ、赤い目は怪しく光っていて、その鬼気と狂気は絶えず争い続けているようだ。鬼童丸は突然不気味な笑みをこぼした。鎖が廊下を駆け巡り、鬼童丸も残影を残すほどの素早い動きで晴明から離れると、その先にある鬼の群れの中に飛び込んだ。 |
終・鬼跡無影
終・鬼跡無影ストーリー |
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陰陽術が何度も押し寄せてくる妖鬼たちを撃退した。しかし集まってきた妖鬼はますます強くなっている。素早く拡散していく狂気が、今にも晴明を呑み込んでしまいそうだ。妖鬼がそう多くないおかげで、陰陽術はすぐ優勢になった。この時、晴明と鬼童丸の足元の廊下と楼閣が、突然動き始めた。瞬く間に、赤い空と楼閣が反転した。一本の赤い鎖に導かれる中、耳元で鬼童丸の声が聞こえる。 「ふふふ、やはり君も妖鬼と戦うことを望んでいるんだね……僕が助けてあげようか?」 空の中に聳える朧気な悪鬼の姿が少しずつ彼らに迫ってくる。目の前に広がる道の中に、鬼童丸の姿はもう見当たらない。今度の彼は敵なのか、それとも味方なのか? |
生死の選択
生死の選択ストーリー |
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鎖が霊符を一撃で破壊する。鬼童丸の冷たい殺意が狂気の中で拡散していく。【鬼童丸】 「今回は僕の邪魔をしないと思ったんだけどね、見損なったよ。」【晴明】 「最初から理性を持たない妖鬼を止めることはできないが、なんとか生きようとしている人間を、見捨てる訳にはいかない。」【鬼童丸】 「晴明、君はいつも負担にしかならないことを背負い込むから、つまらない獲物になったんだよ。僕たちは、素晴らしい狩りができるはずだったのに。」【晴明】 「悪いな、私は人の世の瑣事が好きなんだ。」【鬼童丸】 「そんなに急いで拒否しなくても、君に機会をあげるよ。一緒に遊びに参加して、狩場の果てで城主と戦おう。ここから離れて、他の方法を探してもいい。ただし、今度会ったら、君はもう僕の獲物だ。」 |
終・狂乱の中
終・狂乱の中ストーリー |
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楼閣の外の上空に、無数の妖鬼が集まっている。瞬く間に、黒い狂気も集い始めた。あっという間に、赤い空と楼閣が反転した。晴明は動き続ける部屋や廊下を通り、何度も何度も妖鬼と激戦を繰り広げた。黒い狂気が体を蝕み続けているせいで、意識が次第に遠のいていく……混乱の中、鬼童丸の嘆きが聞こえた。 |
目と鼻の先
目と鼻の先ストーリー |
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隣にいる柳田は緊張しているようだ。【柳田】 「陰陽師様、今の調子で、本当に城主に会えるのですか?」【晴明】 「網の中で、圧倒的な力で同類を食い散らす獲物は、すぐに狩人に目をつけられてしまう。しかし狩人が動き出す瞬間こそが、獲物が本当に牙を剥く時だ。鬼童丸は……それをよく知っている。」晴明は霊符を放ちながら、途中で見つけた弱い妖鬼を確保した。自制もできず、霊符を使っても制御できない妖鬼たちは、鬼の群れに飛び込み、殺し合いに身を投じた。一部の妖鬼の服についている賀茂家の家紋が晴明の注意を引いた。【晴明】 「柳田さん、ここで出会った陰陽師は、私一人だけか?」柳田は少し戸惑った後に頷いた。その後、晴明は火をおこして妖鬼の服の家紋を燃やした。驚いたことに、家紋の灰は文字となって晴明の手の中に舞い落ちた。【晴明】 「これは先生の術だ。言葉を霊符に変えてしまう。その霊符の情報を手に入れるには、他の陰陽術を使う必要がある。そうすれば秘密も手紙も守れる。まさか先生は、本当にここにいるのか……」しかし今晴明の手の中にあるのは、ただの霊符でしかない。これは以前陰陽道について学んでいた頃、彼が考え出した、すぐに捨てられた霊符だ。彼と賀茂忠行以外、誰も知らないはず。【晴明】 「先生、この霊符には一体何の意味が……」この時、鬼童丸がいたずらっぽい笑顔を見せた。【鬼童丸】 「へえ?この前一部の妖鬼から同じ印を発見したけど、本当に残念だったよ。」【晴明】 「何が残念なんだ?」その瞬間、鬼童丸は笑みをこぼした。彼の手の中に、半分になった賀茂家の家紋が見える。【鬼童丸】 「ちょっと調べてみたけど、ただの不完全な変わった霊符だよ。僕にとっては意味がないものだったから、そのへんに捨てた。」【晴明】 「本当に霊符でしかないのか?」【鬼童丸】 「霊符は適当に鬼の群れの中に捨てたけど、まだそこにあるかは、自分で確かめてよ。でも霊符を探しながら、この弱者を守るなんてことができるかな?」 |
正体顕露・手紙
正体顕露・手紙ストーリー |
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これもまた罠なのか?賀茂忠行が残した情報は複雑なものかもしれないが、見過ごす訳にはいかない。長年の間、行方不明になった彼は己の言葉をこの牢獄に刻み込み、いつか誰かに伝わるのを待ち続けているのかもしれない。晴明は覚悟を決めて鬼の群れの中に飛び込んだ。周囲に霊符を放ちながら、たった一切れの紙である手紙を探す。晴明が見つけた手紙には、誰かが残した赤い痕跡がついていた。霊符であるだけではなく、文字も書かれている。それは間違いなく賀茂忠行の筆跡だ。 「大切な物を探すため、私は以前鬼王の死骸を封印した地にやってきた。調査の途中、仲間は次々と不幸な事故に見舞われ、誰一人生き残らなかった。」 「ここから脱出するには、これに頼るしかないかもしれない。」 手紙の最後には、複雑な霊符が描かれている。それは紛れもなく、以前晴明が作った霊符をもとにしたものだった。しかし霊符の一部は赤く塗られていて、細部がわからない。何か思いついた晴明は、黙って霊符を懐にしまい込んだ。この時、無数の妖鬼がようやく空の楼閣から抜け出し、そのまま歪んだ空に向かっていった。時を同じくして、渦巻く狂気も洪水のように溢れ出てきた。瞬く間に晴明の目が届く範囲のすべてを赤く染め上げた。赤い結界は融けていく空のように頭のすぐ上を覆っている。狂気は立ち込める霧となり、皆を徹底的に包み込んだ。霧は次第にぼんやりとした姿になった。それは空の向こう側で皆を見つめる、遠くの巨大な影だった。鎖を振りかざした鬼童丸が高空に佇み、一同を見下ろしている。鬼の群れの数多の妖鬼は、虫けらのように彼の足元を彷徨っている。【晴明】 「狩人が……ようやく網の異常に気づいたか。」【鬼童丸】 「晴明、今回、僕には君という手札がある。」【晴明】 「どうやらこれまでにも、何度も争ってきたようだな。」【鬼童丸】 「今度は、彼が先に僕の罠をぶち壊すかな、それとも僕が先に彼の網を引きちぎるかな?」話している間に、城主の朧な影が鬼の群れの中に入り、無数の妖鬼に取り憑いた。目を赤く光らせた妖鬼たちが、晴明に飛びかかってきた。【晴明】 「我々はついでに利用されたようだ。」【柳田】 「陰陽師様、この赤い狂気、触れたらまずそうです……戦う以外の選択肢はありませんか?」 |
救護の手紙
救護の手紙ストーリー |
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【晴明】 「ここから脱出するには、これに頼るしかないかもしれない。」【柳田】 「これは?」【晴明】 「以前宿題として私が作った霊符だ。もともと、一部の弱い妖鬼はこれで妖気を抑え、人間と共存できると証明するためのものだったが……」賀茂忠行はこの霊符の効用は確かなものだが、改竄され、濫用される危険があると言った。今、賀茂忠行は何らかの理由でその一部を変えた。晴明は指先を噛み、その血で素早く紙札の上に不完全な霊符を描き出した。欠けたところを描く時、彼は少し躊躇った後、直感を頼りに補足した。【晴明】 「先生、これで合っているでしょうか。」 |
正体顕露
正体顕露ストーリー |
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この時、無数の妖鬼がようやく空の楼閣から抜け出し、そのまま歪んだ空に向かっていった。時を同じくして、渦巻く狂気も洪水のように溢れ出てきた。瞬く間に晴明の目が届く範囲のすべてを赤く染め上げた。赤い結界は融けていく空のように頭のすぐ上を覆っている。狂気は立ち込める霧となり、皆を徹底的に包み込んだ。霧は次第にぼんやりとした姿になった。それは空の向こう側で皆を見つめる、遠くの巨大な影だった。鎖を振りかざした鬼童丸が高空に佇み、一同を見下ろしている。鬼の群れの数多の妖鬼は、虫けらのように彼の足元を彷徨っている。【晴明】 「狩人が……ようやく網の異常に気づいたか。」【鬼童丸】 「晴明、今回、僕には君という手札がある。」【晴明】 「どうやらこれまでにも、何度も争ってきたようだな。」【鬼童丸】 「今度は、彼が先に僕の罠をぶち壊すかな、それとも僕が先に彼の網を引きちぎるかな?」話している間に、城主の朧な影が鬼の群れの中に入り、無数の妖鬼に取り憑いた。目を赤く光らせた妖鬼たちが、晴明に飛びかかってきた。【晴明】 「我々はついでに利用されたようだ。」【柳田】 「陰陽師様、この赤い狂気、触れたらまずそうです……戦う以外の選択肢はありませんか?」 |
終・狩りの始まり
終・狩りの始まりストーリー |
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数多の妖鬼に取り憑いた鬼王の力が後退した瞬間、晴明が投げた霊符が封印のように、妖鬼たちの動きを封じ込んだ。妖鬼たちは次第に落ち着いていき、その身から溢れ出る狂気も消え始めた。【柳田】 「この霊符は狂気を鎮められるのですか!」【晴明】 「いや……この霊符はまだ不完全だ、長くはもたない。」遠くの空から夜風が吹いてきた。空気の中には、今までにない不吉な生臭い匂いが漂っている。晴明の耳元で、聞き慣れない囁き声が響く。【城主】 「狂気を抑える霊符か……本当に厄介な獲物だ……」囁きと共に、頭上の赤い空が融けるように歪んでいく。遠方の遥かな空に、金色の光が現れた。拡散する光が空から降り注ぎ、皆のいる楼閣を襲ってきた。空を見上げる鬼童丸は、意外なことに傲慢な笑顔を見せた。次の瞬間、さっきまで晴明の側にいた彼は消えたが、彼の笑い声はまだ晴明の耳元で響いていた。【鬼童丸】 「はははは、晴明よ、狩人の網にかかった途端、城主は自ら裁きを下し、君を排除しなければならない存在だとみなした。やはり君を手札に加えたのは、正しかったよ。」眩しい光の中から、幾千万の金色の矢が降り注ぐ。空から吹いてくる強風が、あらゆる術式を引き裂いた。晴明は仕方なく柳田を連れて、廊下の中に撤退した。己の目で見てはいないが、晴明は感じた。懐かしい知り合いは今、背後で不気味な笑顔を湛えていると。【鬼童丸】 「おめでとう、晴明。城主は君をこの城の敵だと決めた。」【晴明】 「ならばお前はどうなんだ、鬼童丸。派手に暴れたのは、城主の攻撃を誘うためか?」鎖が楼閣の窓から外に飛び出す。晴明ははっきりと見た。金色の光が消えた後、頭上の結界は少し色褪せたようだ。無数の廊下と壊れた家具が空に浮き、集まって確かな道となった。そして廃墟と絡み合う鎖が作った道は、上空の朧な城主の人影まで通じていた。【鬼童丸】 「あがくといい、晴明。ここの城主はつまらない狩りを繰り返しているせいで、とっくに眠りに落ちそうになっている。この城でもがき、君の生命力で彼を呼び起こすんだ。その時、僕の狩りが始まる。」 |
浮島
鬼域追憶
鬼域追憶ストーリー |
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浮島の中…… 以前は屋敷だった無数の歪んだ廃墟が、至る所にある。赤い日光に照らされる中、たまに誰かが静かに皆の視界の端を通りかかる。 真っ暗な窓と崩壊した壁は歪んでいて、まるで彼らを覗く巨大な死体のようだ。【晴明】 「先生、私はここに来る前、先生に会いたければこの城に来いという内容の手紙を受け取りました。今までどこにいらっしゃったのですか?皆ずっと探していましたが、有益な情報は得られませんでした。」【鬼童丸】 「先生、まさかまだあれに拘っているのか?てっきり、とっくに覚悟できてると思ってたけど。」【賀茂忠行】 「話せば長くなる。今は昔話をしている場合ではない。」【鬼童丸】 「へえ、先生は真面目だな。何か僕に知られたらまずいことでもあるの?」【賀茂忠行】 「鬼童丸、要件を全うするまで、私は君を見張り続ける。」【鬼童丸】 「ふふふ、先生、その要件も、僕のと同じかもしれないよ。まさか、僕の獲物を横取りするの?」賀茂忠行は側から時々彼らの様子を覗いている柳田を見やった。【賀茂忠行】 「晴明、この城で何人の人間を見つけた?」【晴明】 「まだ調査中です。先生、先生が残してくださった情報によれば、先生は以前同僚たちと一緒にここに入ったようですが、一体何があったのですか?」【賀茂忠行】 「手紙にあったように、我々はある大切なものを探しに来た。」【晴明】 「彼らは事故に巻き込まれたのですか?今は無事なのですか?」【賀茂忠行】 「彼らを見つけ出すには、先に城主をなんとかしなければならない。この城はまだ完全に混乱に陥ってはいない。妖鬼たちがこれ以上目覚める前に、今こそ動かなければ。」【柳田】 「この城は、どうすれば徹底的に混乱に陥りますか?」【鬼童丸】 「狩りの時、獲物に呼吸を整える暇すらも与えなければ、獲物はすぐに力尽きて死んでしまう。網にかかった新しい獲物だけが、生存本能に突き動かされてもがき始める。」優しい笑顔を湛えた鬼童丸が、柳田に近寄る。【鬼童丸】 「どうしたんだい、弱者の君。この城に早く混乱に陥ってほしい?」【柳田】 「いやいやいや……違います……」【晴明】 「先生、何か私が注意すべきことはありませんか?」【賀茂忠行】 「この場所は今まさに変わりつつある。目下の急務は、できるだけ城主に関する思い出を集めることだ。もしかしたら……」【晴明】 「先生、陰陽師の他の生存者は?」【柳田】 「俺も妻と娘とはぐれてしまいました。陰陽師様、ひょっとしたら……」賀茂忠行は、しばらく何も言わずに考え込んでいた。【賀茂忠行】 「分かった……こうしよう、黄金の矢が落ちる場所には、必ず城主の思い出が残っている。できるだけその欠片を集めるんだ。そうすれば、城主の秘密と皆の行方がわかるかもしれない。」【晴明】 「先生、城主とは一体何者なのです?」【賀茂忠行】 「鬼童丸の鎖は、その答えを知っているだろう?」【鬼童丸】 「この城の狩りが最盛期を迎えると、彼は空より降り立ち、狩りの果実をむしり取る。」笑いながら、鬼童丸は賀茂忠行に意味深長な眼差しを投げる。【鬼童丸】 「どうして僕は、君たちに、彼の名前を教えなければならないのかな?」一同は手分けして浮島を探索すると決めた。一方、柳田は躊躇なく晴明についてきた。浮島の中、無数の壊れた建物の下には、詳しい時期こそわからないが、戦闘の痕跡がたくさん残っている。今まで数々の獲物を狩ってきた黄金の矢は、浮島の廃墟に火事の跡のような痕跡をたくさん刻んだ。たまに残っている矢はどれも、浮島は真の戦場だと物語っている。 |
選択・賀茂の思い出
選択・賀茂の思い出ストーリー |
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陰陽道の痕跡が残っている廃墟の中、晴明に触れられた瞬間、その矢は跡形もなく消えた。世界が一瞬にして歪む。ずっと隠されてきた十数年前の戦闘の光景が、晴明の目の前で再現された。賀茂忠行と陰陽師たちはたくさんの妖鬼の間で立ち回り、人々を連れて無理矢理包囲網を突破した。脱出できた皆はようやく幾許かの休憩時間を手に入れたが、最も若い陰陽師の手足に突然狂気が溢れ出した。【陰陽師甲】 「先輩……俺は一体どうなってるんだ?」若い陰陽師が慌てて隣の先輩陰陽師に助けを求める。しかし先輩の方はもう目が赤くなり、体まで変形し始めていた。【陰陽師乙】 「うう……ああああ!」彼は咆哮しながら近くにいた仲間に飛びかかり、その腕に噛みついた。一方、体中から狂気が溢れる陰陽師の両手からは鬼の爪が生え、側にいた陰陽師の喉を切り裂いた。一瞬にして、さっきまで互いを信頼し、守っていた陰陽師たちは、狂気の侵食を受けて仲間を手に掛ける悪鬼となった。混乱の中、まだ辛うじて最後の理性を失わなかった賀茂忠行は、霊符の力を借りて強引に体内の狂気を抑えていた。重賞を負った陰陽師が這ってきて、賀茂忠行の足元で倒れた。少し理性を取り戻した彼は、賀茂忠行に助けを求める。【怪我をした陰陽師】 「賀茂さん……助けて……」思い出は急に途切れた。地獄のような光景は一瞬にして消えた。よろめき、少し後退りした後、晴明は自分が現実に戻ったことに気づいた。そんな混乱した、危険な状況下で、周囲の仲間が次々と悪鬼になっていく。いつ自分を襲ってくるかもわからない。同時に自分も正気を保つのに精一杯で、いつ狂気に呑み込まれてもおかしくない。そんな地獄から脱出するために、賀茂忠行は一体どんな対価を払ったのか? |
選択・城主の思い出
選択・城主の思い出ストーリー |
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晴明は焼け跡のような痕跡が残る矢じりに近づく。術で調べてみると、燃え尽きたはずの矢じりが再び金色の光を放ち始めた。今度も十数年前の光景が晴明を呑み込んだ。負傷した賀茂忠行は、とぼとぼと荒れ果てた城を歩いていた。ぼんやりとした人影が、彼の目の前に降り立った。巨大で傲慢な人影が、賀茂忠行を見下ろしている。【城主】 「お前が同胞にしたことが、お前を最強の獲物にした。お前はお前の力を証明した。今、我が肉体の滋養となれ。獲物はやがて狩人に喰われる、それはお前に与えられた崇高なる宿命だ。」城主が賀茂忠行に手を差し伸べる。晴明が賀茂忠行の表情を確認するよりも先に、思い出は消えてしまった。 |
賀茂の行方
賀茂の行方ストーリー |
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浮島は相変わらず静けさに包まれている。今度の調査はどこかに潜んでいる妖鬼に気づかれたようだ。廃墟の中から、何者かが密かに一同を観察している。いつの間にか、鬼童丸が晴明の背後に現れた。【鬼童丸】 「賀茂先生はここで、素晴らしい経験を得たようだね。」【晴明】 「我々が見たのはほんの一部に過ぎない。先生たちも何か手がかりを見つけたかもしれない。」【鬼童丸】 「何年も会っていなかったけど、彼はますます純粋になってた。目に映る妖鬼を討ち滅ぼすことしか考えていない彼は、行方不明になった仲間には興味がないみたいだね。」【晴明】 「先生はそんな人ではない。」【鬼童丸】 「ここは普通の戦場じゃない。ここにあるのは普通の生死だけじゃない。あらゆる手を尽くしても逃げられない牢獄の中、獲物たちは偽りのない本性を晒す。先生も例外じゃないかもね。それにその方が面白いよね?」【晴明】 「鬼童丸、例え狩場の中であっても、全員が大人しく獲物になり、皆が「殺戮」という生き様に従うわけではない。」【鬼童丸】 「うーん……やっぱり君はつまらないね。」浮島は複雑な構造に見えるが、実はそんなに大きくない。しばらくして、皆は目当ての物がある可能性の大きい二つの場所を特定した。一つは賀茂忠行の幻のすぐ近くにある昔の戦場。もう一つは、すでに倒壊した楼閣。今度は廃墟を調べに行く、途中で妖鬼が潜む場所を通ることになるかもしれないと聞いた柳田は、少し躊躇った。【柳田】 「陰陽師様……俺、俺は、廃屋の方に行きたいです。」【晴明】 「構わない。ならば、手分けして探そう。」 |
選択・古戦場
選択・古戦場ストーリー |
