【陰陽師】鹿の帰り道ストーリーまとめ【ネタバレ注意】
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『陰陽師』の鹿の帰り道イベントのストーリー(シナリオ/エピソード)「友祈同行」をまとめて紹介。帰鹿事記(メインストーリー)と印・会話ストーリーをそれぞれ分けて記載しているので参考にどうぞ。
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鹿の帰り道イベント攻略情報 | |
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森の試練 |
帰鹿事記ストーリー
序章
序章ストーリー |
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【老者】 「はるか昔、この森が鹿人族に守られていた頃、我ら人間は鹿人族と共に、森の命である「森の心」を守ってきた。しかし、欲深き人間たちは、「森の心」を狙っていた。彼らが鹿人族に宣戦布告した日、山津波が襲ってきた。あの山津波がすべてを飲み込んだ。激流の中、一人の鹿人がわしの手を掴んで、助けてくれた。あのような状況だ、その者の顔をはっきりとは見えなかった。目が覚めると、村は寂れ、森も荒れ果てていた。何もかもが変わった。「森の心」も、鹿人たちも、この世から姿を消した。全ては、愚かな人間たちが越えてはならぬ一線を越えたからだと知った。わしはここで何年も、森が幾度も苦難を乗り越えたのを見てきた。だが今回ばかりは、森はもう持たない。それでもわしは鹿人族を待つ。彼らはきっと、故郷の森に戻ってくる。あるいは……わしを助けた、あの鹿人が……」 |
第一章
あらすじ |
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一人で鹿人族の故郷に帰ったが、そこにあったのは汚れに蝕まれ、変わり果てた森だった。草木は枯れ果て、神社は廃れている。森を歩いていると、懐かしい笛の音が聞こえた。それを吹いていたのは……不思議な人間の少年だった。 |
尽きぬ風の囁き |
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森に大雨が降っていて、シシオが森の中を独りで歩いている。【シシオ】 「長い道のりだったけど、僕はやっと鹿人族の故郷に戻れた。「穢れ」がもたらした汚染が蔓延り、一目連様と山風が今も森の結界の修復に注力を続けている。僕も、みんなの役に立ちたい……古くから伝わってきた鹿人族の術だけが、唯一森を浄化できるかもしれない。それは「森の心」と呼ばれる言い伝えだ。それを見つけるには、森に入り、歪んでしまった結界を突破して、ここまで戻る必要があった。故郷は荒れ果ててしまったが、僕はまだ諦めたくない……まあ、故郷といっても、子供の頃にここを離れたから、森のことはあまりよく知らない。でも意識を失う前に、何か聞き覚えのある旋律を聞いた気がした。」廃棄された神社に近づくと、微かな笛の音が伝わる。【シシオ】 「笛の音……この旋律は……廃棄された鹿人族の神社から……調べてみよう。」森の廃棄神社の前―― 微弱な笛の音が土砂降りの中、途切れ途切れで伝わってくる。神社の傍らに佇む大樹の横に立っていると、木の上の影がかすかに見える。【シシオ】 「笛の人が木の上に……妖怪か?」笛の音が止んだ。次に「ばあーん」と大きな物音がした。何か木の上から落ちてきた。【シシオ】 「これって……」人間の少年が木に背中を預けている。目を閉じた何かを呟いている。手のひらには笛一本を握り締めている。【シシオ】 「人間!?」シシオは驚きつつも、人間の少年に近寄った。【シシオ】 「ちょっと待って、僕は何もしてないよ。一体どうして……聞こえないのか?おい、人間。おい、もじゃもじゃ頭。