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晴明は霊視を使い、重なる廃墟の下に人間の骸骨を見つけた。骸骨は破れた狩衣を着ている。狩衣にある賀茂家の家紋はいまでもはっきりしているが、その持ち主はもう骨しか残っていない。目の前の骸骨を見て、晴明は賀茂忠行に何か言おうとしたが、最後には仕方なく言葉を呑んだ。一方、鬼童丸は楽しそうにしている。【鬼童丸】 「この骨にあるのは、刀で斬られた傷かな?」【賀茂忠行】 「同士討ちの悲劇は、この地で何度も何度も起きた。」【鬼童丸】 「先生、この人は先生の仲間だよね?それでも何も感じないの?よく見る光景なのかな?」【晴明】 「鬼童丸、黙ってくれ。」一同は引き返し、元の場所で待っている柳田を探しに行った。遠くから、柳田の肝をつぶされたような悲鳴が聞こえた。【柳田】 「助けて!助けてください!」足早に動いた晴明は、まだ人の形をした女の子が狂気を漂わせ、目を赤くして、倒れた柳田を襲おうとしているのを遠くに見た。現れた晴明たちがすぐに少女の注意を引いた。彼女はなんとか体を起こすと、一番最初に近づいてきた晴明を攻撃した。晴明は仕方なく霊符で少女を制圧した。少女の名を叫ぶ柳田の声を聞いた後、彼は少し手を緩めた。 |
選択・古屋敷・壱
選択・古屋敷・壱ストーリー |
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晴明が誰もいない古屋敷に戻ると、柳田もすぐ追ってきた。彷徨う妖鬼は三々五々、古屋敷の間に佇んでいる。ぱっと見ただけでは、死体と見間違えてもおかしくない。賀茂忠行は、娘の名前を呼ぼうとする柳田を止めた。【賀茂忠行】 「余計なことはするな。」一方、晴明はすでに霊視を使って、無数の魂の中から人間の魂を探し始めていた。【晴明】 「もう手遅れだ……気をつけろ。」言った側から、不気味な廃屋から急に物音が聞こえた。小柄で、真っ赤な目の少女がふらふらと歩いている。鋭い牙がむき出しになった、恐ろしい姿をしている。闇の中から鬼が飛び出してきた。少女に感づいた妖鬼は、荒々しく彼女に飛びかかっていく。しかし少女は逆に妖鬼を捕まえると、その体から肉を噛みちぎった。」【妖怪化した少女】 「お父さん……お父さん……」少女は足掻きながら途切れ途切れに言葉を発していたが、すぐ狂気に取り込まれて理性を失い、皆を襲ってきた。 |
選択・古屋敷・弐
選択・古屋敷・弐ストーリー |
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晴明が誰もいない古屋敷に戻ると、柳田もすぐ追ってきた。彷徨う妖鬼は三々五々、古屋敷の間に佇んでいる。ぱっと見ただけでは、死体と見間違えてもおかしくない。ここの狂気は非常に強烈だ。近づいた途端、皆の存在に気づいた赤い霧の中から、かさかさという音が聞こえてきた。這い出してきた無数の妖鬼が、皆を囲んだ。少女は妖鬼の群れの中で、目を赤くして理性を失っていた。その少女の顔を見るやいなや、柳田は悲しい声で叫んだ。【柳田】 「春!」 |
選択・対抗する
選択・対抗するストーリー |
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霊符はなかなか春に憑いた狂気を祓えない。むしろ刺激を受けた狂気のせいで、春の手足は歪み、崩れそうになっている。晴明が自分の手を見ると、いつの間にか、狂気は彼の体をも蝕み始めていた。 |
選択・少女を守る
選択・少女を守るストーリー |
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晴明が狂気を抑える霊符を使うと、暴走していた春は、次第に落ち着いて動きを止めた。霊符に慰められ、狂気に囚われていた春は幾らか理性を取り戻したようだ。柳田が駆け寄り、娘を抱きしめた。【柳田】 「すまない……春、俺はもうあんなことはしないから……許してくれ……」【春】 「お父さん、あたしがお父さんとお母さんを守るから……泣かないで……」 |
父の守護
父の守護ストーリー |
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【鬼童丸】 「晴明、見たか?弱者は同類しか受け入れない。例え血を分けた家族でもだ。いざ死の危険が迫った時、自分を守ってくれる者がいなかったら、彼は一体どうするだろうね?」浮島の端…… 新しい生存者を見つけられなかった一行は、次の場所に続く道を探し始めた。賀茂忠行が霊符で廃墟の重い瓦礫を動かして、浮島を出る桟橋を作ろうと試みるが、そのたびに桟橋は強風に吹き飛ばされ、地面に落ちてしまう。【賀茂忠行】 「どうやら、狂気は多少なりとも我々の力にも影響しているようだ……ここの結界を弱めなければ、城主に近づくこともかなわない。」いつの間にか、城の中から赤い霧が広がってきた。這い出す妖鬼が立てる音と囁きが聞こえる。【賀茂忠行】 「鬼童丸はどこだ?」【晴明】 「まずい……」話しているうちに、無数の鎖が音を立てて飛んでいく。鬼童丸が遠くから、多くの妖鬼を誘き寄せてきた。鎖に追い立てられる妖鬼は数が多く、以前の鬼の群れにも劣らない。【賀茂忠行】 「鬼童丸!なんてことを……」【鬼童丸】 「城主を惹きつけ、結界を弱まらせるにはこれが一番の方法だろ?鬼の群れを殲滅せよ!さもなくば呑み込まれるぞ!」殺しても殺してもきりがないほどの妖鬼の大群が押し寄せてくる。【晴明】 「迎撃すると、狂気に蝕まれる恐れがある。結界で対抗するだけでは、座して死を待つにも等しい。」【鬼童丸】 「先生、城主と勝負したくて居ても立っても居られないんじゃなかった?今こそ、腕の見せ所だよ!なんといっても先生は城主の一番のお気に入り、最強の獲物だからね。」凄まじい狂気を前にして、晴明は思わず柳田と春を後ろに庇った。しかし狂気が集まるにつれ、皆の体に憑いた狂気も影響を受けた。晴明は無事だったが、賀茂忠行と鬼童丸は体中に狂気を漂わせ始めた。しかし鬼童丸はむしろ楽しんでいるようだ。彼は大笑いし、鎖を振りかざしながら鬼の群れの中に飛び込んだ。体を狂気に蝕まれた柳田はすでに目を赤くして、皆を囲む鬼の群れを見つめている。【晴明】 「よりによってこんな時に……狂気を抑える霊符の効果が切れ始めた。」鬼になりつつある柳田は苦しそうに叫びながら、振り返って春を抱きしめ、自分の体を使って鬼の群れが漂わせる狂気から彼女を守っている。【柳田】 「春、俺が守ってやると約束しただろう。陰陽師様!俺も戦います。俺が妖鬼の注意を引くから、どうか春を守ってください!」そう叫びながら、柳田は腰にさしていた戦場で拾ったぼろぼろの刀を抜いた。狂気が暴れ、両腕の筋肉が盛り上がり、彼に力を与える。【春】 「お父さん!」【鬼童丸】 「こんな弱者でも、狂気のおかげで、戦えるようになったんだね……」 |
父の殺意
父の殺意ストーリー |
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【鬼童丸】 「晴明、見たか?弱者は同類しか受け入れない。例え血を分けた家族でもだ。いざ死の危険が迫った時、自分を守ってくれる者がいなかったら、彼は一体どうするだろうね?」浮島の端。 新しい生存者を見つけられなかった一行は、次の場所に続く道を探し始めた。賀茂忠行が霊符で廃墟の重い瓦礫を動かして、浮島を出る桟橋を作ろうと試みるが、そのたびに桟橋は強風に吹き飛ばされ、地面に落ちてしまう。【賀茂忠行】 「どうやら、狂気は多少なりとも我々の力にも影響しているようだ……ここの結界を弱めなければ、城主に近づくこともかなわない。」いつの間にか、城の中から赤い霧が広がってきた。這い出す妖鬼が立てる音と囁きが聞こえる。【賀茂忠行】 「鬼童丸はどこだ?」【晴明】 「まずい……」話しているうちに、無数の鎖が音を立てて飛んでいく。鬼童丸が遠くから、多くの妖鬼を誘き寄せてきた。鎖に追い立てられる妖鬼は数が多く、以前の鬼の群れにも劣らない。【賀茂忠行】 「鬼童丸!なんてことを……」【鬼童丸】 「城主を惹きつけ、結界を弱まらせるにはこれが一番の方法だろ?鬼の群れを殲滅せよ!さもなくば呑み込まれるぞ!」殺しても殺してもきりがないほどの妖鬼の大群が押し寄せてくる。【晴明】 「迎撃すると、狂気に蝕まれる恐れがある。結界で対抗するだけでは、座して死を待つにも等しい。」【鬼童丸】 「先生、城主と勝負したくて居ても立っても居られないんじゃなかった?今こそ、腕の見せ所だよ!なんといっても先生は城主の一番のお気に入り、最強の獲物だからね。」凄まじい狂気を前にして、晴明は思わず柳田と春を後ろに庇った。しかし狂気が集まるにつれ、皆の体に憑いた狂気も影響を受けた。晴明は無事だったが、賀茂忠行と鬼童丸は体中に狂気を漂わせ始めた。しかし鬼童丸はむしろ楽しんでいるようだ。彼は大笑いし、鎖を振りかざしながら鬼の群れの中に飛び込んだ。体を狂気に蝕まれた柳田はすでに目を赤くして、皆を囲む鬼の群れを見つめている。【晴明】 「よりによってこんな時に……狂気を抑える霊符の効果が切れ始めた。」妖鬼が彼らの側を通りかかった瞬間、柳田は反射的に血の染み付いた春の上着を妖鬼の方に投げ、鮮血が妖鬼の注意を引いてくれることを願った。【柳田】 「春、俺もわざとじゃないんだ……いい子だから……言うことを聞いて、勝手に走り回らなければ大丈夫だ……」春の狂気が、霊符の効果が切れた途端に再び暴れだした。呻き声とともに、目が赤くなり、理性も奪われていく。目に狂熱と悲しみが宿った柳田は手を震わせ、涙を流している。彼も次第に理性を保てなくなっていく。皆が狂気に囚われていく柳田を見ている。鬼童丸だけが笑い出した。【鬼童丸】 「先生、見たか?いくら守ってあげても、これが弱者たちの本性なんだよ。」 |
選択・柳田を守る
選択・柳田を守るストーリー |
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晴明が霊符を投げると、次の瞬間、柳田と春の周囲に結界が張られた。晴明は慰めるかのように、柳田の狂気を漂わせる肩に手を置いた。【晴明】 「春が狂気の侵食から自分を守るには、父親の慰めが必要だ。だから自分を守れ。」【柳田】 「春はこの城を出るべきなんです……」【晴明】 「大丈夫だ、私がいる。」しかし狂気の侵食が進み、目が赤くなり、肉体が歪み、筋肉が形を変えた柳田は、咆哮しながら目の前の結界を壊そうとした。【春】 「お父さん!」 |
選択・妖鬼を倒す
選択・妖鬼を倒すストーリー |
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柳田に憑いた狂気も素早く拡散していく。妖鬼を数匹斬り伏せた後、柳田は意識を失い、膝をついた。鬼童丸が彼の前に立ち、見下ろしている。【鬼童丸】 「人間は本当に弱いね。いっそ妖鬼になったらどうだい?」柳田の肩を掴むと、鬼童丸は自身の狂気で柳田の変形を促しながら、妖鬼たちと戦っている晴明を笑顔で観察している。彼は柳田に語りかけているようで、同時に晴明にも語りかけているようだ。混戦模様の中、彼は自分をもっと楽しませるための争いを唆す。【鬼童丸】 「この城では、今の君は真の狩人、無数の妖鬼は君の獲物だ。これは狂気に与えられた自由。このまま妖鬼になれば、人間でいるよりも大きな自由が手に入るんじゃないかな?」 |
選択・妖鬼を迎撃する
選択・妖鬼を迎撃するストーリー |
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鬼の群れに巻き込まれた者は、自分を守るだけで手一杯だ。空に巣食う狂気に対し、晴明はなんとか霊符を放ち、眩しい雷を呼び出して突破口を切り拓いた。鬼の群れの端で、妖鬼となった春は恐ろしい殺意を漂わせ、周囲の夥しい狂気を吸収しながら、何か呟いている。【妖怪化した春】 「殺す……悪鬼を殺す……」春は一番近い場所にいた父親を捕まえた。狂気によって圧倒的な妖力を得た少女は、柳田の首筋に噛みつき、こう言った。【妖怪化した春】 「お父さんとお母さんを守る……」春の姿が再び動き出した鬼の群れに消えていく。晴明の背後から、鬼童丸の嘆きが聞こえた。【鬼童丸】 「生死を分かつ危機になると、やっぱり娘の命よりも、我が身が大切なんだね……」そう言いながら、鬼童丸は皮肉めいた笑顔を見せた。【鬼童丸】 「なのに、愛という大義名分で偽るなんて、それこそ虚偽と臆病が紡ぎ出す牢獄だよ。晴明、鬼の残酷さに比べて、人間の残酷さはどうだい?」話しているうちに、鬼の群れが集まってきて、皆を囲んだ。 |
竜の暴君
選択・竜の暴君ストーリー |
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晴明は狂気を抑える霊符を放ったものの、強烈すぎる狂気の中ですぐに粉々になった。賀茂忠行も霊符を一枚取り出した。晴明が目をやると、それも子供の頃の自分の霊符をもとに作られたものだった。ただし、最後の部分は彼が補足したものとは似ても似つかない。柳田が体を震わせながら、咆哮して賀茂忠行に飛びかかる。賀茂忠行は避けることなく、柳田の眉間に向かって霊符を投げた。しかし突然二人の間に割り込んだ鬼童丸が霊符を掴んだ。霊符が彼の手にひどい火傷の痕を残す。【鬼童丸】 「まだ完全に妖鬼になっていない人間を、容赦なく殺そうとするとはね。先生、同胞を手にかけることの素晴らしさをやっと理解できた?」【賀茂忠行】 「柳田さんは並々ならぬ執念を持っている。狂気を当てられた彼はきっと強い鬼になる。このままでは、城主との戦いに悪影響しかない。」賀茂忠行の目を見た晴明は、急に馴染みのない冷たさを感じた。【晴明】 「先生が残された霊符は、人を助けるためのものではないのですか。」【賀茂忠行】 「これは一撃で城主を滅ぼすために作った霊符だ。晴明、この城の連中はどうにもならない者ばかりだ。だからこそ一刻も早く、城主の正体を突き止めるべきなんだ。」鬼童丸の焼けただれた手を見ながら、狂乱に落ちた柳田を制圧し、賀茂忠行は眉をひそめた。【賀茂忠行】 「この霊符はまだ完成していない。城主には到底勝てないだろう。もっと強く、一撃必殺となるものが必要だ。」鬼童丸が鬼の群れに抗いながら、心底楽しそうに笑う。【鬼童丸】 「はははは……晴明、君も見ただろう。この傍若無人で、執念に囚われた姿を。彼はその気があれば、いつでも鬼になれるんだ。先生、狂気に蝕まれて鬼になった仲間はどうなった?彼らもこうやって、霊符を改善するために犠牲になったのかな?」【晴明】 「先生、狂った妖鬼の血で鬼を滅ぼす霊符が作れるなら、人間の血を使えば、人を救うための霊符が作れるのではないですか?」晴明は顔色一つ変えずに、指で手のひらを引っ掻き、赤い液体に浸かっていく狂気を抑える霊符を握りしめた。【晴明】 「いずれにせよ、先生に教わったことは決して忘れません。例え地獄に落ちても、人である心を守らなければなりません。」晴明の手の中の霊符が清らかな光を放ち、ほぼ鬼となった柳田を包み込んだ。驚くことに、柳田は少し落ち着いた。晴明の向こう側で、鎖の上に立つ鬼童丸は、手を切り裂いて自分の血で賀茂忠行の真っ赤な霊符を描き出すと、笑いながら言った。【鬼童丸】 「ならば、先生、僕も力を貸しましょう。この修羅の血を使って、手段を選ばずに、もっともっと獲物を狩るんだ。獲物たちがどんな風に先生を変えるのか、楽しみにしているよ。」鬼童丸が描いた霊符が、真っ赤な光となって賀茂忠行の手の中に舞い落ちた。晴明と鬼童丸をじっと見つめていた賀茂忠行は、背後から押し寄せる鬼の群れに呑み込まれた。【晴明】 「先生!」鬼の群れが素早く蠢く。最後に、鬼の群れの後ろに、巨大で朧な姿が再び現れた。前回よりもさらに大きくなった人影は、鋭く威厳溢れる竜の骨に囲まれていた。【鬼童丸】 「今度は何のために来たんだ?狂気を鎮める霊符?それとも鬼王をも滅ぼせる術?」【晴明】 「この影はまだ朧な姿しか維持できないようだ。手遅れになる前に鬼の群れを制圧すれば、追い払えるかもしれない。」【鬼童丸】 「残念だね、本当に戦わないつもり?」 |
選択・晴明に協力する
選択・晴明に協力するストーリー |
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晴明の目の前まで迫ってきた鬼の群れが、突然止まった。地上に突然巨大な術式が浮かび上がった。狂気を抑える晴明の陰陽術が、すべての妖鬼を囲い込んだ。晴明が呪文を唱えると、術式が光を放ち、妖鬼が纏った狂気を祓っていく。妖鬼たちは身動きが取れない。上空の城主の影はそれ以上形を維持できず、融けるように鬼の群れの中に落ちた。妖鬼たちはしばらく足掻き、少し力を取り戻したようだ。【晴明】 「こうすれば、ここからは戦いやすくなる。」【鬼童丸】 「この術式は……僕たちが妖鬼を叩き潰してる間に、こっそり設置したものか?」【晴明】 「幻境と罠で敵を倒せば、狂気が集まるのを防ぐことができる。今妖鬼たちと戦っても、何の心配もない。」【鬼童丸】 「ならいっそのこと、大がかりな幻境を作って、すべての妖鬼を幻境の中に閉じ込めればいいのに。」【晴明】 「お前が十分な時間を稼いでくれるなら、できなくはない。」【鬼童丸】 「いやだね。」【晴明】 「だろうな。」 |
選択・狩りの罠
選択・狩りの罠ストーリー |
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鬼の群れが近づいてきた瞬間、鬼童丸の鎖が呪文を唱えようとしていた晴明に突然絡みついた。晴明は鎖から逃れようと霊符を放ったが、ぶつかり合う鎖と霊符が引き寄せた凄まじい狂気が晴明を襲った。【晴明】 「私を無理矢理に戦闘に引きずり込むのか。」答える代わりに、鬼童丸はただ笑っている。妖鬼たちが拡散する狂気と共に晴明に飛びかかろうとした瞬間、晴明を囲んでいた無数の鎖が風を切り、四方八方に向かって妖鬼の頭を貫いた。【鬼童丸】 「袋の鼠にすれば、一網打尽にできる。」そう言いながら、鬼童丸は笑顔で空を見上げた。一網打尽にされた鬼の群れの中からは狂気が立ち上り、上空の城主の姿がますますはっきりしていく。【鬼童丸】 「これで手間が省けた。」城主の影が片腕を上げると、倒れたはずの妖鬼が再び立ち上がった。狂気と鬼気を纏う妖鬼たちは、更に強くなったようだ。 |
終・真相露呈
終・真相露呈ストーリー |
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鬼の群れの幻影にとどめを刺すと、城主の影も同時に消え去った。時を同じくして、空から吹いてくる強風も次第に収まっていった。上空で消えていく結界の中に、また新しい思い出の欠片が現れた……十数年前の思い出が、再び皆の目の前で再現される。それは浮島にあった戦場の景色だった。狂気に蝕まれていく賀茂家の陰陽師たちは、躊躇なく同士討ちに手を染めた。彼らの頭上の朧な影が、金色に輝く矢で陰陽師たちの体を射抜いた。最後、まだ理性を失っていない陰陽師たちは戦いから身を引き、素早く逃げていく。陰陽師たちがほぼ全員虐殺された時、闇に隠れた人影が表に出てきた。体中が赤く染まり、金色の矢を持つ者は汗にまみれていた。……それは賀茂忠行だった。彼はようやく目を覚ましたかのように、白い狩衣の仲間の死体に向き合った。記憶の渦が消えた瞬間、誰も賀茂忠行がどんな顔をしているか見ることができなかった。晴明は呆気に取られていた。【鬼童丸】 「先生……やっぱりそうだったんだね……狂気に操られていたのかな?それとも、生存本能に突き動かされていたのかな?」鬼童丸はそう呟きながら、晴明を横目で見る。彼に背中を向けている晴明は、戦場の残骸を確認した後、ゆっくりと口を開いた。【晴明】 「廃墟で発見した陰陽師たちは、とっくに骨だけになっていた。そして服装も一致している。つまり、さっきの思い出は、確かに過去に起きたことだ。先生は十数年に渡り、この城に留まり続けていたのか……当時の先生と賀茂家の人々は、一体何を探していた……?鬼の群れが消えた今、どうして先生は現れない?」【鬼童丸】 「まあ焦るなよ。この城では、僕らよりももっと情報を把握している先生の方が、ずっと余裕があるんだ。先生だって、伊達にこの城で長年暮らしてきたんじゃないはずだ……」そう言いながら、鬼童丸は急に面白いことでも思い出したかのように笑った。【鬼童丸】 「ふふ……本当に予想外だったよ、先生……修羅鬼道を地獄と呼んでいた先生が、実はとっくにそこに囚われていて、僕のように何年もそこで暮らしていたなんて……自ら地獄と呼ぶ場所で、本当の先生は、一体どうなっているのかな?」突然何かに惹かれたように、柳田を支えて浮島の端に行って遠方を眺めていた春が、晴明と鬼童丸の注意を引いた。強風とまだ消えていなかった狂気が次第に収まっていく。この時、晴明と鬼童丸はようやく気づいた。無数の建物の残骸が石塊と繋がり、一つの歪んだ道となっていた。 |
すすり泣き
すすり泣きストーリー |
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妖怪化した少女は、すぐに晴明に負けた。それでも彼女は並々ならぬ狂気を漂わせながら、自分の父親に飛びかかる。【春】 「ううう……お父さん……死にたくないよ……」【柳田】 「うわああ……く、来るな!」妖怪化した少女を見て、柳田は崩れ落ちそうになり、恐怖におののき後退りする。よろめきながら、晴明の後ろに隠れた。【柳田】 「助けて……助けて!」 |
傀儡屋
鬼狩りの策
鬼狩りの策ストーリー |
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桟橋の上、強風が吹き荒ぶ。鬼童丸は壊れた壁の側を彷徨う小さな狐火を打ち消しながら、それを楽しんでいるかのように笑い出した。彼が選んだ道には強い鬼気が漂っていて、ときに無力な妖鬼が鬼気と共に桟橋の下から登ってくる。遠くから、妖火を纏った何者かが近づいてきて、桟橋に足を踏み入れようとしていた。しかし桟橋に足をつける寸前にその者は飛び上がり、同時に桟橋だったものが正体を現した。桟橋だった数本の鎖は動き出したが、空振りに終わった。玉藻前の姿は視界から消えたきりだ。高みに立つ鬼童丸は躊躇なく鎖を後ろに飛ばし、玉藻前が放ったいくつかの狐火を打ち消した。【燼天玉藻前】 「今日は戦わなければ気が済まないようだな。」神出鬼没の人影はまた背後で消えた。鬼童丸が小さく笑った後、鎖が大きく動き、狐火が空に残す痕跡をしつこく追いかける。【鬼童丸】 「せっかく狐狩りの罠を用意したんだから、使わないともったいないよね。」避けることに徹していて、鎖と争うことをしない玉藻前は余裕綽々で聞く。【燼天玉藻前】 「今日は賀茂の師弟の会だから、そんな余興はないと思っていたが。」【鬼童丸】 「今日は機嫌が悪いんだ。少し獲物と遊ぶくらい、大目に見てもらえる。」話しているうちに、鬼童丸の鎖はそのまま玉藻前の側を掠めて、桟橋の下、壊れた壁と楼閣によって構成された崖の下に消えた。【鬼童丸】 「この城はね、見えない所に、数え切れないほどの妖鬼が隠れているんだ。やつらは長い間ずっと狂気に蝕まれていて、理性を失い、殺戮しか知らない狂人になってしまった。ここに囚われた連中は、道さえあれば、際限なく溢れる狂気と共に、あらゆる手を尽くして下から上に這い上がるんだ。」【燼天玉藻前】 「それが我々に関係あるのか?」闇の中に隠れている鬼童丸が笑う。【鬼童丸】 「晴明に関係あるのか、と聞くべきじゃないかな?鬼王、僕の鎖は今、鬼城の中に道を作った。鬼の群れから、晴明がいる場所に直接通じている道をね。今、鬼城で一番大きい鬼の群れが、ちょうどその道を上っている。玉藻前、遊びに付き合ってくれないか?鬼の群れが現れる前に、君は晴明の側に駆けつけられるかな?」鬼童丸の言葉が終わるよりも早く、玉藻前の後ろから飛び出した数匹の狐の妖怪が、晴明のいる場所に素早く向かっていく。【燼天玉藻前】 「狐たちが私が駆けつける前に鎖を排除する。そもそも、鬼の群れなど、晴明にとってはどうってことないだろう。」【鬼童丸】 「鬼の群れが現れる前に、桟橋の下は狂気でいっぱいになると思うよ。もし僕が桟橋をへし折ったら、晴明はどうやって皆を助けるのかな?」 |
選択・攻撃を優先する
選択・攻撃を優先するストーリー |
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玉藻前の狐火が闇の中で燃え上がり、一瞬だけ鬼童丸の顔を照らした。炎が彼の服の裾を燃やし、正体を暴いた。闇の中で、鬼童丸の体は急にかかしのように強ばった。【鬼童丸】 「幸い、こっちにも協力者がいる。」鬼童丸の両腕が突然力を失って垂れ下がった。その後、蠢く胸元から、青い鳥が飛び出してきた。【入内雀(燕)】 「この腕は、直に腐り落ちる。」目の前の者は、本物の鬼童丸ではなかった。【燼天玉藻前】 「自分の腕を腐肉食の鳥に与え、自分と同じ気配を帯びた体を作らせて、遠くからそれを操っていたのか……晴明、君の兄弟子は、本当に狂っているな……」 |
選択・晴明を守る・壱
選択・晴明を守る・壱ストーリー |
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玉藻前は目の前の鬼童丸にそれ以上構うことなく、晴明の気配を辿った。晴明がいる場所に駆けつけた時、玉藻前は遠くの空にいる鬼童丸と、桟橋の上空から矢のごとくまっすぐに垂れ下がる数本の鎖を目にした。鎖はすでに、崖下で狂気を隔てる建物を壊した。崩れた桟橋は狂気に包み込まれている。晴明と縁結神は力を合わせて結界を張り、安全な場所に移動する人々を守っている。晴明は狐火が来るよりも先に、危険な状況に陥った最後の一人を助け出し、まだ崩壊していない桟橋に引っ張り上げていた。一方、鬼童丸はとっくにどこかに消えていたが、玉藻前の耳元ではまだ嘆き声が響いていた。【鬼童丸】 「この罠の素晴らしさを楽しめなかった鬼王よ、また会おう。」 |
選択・晴明を守る・弐
選択・晴明を守る・弐ストーリー |
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玉藻前は目の前の鬼童丸にそれ以上構うことなく、晴明の気配を辿った。晴明がいる場所に駆けつけた時、玉藻前は遠くの空にいる鬼童丸と、桟橋の上空から矢のごとくまっすぐに垂れ下がる数本の鎖を目にした。鎖はすでに、崖下で狂気を隔てる建物を壊した。崩れた桟橋は狂気に包み込まれている。晴明と縁結神は力を合わせて結界を張り、安全な場所に移動する人々を守っている。鬼童丸は興味津々で、忙しなく動く晴明と縁結神を見ている。【鬼童丸】 「少しはやるようだね……」晴明が皆を助けようと狂気の中に飛び込む寸前に、鬼童丸の鎖が彼を襲った。刹那の間に、玉藻前の尻尾が素早く動く。灼熱の狐火に焼かれ、鎖は全部溶けてしまった。狐火が狂気の中に落ちそうになっていた人間を守り、熱風を起こして晴明と共に桟橋の上に送り返した。溶けた鎖を手放した鬼童丸の両手は狐火のせいで焼けただれていたが、彼は相変わらずにやにやしながら玉藻前を見ていた。【鬼童丸】 「こんなにすぐに見つかるとは……さすが僕の獲物だ。」【燼天玉藻前】 「聞いたことがある。賀茂忠行がお前を封印する時、平安京に近づいてはならないという禁制をかけたと。もし破れば、手足がちぎれてしまうらしい。」【鬼童丸】 「この禁制は、僕を色々助けてくれたよ。少なくとも今、本物と区別がつかない分身を作ってくれた。」次の瞬間、尻尾に痺れを感じ、玉藻前は数歩後退った。【鬼童丸】 「さっき晴明を助けた時、鎖に毒が塗られているなんて、思ってもみなかったかな?」【燼天玉藻前】 「毒ごときで、私を無力化することはできない。」【鬼童丸】 「でも今回の戦利品を確保するのには十分だよ。」頭を上げ、手の中にある毒によって抜け落ちた狐の毛皮を撫でると、鬼童丸は素早く遠くに離れた。【燼天玉藻前】 「なんだ、もう終わりか?」【鬼童丸】 「君を狩る狩場は、この城にも劣らないものじゃないとね。それが獲物への敬意だ。それに、君の目的が僕ではないことは知っている。片思いはつまらないからね。今はもっと大切なことがあるから、これで失礼するよ。」遠くで玉藻前に向かって一礼すると、鬼童丸は笑いながら玉藻前の視界から消えた。【鬼童丸】 「ご馳走様。」狐尾を蝕む毒も、突然狐火に包まれて、鬼童丸と共に闇の中に消えた。【燼天玉藻前】 「賀茂忠行の悪餓鬼め……この目くらましを見抜けるかどうかは、お前次第だ。」桟橋付近…… 鬼童丸は、ますます数が多くなる傀儡の大群の中を歩いている。壁に刻まれた記号が、彼を遠くの天守閣へと導く。やがて、そう遠くない場所に、賀茂忠行が現れた。【鬼童丸】 「こんな時に……」鬼童丸は俯き、狐火のせいで焼けただれ、まだ治りきっていない両手を見る。しかし彼に背中を向けたままの賀茂忠行が、彼に話しかけてきた。【賀茂忠行】 「鬼童丸……覚えているか、初めて市場に連れて行った時に見た、たくさんのからくり人形を。」こんな始まり方を予想していなかった鬼童丸は、沈黙を貫いた。【賀茂忠行】 「糸に操られる人形は、人形師の心を表している。しかし人形の心は、誰にも分からない。」【鬼童丸】 「一体何が言いたい?」賀茂忠行は、手招きで自分の方に来いといっている。【賀茂忠行】 「天守閣の下にある楼閣を見てみろ。以前からくり人形を見に行く時に登った楼閣に似ていると思わないか?」しばらく沈黙した後、鬼童丸は言われた通りに前に出た。賀茂忠行の側に近づいた瞬間、足元の法陣が光を放った。無数の鎖が、彼を拘束しようと飛んでくる。驚いた鬼童丸はすぐに逃げ出そうとしたが、今度の鎖には数え切れないほどの呪文がかけられていた。足掻くたびに、骨身を削られるような痛みが走る。見上げると、賀茂忠行はどこにもいなかった。遠くで何かがぶつかり合い、「ギーギー」と音を立てている。狂気があらゆる方向から押し寄せてきて、鬼童丸の目の前で、はっきりとした巨大な幻影が形作られていった。賀茂忠行の声が鬼童丸の耳元で響く。【賀茂忠行】 「ここは君たちが再び殺し合う戦場だ。鬼童丸、全力を尽くせ。」目の前ではっきりした形になっていく城主の幻影を見ながら、手足を鎖に縛られ、怒り心頭に発した鬼童丸は足掻き続けた。目を赤くした彼は、城主の幻影越しにある人の姿を見て、少しずつ理性を取り戻した。【鬼童丸】 「そう、先生はそういう人だ……」幻影の向こう側で、晴明の姿が狂気の中に現れた。幻影を通じて目が合った瞬間、鬼童丸は悟った。これは彼と晴明のために仕組まれた罠だ。彼らを生贄にして、強い力を持つ城主と殺し合うための戦場だ。【鬼童丸】 「ははははは……先生、ひどいね、また騙すなんて。」鎖と呪文が血肉を削るような痛みをもたらしたが、鬼童丸は意に介することなく、すべての力を絞り出して束縛を破壊した。 |
風貌急変
風貌急変ストーリー |
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折り鶴に導かれ、皆が壊れた壁の道を歩いて空の上までやってきた。壁の隙間からは、足元に広がる空と城が見える。【春】 「お父さん……怖いよ……」【柳田】 「大丈夫だ、もうすぐ母さんに会えるぞ。」霧の中、どこからともなく微かに童歌が聞こえてくる。 「……ぽつ……り……ぽ……つり……」【春】 「これは……」「涙……止まらない……」 歌声は霧の奥に消えた。周囲は再び静寂に包まれていく。【春】 「お父さん、聞こえた?お母さんの声だよ!」【柳田】 「春、父さんの側にいろ。」晴明が霊符を放ち、前方の霧をはらうと、歌声はまた聞こえてきた。 「……新しい旅路……」 霧はすぐまた現れたが、晴明はその一瞬で歌声の方向を聞き分けた。それは光りを放つ折り鶴がいるのと同じ方向だ。【柳田】 「陰陽師様……こんなところで歌を歌っているなんて、絶対におかしいです……身内の声を真似して、通りかかる人を騙す妖怪がいると聞きました。陰陽師様、騙されないでください……この先には行きたくありません、陰陽師様……」柳田は春の手を取り、ぶつぶつ言いながら、まっすぐ進んでいく晴明についていく。【柳田】 「そもそも春は歌声が聞こえたから、この城に囚われる羽目になったんです……」前方で折り鶴がようやく止まった。晴明は足を止め、霧をはらう。目の前の景色をはっきり捉えるよりも早く、人影が側から飛び出してきて、柳田の頬を叩いた。【女性】 「ごちゃごちゃうるさい!陰陽師様は平気なのに、あんたがびびってどうするの!」皆の目の前に現れたのは、すごい剣幕で怒鳴りつける、美しい女だった。彼女は指で柳田の額を突きながら、大声で文句を言う。【女性】 「とんでもない臆病者ね、あなたなんかに嫁ぐべきじゃなかったわ!」【春】 「お母さん!」前に出た春を、女が抱きしめる。その時、一本の煌めく赤い糸が柳田と女性を繋げた。さっきまでああだこうだ言っていた柳田も膝をつき、妻と娘を抱きしめて涙を流した。隣を見ると、二人を繋げる赤い糸を操っている縁結神が、晴明に向かって微笑んでいる。 しばらくして…… 縁結神が赤い糸をいじっている。糸の端は、柳田の腕に結び付けられている。【縁結神】 「うう……うーん……」神様、夫は大丈夫なのでしょうか?治りますか?隣の晴明は、桟橋の隅にある羽を拾い上げ、袖でそれを隠した後、黙って皆に目を向けた。【縁結神】 「伊織さん、柳田さんは狂気に蝕まれておる。治せぬわけではないが、完全に治す方法は、時間をかけて考えねばわからぬ。」そう言うと、縁結神は晴明の隣に腰を下ろし、思案に耽った。【晴明】 「縁を司る神は、医術も心得ているのか。狂気の侵食から人を助ける術とは、一体どんな術だ?」【縁結神】 「しーっ……われもまだ思いついておらぬのじゃ。聞かれぬように!」【晴明】 「まさか、こんなところで会えるとは。」【縁結神】 「そうじゃな……それは……皆、自分の縁のために……」【晴明】 「元気がなく、悩んでいる縁結神とは、珍しいな。」【縁結神】 「そうじゃな……実は……今回は、大狐と一緒に来たのじゃ。われ一人で十分じゃというのに!鬼域にはわれの部下がおる。われがここに来ても、誰も邪魔したりはせぬ。信者が不幸に見舞われたのじゃ、われ一人で十分じゃというのに。でも大狐が教えてくれたのじゃ。賀茂家で何かを発見したお主が、突然平安京を出て一人で修羅鬼道に来たのじゃと。賀茂家に、そして修羅鬼道にも関わっているとくれば、何かあったに決まっておる。もしあやつに関わることなら、お主は危険を顧みないかもしれぬと大狐は言っておった。じゃからどうしても来なければならなかったのじゃ。」【晴明】 「なるほど。しかしこの城に入ってから、まだ一度も玉藻前を見ていないが。」【縁結神】 「城に狂気が漂っていることを発見した後、われらは別行動をとったのじゃ。彼はこの城で調べなければならないことがあると言って、どこかに消えていった。」【晴明】 「そうか……さっき鬼童丸は急に別行動を取り始めたが、まさか……」【縁結神】 「やはり一番心配しておったことになったようじゃ。少しは他人の気持ちを考えてほしいものじゃな!」【晴明】 「ここのことはまだよくわかっていない。闇雲に動けば、彼らを危険なことに巻き込んでしまうかもしれない。」晴明は隣のようやく再会できた三人に目を向けた。春は伊織の膝に頭を乗せて寝ている。柳田も伊織と、寄り添って休んでいる。春の頭を撫でながら、伊織はあの歌を歌っている。【伊織】 「……雨がぽつりぽつり、涙は止まらない……」晴明が折り鶴を一つ取り出し、小声で呪文を唱える。すると折り鶴は、すぐに後ろの闇の中に消えていった。【晴明】 「折り鶴が代わりに周囲を見張ってくれる。鬼童丸と玉藻前が争えば、きっと近くの妖鬼が気づく。そうなれば、折り鶴が我々に知らせてくれる。そうすれば、彼らの居場所を素早く特定できる。」【縁結神】 「ふう……何も起きなければいいのじゃが……」【晴明】 「あなたが心配しているのは……」【縁結神】 「あああ!そういえば!」懐からご縁結びを取り出した縁結神は、眉をひそめた。【縁結神】 「目下の急務は、やはり狂気を何とかすることじゃ。さんざん考えたが、やはりご縁結びでは狂気を完全に抑えることはできぬ。」【晴明】 「古より、異なる「結び」には人間の様々な願いが宿り、それぞれ神力を持っている。そして狂気は人の意志と理性を蝕む。ご縁結びを使って心の中の本能を呼び起こすことができれば、心に巣食う狂気を祓えるか……狂気を抑える効果のある霊符なら持っている。完全に祓うことこそできないが、ご縁結びと合わせて使えば、何とかなるかもしれない。」【縁結神】 「よかった!ふう……さんざん悩んだ甲斐があったというものじゃ!」縁結神がご縁結びに術式を加えると、微かに光るご縁結びに呪文が浮かび上がってきた。【縁結神】 「先に春に使ってみて。今度はうまくいく気がするのじゃ!」ご縁結びが春の眉間に舞い落ちた後、呪文が額から周囲に広がっていった。赤い狂気が次第に春の体から出ていき、少女は優しい光に包み込まれた。【縁結神】 「本当に効いておる……」言い終わらぬうちに、すやすや寝ていた春が突然辛そうに呻き始めた。【春】 「うう……お母さん……」【晴明】 「まずい、離れろ。」晴明がそう言った瞬間、春の胸元から狂気が溢れ出した。皆の足元の桟橋が突然揺れ始め、そのまま崩れた。悪夢を見た春は驚いて目を覚ました。目が赤くなった彼女は、悲鳴を上げた。それは間違いなく、狂気が暴れている証拠だ。一方、伊織の体は急に強張り、腕を垂らして意識を失った。そして膨らんだ胸部から、羽ばたきの音が聞こえる。晴明は、素早く霊符を発動して柳田を眠らせた。【縁結神】 「これは……」【晴明】 「彼にこんな異変を見せるわけにはいかない。もし彼もが狂乱に囚われてしまったら、ますます厄介なことになる。」「伊織」が仰向けに倒れた。突然彼女の服の中から飛び出してきた青い鳥が、春に向かって飛んでいく。崩れた桟橋の下からも、大量の赤い狂気が溢れ出してくる。 |
選択・皆を守る
選択・皆を守るストーリー |
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切羽詰まった晴明と縁結神は空に飛び上がった後、赤い糸と霊符を放ち、落ちていく柳田と春を捉えた。伊織の体も狂気の中に落ちていく。青い鳥たちが彼女の方へ飛んでいったが、やはり間に合わない。晴明がまずいと思った瞬間、伊織の体の下で突然燃え上がった狐火が風を起こし、晴明たちと共にまだ崩れていない桟橋の上に送り返した。【晴明】 「玉藻前……」玉藻前の行方を探す間もなく、晴明は青鳥に向かって霊符を投げた。 |
怪しい傀儡
怪しい傀儡ストーリー |