どうやって森に入ったのか知らないけど、会ったとたんに倒れるってのは、君たち人間がよく言う、「あれ」じゃないか……」A.当たり屋 B.詐欺【シシオ】 「もう……疲れ切っていた様子だけど、僕には人間の面倒を見るなんて器用な真似はできない。」【???】 「森の……」【シシオ】 「え、起きた? もじゃもじゃ頭、何を言ってるんだ?」【???】 「森……の……」【シシオ】 「聞き取れないな。目覚めさせる方法を考えないと……」A.角でくっついてみる。 B.鼓の音で起こさせる。【シシオ】 「さっそくやってみよう。」やっと、人間の少年は瞼を開けた。【???】 「君が……助けてくれたのか……」【シシオ】 「やっと目を覚ましたか。どうして一人で、こんなところまで来たんだ?外はひどい状況だ。どうして逃げなかった?君の両親は、どうして君だけをこんなところに残していったんだ?」【???】 「僕はこの山の麓に住んでいる。両親はとっくに死んだ。山津波に……巻き込まれて……」【シシオ】 「山津波……」【???】 「穢れが蔓延って、森の生気がますます衰えてきた。あの時と同じだと感じ、森に入って様子を見に来たんだ。」A.じゃどうしてそこまでぼろぼろになったのだ? B.どうして木の上で笛なんかを吹くのか?【???】 「森に足を踏み入れたら、何か恐ろしいものが僕の後をついてきた。もしかしたら……穢れに侵された魔物かもしれない。それで、そいつらから逃げようと一所懸命走った。木の上に登って、やっと追手をまいた。でも、森の中をうろうろしている魔物の数は多くなる一方だ。それに、霊力に満ちている木をずっと攻撃していたんだ。……危ないところで、僕はあることを思い出した。」少年はシシオを見つめた。【???】 「ここは君たち鹿人族が代々守ってきた森だ。鹿人たちはここを去ったが、小さい頃、森で遊んでいたら、よく鼓の音が聞こえてきた。うろ覚えだったが、笛を吹いてみた。すると、向こうの切り株が光り始めて、慄いたように魔物たちが引いてくれた。君は鹿人だよね?だから、君が助けてくれたのかって、尋ねたんだ。」【シシオ】 「(そういう意味だったのか……)それで、その切り株は?」切り株を眺めるシシオ。【シシオ】 「そうか……あの切り株の上に刻まれているのは、鹿人族の鼓紋だ。森の力がまだ残っていたんだろう。もじゃもじゃ頭、人間にしては頭がよく回るな。もう大丈夫なら、森から早く離れたほうがいい。このままだと、危ない目に遭うぞ。」【???】 「どこにも行かない。」【シシオ】 「あ?」【???】 「ずっと待っていた。ついに鹿人が戻ってきたんだ。君も例のものを探すために戻ってきたんだろう?」A.…… B.人間は謎掛けが好きだな……少年が先ほど呟いた言葉を思い返すシシオ。【???】 「森の……」【シシオ】 「え、起きた?もじゃもじゃ頭、何を言ってるんだ?」【???】 「森……の……」【シシオ】 「まさか、君が言っているのは……待って、切り株の鼓紋が光っている……何か、変だ。」魔物が現れ、二人に迫って来る。【???】 「危ない!魔物が現れた!早く!鼓を叩くんだ!」鼓の音に反応し、切り株が光り出した。【鹿人(女)】 「魂の息吹を木に宿そう。森よ、どうか最後の鹿人を守りたまえ……」【シシオ】 「誰が、喋ってるんだ……?」聴いたこともない旋律が森の奥から聴こえ、目を向けるシシオ。振り返ると木が倒れ、雨も止んだ。【シシオ】 「森の力が衰弱している……魔物の襲撃を防ぎきれなかった……代々一族が守ってきた木が……」顔を上げ、周りを見回したが、弘樹の姿はなかった。【シシオ】 「もじゃもじゃ頭がいなくなった……魔物が怖くて逃げたのか……話はまだ途中だったのに……まあ、それならそれでいい。人間はここから離れたほうがいい。」シシオが考えていると、七角山の妖怪たちは遠くから駆けつけてきた。【小松丸】 「シシオ!?みんな見て!シシオだよ!」七角山の妖怪たちがシシオの前にやってきた【小松丸】 「シシオ~!」