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霊符によって地面に打ち落とされた青い鳥がばたばたと足掻いていると、「伊織」の体から声が聞こえてきた。【「声」】 「やめてやめて!」【縁結神】 「仲間じゃ!仲間!」闇の中から現れた鳥が、春に群らがっている。驚くことに、春の体から溢れ出る狂気は鳥たちに吸収されていく。鳥の目が赤く染まり、激しく羽ばたく。するとまた別の鳥の群れが現れた。【晴明】 「君たちは……入内雀か?腐った血肉と怨念を吸収して生きる君たちは、狂気をも吸収できるのか。」【縁結神】 「むう……じゃから仲間じゃと言っておるのじゃ……」倒れていた「伊織」が、壊れた人形のようにぎこちない動きで立ち上がった。さっき鳥が飛び出してきた胸元には、晴明を凝視する目があった。【入内雀(青)】 「僕たちは神に頼まれて協力してるんだ。陰陽師、僕たちの偽装が気に入らないのか?懐疑心が強すぎないか?」【晴明】 「「伊織」が現れた時、生きた人間ならではの気配を感じなかった。地面に落ちている羽を見て、裏があると気づいたんだ。しかしこればかりは想像できなかった……君たちはこの子を助けるために現れたのか。縁結神も最初から、彼らの正体を知っていたのか?」【縁結神】 「そうじゃ……われが最初に出会った伊織は、もう死んでおった。」【入内雀(青)】 「ははは、そうさ、僕たちは強い怨念と願いによって、ここに呼ばれたんだ。でも残念なことに、この前平安京付近で、鬼童丸というやつに出会った。あいつは雑魚鬼に、僕たちを襲わせた。そのせいであの時、燕とはぐれてしまったんだ!」【晴明】 「道理でさっきから、姿を見せないわけだ。」【入内雀(青)】 「だから僕は他の体を探すしかなくなったんだ。その後すぐに、妖鬼に喰われそうになっていたこの女を見つけた。死に際の女は強く願った。体を僕たちに託してもいい、その代わり、娘を助けてほしいって。でもいいんだ、燕がいないから、僕は好きに遊べる。」【縁結神】 「われも伊織の記憶を確認した。嘘ではない。一応彼らも良かれと思っておるようじゃ!伊織はこの家族にとって、皆を支えておった存在なのじゃ。もし柳田さんと春が伊織はすでに亡くなっていたことに気づけば、ここに囚われておる彼らは、最後の希望すら失ってしまうかもしれぬ。」春が落ち着くと、鳥たちはようやく飛んでいった。【晴明】 「青、君たちは腐敗の血を通じて、亡者の記憶を見ることができるのか?」【入内雀(青)】 「そうだ!」【晴明】 「この城の城主、彼に関する記憶は、どれくらい見た?」【入内雀(青)】 「そういう記憶には、新鮮な死体が必要だ。でも最近ここを彷徨い続け、腹を満たしている中で、確かに彼に関する記憶を少し覗いた。彼はずっと前からこの城に住んでいる。少なくとも今この城にいる亡者たちは、彼が城主であり、残酷な狩りを好むことしか知らない。一部の亡者の間には、こんな噂がある。狩りの時、彼の一番のお気に入りの戦利品は女の顔らしい。特に、ある特徴を持つ女の顔を集めるのに夢中になっているようだ。」【晴明】 「ある特徴を持つ女の顔か……その理由は愛なのか、それとも憎しみなのか……」晴明は俯いて、再び眠っている春に目を向ける。隣の柳田がゆっくりと目を覚ました。「伊織」もとっくに見た目を整え、生きた人間と区別がつかない表情をしている。【柳田】 「何か恐ろしいものを見た気がします……」【伊織】 「ずっと緊張状態にあったんだから、悪夢を見ても不思議じゃないわ。陰陽師様に迷惑をかけちゃだめよ。」【晴明】 「そうだな、ここはもう大丈夫だろう。ならば、先生が残してくれた次の霊符を探しに行こう。」【縁結神】 「晴明は、本当に忙しいのう……」その瞬間、晴明は急に頭を上げて桟橋の奥に目を向けた。【晴明】 「折り鶴が異変が起きたと伝えている……この近くで術式が残した痕跡を見つけられるかもしれない。」【縁結神】 「まさか大狐とあやつが本当に喧嘩しておるのか!」【晴明】 「「伊織」さん、ここから先は危険だから、あなたたちを連れていくことは難しい。ここに守護結界を設置するから、「伊織」さんには柳田さんと春を守ってほしい。」桟橋の上…… 霧を通り抜けた晴明と縁結神は、術の反応のある方向を見た。それは鬼童丸と玉藻前ではなかった。桟橋の最果ては、遠方の巨大な天守閣まで通じている。しかし桟橋の上には、無数の白い人影が佇んでいた。急に蘇ったかのように、白衣を纏い、鬼面をかぶった幽霊のような人々が、城のあちこちに現れていた。【縁結神】 「うわ!こやつら、ますます増えておるぞ。一体どこから来たのじゃ?」【晴明】 「どういうことだ?」【縁結神】 「大狐と一緒に城に入った頃、町中では時々人影がよぎり、密かにわれらを覗いているようじゃった。もう隠れるのはやめたようじゃな……」【晴明】 「この城の力は、我々が奥に進むにつれて、ますます強くなっているようだ。もし城主が最後に我々を狩るつもりなのだとしたら、彼は一体何を待っている?」晴明と縁結神が鬼面をかぶった白衣の人々に近づいていく。縁結神が反射的に振り返った。【縁結神】 「晴明……さっき通った道には、誰もいなかったはずじゃが……」縁結神が周囲を見渡す。白衣の人々は、皆彼女に恐ろしい視線を投げている。しかしいざそっちを見ると、白衣の人々は最初からずっと同じ姿勢を維持しているように見える。【縁結神】 「せ……晴明、ここは本当に恐ろしい場所じゃ……」いつの間にか、彼らは白衣の幻影に囲まれていた。ただの幻影だが、晴明は強烈な亡者の気配を感じた。亡霊たちが狂気を漂わせ始めると同時に、晴明は縁結神を連れて包囲網を突破し、ますます濃くなっていく狂気の霧の中で次の記号を探した。 |
選択・過去を呼び覚ます
選択・過去を呼び覚ますストーリー |
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晴明は幻影を観察している。【晴明】 「戦いの痕跡には、過去の記憶が隠されている。もしこの幻影が城の記憶ならば、彼らはきっと過去の手がかりを持っている。」【縁結神】 「われに任せるのじゃ!」煌めく縁の糸が無数の幻影に絡みつく。縁結神が晴明の手を掴んだ瞬間に、彼らは壊れた景色の中に巻き込まれていた。不完全な過去の景色の中、城主が皆を見下ろしている。空からは城主の脅しが聞こえる。【城主】 「この城の人間ども、お前らは大戦の中で鬼族の捕虜となった負け犬だ。つまり、鬼族のような生き様で生き残るしかない。手段を選ばずに、互いを狩るんだ。ここで生き延びる資格を手に入れるためにな。」捕虜の人々は異議を唱えるように叫んだ。ある者が指示を出し、皆は一斉に城主を囲んだ。しかし城主は鼻で笑った。彼が持つ金色の矢が地面に深く刺さり、恐ろしい鬼気を帯びた金色の光が周囲を包み込んだ。鬼気に襲われた人々はすぐに変容を遂げ、赤い狂気を漂わせながら周りの人を攻撃し始めた。捕虜たちはすぐに変容を遂げた妖鬼に矛先を向けた。狂気が妖鬼から周囲に拡散していく。人々は互いを怒鳴り、疑い始めた。【人間甲】 「さっきお前が最初に刀を使った……お前がきっと一番先に呪われる!」【人間乙】 「貴様ら全員手を上げただろう!いつ悪鬼になっても不思議じゃないさ!」あっという間に、互いを罵り合う人々は周囲の人を攻撃し始めた。懐疑、恐怖、殺戮が拡散していく。狩りは始まった。上空で、城主は目の前の光景を楽しみながら、最も高い楼閣にのんびりと座っている。慈悲に満ちた目は足元の衆生を見下ろし、そして唆している。」【城主】 「疑い合い、陥れ合い、殺し合い、それこそが人の世で生きる規則だろう。しかし……お前らは本当に、すべてを殺し尽くす覚悟でここに辿り着き、俺に本当の悪を見せることができるだろうか?」そう言いながら、彼は思いを馳せるような表情を見せた。【城主】 「ああ……あの勇猛果敢で美しい姿を、もう一度見たいものだ。」過去はここで途切れた。晴明と縁結神は、一瞬にして幻の中から追い出された。【晴明】 「狩りを通じて、この城で真の悪を生み出す……これが城主の狙いなのか?」【縁結神】 「何かすごい武器とかを作りたいとか、そういうことじゃろうか……一撃で平安京の危険人物を滅ぼせるような……」【晴明】 「彼が追い求めるものは、絶対的な力ではないだろう。」話していると、目の前の幻影が突然歪み始めた。無数の狂気が歪み、空に立ち昇っていく。上空に、巨大な人影が現れた。巨大で傲慢な様子の、手を後ろに組んだ人影は、今まで戦ってきた幻影に比べて、最もはっきりしていた。晴明は突然、傀儡の中に賀茂忠行の姿を見た。彼に背中を向けた賀茂忠行は、両手を掲げ、何かの霊符を操っているようだ。【晴明】 「先生!」賀茂忠行は動くのが辛そうだが、術式は次々と人形の上にいる城主に向かって飛んでいった。無数の呪文はあらゆる方向から襲いかかる鎖となり、城主の体を拘束した。【縁結神】 「ここで、何者かが人形の分身を召喚しておるのか?」【晴明】 「これほど大掛かりなことをするとは、まるで我々の不意をつこうとしているようだ。」【賀茂忠行】 「あるいは、ようやく大切な物がある場所に近づいているのかもしれない……」【晴明】 「先生は一体何を探しているのですか?それはそんなに重要な物なのですか……」【賀茂忠行】 「晴明、城主の新しい幻影がますますはっきりしてきた。このままだと、彼はすぐに本当の体を取り戻す。先に彼を退治しなさい。その後で、すべて説明しよう。」前に出た晴明が手印を結び術式を発動しようとしていたその時、空に何かが閃いた。幻が消えた後、晴明は気づいた。鎖に縛られていたのは、城主ではなかった。それは城主の巨躯の後ろにいた、手足を縛られた鬼童丸だった。弓矢を持った城主が晴明を見下ろしながら、近づいてくる。驚いた晴明は振り返って賀茂忠行を探そうとした。しかし立ち込める狂気が来た道を隠し、賀茂忠行と縁結神をその外に隔てた。鎖に縛られた鬼童丸はひどく怒っている。目が赤く光る中、自分を拘束した鎖を握りしめる。鎖に刻まれた呪文のせいで、彼は鎖を破壊できない。【鬼童丸】 「ははははは……先生、ひどいね、また騙すなんて。」鬼童丸は歯を食いしばり、無理矢理鎖を引きちぎった。鬼童丸が一歩一歩城主に近寄る。両手は血まみれだが、彼は狂乱に満ちた笑みをたたえている。晴明は密かに霊符を握りしめ、戦闘が始まる瞬間に備えていた。その時、ぼろぼろの霊符が彼の視界の端をよぎった。狂気が集うと共に、集まってくる妖鬼が立てる音が聞こえてきた。 |
終・白衣の幻影
終・白衣の幻影ストーリー |
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白衣の幻影から溢れ出る狂気がますます濃くなっていく中、包み込まれた桟橋は進むべき道すら見えなくなった。晴明は霊符を飛ばし、幻影の動きを封じた。幻影は霊符に動きを封じられた。晴明と縁結神は、道案内の霊符を探しながら進んでいく。前に進むにつれ、縁結神の視界の外の白衣の幻影に見られている感じが強くなっていった。しかしその方向を見ると、幻影はやはりいつもと同じ様子だった。縁結神は思わず晴明の腕を掴んだ。しかし固く、冷たい手触りが伝わってきた。「晴明」はギーギーを音を立てながら振り返り、顎を垂らして口を開く。【「晴明」】 「貴様ら全員手を上げただろう。」 |
終・弑鬼一瞬
終・弑鬼一瞬ストーリー |
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【鬼童丸】 「晴明、まさかまだあいつの言うことを信じているのか?」【晴明】 「先生は言っていた。大切な物を探すために、この城にやって来たのだと。我々をここに誘き出したのも、その大切な物のためかもしれない。城主を倒すことは、彼の本当の目的ではない。」【鬼童丸】 「晴明、君は彼のことをどれくらい知っている?」【晴明】 「目で見たもの、耳で聞いたものが、必ず真実であるとは限らない。私は先生の真意を確かめなければならない。」【鬼童丸】 「ふふ……相変わらず甘いね。晴明、もしこれまでのことがすべて嘘だとしたら、彼の真意を見抜くことは難しいんじゃないかな?」鬼童丸から目をそらし、晴明は霊符を手に城主に迫っていく。 |
賀茂の行方・弐
賀茂の行方・弐ストーリー |
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鬼童丸の鎖が一瞬にして城主の胸を貫いた。しかし笑顔を絶やさない城主が後ろに下がると、傷はすぐ塞がった。【城主】 「俺を狩りたいなら、少しは本気を出せ。」【鬼童丸】 「へえ?面白いね、ちょっと考えさせて。君の遊びに付き合うべきか、それとも先に裏切り者を始末すべきか。」鬼童丸が話している間に、無数の鎖が投げられた網のように飛んできて、城主の腕に絡みついた。まるでさっきまで縛られていた鬱憤を晴らすかのようだ。【鬼童丸】 「今度会ったら、どうしたらいいかな?今みたいに、彼の腕を一本ずつ引きちぎろうかな?」鎖を掴んだ城主は、矢のような金色の光を放った。鎖を射抜いた瞬間に、金色の矢は再び旋回して鬼童丸の手足に向かって飛んでいく。鬼童丸はそのまま金色の矢を踏みつけ、軽々と飛び上がり、城主の視界の中から消えた。城主は素早く動き、頭上から落ちてくる鬼童丸の刃を避けた。しかしその後ろに隠されていた刃で、腕を貫かれた。【晴明】 「鬼童丸、落ち着け、先生は……」【鬼童丸】 「いやいや、晴明、僕が先生を恨んでいると思うのかい?その逆だよ。僕は嬉しい、とても嬉しいんだ。」鬼童丸の目には恐ろしい赤い狂気が宿っているが、その顔は狂乱と喜びが混ざった笑みを湛えていた。【鬼童丸】 「晴明、気づかなかったかな?先生は全部やり遂げたんだよ!生き延びるために同胞を殺すことも、手段を選ばずに生徒を死地に突き落とすことも。ははははは、先生もようやく、下劣な弱者になったんだよ!」大笑いする鬼童丸に、晴明は返す言葉もなかった。【晴明】 「鬼童丸……悲しいのか?」鬼童丸には彼の言葉が聞こえなかったようだ。城主との殺し合いを楽しむには、やはり何かが足りない。鬼童丸が腕を切り落とすたびに、彼は腕を再生させる。晴明が袖の中から赤い霊符を取り出した時、城主はようやく高らかに笑った。【城主】 「はははは、そうこなくちゃな!陰陽師のやり方で勝負だ!」 |
選択・阻止
選択・阻止ストーリー |
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青い鳥の後ろから、突然羽ばたきの音が聞こえた。霧の中から無数の鳥が一同に襲いかかってきた。余裕のない晴明は霊符を使い、立ち込める狂気から皆を守りながら、青い鳥を阻止している。限界を迎えそうになった瞬間、温かい炎が皆を包み込み、まだ崩れていない桟橋の上に送り返してくれた。 |
鬼城記録
浮島・序
浮島・序ストーリー |
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廃墟が礎となった空への道は、空に浮かぶ立派な楼閣に通じている。崩壊した数々の建物はあたりに捨てられたかのようだ。集まり、空に浮かぶ島のようになった。金色の光の消えた空は何もなかったかのように、相変わらず赤い気配を漂わせながら、迷宮のような城を静かに包み込んでいる。晴明が式神を呼び出そうとした瞬間、突然手足を引き裂かれるような激痛が走った。【柳田】 「陰陽師様、どうされました?」先刻、金色の矢が彼の手足をほぼ貫いていた。今は傷跡こそないものの、術を使おうとすると、指先から絶え間なく狂気が溢れ出る。【鬼童丸】 「さっき落ちてきた金色の光は、城主の厄介な獲物への警告だ。懲戒を受けた者は、城主に狙いを定められる。もし勝手な行動をしたら、城主に狩られることになる。」鬼童丸が意味深長な表情を浮かべる。【鬼童丸】 「君がその程度の影響しか受けていないのは……当ててみよう、自分の罪の側面を捨てたからかな?」【晴明】 「私のことに、それほど興味があるのか。」【鬼童丸】 「言ったはずだよ、この城は色んな遊びを取り込んだ楽園なんだって。どんな獲物にも、自分だけの狩場がある。この鬼城の遊びにおいて、僕の一番お気に入りは、白が黒に染まり、人が鬼になることだ。晴明、いいんだよ。君も自分なりの愉悦を見つけ出して、それに溺れるんだ。」【晴明】 「お気遣いに感謝する。だが自分の「獲物」に集中してくれ。」そう言いながら、晴明は術を発動した。術の光が閃くと、立ち込める赤い狂気が忽ち消えていく。道が示す先には、赤い光の中から彼らを見下ろす、空に浮く島があった。 浮島の入り口…… 浮島から這い出してきた妖鬼が、通路の先で立ちはだかり、進路を完全に塞いだ。【柳田】 「あそこには妖鬼がたくさん集まっています……まずいですね。陰陽師様、妖鬼を封印できませんか?」【晴明】 「いや、違う。今、城主は城の中で我々にとても厄介な問題を与えた。妖鬼が漂わせる狂気だ。」晴明は狂気を纏った鬼童丸に目を向けた。【晴明】 「狂気に侵されたら、選択肢は二つしかない。一つ目はこうだ。殺意と攻撃は狂気を活性化させる。狂気に侵された人は、それを抑える精神力を持っていなければ、妖鬼になってしまう。」【鬼童丸】 「そしてもう一つが今の僕たちだよ、晴明。弱者とは違って、抑えつければ抑えつけるほど、僕たちはより強い力を発揮できる。それこそが本当の自我だ。」【晴明】 「この二つは同じものだ。最後には、どちらであっても理性を全て消耗し、狂乱に囚われる。柳田さんも、気をつけてくれ。」一度晴明と鬼童丸を見比べた後、慎重になった柳田は何も言わずに晴明の側に近寄った。【晴明】 「だが、城主が決めた今の狩りの規則には、まだ抜け道がある。」【柳田】 「対策があるのですか?!」【晴明】 「まだ推測の域を出ないが、今試してもいいだろう。」側で柳田が御守を握りしめ、祈りの言葉を唱えている。御守には、赤い糸の結びがある。それが今、微かに光っている。【鬼童丸】 「それには見覚えがあるよ。」【柳田】 「娘がまだ幼かった頃、家族で神社に行って祈りを捧げ、全員赤糸の御守をもらいました。御守は今、妻と娘は無事だと言っているのですか?」鬼童丸が優しい笑顔を見せた時、晴明は彼の言葉を遮った。【鬼童丸】 「わかるな……」【晴明】 「心配はいらない。」話しているうちに、妖鬼が彼らの気配を辿ってやってきた。さっきまで話していた三人は、攻撃を受けそうになった瞬間に消えた。妖鬼たちは見かけ倒しの道を抜け、そのまま崖から落ちた。柳田を連れた晴明は、鬼童丸と共に道の突き当りまでやってきた。通路の中で、妖気がますます濃くなっていく。晴明は自分の手の様子を確かめた。【晴明】 「狂気は現れなかった。どうやら私の推測は正しかったようだ。ここでは幻境と罠は狂気を生み出さない。」崖下から、突然一筋の妖気が三人を襲ってきた。鬼童丸が振り返ってそれを跳ね返すと、彼の鎖は道を通り抜けて崖下まで飛んでいった。いくつかの鬼火が崖下から一同に向かって飛んできた。晴明は風を使ってなんとか逃げ道を確保した後、鬼火が再び現れる前に鬼童丸を戒めた。【晴明】 「鬼童丸、我々はもう通り抜けた。」【鬼童丸】 「晴明、確かに君は通り抜けた。でも僕の獲物はまだ下にいるんだ。」皆の足元の道が突然揺れだした。力強い何かが彼らに迫ってきている。鎖が急に引き締まる。嬉しそうな表情を見せた鬼童丸はより多くの鎖を操り、崖下から這い出してくる妖鬼を襲わせた。柳田を庇った後、晴明が霊符を放って戦いに夢中になっている鬼童丸の鎖を断ち切ろうとしていると、何者かが飛び上がってきた。それは今までのどんな鬼よりも大きくて強い妖鬼だった。その妖鬼の体には、金色に輝く矢が刺さっていた。金色の光が無数の血管のように妖鬼を縛り付け、恐ろしい力を与えていた。【晴明】 「城主に操られている妖鬼だ。」【鬼童丸】 「そして僕の狩りの囮でもある。」晴明は目の前に飛んできた金色の鬼火を撃ち落とした。火花を散らす中、炎の中に隠れていた鎖が隙を突いて晴明を囲んだ。鎖の中から飛び出すと、妖鬼の鬼火が再び襲ってきた。地上で蠢く鎖は蛇のように鬼火を追いかけ、同時にわざと晴明の動きを邪魔しているようだ。【晴明】 「これは私の攻撃を誘う囮なのか?」【鬼童丸】 「それだけじゃないかな。」晴明は無数の鬼火と鎖によって、崖端に追い込まれた。鬼火が彼が庇っている柳田を蝕もうとした瞬間、晴明はようやく反撃の霊符を放った。時を同じくして、崖下から現れた人影が、妖鬼の背後に現れた。その者は妖鬼の背中を踏みつけ、妖鬼の体に刺さっていた黄金の矢を抜いた。金色の光が閃いたかと思うと、彼は黄金の矢で妖鬼の首をはねていた。黄金の矢は妖鬼の体と共に消えていった。見上げると、飛び散る金色の光の中、晴明と賀茂忠行の目が合った。【賀茂忠行】 「滅茶苦茶だ。」【晴明】 「先生!」晴明は警告しようと大声で叫んだ。放たれた霊符が賀茂忠行の背後に飛んでいく。賀茂忠行の背後で、鬼童丸が不気味な笑みを湛えていた。鎖と霊符はぶつかった後、どちらも跳ね飛ばされた。それ以上暴れはしなかったが、鬼童丸の体を覆う狂気はまるで喜んでいるかのように鼓動を早めている。【鬼童丸】 「先生、ご無沙汰だね。あまり体調が優れないみたいだけど。」赤い目の賀茂忠行は、狂気に深く侵されているようだ。【賀茂忠行】 「鬼童丸、君はどうだ?そんなになっても、まだこの城に呑み込まれていないのか?」【鬼童丸】 「お陰様で、百鬼が争い合う天国の中で、僕はやっとやるべきことを見つけたんだ。」【賀茂忠行】 「私はここにいる、かかってこい。」鬼童丸は呆れたような、傷ついたような表情で賀茂忠行を見つめていた。【鬼童丸】 「どうして?僕が先生に危害を加えるはずがないでしょう。網にかかった以上、無慈悲に妖鬼を切り捨て、そのまま狂気に蝕まれて妖鬼になったとしても、別にいいでしょう?」鬼童丸は純真な子供のように頭をかしげて、じっと賀茂忠行を見ている。【鬼童丸】 「他人の苦痛を知るには、自分でそれを体験しないと。先生にそう教わったんだ、忘れたとは言わせないよ。」【晴明】 「先生、ご無事ですか。」前に出た晴明が、鬼童丸の視線を遮った。彼の手の中にある霊符は、手紙の中から回収し、補完した後にしばらく狂気を抑制していたものだ。【賀茂忠行】 「その霊符を、手に入れたか。」晴明は霊符を賀茂忠行の胸に当てた。狂気は少し弱まったが、いつぶり返してもおかしくはない。【晴明】 「お久しぶりです。目下、賀茂家は安泰です。」【賀茂忠行】 「一段落ついたら、帰って自分の目で確かめよう。」そう言いながらも、賀茂忠行は晴明の背後にいる柳田を見ているようだ。晴明は何か言おうとしたが、やはりやめておいた。【晴明】 「ここは危険です、場所を変えて話しましょう。」晴明が鬼童丸に目を向ける。晴明が何か言うより先に、鬼童丸が口を開いた。【鬼童丸】 「あ、あの時は君の囮だって言ったけど、気にしないで。自分が僕の獲物であることに、今更気づいたような顔はやめてよ。」【柳田】 「……陰陽師様、この人、すごく危険そうですが……本当に同行するんですか……」【晴明】 「妻と娘を守りたいなら、彼の側にいて、ちゃんと見張ることだ。」【鬼童丸】 「数十年ぶりの師弟の会が、始まる……」【柳田】 「本当に狂ってる……」 |