【一目連】 「やっと会えたな、シシオ。」【山風】 「おまえ……無事で何よりだ。」【薫】 「みんな心配してたんだよ。」【シシオ】 「一目連様、山風、薫、小松丸……」A.またみんなに会えるとは…… B.みんな……、どうしてここに?【小松丸】 「シシオ、みんなで相談したんだけど、やっぱり一人で行かせるのはよくないと思って……」【山風】 「約束の時間が過ぎても戻ってこないから。何かあったんだろうと思ったんだ。」【一目連】 「君がいなくなった場所でずっと探してた。そしたら鼓の音が聞こえて、それを辿ってここに来たのよ。」【シシオ】 「この結界のせいで、だいぶ時間がかかったみたいだ。まさか、魔物が結界を突き破って、みんなを引きずり込んだのか……」蒼風一目連の目線が神社の前に倒れた木にとどまり、ほかの皆がそれを辿って、同じ方へ見やる。【一目連】 「シシオ、この森も穢れに侵されているな。吾にできることはないか。」【小松丸】 「一目連様、無理はダメですよ。この旅でだいぶ力を消耗したじゃないですか。まだ回復していません。」【山風】 「それに、この森に入ってから、しつこいやつらにも遭った。」【シシオ】 「(魔物か? 僕の鼓なら、奴らを退けられるかもしれない……)実は対処法がわかったけど……話せば、長くなる……」【一目連】 「構わない。時間も遅いし、手分けして薪を集めて火を起こし、ゆっくり休みながら話そう。」廃棄神社の看板を調査する。【シシオ】 「(この看板の模様……昔、夜になると、一族のおじいさんがみんなの代わりにその日に歩いた軌跡を記録する。幼い頃のぼくはおじいさんの羊の皮の巻物を読んだことがある。その隅っこに似たような模様を見たその模様が何かおじいさんに聞いたけど、おじいさんはそれを撫でながら、ただため息をついていた……描いたのは、忘れないためだって。その時は理解できなかったけど、今思えば、故郷への信仰が一族のみんなの魂に刻み込まれたのだろうおじいさんは家が……もう戻れない故郷のことが恋しかったんだ僕は帰ってきた。でも、僕一人だけ……)」廃棄神社前の切り株を調査する。【シシオ】 「(さっきのもじゃもじゃ頭は、この辺りで消えた……)」シシオが考えていると、弘樹が森から出てきた。【???】 「君、名前はシシオっていうの?」【シシオ】 「うわっもじゃもじゃ頭!びっくりした……どうしてまだここにいる?」【???】 「あの妖怪たち、君の友達? すごく心配しているように見えたけど。」【シシオ】 「(なんかこの人……、寂しそうだ。あっ、そうか……こいつも孤児だったな)」A.うちに混ざりたい? B.えっと、妖怪は……あまり人間を好かないんだ。【???】 「分かってる。少なくとも、君は僕と仲間になることはない。もう長い間この森で鹿人を見かけたことがない。君が戻ってきたのは、きっとそれなりの理由がある……そうだろう?もし、君が探しているのが、森を浄化できる「森の心」なら……」【シシオ】 「やっぱり、森の心を知っているのか!」A.どうして森の心を知っているのか? B.君も「森の心」を探しているのか?【???】 「麓で育てられた僕は、子供の頃からこの森の言い伝えを聞かされていた。森の心が呼び覚まされれば、中に充満した霊力が一気に森を癒やして、奇跡を起こすと聞いた。……鹿人の君なら、見つけられそうか?」【シシオ】 「(まだ幼かったからな……物心がつく前にここを離れた。在り処を知っていそうな鹿人も、もう……)」A.心細い B.自信はある。【弘樹】 「僕も、あの山津波の生き残りだ。あんな悲劇はもう見たくない。だから、ここ最近は、森でそれを見つけ出そうとしてた。そして、手がかりも見つかった。切り株が光った時、何かに気づかなかったか?」森の奥から鼓の音が聴こえた。【シシオ】 「そうか……進むべき方向を教えてくれているんだな。」【???】 「鼓紋の音を辿っていけば、「森の心」が見つかるかもしれない。