傀儡屋・序
傀儡屋・序ストーリー |
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鬼城の中、桟橋の上…… 賀茂忠行は道案内の霊符を壁に刻んだ。突然、耐えられない痛みに襲われたかのように、賀茂忠行は歯を食いしばりながら膝をついた。黒金色の鬼骨が左手から拡散していく。賀茂忠行は術でそれを制御しようとしたが、指が震えているせいで、印を結ぶこともままならない。【賀茂忠行】 「もう間に合わない……こうするしかないか……」呟きながら、彼は桟橋の入り口に目を向けた。 桟橋の入り口…… 今回の道はこの前のものとは違う。無数の楼閣と壊れた壁が重なり合い、そのまま遠方にある巨大な天守閣の下に通じている。楼閣と廃墟の間にある通路は、廃墟から作られた桟橋だ。少し進むと、一行は壁に刻まれた記号を発見した。【晴明】 「これは先生が残した記号だ。この記号は、我々を導いているようだ。先生は未だに狂気の侵食を受けている。鬼の群れから無事に撤退できたのだろうか……」【鬼童丸】 「去ったのか、逃げたのか、一体どっちだ?長年ここに囚われ続け、狂気の侵食を受けながらも人の体を維持できているとして、その心は、果たして人の心のままなのか?」【晴明】 「先生に直接聞くまで、勝手に判断するつもりはない。」晴明の隣で相変わらず意識を失っている柳田と、何もわからない様子の春を一瞥した後、鬼童丸は少し疲れたように言った。【鬼童丸】 「面倒だね。君はこのまま弱者と一緒に時間を無駄にしたらいいさ、僕は先に行くよ。」言ったそばから、鬼童丸は晴明の側を通り抜けていった。鬼童丸は前方に広がる桟橋の上から、晴明に向かって意味深長な笑顔を見せると、すぐに霧の中に消えた。【春】 「ふう……あのお兄さん、やっとどこかに行った……」【柳田】 「はあ……行ったか。」【春】 「お父さん!起きたの?!」【柳田】 「ああ……俺は大丈夫だ……ただあの人は俺たちのことをよく思っていない。彼がいると気が重い……」【晴明】 「恐らく、彼は私が君たちを残して、先生を探しに行くと考えているだろう。鬼童丸がまた妖鬼を誘き寄せてきたら、人探しもままならない。これでむしろ楽になった。柳田さん、以前、夫婦で赤糸の御守を一つずつ持っていると言っていたが、それは今どうなっている?」【柳田】 「ずっと懐の中で光っています。さっきから光がより一層強くなったようです。陰陽師様、これで妻の居場所がわかるのですか?」【晴明】 「それはわからないが……その手助けをしてくれる人物は、見つけられるかもしれない。」袖の中から折り鶴を取り出した晴明は、ご縁結びを折り鶴に結びつけた。【晴明】 「秘報伝令、急急如律令。」折り鶴は皆の頭上を何周も旋回した後、ご縁結びと共に霧の中に消え、やがて小さい光の点にしか見えなくなった。【晴明】 「ついていこう。」 |
虚妄
虚妄ストーリー |
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今度の戦いは以前のように簡単にいかない。激戦が続く中、城主は傷だらけになったものの、まだ戦える気力を失ってはいない。晴明は賀茂忠行が作った鬼殺しの霊符を取り出した。霊符を発動しようとしたとき、晴明の手足は激痛に襲われた。城主は徐に手を挙げ、晴明に向って策が効いたと言わんばかりに微笑んだ。いつの間にか、頭上の空はすでに金色の光に包み込まれた。金色の光が差し込む場所は、ほぼ見えないほど小さい金色の針が手足の中に消えていく。【鬼童丸】 「言っただろう、城主が懲戒を下したが最後、獲物は死ぬまでしつこく追われる。もしここで狂気に囚われ妖鬼になったら、僕のいい遊び相手になれるかも。」狂気は体の内側から溢れている。晴明は歯を食いしばり、慌てて霊符でそれを封じ込みながら、襲ってきた城主の攻撃を避けていく。一本の竜の骨は横から割り込んできて、巨大な骨棘は楼閣や廃墟に激しくぶつかる。晴明と鬼童丸は同時に飛び上がった。鬼童丸はそのままとぐろを巻く骨棘に舞い降り、周りから飛んできた鎖は骨棘に絡みついた。鎖は周りから迫ってくる骨棘の動きを完全に止めるまで、骨棘をきつく縛り付けた。骨棘の動きを封じ込んだ後、晴明は素早く城主のほうに鬼殺しの霊符を投げ飛ばしたが、横から割り込んできた鎖に打ち飛ばされた。【晴明】 「鬼童丸、何をしてる。」【鬼童丸】 「一度先生に騙されたから、彼はこうも簡単に目的を達成するのが嫌なんだよ。」【晴明】 「無茶言うな、城主を討伐するのが先だ。」鬼童丸はまるで晴明の言葉が聞こえなかったかのように、城主との激闘の中、彼らを邪魔していた狂気は霧のように流れ出し、鬼童丸に襲っていく。鬼童丸の肉体はかつてないほどの狂気に蝕まれていき、手足そして全身の皮膚は鬼気に蝕まれ、体を引き裂かれるような痛みが走る。目を赤くして恐ろしい鬼気を漂わせる鬼童丸は楽しそうに、軽やかな足取りで鎖の上に飛び上がり、長閑な童歌を口ずさむ。恐ろしいほど狂乱に満ちる目を見て、果たして鬼童丸は理性がどのくらい残っているか、晴明は急に分からなくなった。周りの狂気は全部鬼童丸に吸収された。頭上の金色の光は再び動き出し、狂気が一瞬の間に迸る力に気づいたかのように、無数の金色の矢は遠くにいる城主の指示を受け、鬼童丸に襲っていく。【晴明】 「周りの狂気を全部我が身に取り込んだだと……一体何のつもりだ……」狂乱に落ちた鬼童丸には晴明の言葉はもはや届かないようだ。今まで彼らを城主の目の前に拘束してた狂気は全て鬼童丸に吸収された。彼は矢が追いかけてくるのを誘うように素早く包囲網の後ろにある桟橋まで下がった。桟橋の上、ひしめく白衣の幻影は徹底的に狂気に囚われた獲物の気配に惹かれたように、鬼童丸を囲んだ。飛び回る鎖は鬼童丸に従い遠くに消えていく中、晴明は一瞬鎖の上で光っている名前を捉えた。「賀茂忠行」晴明は躊躇なく追いかけた。【晴明】 「なんてことだ、彼は城主を利用して先生に仕返しをするつもりか。」背後からは、城主が操る空をも覆い隠す矢の雨が追ってきたが、肝心な城主は知らない間にどこかに消えた。【城主】 「獲物同士の殺し合いはまだ続くのか、ならば手助けしてやろうじゃないか……」桟橋の上…… 賀茂忠行は急に現れた殺意に気づいた。振り返ると一人のお面をかぶる白衣の者はちょどう飛びかかってくる。賀茂忠行は反射的に術を発動した。白衣の者は一瞬多くの血を噴き出し、賀茂忠行の視界を遮った。血の中に隠れていた一本の鎖は、賀茂忠行の腕を貫き通した。【賀茂忠行】 「避けたか……ならばこれは必殺の技ではあるまい。」次の瞬間、鬼童丸の姿は賀茂忠行の背後に現れた。【鬼童丸】 「先生、ここは皆が共有する地獄なんだ、忘れていないか?」鬼童丸は体中から狂気を漂わせ、鎖が纏う狂気も無遠慮に賀茂忠行の肉体を蝕み始めた。目の前からは、幾千万の金色の矢が再度追ってきた。【鬼童丸】 「先生、すでに罪に手を染めたのに、どうして生徒からの贈り物を快く受け取らないんだ?」【賀茂忠行】 「懲戒の矢を利用して私を襲うつもりか?」賀茂忠行は腕を鎖にきつく縛り付けられたため、逃げることさえもできない。彼は迫ってくる金色の矢が彼と鬼童丸を包み込むのをみすみす許してしまった。 少し離れた所…… 桟橋で炸裂する眩しい金色の光は縁結神の注意を引いた。【縁結神】 「まずい……強すぎる…残っている神力を全部使っても足りないのじゃ……もう!もっと早く分かっていれば晴明またはあのおっさんについていくべきじゃ!多少は力を温存できるはず……どいつもこいつも神出鬼没で……気を抜くと二人ともいなくなった。おかげで探しに行く羽目になったのじゃ……」ぶつぶつ文句を垂れていると、曲がり角に来た縁結神は危うく急に現れた青い人影にぶつかるところだった。【縁結神】 「あ!晴明!さっき何が起きたのじゃ!お主があのおっさんに言われた通りに城主を封印しに行った後、急に狂気が立ち込めて、あのおっさんも忽ちいなくなったのじゃ。」【晴明】 「話せば長くなる、縁結神。さっきあなたの赤い糸は紛れもなく狂気を鎮めたから、一つ大事なことを頼みたい。すべての狂気を吸収した鬼童丸は、先生を追いかけている。もし私が力ずくで止めてやるなら、逆に彼らに取り憑く狂気を拡散させてしまうでしょう。」【縁結神】 「あいつ、やっぱり無茶して!待ちなさい!道理でさっきから、赤い糸はずっと反応しているのか、任せて!」しかし金色の光が落ちる場所では、恐ろしいほど多くの狂気は飛び回る鎖にあふれかえっている。二人は前に出ようとした時、お面をかぶる白衣の人々は狂気と共に進み始めた。【晴明】 「白衣の人々は狂気に取り込まれることを恐れていないようだ。むしろ自分を犠牲にして狂気を生み出している。」【縁結神】 「城に入る時に薄々と気づいたのじゃ、入内雀も少々教えてくれた。白衣の人々はかつての人と鬼との戦いの中で、城主の捕虜になって死んだ人々の怨霊、城主は少しずつ力を取り戻しているから、彼らも次第に目覚めたのじゃ。彼らはこの城で経験したことは……うぅ……悲しすぎて口に出すのすら躊躇うのじゃ。とにかく、彼らは今ただの怨霊でしかないが、それでも多少なりとも彼らの縁を感知できるのじゃ。もし狂気を封じ込むことができれば、彼らを呼び起こせるかもしれん。」時を同じくして、晴明は地面で巨大な術陣を描き出した。縁結神もご縁結びを結びながら、それを術陣に加えた。赤い糸に呪文が刻まれる瞬間、赤い糸は忽ち光りだした。縁結神に操られる赤い糸の光は一部の狂気を祓ったものの、相変わらず残りの荒々しい狂気に圧倒されている。【晴明】 「今、この程度なら外の白衣の人々を呼び起こせるはず。」【縁結神】 「うん、縁の気配を感じたから、たぶんいくらかの思い出を再現させることもできるじゃろう。」縁の糸は数人の白衣の人の腕に絡みついた。彼らは導かれて狂気から離れ、ふらつきながら晴明達に近づく。【晴明】 「彼らは賀茂家の人間だ。」【縁結神】 「え?」晴明は彷徨っている数人の白衣の人に目を向ける。【晴明】 「彼は賀茂家の家紋がついている服を着ている。お面をかぶっているけど、他の人に比べると、やはり多少なり理性が残っている。どうやら、十数年前ここで亡くなった賀茂一族の皆は、彷徨う怨霊となったようだ。」光の呪文を纏う赤い糸は狂気の渦の中で彷徨い続けているが、結局奥に入り込む機会はなかった。【縁結神】 「もし神力がもっと強ければ……」【燼天玉藻前】 「落ち込んでいるとはね。」上から急に玉藻前の声は届いてきた。【晴明】 「玉藻前、やはりここにいるね。」【燼天玉藻前】 「君達は困っているようだね。私にできることはないかとね。」【縁結神】 「大狐!無事なのね!」【燼天玉藻前】 「私はともかく、今は君達が困っているでしょう。」【晴明】 「玉藻前、賀茂先生の異常に気づいたのでは?」【燼天玉藻前】 「顔を合わした時、少し気づいたことがある。検証するなら、狂気から助けてあげればいい。」【晴明】 「狂気を鎮めるこの術陣はまだ完成されていない。あなたの妖力があればなんとかなるかもしれない。」玉藻前の狐火はひらひらと舞い上がり、やがって術陣に舞い落ちた。瞬く間に狐火と呪文の光は混ざり合い、狂気の渦に火をつけた。【縁結神】 「効いたんじゃ!」炎の呪文に焼かれる狂気の渦は次第に消えていく。中に隠れていた鬼童丸と賀茂忠行の姿が見えるようになった。それを見た晴明は、思わず一歩前に出た。【晴明】 「先生!」立ち込める狂気の中、二人は恐ろしいほどの鬼気を漂わせている。狂気の中で見え隠れる妖鬼達は、彼らを囲んで攻撃し続けている。賀茂忠行は霊符を描く力すら残っていない。体の一部を鬼気に蝕まれた彼は、筋肉などが歪んでいき、もう少しで妖鬼になりそうだ。無数の鎖は介錯してあげるように、賀茂忠行の頭上に止まっている。【晴明】 「鬼童丸、まだ万策尽きたわけじゃない、どうしてそんなことを。」狂気の中心、鬼童丸はお菓子を楽しみにしている子供のように、欣喜雀躍して鎖の上をゆっくり歩く。一度晴明に目を向けた後、彼は隣の縁結神に向き直った。【鬼童丸】 「しーっ、もうすぐだ。先生が完全に妖鬼に成り下がったら、僕がすぐ楽にしてあげるさ。」晴明が放った霊符は狂気を通り抜け、空に止まる鎖を打ち落すべく飛んでいく。鬼童丸は鎖を操ってそれを受け止めた瞬間、霊符は急に燃え出して狂気を鎮める呪文となった。霊符は狂気を焼き尽くし突破口を切り開いた瞬間、晴明は素早く狂気の中に突入した。体勢を整える先に、一本の鎖はまっすぐに襲ってきたが、晴明は霊符を放ってそれを撃ち落とした。【晴明】 「余計なことをするでない。」【鬼童丸】 「晴明よ……君は僕に普通に接する時から、僕たちは必ず異なる道を辿る運命は同時に決まったんだ。城に踏み入れたが最後、先生は妖鬼になる運命なんだ。僕はその過程を見届け、そして協力してあげるのだ。妖鬼に成り下がることは一番惨めなことだと思うか?違う、一番惨めなことは、自分に似つかわしくない牢獄に囚われ、本心を抑えつけることなんだ。今まで、先生は自ら「人」という牢獄の囚人に甘んじている。見ろ、もし機会があれば、彼は数多の悪を犯すのでは?」【晴明】 「先生を信じている。」【鬼童丸】 「それは迷信だよ、晴明。人から鬼になり、鬼のすべてを経験することは、即ち「人と鬼との共存」、それは先生が望むことじゃないか?徹底的に鬼に堕ちる時、君は見るだろう、本性を見つけ出し、ありのままの先生は如何に自由になることを。晴明、その時、君は僕のように本当の彼を理解する。」そう言いながら、鬼童丸は顔が苦痛に歪む賀茂忠行に向き直った。彼から見れば、それは曖昧な輪郭を持つ肉体、蠢く腐肉でしかない。【鬼童丸】 「(あの時が懐かしいね、君がまだ人として僕の目に映るあの時が。)」思い偲ぶ中、目の前で足掻く腐肉は次第に鬼に堕ちていくのを見て、鬼童丸は思わず興奮し始めた。【鬼童丸】 「鬼に堕ちたら、先生は僕を理解できるだろう。僕たちはこんな姿で再会を果たす、そして再会のために、僕はこの手で先生を狩る。」晴明が投げ捨てた霊符は、賀茂忠行の体を包み込み、鬼気に蝕まれていく肉体を無理矢理に元に戻している。霊符が効いたため、鬼気は消えていく。しかし残りの半分の体は相変わらず歪んでいて、やがて金色に輝く鱗が生えてきた。彼の半分の顔は城主の顔に変わり果て、本人ではない声を発している。霊符に抑えつけられるも、城主の姿は次第にはっきりとなっていく。苦しそうに呻いた後、賀茂忠行の体にははっきりとした城主の影が現れた。城主の影は手の中にある矢で賀茂忠行の喉元を切り裂こうとする。時を同じくして、晴明は姿を現した城主の幻影を攻撃した。幻影は忽ち砕かれ、また賀茂忠行の体の中に消えた。【晴明】 「この霊符はしばらくの間城主の意識を封じ込めます。先生、お体は?」城主の鬼気は相変わらず賀茂忠行の体の中で拡散している。しかし霊符に抑えられているため、まだ人の形を保っている部分をそれ以上蝕むことはできなかった。【鬼童丸】 「ああ……分かった。城にある懲戒の矢は、本来触れることはかなわない。しかし君はそれを使って妖鬼の首をはねた。つまり君は城主の魂を自分の体の中に封印した。」闇の中に隠れている鬼童丸の声には、迷いが満ちている。【鬼童丸】 「なぜこんなことを?城主の力を抑えるためだけか?それだけのために、鬼に堕ちるのか?」晴明はまた鬼気を封印できる霊符を描き出しが、賀茂忠行は彼を止めた。【賀茂忠行】 「無駄だ……こうなった以上方法は一つしか残ってない……」【晴明】 「先生、先にここから脱出しましょう。また後でその話を教えてください。」晴明の狂気を抑える霊符は瞬く間に眩しい光を放ち始め、周りの狂気は霊符の炎に巻き込まれると、忽ち消えていった。鬼童丸はしびれを切らしたように、鎖で残りの狂気の渦を破壊した。そのおかげで三人はようやく狂気の渦から脱出できた。【燼天玉藻前】 「やはりね……城主の力を弱まらせるために、彼の魂を自分の体の中に封印した。しかしなぜだ?この城を破壊するつもりか?」【賀茂忠行】 「こうするしかない……鬼王を蘇らせないために……」【燼天玉藻前】 「これで筋が通った……君たちは今まで城主の幻影にしか出会わなかった。城主は肉体は行方不明になり、魂は陰陽師の体の中に封印されているからだ。しかしやはり凡人の体は鬼気に蝕まれるのが定め。鬼王の魂に乗っ取られ鬼に堕ちるのも、時間の問題でしょう。しかし一つ疑問がある、その目的は一体?」賀茂忠行は痛みが耐えられないように、しばらくは話すこともできなかった。【晴明】 「先生、先程助ける方法は一つしかないと仰いましたが、具体的にどうすれば?」賀茂忠行は懐から一枚の真っ赤な霊符を取り出した。それは以前、鬼童丸の修羅の血を使って作った鬼殺しの霊符だった。その場にいる皆はすぐ悟った。【晴明】 「先生、魂を分離する術式だってありますよ。」【賀茂忠行】 「長年の間、私の魂は深く蝕まれ、鬼王と融合したんだ。だから彼を道連れにするしか、方法は残っていない。それに、例え鬼王だけ死んでも、私はいつか必ず理性を保てず鬼に堕ちる。」霊符を誰かに託したい賀茂忠行は皆を見渡したものの、誰も口をつぐんでいる。【晴明】 「今は英気を養いましょう、先生はもう一人ではありません。」皆と少し離れたところに腰を下ろした鬼童丸は、突然自分の首筋に一本の赤い糸が出現したことに気づいた。目で追うと、赤い糸の一端は縁結神の手の中まで続いている。縁結神はちょうど晴明の狂気を鎮める霊符を赤い糸に結びつけている。鬼童丸の目線に気づくと、彼女は決まりが悪そうに喉の調子を整える。【縁結神】 「ごほん……うーん……本当に、む、無茶しすぎ。」鬼童丸は何も言わずに目の前の赤い糸を引っ張り、縁結神に来いと伝える。一度周囲の様子を確認した後、縁結神はようやく少し近づいた。【縁結神】 「今回は大変なことになったが、張本人はお主じゃないし、お主も機嫌が悪いし、われは大目に見てあげるのじゃ!」鬼童丸は相変わらず黙り込んでいる。彼に取り憑く狂気は消えたものの、未だ完全に祓われてはいない。【縁結神】 「狂気は理性を蝕む、例え人だとしても、狂気に蝕まれて暴走してしまうのじゃ。われと晴明は狂気を鎮める方法を見つけたから、お主の力にもなれるはずじゃ。」【鬼童丸】 「それは一体どこで拾ったがらくたかい。」鬼童丸は縁結神の袖から少し覗ける赤い糸の御守を見ており、御守には赤い痕跡も染み付いている。【縁結神】 「これはこの前知り合ったある夫婦のものじゃ、出会った時妻はすでに亡くなったが…… でもこれは彼達が愛を誓い合う時の証なのじゃ、あんな切っても切れない縁があるから、これから子供が育っていくのを夫はしっかりと守るはずじゃ……」【鬼童丸】 「ふっ。」【縁結神】 「何がおかしい!うーん……そろそろ終わる、大分ましになったようじゃ。」煌めく縁の光は鬼童丸の首筋に舞い落ちた後、彼の体に宿る赤い狂気は本当に弱まっていった。しかし鬼童丸は自分の両手を見つめながら、独り言をこぼした。【鬼童丸】 「例え狂気はなくても、弱者は保身のために、家族を手に掛けるかもしれない……しかし本当に鬼に堕ちた者は、我が身を顧みずに自分を犠牲にする……おかしいだろう……だから……この遊びは、全部無意味なわけじゃない……」【縁結神】 「え?」落ち込んだ鬼童丸は次第に楽しそうになっていくのに気づくと、縁結神は嫌な予感がした。【鬼童丸】 「つまり悪をなすかとは関係ない、執念とも関係ない。人はいずれ妖鬼に堕ちる……そうなるとこの遊びは、ますます面白くなってきたくるだろう?」【縁結神】 「無茶なことしないで……」ようやく頭を上げた鬼童丸は縁結神と目が合った。狂気に蝕まれていない。その目に宿る狂乱は、間違いなく彼の狂った愉悦を求める本心が生み出すもの。【鬼童丸】 「神様は知っているかい?人と鬼との区別がつかないならば、自由に、自分らしく振る舞うことはもっと簡単になるんだ。」【縁結神】 「ありのままの自分でいるなら、最初から区別はないのじゃ。」【鬼童丸】 「だったら……神様、僕は自分の最後の限界を越えるのだ。」鬼童丸は楽しそうに笑った。【鬼童丸】 「自由に殺戮に溺れる限界を。」 |