だが、あれは鹿人族の鼓の音にだけ反応する。言っただろう。僕はどこにも行かない。僕も鼓紋を探すのを手伝う。何か見つけたら、この笛を吹く。音が聴こえたらこっちに来てほしい。」言い終わると、少年は背を向けて去ろうとする。【シシオ】 「僕一人でも何とかなる。僕に関わらないでくれないか……」【???】 「このままじゃ手遅れになる。この森は荒れ果てているし、大雨(おおあめ)が降れば、また山津波が起きる。」【シシオ】 「(ただの人間が、何の役に立てるんだよ……)待て、もじゃもじゃ頭!行く前に名前を教えてくれ。」少年は振り返さず、森に溶け込んだ。そして、風が彼の言葉を運んでくる。【弘樹】 「弘樹だ。」【シシオ】 「(弘樹……人間なら、難しいとわかれば諦めるだろうし……まあ……)」廃棄神社の前に倒れた大樹を調査する。【シシオ】 「(もじゃもじゃ頭を連れて行かないのは……他人を危険に巻き込みたくないからだ。七角山のみんなは感謝している。ずっと僕のことを探してくれて、見捨てなかった。でも、鹿人族の森は危険すぎる。みんなを危険にさらすような真似はさせられない……うん、決めた)」神社の前にはあたたかい篝火が灯り、妖怪たちはとっくに座って待っているが、シシオは倒れた木の前に立ったまま。【小松丸】 「シシオ?」【シシオ】 「うん、今行く。」シシオは今日の遭遇を七角山の妖怪たちに話したが、言いづらい気持ちから、人間の少年のことは隠しておいた。【一目連】 「なるほど、ここが鹿人族の故郷か。ほかとは違うようだが、この森も穢れに侵されているのではないか。」【シシオ】 「森で現れた魔物も、穢れのせいだと思います。」【薫】 「恐ろしい魔物ね……森で生息していた生き物だったんでしょうか。」【シシオ】 「うん……鹿人族に守られていた生き物だからだろうか、魔物になっても、鹿人族の鼓の音を恐れている。木を攻撃したのは、木の霊力を吸い取るためだろう。でも、あれに狙われたら、僕たちも魔物になってしまうのだろうか……」神社の前で倒れた木を見つめるシシオ。【シシオ】 「(魔物は危険すぎる。気を抜けば、みんなはたちまち、この木のようになる……それに……)」シシオはみんなの顔を見た。【シシオ】 「みんな……ごめん。謝らなくちゃいけないことがある。実はまだ、森の心の在り処は見つかっていないんだ。思ったより時間がかかるかもしれないし……なによりも、この森は魔物だらけで危険だ。それに、木も次から次へと倒れて、最後は森全体が完全に息絶えるだろう。」A.だから、みんなにお願いしたいことがある……【シシオ】 「だから、ここを離れて、結界がまだ生きている森に避難してほしい。」【山風】 「シシオ!なに馬鹿なこと言ってるんだ!!」【シシオ】 「僕のせいで、みんなを巻き込んでしまった。ここを徘徊する魔物は、道中の敵よりずっと危険なんだ……だからみんな、すぐにここを離れるんだ。もっと安全な場所へ!」【小松丸】 「小松丸が、反対します~!」【薫】 「シシオ……あなたはどうするの?」【シシオ】 「望みは薄いかもしれないけど、鹿人族が残した「森の心」を見つけないと。森の心が呼び覚まされれば、中に充満した霊力は一気に森を癒し、奇跡を起こす。だから僕はここに残って、その奇跡を見届けたい。大丈夫、もしうまく呼び覚ませたら、きっとみんなを探しに行く……」【山風】 「うまくいかなかったら?」【シシオ】 「ここに残る。ここは鹿人族が暮らしていた故郷だ。どれだけ難しくても、僕は、この森を捨てない。」七角山のみんなは黙り込んだ。しばらくすると――【一目連】 「シシオ……わかっている。君はひとりで全部を背負うつもりだろう。ただ、ひとつだけわかってほしい。われらはお前ひとりのためにここに来たわけではない。森を浄化するために来たのだ。」【小松丸】 「(一目連様は、みんなが穢れに侵されないように毎晩、結界を守ってきた。