決別
決別ストーリー |
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桟橋の上…… お面をかぶる白衣の人は相変わらず集まっている。そして賀茂忠行の鬼気は再び暴れ出す瞬間に一斉に襲いかかってきた。城主は力を取り戻しているおかげで、不完全な魂しか持たない白衣の人々も次第に一部の意識を取り戻したようだ。【白衣の人甲】 「人の中に紛れる妖鬼は……どこにいるんだ……」【白衣の人乙】 「全て殺す……殺し尽くせばいいんだ……」鬼童丸は急に皆の目の前を掠めていき、集まってきた白衣の人々の中に突撃した。飛び回る鎖には、まだ狂気が取り憑いている。【縁結神】 「こりゃ、油断した!」晴明は反射的に霊符で止めた。狂気をまとう鬼童丸が白衣の人々に襲い、周りの狂気に刺激を与えてしまった。傷を負った賀茂忠行はますます鬼気に抗えなくなる。玉藻前も狐火を放ってそれを止め、霊符と炎は一瞬にして鎖をいくつかに切り落とした。晴明は急に悟った。【晴明】 「わざとだ。」悪賢い鬼童丸は笑った。炎を纏う鎖の破片は彼に操られ、空を飛び回りながら次々と白衣の人に襲っていく。妖力を植え付けられた白衣の幻影はますます強くなり、より多くの理性を取り戻していく。城主の気配を感じた彼らは、晴明達を囲んだ。【燼天玉藻前】 「賀茂忠行、あなたが育てた悪ガキは本当に一瞬たりとも目が離せない。」無数の狐火は周りへと広がっていき、まもなく白衣の人々の魂まで焼き尽くそうとしていた。しかし狐火が広がる中、晴明の霊符は白衣の人々と炎を分け隔てる結界を作った。【晴明】 「彼らは長年の間鬼城に囚われ続ける亡霊でしかない。もしここで滅ぼされたら、きっと未来永劫苦痛に囚われ続けるでしょう。」晴明は素早く袖の中から他の霊符を取り出した。狐火と赤い糸が放つ微光を帯びる霊符は、そのまま白衣の人々のお面を封じた。白衣の人々は忽ち足を止め、その場でぼーっと立ち尽くす。まるで狂気を封じられた瞬間、彼らの感覚も同時に封じられたようだった。【晴明】 「それに、もし皆の魂を取り戻せれば、私が浄化してあげて、彼らを安息の地たる平安京に送り返したい。縁結神、私達が白衣の人々を抑えている間に、さっき助けた皆の意識をなんとかしてほしい。」【縁結神】 「やっているのじゃ!」【燼天玉藻前】 「鬼童丸は、賀茂忠行は鬼気を抑えつけられるかどうかを見極めているのか……」【晴明】 「彼はそういう人なんだ。さっきの異変だけじゃ、彼は全然気がすまない。」話していると、鎖がひゅーと飛んできた。拡散する狂気の侵食を受け、白衣の人々はまた暴れ出し、抑えるのが難しくなった。そしてどこはかとなく鬼童丸の声は届いた。【鬼童丸】 「晴明、彼らのことはどう呼ぶべきか?弱者よりもかわいそう不完全な亡霊に対して、まさか君が手加減するとはね。」【晴明】 「彼らはこの城に依存しているが、それでも人の魂であることに変わりはない。倒すだけでも十分なのに、なぜ踏みにじるのだ。」【賀茂忠行】 「ごほん……あなた達、グズグズするな、城主の力が強ければ、亡霊達はより多くの自我を取り戻すのだ。」【縁結神】 「賀茂さん、皆は忍びないのじゃ……晴明から聞いたのじゃ。この霊符を使うには十分な霊力を注ぎ込まないとだめって、お主は傷を負ったから、使いたくてもできないのじゃ。」そう言いながら、縁結神の赤い糸が放つ微光は賀茂一族の魂に伝わった。意識が朦朧としている彼らは人形のように座している。【縁結神】 「早く正気を取り戻さないと、せっかくために蓄えた神力は全部なくなるのじゃ。」【燼天玉藻前】 「確信はあるのか?目覚めた彼らがまだ人間でいられることに?」【縁結神】 「どういう意味じゃ?」【燼天玉藻前】 「この城は短時間内に人を妖鬼に変えることができる。それは人の心を使用しているから。」玉藻前は意味ありげに賀茂忠行に視線を投げる。【燼天玉藻前】 「罪を恨みを促し、そしてまた新しい罪を生み出す。彼らは賀茂忠行に何をするかね?」話していると、皆に結びつけた縁結神の赤い糸は人知らずに伸びて絡み合った。もうろう状態に落ちていた彼らは、忽ち目覚めたようだ。しかし、それでもまだ鬼城で狂乱に落ちる瞬間に囚われている。彼らはどもりながら呟いている。【賀茂一族甲】 「賀茂さん……」賀茂忠行はすぐ近寄った。そして彼らがかぶっていたお面は砕け、懐かしくて若々しい顔を見せた。【賀茂一族乙】 「賀茂さん、何が起きようとも、私は絶対に諦めません。例え一人になっても、、私は絶対に任務を諦めません……」【縁結神】 「彼らは……混乱しているのか?城に入る瞬間に戻ったのか?」【晴明】 「生者の気配は感じられない。目の前にいる彼らは、まだ完全に理性を失っていない不完全な魂でしかない。でも、彼らの時間は永遠に最後に生きていた瞬間で止まっている。」【燼天玉藻前】 「憐れな……」【賀茂忠行】 「もう大丈夫だ、休んでもいい。」皆は賀茂忠行を囲んで腰を下ろした。まるでは昔鬼城で一緒に戦っていた数日に、いつかの平穏な夜に戻ったように。【縁結神】 「賀茂さんは、急に落ち込んだのじゃ……」【賀茂一族乙】 「先輩、この城に入る前に言ってくれたことをまだ憶えていますか?もし仲間の誰かが城主に乗っ取られたら、躊躇なくその者の肉体を滅ぼすのだと。」【賀茂忠行】 「憶えている、今私達を助けられるのは私達自身なんだ。」【賀茂一族乙】 「その霊符は、でき上がりましたか?」賀茂一族の人々の姿は急に歪み始め、不安定になっていく。眉をひそめた晴明は、突然周囲に術陣が浮かび上がってくると気づいたので、彼は素早く賀茂忠行を守る守護結界を設置した。しかし真っ赤な術陣は瞬く間に浮かび上がり、周りから賀茂忠行の足元まで続いている。術陣の外側は、驚くことに数人の賀茂一族の亡霊が真っ赤な鬼殺しの霊符を携え、賀茂忠行を術陣の中に閉じ込めた。【晴明】 「霊符を一族の亡霊に渡しておいたか。ってことはすでに私達が彼を殺すのを嫌うのを見通したか。」言ったそばから、晴明は素早く動き出した。しかし晴明が術陣を破壊する寸前、賀茂忠行は一飛びで術陣を出た。術陣は急に色を変え、しばらく晴明達を術陣の中に封じ込めた。【燼天玉藻前】 「賀茂一族の術陣は賀茂忠行のためではなく、私達のために用意したもの……私達が邪魔しないようにね。」賀茂一族が放った霊符はまもなく賀茂忠行に当たるのを見て、晴明はお構い無しに術陣を突き破り、霊符を投げ捨てた、彼の霊符は鬼殺しの霊符にぶつかり合い、すぐさま燃え出した。賀茂忠行は術を使い、残りの半分の鬼殺しの霊符のほうに向っていく。半分の霊符でも、人間の肉体を破壊するのに十分すぎる。晴明はまた何かしようとした瞬間、ある人影は彼の側を掠めていった。飛んできた鬼殺しの霊符は、鬼童丸の胸を貫いた。【鬼童丸】 「うう……」一瞬にして大量の血は噴き出され、鬼童丸の服を赤く染めた。皆を囲んでいる賀茂一族は、まだ囁き続けている。【賀茂一族乙】 「悪鬼を本当に鎮圧するには、こうするしかない……」【賀茂忠行】 「鬼童丸……何を!」【鬼童丸】 「ふふふ、先生、簡単に他人に殺されることは僕は許さないぞ。」絶え間なく胸から噴き出された赤い鮮血は、鬼童丸の足元の地面を赤く染め上げ、実体を得た狂気のように大地を蝕み、拡散し続けている。鬼童丸の傷口の奥から、赤く光る何かが出てきた。鬼童丸の目を見つめる賀茂忠行は、一瞬十数年前のある日に戻ったような感覚を得た。【晴明】 「鬼童丸は攻撃を利用して心臓にある封印を破壊しました、気をつけてください。」【縁結神】 「鬼童丸……」言い終わらぬうちに、玉藻前はもう縁結神を掴み、狂気のように広がっていく赤色の海を避けるべく空に飛び上がった。晴明は賀茂忠行を助けようとしたが、間に合わなかった。赤い血の海は賀茂忠行の鬼化を早めたようだ。鬼童丸は隣の賀茂一族の人々に目を向けた。【鬼童丸】 「君達は約束したんだ。もし仲間は鬼になり、蘇る城主の肉体になるかもしれないなら、後憂いがないように彼を始末する。例え師を失い、永遠に鬼城に囚われ続けても、必ず躊躇なく同胞を手に掛ける。例えこんな姿になっても、それだけは絶対に忘れない……はははは、先生!僕は勘違いしてた。人間には僕の獲物になる資格がないと。今のことを考えれば、実は人の心を理解できなかっただけなんだ。」赤い修羅の血は素早く拡散していき、ようやく隙を見つけ出した晴明は素早く前に出て賀茂忠行を掴んだ。目の前の鬼童丸は相変わらず血を噴き出しながら、血の海の中で跪いている。賀茂忠行の鬼化は進んでいて、話すことすら難しくなった。それでも彼は鬼童丸の胸のほうに、修羅の血を抑える簡単な呪文を残した。【賀茂忠行】 「封印が壊れた以上、この城はますます危険になる。晴明、先に一族の皆の魂を連れて行け。」晴明は賀茂一族の亡霊の足元に術陣を仕掛け、一時的に皆を中に封じ込めた。同時に術で周りの桟橋を壊して修羅の血の拡散を食い止め、賀茂忠行のために安全な場所を確保した。【晴明】 「そもそも私は先生を探しに来たから、先生をここに置いていくわけにはいきません。」一方、血の海に浸かる鬼童丸は思い出に耽っているようで、酔いしれた表情をしている。彼は囲んできた白衣の人々を、生き延びるために足掻いている人間を見つめる。肉体に深く根ざす狂気と修羅の血は彼を完全に包み込んだ。次の瞬間、人間の一部の肉体は崩壊していく。砕けた鬼の心臓は形のない炎を噴き出し、人間である一部の肉体を略奪、吸収している。耐えられない痛みに対し、彼は小さく笑った。残りの半分の人間の血肉を取り込んだ新しい核心は彼の体の中で形付けられ、鼓動を刻み、賀茂忠行が残した新しい術式を破壊していく。鬼童丸は胸の中に手を差し伸べ、生まれ変わった心臓に触れてみた。絡み合う血と肉が踊っているような触感が伝わってくると、彼は不思議そうに酔いしれたように微笑む。彼は血の海の中で、ふらふらと立ち上がった。人間だった肉体はすでに死んだようだ。悪鬼の半分は生存本能に突き動かされ、人間の半分を喰らいつくし、胸の中で新しい心臓となった。血の海から立ち上がると、真っ赤な色は血の海と共に色褪せ、やがては純白な色となった。胸を撫でてみると、傷口はすでに消えていた。修羅の血は、目覚めた。血の海に映る自分の顔を見た彼は、気ままに隣の白衣の人の肉体を貫き、白い狩衣に袖を通す。前回血の海の中から助けられ、人から服や食料をもらい面倒を見られることは、とても遠い昔のことのようだ——遠い昔話になったようだ。修羅の血に赤く染められた鎖は彼の側を掠めていき、一撃で人間を閉じ込める城の結界を引き裂いた。外の世界は、一瞬出口のほうに現れた。無数の白衣の亡霊は目に映る景色に惑わされた。長年城に囚われ続ける彼らは、外の景色にすべての本能を呼び起こされた。白衣の人々は泣きわめきながら、出口に向っていく。しかし出口に近づいた瞬間、皆はまるで幻に囚われたように、ギーギーと音を立てながらぎこちない動きをする人形となった。人形は出口に惑わされ、鬼童丸の舞台の真ん中に向かう。【修羅鬼童丸】 「さあ、またとない機会だぞ。」 |
決別・生
決別・生ストーリー |
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皆の目の前にある出口は突然に幻となって忽ち消えた。鬼童丸は手を広げると、幾千万の白衣の亡霊が貫かれた。人形のような体は一瞬にして現実に突き落とされ、血を噴きながら人間の姿に戻った。【修羅鬼童丸】 「はははは!生き残るために同胞を殺すがいい、そして自分を生贄にして同胞に捧げるがいい。これより君達は弱者より価値のある人間だと認めてやる。生き残るために全力を尽くす覚悟は、矮小なる命にいかにも輝かしい姿を与える……」鬼童丸は慈悲に満ちた目で足元の生き残った人間の亡霊を見ている。白衣の人は剣を握り締め、お面をかぶっているが、その者からは鬼童丸は恐怖と怯懦を感じなかった。お面をかぶる勇者は、悪鬼に最後の一撃を仕掛け、轢き殺された蟻のように悪鬼の鎖に倒された。【修羅鬼童丸】 「しかし獲物としての君は、命の最後の一瞬に眩しい光を放っている。」このような虫けらは数え切れないほどいる。彼らは一族の繁栄のために殺し合い、力合わせて自分より遥かに強い敵に挑む。か弱き者が頑張れば頑張るほど、鬼童丸は嘆く。これぞ獲物としての覚悟、狩場をより素晴らしく引き立てる輝き。賀茂忠行の犠牲と賀茂一族の決死の殺意は、同等に輝いている。虫けらは弱いだろうが、決して死に絶えない。その覚悟はか弱き人間を生き長らえ、短い寿命しか持たない子孫代々に、妖鬼にも劣らない力を与える。この時、赤い空模様はますます怪しくなっていき、空から落ちてくる金色の光は鬼童丸のすぐ側にある。鬼童丸は空を見上げ、鎖はそんな彼を囲んでいる。鎖の上にはある名前が次第に浮かび上がってくる。 少し離れた所…… 賀茂忠行の体は徹底的に鬼気に取り込まれた。恐ろしい赤色の目を持つ鬼王は、鬼化した歪んだ姿で皆の前に現れた。【鬼王】 「賀茂忠行、お前は俺を鬼城に封印した上、俺の魂を自分の体の中に封じたんだ。この瞬間は宿命だと思わないか?」【賀茂忠行】 「ついに現れた……あなたにとっても、これも宿命なんじゃないか?」【鬼王】 「ほう?」【賀茂忠行】 「この旅の目的は、最初からあなたの肉体を手に入れることなんだ。修羅の骨は、妖鬼の乱暴な本性を鎮めるのに欠かせない大事な物だ。」賀茂忠行を囲んでいる赤い糸と霊符は、鬼王に乗っ取られている彼の意識を支えている。【鬼王】 「一族を犠牲にして、自分を犠牲にして、十数年もあがき続けたのは、鬼童丸の修羅の本能を鎮めるためだけか?」【賀茂忠行】 「鬼童丸だけじゃない……もしすべての乱暴な鬼は本性を抑え……はっきりとした意識や理性をもって生きていければ……それこそは私が夢見る人と鬼との共存。」【鬼王】 「悲しいな……賀茂忠行。月日が流れていく中で、お前は相変わらず妖鬼をしつけることを、お前の独りよがりの生き方を押し付けているだけだ。」【賀茂忠行】 「どっちが正しいか、私達には分からない。でも時が流れていく今、子供達はもうすでに答えを出せるようになった。見てみたいと思わないか、修羅鬼王。」天空の中…… 鬼王が蘇っていく中、鬼童丸の鎖には次第に獲物の名前が浮かび上がってくる。「修羅鬼王」鬼童丸は空を眺めている。一方、側にある鎖は遠くに飛んでいき、獲物の本当の肉体がいる場所に向っている。少し離れた場所で、追ってきた皆が現れた。【燼天玉藻前】 「どうやら、彼はとっくに城主の正体に気づいた。今の彼についていけば、蘇る修羅鬼王の肉体の居場所を突き止められる。」【晴明】 「玉藻前、もう一つ頼みたいことがある。先生は一人だから、危険な目に遭うかもしれない。鬼童丸は私に任せて、代わりに先生の面倒を見てほしい。」【燼天玉藻前】 「晴明、よりによって彼を……まあいいでしょう。滅多に人を頼らない君に頼まれたから。」縁結神に目を向けた晴明は何かを言おうとすると、縁結神は先に口を開いた。【縁結神】 「例え赤い糸は完全に狂気を祓うことができなくても、もう一度修羅鬼の本能をなんとかできないかと試してみたい。でなければ、修羅の血の影響を受けてしまった魂を、これから助けるつもりなのじゃ。」ようやく頷いた晴明は皆にお礼を言うと、一足先に出ていった。彼らの前で、鬼童丸は鎖と共に遥かな空に向って走っている。【修羅鬼童丸】 「父よ……やっとまた会えるね。」 |
骸狩り
骸狩りストーリー |
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鬼城の上空、赤い空は地面に迫ってくる。霧のような数多くの網は結界の中で溶け落ちていき、そして墜落の中で鬼童丸の鎖に引き裂かれる。空を覆い尽くす金色に輝く懲戒の矢は、雨のごとく鬼童丸の頭上から落ちてくる。一本の赤い糸はずっと鬼童丸を追いかけて、彼の足首に絡みついた。鬼童丸は俯いて確認したものの、それを解こうとしなかった。【修羅鬼童丸】 「本当に予想外だったよ……来ないかと思ってたんだ。」【縁結神】 「このままじゃと、お主は血の本能に呑み込まれてしまうのじゃ。これ以上先に進んではならん!」【修羅鬼童丸】 「神様、言ってくれたじゃないか。一番楽で一番楽しく生きていければいいって。」鬼童丸は突然空中で足を止めた。縁結神もすかさず足を止めたが、鬼童丸はもう彼女の側にやってきた。爽やかな笑顔を湛えているが、実は図れしれないほどの悪意を隠している鬼童丸は縁結神の手を掴み、自分の胸に手を当てた。【修羅鬼童丸】 「感じたか?生まれ変わったこの心臓は、今までよりずっと楽しく鼓動を打っている。神様、この心底からの喜びは、君が望むものじゃないか?」縁結神は急にどうすればいいか分からなくなった。心底からの喜びは、確かに彼女の手に伝わってきた。【縁結神】 「これ以上進んだら、お主の心臓は暴走して壊れるかもじゃ!」鬼童丸は理解できなかったように頭をかしげる。【修羅鬼童丸】 「あれ?神様に信者の本当に喜んでいる様子を見せればいいと思っていたが。いいんだよ、今回の獲物を仕留めたら考えてみよう。神様に相応しい狩場でどんな供え物を捧げるべきかを。」懲戒の矢は鬼童丸に襲ってきた瞬間、数本の鎖は急に縁結神の後ろから彼女の両手を縛り付けた。おかげで二人は忽ち遠く離れた。同時に、縁結神は再び神力を手の中に集結させた。さっき彼女が触れた鬼童丸の胸には、急に出現した一本の輝かしい赤い糸が胸を中心に拡散している。鬼童丸は一瞬呆気を取られた。赤い糸はまた見えなくなり、彼の脈打つ心臓の奥に消えた。鎖に縛り付けられた縁結神は遠くで呟いている。【縁結神】 「ちぎれた縁は赤い糸で補修できるのじゃ、願わくば……願わくばお主の心臓はまだ赤色でいることを、そうすれば例え壊れても、赤い糸はきっと治してあげるはずじゃ。」彼女の言葉は鬼童丸の耳に届いたかは分からない。鎖の一部は急に縁結神のほうに飛び、血に染められた鎖はそのまま縁結神の手の中に落ちた。次の瞬間、雨の如く金色の矢は彼らの視界を遮った。眩しい金色の光の向こう側で、遠くから鬼童丸の声が届いた。【修羅鬼童丸】 「大切にしまえ、それは僕の印なんだ。がらくたと一緒にするな。神様、君はもっと賑やかな場所に神社を引っ越すべきじゃないか?例えば平安京とかにね。僕が参拝しに行く前に、せめて餓死しないような獲物になってみなさい。」鬼童丸が言い終わった瞬間、鎖は縁結神を城のほうに投げ捨て、彼女はそのまま雲の上から落ちていく。墜落する縁結神は慌てて体勢を整えた。しかし後ろから飛んできた鎖は、何気なく彼女を引っ張りながら、白衣の人々と妖鬼がいる場所へと導いている。 雲の上…… 矢の雨と鬼童丸の鎖はぶつかり合い、絶え間なく剣戟がぶつかるような音を立てている。【修羅鬼童丸】 「この城の狩りはまだ終わっていないよ。君の赤い糸で導いてあげなさい、この城の未来を。虫けらは僅かな甘美のために同胞を踏みにじる。あるいは自分を犠牲にして一族の未来を切り開く。君の赤い糸で偉大な殺し合いと犠牲を促せ。神よ、君は僕の手の中から、一体何人の虫けらの命を助けられるかな?」鬼童丸は急に妙な抗力を感じた。いくつかの霊符が放つ青い光は鬼童丸を囲み、まもなく彼を封じ込める。飛び回る鎖は鬼童丸の後ろに飛んでいき何かを切り裂いたが、同時に胸が詰まる感じがした。一つの霊符は鬼童丸の胸倉の中に消えた。いつの間にか網の後ろに隠れていた晴明は、霊符を使い一撃で城中を赤く染める心臓を封じ込んだ。鬼童丸は引き下がらなかった。砕けた心臓は霊符を蝕み、切り刻んだ。修羅の血が染み付いた霊符の欠片は狂気を漂わせながら晴明のほうに飛んでいく。霊符の欠片と矢の雨は同時に晴明を守る光の守護結界にぶつかった。鬼童丸の心臓から溢れ出る鬼気は修羅の血の気配を帯びるものの、やはり修羅の血とは全く違うものだ。それは鬼童丸が進んでいく中落ちてくる矢の雨を蝕んでいる。二人は争いながら、眩しい金色の光に対抗していて修羅鬼王がいる場所に向っていく。【修羅鬼童丸】 「晴明、なぜここにいるのは君なんだ?もしや、先生の肉体は完全に蝕まれたのか?」【晴明】 「私は先生の弟子として、この城の亡霊を傷つけ続ける君を止めるのだ。先生の手を煩わせるまでもない。」