本当に大変だった……)」【薫】 「(山風も秘術を試していたし……何かあれば、いつもみんなの前でみんなをかばっている……)」【一目連】 「皆もお前と同様に、森の不幸を終わらせたいのだ。目的は一緒だ。そうだろう?」【シシオ】 「そうなのですが、でも……」【小松丸】 「ハーイ!シシオの提案をします~。実は来る途中、シシオのことだからこうなるんじゃないかなぁ、なんて想像してたんだ。だからみんなで相談して、意見をまとめておいたんだよ。」【一目連】 「シシオ、お前はもう七角山の一員だ。」【シシオ】 「本当にいいの?」【一目連】 「もちろんだ。お前はもう、ひとりじゃない。」【山風】 「逃げるやつなんてここにはいない。それに、お前が一人で突っ走らないように見張っておかないとな。」【シシオ】 「ありがとう、みんな……」【薫】 「ありがとうなんて、よそよそしいよ。ありがとうなんて、いいからね。」【一目連】 「すでに日も暮れた。行くと決めたなら、早めに休むとしよう。明日のために、体力を温存しておくのだ。」夜が更けた。シシオはぐっすりと眠りについた……。 |
第二章
あらすじ |
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七角山の仲間たちと再会した、出発したあと、森の奥でさらに大きな危機が訪れた。雲霞のような魔物の群れが飛び交い、ぶつかり合っている。……妖怪の精神も魔物に侵されるのか? |
彷徨う昨日の風 |
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鼓謡が鳴り、長く響いている。おじいさん、なんで鹿人は鼓を叩くの?【シシオ】 「鼓は重いし、持ってると動きづらいよ……」【鹿人(男)】 「いいかい、シシオ。「音は記憶よりも深い存在」なんだよ。」【シシオ】 「よくわかんない……」【鹿人(男)】 「シシオ、もしもある日……皆(みな)とはぐれて、お前だけが残されてしまったら……わしらがそばにいなくても、お前が鼓を鳴らせば、わしらは君を――故郷(こきょう)を見つけられるだろう。記憶は忘れど、旋律は忘れない。いかなる時も、鼓とともに生きるんだ、シシオ。」【シシオ】 「うん……」シシオは目を覚めた。雨は降り続いていて、七角山の仲間たちは輪を作って森の中を立ち尽くし、彼に一番近いのは薪を拾っている薫。【薫】 「シシオ、起きた?」【シシオ】 「ごめん……、寝坊しちゃって。夢を見たんだ。今までずっと忘れていた、一族の夢を。」【薫】 「ねえ、大丈夫?」【シシオ】 「うん、大丈夫……みんなは?」シシオが頭を上げて見渡す。七角山の妖怪たちは周りを調べているが、小松丸だけが切り株の横に隠れて、持ってきた松の実を数えている。【シシオ】 「小松丸……?」隅っこでしゃがんでいる小松丸はどこか悶々としている。シシオは小松丸の前に歩いていく。【シシオ】 「どうしたの、小松丸。君は不機嫌になると、地面の松ぼっくりを数える癖があるよね。」【小松丸】 「シシオ……七角山に帰りたいよ。「七角山の森にね、松ぼっくりをたーくさん埋めたんだ。だから、ここに来る時は、少ししか持ってこられなくて……」それにね、今数えたら、ひとつ、ふたつ、みっつ……途中でいっぱい落としちゃったみたい。ねえ、シシオ。七角山の松ぼっくりも穢れちゃうのかな?」A.されない…… B.さあ……【小松丸】 「シシオ……鹿人族の「森の心」を見つけて、七角山に戻れるよね?」【シシオ】 「うん……「森の心」についての手がかりは掴んだから。きっと大丈夫だよ、小松丸。」【小松丸】 「ほんと?」【シシオ】 「ほら、聞いて。」シシオが切り株のそばで鼓を叩くと、切り株の鼓紋が光り、新たな鼓謡の旋律が今度は森の奥深くから伝わってきた。【小松丸】 「ほんとだ!じゃ、鼓の音についていけばいいのね!でも、あたし弱いから、みんなについていっても足を引っ張るだけだよね……あたし、みんなに迷惑をかけたくないよ……みんなの役に立たないと!