【修羅鬼童丸】 「はははは、晴明、あんなことをしたのに、先生は本当に言われた通りに他人に守られて一人だけ生き延びれると思うのか?でも安心してください、今の僕はもう彼が望むように楽にしてあげるつもりはない。」【晴明】 「追い詰められるのは君なんだよ、鬼童丸。修羅鬼王に近づく者は、皆徹底的に狂気に蝕まれてしまう。この先にあるのは君の最期だが、本当に行くのか?」鬼童丸は楽しそうに晴明を見つめる。【修羅鬼童丸】 「晴明、十数年前、僕が賀茂家の弱者を倒した後、僕たちが争ったことを忘れていないか。あの時僕は思ったのだ。もし君がこれからも、世の中の悪党は全員病に冒されていて、助けることができると思い続けるのなら、君はいずれ悪に呑み込まれてしまう。心外だったね。今になっても、まだそれを諦めていないとは。」【晴明】 「私は初心を貫いている。ならば君はどうだ?」【修羅鬼童丸】 「この上ない狩りと殺戮の中で眩しい光を放つ人の本性は、とても甘くて心温まると思わないか?」【晴明】 「どうやら、君はようやく人の本能に付き合う方法を見つけ出した。ならば、彼らの代わりに、私が狂気を受け入れ、答えを見せてあげましょう。果たして君は私との殺し合いの中で、「共存」の楽しみを見出だせるか?」それを聞いた鬼童丸は、楽しそうに笑った。【修羅鬼童丸】 「ありがとう、晴明。それは僕への尊重と讃美なんだ。」そう言いながら、彼は激戦する中で急に動きを止め、鎖の上で晴明に向って少し頭を下げて一礼した。この瞬間、二つの封印の霊符は、異なる方向から鬼童丸に襲う。時を同じくして、お礼をする鬼童丸はこっそりと呪いの鬼符を隠していた。霊符が飛んでくる中、彼は晴明と賀茂忠行のほうに鬼符を投げ捨てた。二つの霊符の攻撃を受けた鬼童丸は少しよろめいたものの、すぐさま鎖に飛び上がり逃げていった。呪いは駆けつけてきた賀茂忠行に大した傷を残さなかったを確認した後、晴明はようやく少しほっとした。【晴明】 「先生、玉藻前と一緒にいるはずですが。」【賀茂忠行】 「玉藻前でも分かっているぞ。私は何の役にも立たないわけじゃない。それに修羅の骨は、この手で確保しなければならない。」【修羅鬼童丸】 「先生は、やはり僕を失望させない。」上から鬼童丸の嬉しそうな声が届いてきた。【修羅鬼童丸】 「晴明、今日こそは僕たちが一堂に会し、恩師に感謝を伝える卒業の日。最後の幕引きの前に、一緒に先生に最後の贈り物を捧げるか?」【晴明】 「私の贈り物は、ここで贈るものではない。」【修羅鬼童丸】 「どうした、晴明、忘れたのか?幼い頃先生は僕たちに宿題を出したんだ。畑の中で、人と鬼に協力してもらい種を育てるという宿題をね。あの時の僕は完成できなかったが、今は、もうすぐに結果が出るぞ?先生、人と鬼が一緒に耕す畑には一体何が生まれてくるのか、僕の答えを見てくれないか?」言い終わった瞬間、一本の金色の矢は後ろから鬼童丸の心臓に当たった。彼の後ろには、ほぼ実体を得た狂気が暴れている。肉体が次第に蘇っていくおかげで、修羅鬼王はまさか賀茂忠行の封印を打ち壊した。修羅鬼王の霊体は鬼童丸の側で彷徨っている。引き裂かれ続け、同時に溶け続ける空の結界の中、蘇っていく修羅鬼王が漂わせる狂気は鬼童丸の鬼気を蝕み始めた。【修羅鬼王】 「人間に育てられる鬼でも、これほど断固たる殺意を持てるのか。愛しい我が子よ、この狂気はお前のために用意した狩りなんだ。」修羅鬼王が言葉を吐き捨てた瞬間、立ち込める狂気はいつの間にか空をも覆い隠す巨大な網のように、皆の精神を包み込んだ。一瞬にして、鬼童丸の周りは静けさに包まれた。誰もいない空の下、彼は自分は幻境の中に引きずり込まれたと気づいた。霧のように立ち込める狂気の中、修羅鬼王と鬼童丸は同時に消えた。狂気が消えた後、周りは賀茂忠行しか残っていなかった。雲の上にいる二人の狩人は皆気配を消した。彼らは誰よりも理解している。先に見つけられるほうは狩られる獲物に成り下がる。【賀茂忠行】 「狂気で新しい幻境を作っておいたのに、私を攻撃しないか……」賀茂忠行の体に宿る鬼気は急に暴れだした。修羅鬼王が消えた時、彼はようやく鬼気の侵食に抗えられなくなり、まもなく妖鬼になり下がる。一方、無数の妖鬼は遠くから集まってきて、鬼になる賀茂忠行の体をを食い物にしようとしている。隠れていた鬼童丸の気配は、まず賀茂忠行の背後に現れた。【修羅鬼王】 「バレバレだぞ、獲物よ。」修羅鬼王の矢はまっすぐにそっちに飛んでいく。姿を表した鬼童丸は何度も避けたものの、最後にはやはり手足を貫かれ、空中に吊るし上げられた。しかし鬼童丸は後退りしなかった。体で矢を受け止めながら、彼はまっすぐに賀茂忠行の前にやってきた。次の瞬間、鬼童丸の鎖は一撃で賀茂忠行の体を貫き通した。【修羅鬼童丸】 「バレたのは……そっちだ。」「賀茂忠行」の体は、修羅鬼王の姿に戻った。狂気が揺らめく中、幻境の周辺は晴明の霊符の光に包み込まれ、やがてひびが入った。幻が消えた後、本当の賀茂忠行と晴明は再び鬼童丸の前に現れた。【晴明】 「狂気で獲物を惑わし、幻境の牢獄を作るのか。」【修羅鬼王】 「鬼童丸、なぜ賀茂忠行はおとりだと気づいた?」【修羅鬼童丸】 「気付かなかった。幻術に抜かり目はなかった。狂気に影響されている中、それは本当の先生かどうか僕にはわからない。でも、本当の先生だったら、例えあの時鬼王は本当に自分の体の中に隠れていても、先生は躊躇なく自害するはず。ふふふ、僕たちにとっては、これは楽しい狩りなんだから、例え僕に殺されても、別にいいじゃないか?先生、そうでしょう?」修羅鬼王の霊体はまた遠くに消えた。鬼童丸はさっきの瞬間に捉えた鬼王の気配を頼りに、そのまま遠くを攻撃する。 |
骸狩り・現
骸狩り・現ストーリー |
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空にそびえる巨大な天守閣は、修羅鬼王の正殿、城の心臓部。鬼気を蓄え続ける修羅鬼王の本当の肉体は、すでに巨大な山のような大きさとなって天守閣の前に聳え立つ。彼の首筋は雲の上に消えて、斬首された首は今手の中で眠っていて、胸の前に掲げられている。十数年も眠り続けていたが、その首は今でも生きているようだ。彼方から飛んできた鎖は、幾筋もの光となって、一瞬にして修羅鬼王の巨大な体を貫いた。聳え立つ体は一瞬にして干からびた。狂気の渦は鬼王を中心に周りに広がり、天守閣と周りのすべてを破壊尽くした。賀茂忠行と晴明はすぐさま術を発動し、術を鬼王の死体のほうに飛ばした。しかし鬼王の体に近づく瞬間、術式は強烈で邪悪な狂気に蝕まれてしまったせいで、干からびた皮膚にしか届かなかった。鬼童丸は鬼王の穴の開いた胸の中に現れた。鬼王の血肉は灰となっていき、狂気は立て続けに彼の体に流れ込んでいく。鬼童丸は矢のような胸骨を握っている。賀茂忠行の目には希望の光が灯った。【賀茂忠行】 「あれこそは修羅の骨、それを使って武器を作れば、血に飢える悪鬼の本性を抑えられる。」【修羅鬼童丸】 「先生は本当にそう思っているか、これが最後の答えだと?」【賀茂忠行】 「鬼童丸、君が以前同門の皆を殺したのは、運命の思い上がる私への罰だと思う。私は鬼を導いて人間の社会で暮らせるようにすることができると、それこそは私が求める人と鬼との共存だと思っていた。しかし人はまだ万物を受け入れる準備ができていない。鬼も乱暴な本性を捨てていない。人も鬼も導きが必要なんだ。でもその剣は、鬼が自分の本性に向き合えるのに役立つ。鬼童丸、乱暴な本性はどうしようもないわけじゃない。」鬼童丸は賀茂忠行に向き直り、修羅の骨を高く掲げる。 |
」【修羅鬼童丸】 「先生、もう遅い。人と鬼との共存を夢見る者ですら、鬼が本性を抑えられるのを信じていない。ならば人間は一体どうやって万物を受け入れるのだ?人々の心には、最も恐ろしい獣が潜んでいる。修羅の骨でも、人々の心にかかればひとたまりもない。」黙っていた晴明は動き出し、鬼童丸を封じ込めるべく霊符を放った。しかし次の瞬間、修羅の骨はすでに鬼童丸の手の中で粉々に砕けた。【修羅鬼童丸】 「先生、どうして分からないんだ。人と鬼は最初から何も違わない、共存なんてふざけているか?人と鬼の真相については、足元を見よ。」鬼城の中…… 城と大地は、修羅の血に赤く染められ、狂気は城の中で暴れまわっている。白衣の人々と鬼は、城の中で恐ろしい狩りを行っている。数多の鳥に囲まれて守られている春は急に空を指差した。【春】 「お父さん!空が!」殺し合う人と鬼の群れの中から溢れ出る狂気は、空に立ち昇っていく。柳田はすでに妖鬼の攻撃を受けて深手を負ったことに、春は気付かなかった。柳田は娘を抱きしめ、隣の「伊織」に目を向けた。さっき、彼は「伊織」はすでに亡くなった事実に気づいた。」【柳田】 「春を守り抜くと、伊織と約束したでしょう?」伊織の胸部から頭を出した入内雀は、柳田に向って目を瞬きさせる。この瞬間、伊織の腕はちぎれ、彼女の体もすでに腐敗していた。【入内雀(青)】 「あんたも持たなくなったな……じゃあ、あんたも僕と取引するのか?」【柳田】 「……俺の体を使わせてやるから、これからは今まで通りに春を守ってくれ……」柳田の肉体から溢れ出る赤い狂気は、空に立ち昇っていく。 桟橋の上…… 赤い糸は人々を繋げている。無数の白衣の人々は寄り添いながら、立て続けに襲ってくる鬼の群れに対抗している。無数のもっと年上の、強い人間は後ろの若くてか弱い同胞を守っている。彼らの体も無数の狂気が溢れ出ていて、空に昇っていく。 浮島の上…… 数匹の弱い妖鬼は玉藻前の後ろに隠れている。廃墟の上に腰を下ろす玉藻前は、強い妖鬼達が足元で争い合うのを眺めている。赤い狂気は立ち昇り、空を巣食う狂気に溶けていく。殺し合いと犠牲を繰り返す人と妖鬼から生まれてくる狂気は鬼童丸の足元に集まっている。【晴明】 「先生、危険です。ここは私に任せてください。」狂気は強くなっていくほど、賀茂忠行の鬼化はますます進んでいく。狂気の激しい攻撃を受け、晴明の結界はすでにヒビが入った。鬼童丸の姿は完全に狂気の中に消えた。天幕の下、しつこく追ってくる妖鬼は集まっている。しかし鬼童丸に近づくと、すぐさま狂気に容赦なく引き裂かれる。赤い雨は降り出し、晴明はふとに気づいた。足元には黒い花々が咲いていく。狂気が広がるにつれ、花々は素早く拡散していき、彼らの足元で黒い花の海を作り上げた。鬼童丸は花々の真ん中に立っており、後ろには彼の父の崩れた死体がいる。死体に寄り添い、彼は酔いしれたように優しく花びらに触れる。【修羅鬼童丸】 「先生よ。僕たちの宿題にまだ憶えているか?人と鬼が一緒に耕す畑には一体何が生まれてくるか、これが僕の答えなんだ。」鬼童丸は晴明に目を向けた。彼が触れた黒い花は急に赤く燃えだした。【修羅鬼童丸】 「いらっしゃい、晴明、ここは僕の庭。」鬼童丸は息を吹きかけると、花の炎は忽ち消えた。立ち昇る煙は急に周りの霧のような狂気を巻き起こし、晴明と賀茂忠行に襲っていく。晴明と賀茂忠行は呪文を唱えながら、狂気の攻撃を避けた。そして鬼童丸のほうに拘束の術式を飛ばした。【晴明】 「では、お邪魔します。」 |
決戦
決戦ストーリー |
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最後に鬼気は周りから晴明に襲ってきて、彼の手足を引っ張っている。異なる方向に広がる鬼気は晴明の手足を引きちぎった瞬間、術式が光った。鬼気の真ん中にあるのは手足のちぎれた人形だった。側から飛んできた術式は鬼童丸に当たり、呪文の光は数え切れない縄となって鬼童丸を縛り付けた。【晴明】 「どうやら徹底的に叩きのめさなければ、狂気を祓うこともできないようだ。」【修羅鬼童丸】 「僕が先に倒れるのか、それとも君が先に狂気に蝕まれるのか?」鬼童丸は自分を拘束する縄を掴んだ。すると狂気はすぐさま縄を伝って晴明を包み込んだ。妖鬼と戦っている賀茂忠行は晴明を助けようとする時、狂気は同時に晴明と鬼童丸を巻き込んだ。【修羅鬼童丸】 「晴明、今まで正面衝突を避け続けている君も、いよいよ限界を迎えるだろう?狂気を受け入れても別にいいじゃないか?陰陽分離の術を使った君でも、いつでも冷静でいられるわけじゃないでしょう?」【晴明】 「いつでも冷静でいられるわけじゃないが、初心を貫くには十分すぎる。」【修羅鬼童丸】 「当ててやる。晴明はまた皆を例外なく救済する聖人を気取っているね。しかし残念ながら、この城に囚われる亡霊は殺し合うことしか考えていない、皆は昔の僕に似ているんだ。彼らは必ず君と袂を分かち、異なる道を歩む運命なんだ。」【晴明】 「彼らは今何らかの理由で自分を見失ったけど、それでも昔の彼らは人と鬼の運命を変えるために戦場に足を踏み入れた。人のためにすべてを捨てたから、人はそんな彼らを見捨てたりはしない。鬼童丸、すべてを捨てても君のために戦う者が現れる時、君も分かるはずだ。」【修羅鬼童丸】 「結局、僕たちは違うんだ。まったく……最初から、異なる道を歩む者に理解し合い、一つになることを求めるべきじゃなかった。」晴明はまだ正気でいられるが、狂気はすでに彼の肉体を蝕み始めた。霊符は絶え間なく立ち込める狂気を焼き払っている。しかし激戦の中でも鬼童丸が纏う狂気は相変わらず襲ってきて、結局晴明は避けられなかった。攻撃と防御を切り替え続けているうち、鬼童丸ですらますます荒々しくなっていく狂気に支配されていく。均衡を保っていた戦闘はすぐさま悪化していく、霊符と鬼気がぶつかり合う度に、二人は力を消耗する。立ち昇る狂気は妖鬼にだけではなく、すぐ上にある天幕のような結界にも影響を及ぼした。溶け始めた結界から解放された無数の妖鬼と区別がつかない亡霊達は、狂気に包まれる二人を掴もうとしている。狐火と霊符はぎっしり詰まる狂気を突き抜け、二人の間で激突する陰陽術を容赦なく打ち飛ばした。狂気の外側から駆けつけた玉藻前は再度狐火を放って狂気を遮断した。おかげで晴明はようやく一瞬息継ぎできた。前に出た賀茂忠行は結界を設置して襲ってくる亡霊を阻み、狂気と亡霊から二人を助け出すべく手を差し伸べた。鬼童丸は振り返って賀茂忠行に一瞥した。【修羅鬼童丸】 「またね、先生。」見上げる彼は手を広げて無数の亡霊を抱きしめた。彼の体は忽ち空に包み込まれ、賀茂忠行の目の前から消えた。 結界の中…… 最初は静寂な闇が広がり、すぐ体がかみ砕かれる音が痛みよりも先行した。見上げる鬼童丸は、周りから無数の妖鬼が押し寄せてくるのを見た。無数の妖鬼の背後には、修羅鬼王ともう一人見知らぬ女がいる。父と母の魂は無数の妖鬼と共に押しかけてきて、それぞれ左と右から彼を抱きしめる。【修羅鬼王】 「お前はもはや我が子であることに恥じない。修羅鬼は、最初から殺し合いの中で強くなる存在。この点において、お前はよくやった。今こそは、俺たちの側に戻る時。」言い終わると、父と母は彼の首筋に噛みつき、無数の魂と共に彼の血肉をむさぼり食う。【修羅鬼童丸】 「違う……父よ、僕は一度も生き残れる強運と強靭な肉体を求めていない。信頼に支えられ、信頼から力を得るのも筋が違う。僕は未来永劫まで続く殺戮の中でしばし足を止めて一休みする居場所がほしい。獲物のみが巣穴を持ち、狩りを生業とする僕たちは、罠の隙間を彷徨い続けるだけ。それでこそ生の喜びを噛み分けることができる。」鬼童丸は逆に父と母と抱きしめ、彼らの血肉を切り裂き、熱い鮮血を摂取する。【修羅鬼童丸】 「今、僕は居場所を見つけた。獲物の残骸こそは、狩人がぬくもりを手に入れる安息の地。」無数の妖鬼に食い散らかされる中、鬼童丸の壊れた肉体はまた彼が引き裂いた妖鬼の血肉をむさぼり、再生を繰り返して再び完全な姿に戻る。彼に喰らわれた妖鬼は、彼の耳元で最後の願いを囁いている。彼らは生のために、愛のために、自分の命を捧げてもいい…すべてのために。彼らの血肉は偉大なる執念のために未来永劫まで消えない。やがては鬼城を封印する網に、空にある決して消えない結界になった。ここを彷徨う獲物は、同胞の生き残りたい願いと血肉に囚われている。同類との終わりのない殺し合いが、鬼童丸にとってはこれ以上ない休息となる。温かいのは抱擁ではなく、美味しいのは料理ではなく、輝かしいのは明かりではない……温かいのは血肉、美味しいのは鮮血、輝かしいのは命の欲望。網にかかった魂が死に際に放つ最後の光は、彼に赤く美しい夢を見せる。 鬼城の奥…… 地上のある和室で、晴明は新しい霊符で賀茂忠行の鬼気を鎮め、鬼化した腕が元の姿に戻るのを見届けた。【晴明】 「先生、ここで休んでください。私が残りの問題を解決するまで、ここを出て、傷を悪化させるような行動を控えてください。」晴明は和室の周りに妖鬼の気配を隠す術を設置した後、もう一度釘を差した。【晴明】 「先生が部屋を出ると、私はすぐ分かります。鬼童丸のことは、私がなんとかしますから。」賀茂忠行は頷いた。急に戦う必要がなかったからか、それとも鬼童丸は目の前で消えたせいか、賀茂忠行は今少し恍惚としている。彼は懐から一枚の黒い霊符を取り出した。【賀茂忠行】 「鬼童丸は修羅鬼王の幻影と戦う時、黒い鬼気を漂わせることがある。それは修羅鬼とは違い、彼ならではの鬼気。一応その鬼気を霊符の中に封じ込めたけど、それを鎮める方法は未だにわからない。」【晴明】 「人の怨念と妖鬼の邪気は元々似通うところがあります。この鬼気はそれらから生まれるものかもしれません。」【賀茂忠行】 「そんな力を持っているのなら、鬼童丸は修羅鬼道に囚われることはない。修羅鬼道以外にも、人と鬼が争い合う限り、この鬼気を生み出し、彼を引き付けるかも。」【晴明】 「先生は次の鬼城に向かい、この鬼気を鎮める方法を探しに行きますか?」【賀茂忠行】 「もし鬼童丸の鬼気を鎮める方法を見つければ、人にとっても、鬼にとっても、それは争いをなくす方法かもしれない。」【晴明】 「人がいる限り、争いは決して消えません、先生……一緒に平安京に戻りましょう?」鬼城の中…… 鬼城の上空、壊れた天幕は溶け消えていく。赤い結界の外にあり、本当の空はようやく現れた。縁結神は春の手を、春は柳田の手を掴んでいる。三人は城門のほうに向っている。【縁結神】 「春!振り返らないで、もうすぐここを出られるのじゃ!」春の背後には、数え切れないほど鳥が彼女達についてきている。ある真っ黒な影は鳥の群れを越えて柳田の体に入り込んだ。その後、囁きが聞こえる。【入内雀(青)】 「燕!帰ってきたんだね!なぜ僕がそんなひどいことをすると思う?この体は死に際に彼に託されたんだ、娘を守ってくださいってね。もともと彼の妻の肉体を使っていたが、すぐ腐ってしまい使えなくなった。女の子はどうするって?そりゃできるだけバレないようにする……だってさ、この体は結構便利でしょう?」城門に向っている縁結神は、目ざとく遠くにいる玉藻前に気づいた。玉藻前は彼女を待っているようだ。【縁結神】 「大狐!他の皆は?」【燼天玉藻前】 「晴明は人間達の魂を平安京に連れ帰ると言って、今頃は城の中で後始末をしている。賀茂忠行は体調がすぐれないが、しばらくは持ち堪えるでしょう。私からすると、賀茂家はこの後も色々と晴明の手を煩わせるはず。」【縁結神】 「まだ人の形を保てている亡霊をできるだけ赤い糸でなだめてあげた。この後晴明が彼らに呼びかける時は多少楽になるはずじゃ。」そう言いながら、縁結神は手の中の赤い糸に目を向ける。赤い糸の半分が鬼童丸の胸の中に消えていく光景が脳裏をよぎった。鬼童丸の言葉を思い出すと、また怒りが湧いてきた。【縁結神】 「神は餓死などせぬ!われが億万長者になったら、修羅鬼道を丸ごと立派な神社に改築するのじゃ!その時、毎日の掃除はすべてお主にやらせてやる!」この時、この半分になった赤い糸の先には、ボロボロで血に染まった鎖の輪が結ばれていた。赤い糸は脈打つように、彼女の手の中で閃いている。縁結神は思わずほっとした。【縁結神】 「自由の象徴である赤い糸を、絶対になくすでない。」数ヶ月後、平安京…… 月は高く昇る夜、晴明の庭院の廊下には二人が腰を下ろし、隣には二杯の生温いお茶が置かれている。頭上の桜はすでに咲き誇り、花びらは夜風に揺れて舞い落ちる。【晴明】 「……行き詰まった状況を打開するため、私は黒晴明と約束した。私が彼に、彼が私になりすますと……その後も色んなことが起きました、話せば長くなります。今日はもう遅いですから、お休みになりませんか?」【賀茂忠行】 「むしろもっと高天原と七悪神のことを聞かせてほしい。十数年経った……平安京は全く知らない場所になった気さえもする。でも一部の景色は、昔のままのようだ。」晴明は庭院の真ん中にある桜の木に目を向けた。【晴明】 「幸い、先生が帰ってくる日、ちょうど春桜が咲いています。」【賀茂忠行】 「それは同時に学堂で勉強していた皆が晴れて学堂を出て、自分だけの人生を探しに行く日だ。」賀茂忠行は俯いて指先を眺める。鬼気は片腕を蝕んだが、それを鎮める霊符のおかげで、彼はまたこうして晴明と話を交わすことができる。【賀茂忠行】 「晴明、今から卒業のお祝いを用意しても、まだ間に合うかな?」【晴明】 「この季節なら、何でも間に合います。」修羅鬼道…… 鬼城は相変わらず深い霧に包まれている。赤い網は外へと拡散していく。しかし鬼城の境目に届くと、霊符が再び光を放って幻境を展開し、霊符に触れた鬼城のすべてを取り入れようとする。幻境に囚われる、ぎりぎりのところで鬼童丸は身を引いた。【修羅鬼童丸】 「晴明、よくも僕を利用して時間を稼ぎ、城をすべて覆うほど大規模な幻境を仕掛けたね……でも君の悪鬼の扱い方は、実につまらないよ……こんな幻境じゃ、悪鬼を城の中で迷わせるだけなんじゃないかな?こんな封印じゃ、僕の遊びは止められないよ……晴明。僕の遊び仲間、どきどきさせてくれる獲物は、この近くで狩りの網に導かれている。」修羅の力が遥か遠くの獲物と共鳴し、鬼気が鬼童丸の体から溢れ出ていく。遠くに漂う人と鬼の怨念、そして怨念から生まれる歪んだ欲望は目に見えるものではないが、それでも鬼童丸は空を飾る星々のようなそれらを感知した。本当の星空とは違い、人と鬼が織りなす争いは修羅に選ばれたが最後、修羅の鬼気に囚われ、狩りを行う修羅の獲物と糧となる。なにしろ人の怨念と鬼の邪気はよく似ているから、純粋な殺戮という楽しみを除けば、どんな封印を用いてもその美しさを隠すことはできない。修羅の鬼気に印をつけられた獲物は、殺し合いに溺れ、理性を失い、修羅鬼道の奥にある鬼城へと一歩一歩近づいていく。そう遠くない未来に、修羅鬼道は再び栄えるだろう。修羅の鬼気に惹かれる者は皆、やがて網にかかる。鬼域のすべての悪鬼と城は、新しい遊びに巻き込まれる。」【修羅鬼童丸】 「鬼城の遊びを、もう少し続けよう。封印を完全にこじ開けた時、平安京は一体どんな遊び場になるかな?晴明……その時はまた、感動的な同窓会をしようじゃないか。」 |