でも、何をすればいいの?いっそのこと、昔みたいに……」【シシオ】 「小松丸!もう二度としないって、約束したんじゃなかったのか?」【小松丸】 「あ、ははは、うそうそ。シシオはすぐ本気にして。冗談に決まってるよ。」近くの七角山の妖怪たちが音のする方へ向く。薫は遠くないところで手を振った。【シシオ】 「それじゃあ出発しよう。それから小松丸、寂しい時は、寂しいって言っていいんだからな。」【小松丸】 「シシオのバカ。寂しいだけじゃないよ……みんなの役に立ちたい……少しでもいいから……」一行は進みながら会話をしている。【薫】 「のどかな森だね。魔物や穢れがなかったら、きっときれいな場所だったんだろうね。」【シシオ】 「実は、昔は禿げ山だったって、一族のおじいさんが言ってた。麓の村が飢餓に苦しむ中、ここを訪れた初代の鹿人族の力で、森を生き返らせたんだ。そして、当時の村人たちは感謝の気持ちを込めて、森に残らないかと鹿人を誘った。言い伝えでは、「森の心」には森を守れるほどの莫大な力が秘められている、とだけ言及されている。ただ、どうやって創り出されたのかについては、何も……」【薫】 「待って、この先で、何か変な音がする……」魔化した人面樹が出てきて、その周りに魔物が囲っている。【小松丸】 「あれは……人面樹!? 久しぶりに見たけど……なんで!?」【一目連】 「みんな下がれ。あれが本当に人面樹なら、われらには危害を加えないはずだ……」【山風】 「でも、あの人面樹は、魔物に取り憑かれているようだ!全員、戦いに備えよ!」魔化した人面樹の攻撃がますます激しくなり、新たな魔物もどんどん湧いてくる。七角山のみんなは次第に手に負えなくなり、崖の近くまで追い込まれた。【一目連】 「皆、下がれ!」【山風】 「くそ、無茶をするな!」【一目連】 「風の……守りよ……」【小松丸】 「一目連様!これ以上、風の力を使えば、お体が……」【薫】 「もう……おやめください……一目連様……」【シシオ】 「力が回復しきっていないのに、みんなをかばうなんて……」【山風】 「言うことを聞けって」山風が一目連の応援に行こうとしたが、その隙に魔物が薫を襲う。【小松丸】 「薰ちゃん!」間一髪のところ、山風が薫の前に立ちはだかり、逃げ回る魔物とすれ違う。シシオは最前で振り返った。【シシオ】 「みんな……!みんなが囲まれてる……!鼓の音で魔物は退けられるけど……囲まれて、これ以上は後ろに退けない!!(どうすればいい……もう、みんなの後ろに隠れるのは嫌だ!僕の仲間を……あんなものに穢されてたまるか……!)」少し離れたところから透明感のある笛の音が伝えてきた。その笛の音が七曲山のみんなを取り囲む魔物たちを撃退した。【シシオ】 「この音は……鹿人族の鼓の旋律……あの人間は……弘樹!?」人面樹は一瞬、視線を逸らされた。【一目連】 「人面樹の注意がそれた!シシオ、今だ!風の力を、味わえ!」A.今だっ! B.みんなを……!シシオが鼓を鳴らす。鼓の音と笛の音が同時に響き、魔物を撃退した。【シシオ】 「一目連様、これではきりがありません。……でも、僕の鼓の音なら人面樹を正気に戻せるかも!その隙に、みんなは撤退の準備を。」【一目連】 「シシオ、気を付けるのだ。——待て、シシオ!」一目連とシシオは位置を交換した。しかし、その隙に人面樹は猛攻撃を繰り出し、シシオは崖まで迫られた。【シシオ】 「一族に守られてきた僕が、今日まで修行してきたのは、大切な仲間を守るためだ……ようやく、みんなのために戦えるようになったのに……共に戦う仲間を守りたかったのに……僕では無理なのか……」【弘樹】 「危ないっ!」【鹿人(男)】 「シシオ、行くのだ……振り向くな。」【シシオ】 「む、無理だ……できないよ……」【鹿人(女)】 「恐れないで、シシオ……みんながついている。さあ行って、取り返しが突かなくなる前に……」【シシオ】 「どこ……?みんなはどこ?」