狩場の微光ストーリー
修羅鬼童丸
起 |
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不気味な鬼域で、魑魅魍魎と人間が本性を晒す。 無秩序の地で、人と鬼は殺し合い、足掻きながら九死に一生の活路を探す。 そんな見るに堪えない悲惨な光景の中、人と鬼の気配は混じり合い、区別がつかなくなっていく。 残酷な修羅鬼の子は指先についた血をなめながら、突然何か思い出したように、純粋な笑みをこぼした。 |
転 |
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善悪が宿る人の心と鬼域、正邪の源となる血の伝承。 狡猾で残酷な運命は、僕を先生とは真逆の暗闇の中に突き落とした。 でもいいんだ…… 僕と先生と晴明は、争いの終わりに再会する。 鬼城では、殺し合う悪こそが生き残るために必要な第一条件で、決して変えられない性となる。 それこそが先生が探していた、人間と鬼の共通点、同じ結末じゃないのか? ここは煉獄であり、楽園でもある。震えが止まらない、尽きることがないこの歓喜を、僕が独り占めするわけにはいかない。 |
念 |
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楼閣の上に腰を下ろした鬼童丸は、巨大で荒れ果てた廃墟を見下ろしている。 ここの空間は秩序すら保てなくなり、壊れた建物が押し合い、重なり合っている。影の中から、時々囁きが聞こえる。しかし近づくとまたすぐ静かになる。 影の中に潜む狩人は深く呼吸し、その目は貪欲さや残酷さで満ちている。 遠くから歌声が聞こえた。妖鬼は慌てて声がする方を確認したが、次の瞬間にはもう飛んできた鎖に貫かれた。 闇の中、ある大柄な者が鬼童丸の方を見つめている。巨体の下にある巨大な竜の骨は、闇の中で鋭い刃のように光を反射している。 闇に包まれた町越しに、鬼童丸はその者と対峙していた。鬼童丸は冷たい鎖をいじりながら笑みをこぼした。「せっかく鬼城の城主がこんな時に狩人に会いに来たんだ。でも残念だけど、人と鬼との争いの中で命を落とした君は、僕が狩るべき肉体を持っていない。」 闇の中に隠れている城主は、意味深い笑みを見せた。「嘘をつく子は悪い子だぞ……城主を狩るために来ただと?真の狙いは他にあるだろう。」 鬼童丸はあどけない顔を作った。「目眩ましがなければ、獲物は警戒を緩めてくれないだろう。それに、今回は大切なことを検証するつもりさ。」 「獲物にはその身をもって答えを示してほしいんだ。その後で、僕に狩られる資格を与えてやる。」 城主は口を開いた。「ほう?奇遇だな。こっちも確かめたいと思っていたところだ。お前が俺の獲物として、狩られる資格を持っているかどうかをな。狩りの時がきたら、俺が見定めてやる。」 鬼童丸は興味深そうに目を細めた。「では、その資格を得るには何が必要だ?」 城主は答えた。「人間に育てられた悪鬼であるお前の心は、どうなっている?」 鬼童丸は控えめに笑った。指先で鎖を摩りながら、彼は小声で城主の名前を口にした。 「僕の鎖が君の心臓を貫く時に、答えを教えてあげる。」 |
鬼王
起 |
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修羅鬼一族は、同胞を殺し合うことで厳しい秩序を作り上げる。 そして共食いの一族の頂点に立つ者は、残酷な目で、ある人間の女に狙いを定めた。 あそこには、人をこんなにも夢中にさせる殺戮があるのか…… |
転 |
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悪鬼は以前、陰陽師たちがこんな話をするのを聞いたことがある。妖鬼に近づいてはならない。妖鬼に惑わされてはならない。取り返しのつかない事態になって地獄に落ち、自分まで妖鬼になるぞ。\nしかし、そんな戒めは正しくない。 でなければ、人間の女でありながら、残虐無道な手口で悪鬼を惹きつけ、彼女の側で彷徨い続けさせるような者は出てこないだろう。 悪鬼に言わせれば、むしろ……人間の残酷さは最初から妖鬼にも負けない。人間が同胞を屠る理由は、尚更奇抜で魅力的なものだ。 彼女に惚れ込んだ悪鬼は人間の女と夫婦になり、無数の人々と妖鬼を攫って、自分の城に閉じ込め、殺し合えと命じた。 「鬼同士の殺し合いに飽きたら、この城に来い。俺に最高の狩りを捧げろ。」 |
念 |
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陰陽師三家がついに修羅鬼王を囲んだ時、鬼王は妻と共にいた。 彼らはすでに、唯一の跡継ぎである我が子を密かに人間の村に託していた。この時、戦場の中心の屍山血河の中から、ある陰陽師が刀を携えて彼らに迫ってきた。 戦いは数ヶ月続いた。無数の包囲網と罠を仕掛けた人間たちは、ようやく鬼王の力を全て消耗させたと思っていた。彼らが近づくと、そこには無数の死骸の上に腰を下ろしている鬼王がいた。鬼王の膝の上には妻の首が置かれていた。しかし彼女の美しい体は、戦いの中でとっくに行方不明になっていた。 女は鬼王の膝の上で鮮血のような赤い髪をなびかせている。鬼王は骨で優しく妻の髪を梳っていて、目の前の人間たちには目もくれなかった。 陰陽師の長が皆を戒めた。鬼王は狡猾だ。戦う力すら残っていないように見えるが、裏があるかもしれない。気をつけるに越したことはない。 ある者が、霊符で鬼王の動きを封じるために前に出てみた。次の瞬間、骸骨の山が揺れ、その中から飛んできた骨の槍が不意をついて陰陽師たちの体を貫いた。 運良く生き残った者は、今度は骸骨の下から溢れ出る狂気に蝕まれた。 陰陽師たちは次々と重傷を負って倒れた。 この時、鬼王はようやく頭を上げた。近くにまだ生存者がいることを確認すると、彼は動き出した。しかし彼は突然、妖力がある力に封印されたことに気づかされた。この瞬間、彼は初めてさっき周囲の陰陽師たちが死に際に己の肉体を利用して法陣を作り上げ、しばしの間彼の妖力を封印したことに気づいた。 この時、目の前で刀が一瞬閃いた。 次の瞬間、首をはねられた鬼は大量の血を噴き出した。 鬼王の体から溢れ出る夥しい狂気がすべてを蝕んでいく。隙を突いて鬼王を討った陰陽師は素早く身を引き、生存者を連れて一時的に撤退した。 戦場の中には、鬼王の尽きることのない鮮血と、彼の膝を覆う妻の赤髪だけが残った。 二つの真紅の色が混ざり合い、静かに流れていく。 |
賀茂忠行
起 |
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数十年貫き通してきた信念が、あの瞬間動揺した。 一体どうすれば、人と鬼が共存する道をこれからも進んでいける?生まれながらに悪をなす鬼は数え切れないほどいる。鬼の性を抑えつけ、人々の中に隠れることが、どうして間違いなんだ? |
転 |
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出発する前、賀茂家の傍系に当たる一人の長老が賀茂忠行の部屋にやってきた。 灯台の元で腰を下ろした後、彼らは翌日の計画のことを話し合った。途中でこの前賀茂の生徒たちの間で起きた悲劇のことも言及した。 長老は嘆いた。「我々は人間と鬼が争い続ける時代に生まれ、鬼を退治するのに慣れている。しかしお主は人間と鬼との共存を望み、鬼を招き入れもした。もしこのまま続ければ、世の理に背き、完全に孤立することになるぞ。それでも最後までやり通すのか?」 「此度の目的は、人間と鬼との争いを終わらせることです。この件は賀茂一族も認めてくれました。」賀茂忠行は頭を下げ、長老に自分の決意を見せるように言った。「どうか信じてください。」 |
念 |
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賀茂の本家と分家の陰陽師たちは賀茂忠行に付き従い、長旅の末にようやく修羅鬼道にたどり着いた。何年も前に、陰陽師三家は力合わせて鬼王を退治し、その体と城をここに封印した。 当時、人間と鬼は争い続けていた。陰陽師ならば誰もが妖鬼を憎んでいる。妖鬼を見つければ、必ず退治する。それは人間と鬼が争う時代に生まれた人間たちの理だ。 ある女の鬼の死に様は、そんな理を貫いていた賀茂忠行を目覚めさせた。女の鬼の腹の中、まだ生まれていなかった赤子が、形のない手で賀茂忠行の頭を優しくなでたようだった。 人々に囲まれていた賀茂忠行は、その瞬間から自分を顧み、乱暴な行動を控えるようになった。それから、彼は一度も悪をなさず、人間と共存できる鬼を見つけていった。 彼はよく昔のある涼しい夏の夜を思い出す。幼い賀茂保憲が陰陽道の修行をしている。これからの時代、どうやって次の世代の陰陽師を導くかについて、彼は考えたことがある。これはまた、善悪と関係のないすべての鬼への偏見と憎悪が、いつ消えてなくなるのかを決めることにもなる。\nだから、彼は賀茂保憲に告げた。「陰陽師は人間と鬼の間に生き、自身の術法をもって、人間と鬼を調和する者であるべきだ。」 「人間と鬼との間には、互いを受け入れる道があるはずだ。そして陰陽師こそが、皆をその道へと導く者だ。」 この時、一族の皆と共に修羅鬼道の奥にある封印の前までやってきた賀茂忠行は、その夏の夜に言った言葉を思い出した。 目の前の封印の中には、一体どんな危険が潜んでいるのだろうか。そんなことを考えると、賀茂忠行は共に来てくれた皆に対して申し訳ない気持ちになった。 しかし自責の念はすぐに消え、彼は血に飢えた、狂気に満ちた顔を思い出した。 賀茂忠行は刀を握りしめた。 今の彼は道を切り開く者、後戻りはもうできない。 彼は封印に向かい、覚悟と共に地獄に踏み込んだ。 |
縁結神
起 |
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縁の始まりと終わりは、運命が決めるもの。垣間見ることも、見通すこともできない。 縁のために生まれてきた神だけは、人の世の絡み合う縁の糸を通じて、不思議な縁を織りなし、彼女の軽やかで自由な楽章を奏でることができる。 しかし混沌の中にいる、善なき城の人々に、その希望に満ちた縁の曲が聞こえるだろうか。 |
転 |
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この城に足を踏み入れたが最後、自分の意志とは関係なく、大切なことを捨てなければならない。 殺戮の中で生き延び、追い詰められながらもがき続ける、それは魂に刻まれた理だ。 脱出することも、逃げることもできない。孤独で残酷な結末を迎えなければならない。 家族を捨て、信義に背き、狂気に侵された人と鬼は刀を握りしめ、互いに刃を向け、縁を切り落とし合い、許されざる罪を犯した。 縁結神様は、こんな信者を許してくれるだろうか。 愛と生死の、一体どちらが大切なのか。 そんな人々のために、彼らが自ら断ち切った縁を繋ぎ直してくれるのだろうか? |
念 |
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玉藻前と別れた後、縁結神は困ったような表情で目の前の城門を見つめていた。 不気味な城門が突然開いた。今にも実体化しそうな狂気が溢れ出してくる。考えるまでもない。この中に入ったが最後、きっと酷い目に遭ってしまう。\n 「入るべきか、それが問題じゃ。」 今回修羅鬼道に入ってみたら、すべてが異常だった。 腕につけている鈴が鳴り響き、修羅鬼道の奥をしつこく示す。闇の中に隠れる妖鬼を警戒しながら進んでいたが、なんの問題も起こらず、彼女はようやく気づいた。 修羅鬼道は、すでに生者のいない死の国となったのだ。 縁が示す方向に、突然鬼城が現れた。縁の導きは城門の外で急に途切れ、ただ死の気配だけが漂っている。 少し躊躇った後、神様は決断を下した。 「……ここまで来たのじゃ、手ぶらで帰るわけにはいかぬ!」 縁結神が鬼城に入ると、黒い霧は消えていった。神力を使うと、城の真実が彼女の目に映った。 無数のちぎれた赤い糸が空中に漂っている。出口が見つからないから、ここを出ることもかなわない。 驚いた彼女はいくつかの赤い糸を掴んだ。すると無数の思念と痛みが伝わってきた。 ちぎれた糸は、達成できなかった縁を語る。 生死別離、合縁奇縁、善と悪が絡み合い対抗しているが、やがて至る所に溢れる狂気に負け、絆はすべて呑まれてしまった。縁の糸の持ち主は刀を握り締め、縁の糸で繋がっている親族に刃を向けた。 彼らは自ら縁を断ち切った。 殺戮を好む恐ろしい悪意が、新しい来訪者に城の規則を告げる。生き残るためにすべてを捧げろ、ここには縁など必要ない。 城の主は、無言で神を詰問している。 生死を前にすれば、愛など取るに足りない。誰もが選択し、この規則を認めた。では、神様はどうだ? 神様も認めるのか、それとも……信義に背く人々を見捨て、彼らに懲罰を下すのか?\n縁結神はその問いを無視した。掴んだ糸を手放し、桃の杖を地面に差し込んだ後、少し苦しむような顔を見せた縁結神は縁結の鈴を握りしめて深呼吸した。 「今回ためた力は足りるじゃろうか……」 彼女は悟った。神力をためる度に、必ず突拍子もない、訳の分からない理由で神力を使うことになる。 でも縁結神様は、自分が不幸な星の下に生まれたとは、絶対に認めない。 縁結神は自分の神力を使って、無数の赤い糸を作り出した。新しい糸がちぎれた糸と繋がる。無数の魂が彼女と繋がり、進むべき方向を導いてくれる。 「われは導かれてここに来た。つまりここにいる者すべてが、われの縁者なのじゃ!」 闇の中で誰かが嘲笑ったようだ。 「他人と縁を結べぬことは、お主らの過ちではない。生死と愛のどちらかを選ばなければならぬのは、不公平じゃ。」\n平凡で取るに足りない無数の感情、すれ違った絆のために、彼女は長年苦労してきた。縁は不思議でよく分からないもの、それでもなんらかの痕跡は残していく。 愛は希望に満ちた環境で芽生えてくる。選択の自由のない生死は、無理やり縁につけられた枷でしかない。 「われのやるべきことは、彼らを希望に満ちた道へと導くことじゃ。」\n\n\n 「その後は……」 彼らは縁に導かれ、失ったものを取り戻す! 縁結神は桃の杖を引っこ抜いた。腕の鈴が再び鳴り響き、軽やかな足取りで進む彼女を待つ縁へと導く。 |
燼天玉藻前
起 |
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人間と鬼の共存は、最初から偽の命題だ。 妖鬼は人の心に応じて悪をなす。しかし人の心は、この世で最も計り知れないもの。 人間同士で殺し合っても涼しい顔をしていられる連中が、他の種族を迫害しても、別に驚くようなことではない。 過去は、現在の鑑となる。 大妖怪玉藻前から見れば、殺戮に満ちる修羅鬼道もまた、人の世の略図にすぎない。 |
転 |
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進む途中で、玉藻前は無数の殺し合う亡霊の幻影に出会った。悲鳴と争いが途絶えず、幻影の涙と血が噴き出す。しかし彼は動じることなく、冷たい目で懐かしい姿を探していた。 殺戮を繰り返す戦場の状況はますます悪化していく。何処ともなく現れた炎が燃え盛り、玉藻前の目の前の世界を包み込んだ。見知らぬ光景だが、とても懐かしい。 まるで記憶の中にあるの地獄のような夜だった。 聳える楼閣の上に立つ大妖怪玉藻前。その怪しい目には街を包み込んだ狐火が映っている。 燃え盛る平安京のような激しい怒りが、冷たく残酷な、破滅をもたらす心に宿る。 人間とあやかしは異なる存在だ。互いを滅ぼし、死闘を繰り広げるのは必然。そして人間も彼のすべてを破壊するために、大いなる代価を払った。 炎は平安京が跡形もなく消えるまで燃え続けるはずだった。 しかし頭を下げた時、彼は火の海の中にある者の目を見つけた。 |
念 |
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彼のとある親友も、似たような目をしていた。 彼女は彼の子供の正体を誤魔化せる腕輪をくれたうえに、子供たちに人間に化ける術も教えてくれた。\n彼女はかつて平安京に名を轟かせた陰陽師、世にも稀な賢者だった。 同時に、彼女は……白狐の大妖怪でもある。人々の中に隠れる彼女は、冷静に平安京の魑魅魍魎と人を見定め、人と鬼と妖との争いを見届けた。 平安京を去る前に、葛葉は彼にたくさんのことを打ち明けた。その中でも一番の悩みは、あの子のことだろう。 その目を見ると、玉藻前の怒りは大分収まり、幾らかの憂いを覚えた。 その子は焦り顔であちこちを駆け巡り、陰陽師らと共に逃げた人々を探し、彼とは全く違うような人も、妖怪も、平等に助けていた。彼はその子に葛葉の面影を見出した。 彼の背後では、人間の陰陽師も、式神の妖怪も、鬼族の子供も、燃え盛る烈火の中で、一時的に差別を捨てられたようだ。 無差別の生死と災難の前では、種族間の差別は本当に越えられるのか? 玉藻前はそれを信じてはいない。しかしなぜか、彼はその子に希望を託した。 彼は開いた手を少し握り固めた。すると夜が明けると共に、燃え盛っていた炎が少しずつ収まっていく。消し炭になった街の廃墟にいた人々も、次第にどこかに消えていった。 炎が収まった時、懐かしい青色の裾が見えた。彼は手の中の霊符を投げ、亡霊たちに取り憑いている狂気を追い払い、彼らを長年の苦痛の中から解放した。 この一瞬で、時を越えたようだった。子供から青年になっても、晴明は相変わらず初心を貫き通している。 玉藻前は笑みをこぼすと、手の中の扇子を振り、彼の側にいた亡霊たちに憑いた狂気を祓った。 その後、彼は晴明のほうに向かって歩き出した。 |
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