【弘樹】 「目が覚めたか。この木が受け止めてくれたから、無事でいられた。だが、このあたりの木は……」【シシオ】 「もうだいぶ枯れている。」【弘樹】 「森の状況は益々ひどくなっていくが、陰でなにかが僕たちを守っているようだ。」【鹿人(女)】 「魂の息吹を木に宿そう。森よ、どうか最後の鹿人を守りたまえ……」【シシオ】 「(陰でなにかが僕たちを守っている……か)あのさ、もじゃもじゃ頭。」【弘樹】 「弘樹だ。」【シシオ】 「どうして僕を助けたんだ?」【弘樹】 「鹿人だからだ。きみはここで死ぬべきではない。」A.だから…… B.ぼくが聞きたいのは……【シシオ】 「だから、ぼくが聞きたいのは……人間の君がなぜ、見ず知らずの鹿人を助けるために命をかけるんだ?」【弘樹】 「それは、この森で、多くの鹿人が人間を助けたからだ。僕は麓の村で育った。鹿人の森の力がなかったら、村の人たち全員が飢えで死んでいた。だから村長はずっと自分を責めていた。強欲な盗伐者たちを止められなくて、村も占拠されて……そのせいで、奴らに鹿人族の住処が見つかってしまった……」【シシオ】 「あの時のことは、もう……」A.みんな人間のせいだ B.みんな盗伐者のせいだ【弘樹】 「すまない。」【シシオ】 「もう一つ聞かせてくれ。山津波が起こったのは、ずっと昔のことだろう?なんで君は年を取ってないんだ?何か特別な術でもかけられたのか?僕はただ……人間に借りを作りたくないだけだ。術のことだったら、僕の仲間に見てもらうこともできる。」【弘樹】 「術ではない。最初は戸惑ったが、段々分かってきた。この年で時間が止まったのは、この年だった頃に、大事な人に会ったからかもしれない。……命を助けてくれた人だ。」A.命を? B.それは……【弘樹】 「ああ……鹿人だった。」【シシオ】 「どんな人だった? あっ、別に探してやるとは言ってないけどな……」【弘樹】 「鹿人族のみんなは……元気か?」【シシオ】 「山津波が起こったとき、みんなバラバラに避難したんだ。僕は一番年下だったから、みんなに守られてばっかりだった。結局、みんなは……だから、今日まで他の鹿人に会ったことはない。けど、一族を探すのを諦めたわけじゃない。夢を見たんだ……まだ生きているって。きっと一族が示してくれてたに違いない。……話がそれたな。で、君を助けた鹿人だけど、どんなやつだったか教えてくれれば、代わりに礼を言っておいてやるぞ。もし会えたらな。」【弘樹】 「僕は鹿人族の顔をうまく分別できないか、確かきみによく似ていたと思う。」【シシオ】 「いいや、それはない。記憶違いだろ。(僕が、人間を助ける? そんなの、あるわけがない……)」A.ある B.ない【シシオ】 「まあ、とりあえず、話はここまでだ。僕は仲間が心配だから、そろそろ探しに行かないと。」【弘樹】 「それなら大丈夫、あの人面樹は、君の森の力を狙っていた。最後は、君のあとを追って崖に落ちたようだ。ただ、さっきの魔物の大軍、全部片付けたのか? それとも……何匹か逃したか?待て、きみの仲間たちの足音だ。」弘樹が立ち上がり、森の奥へ向かって離れた。【シシオ】 「おい、待てって……」A.一緒に…… B.まあ、いいか……シシオが言い終わるのを待たずに、弘樹は姿を消した。【シシオ】 「あのもじゃもじゃ頭、すぐ勝手にいなくなるな……(まだ、ありがとうも言えてないのにな)」【一目連】 「われの風で、お前の気配を追っていたのだ。やっと見つけたぞ、シシオ。怪我はないか?」【シシオ】 「一目連様、山風!」【シシオ】 「崖の下の枯れた蔓が受け止めてくれて、どうにか無事だったんだ。そうだ、みんな怪我はないか?」【山風】 「人面樹の邪魔さえなければ、あんな魔物、楽勝だ。それにしても、シシオ、お前は無茶をしすぎだ。まあ……時間が稼げたのは本当に助かったが……無事で、本当に良かった。」【シシオ】 「一目連様、お体は大丈夫ですか。」【一目連】 「ああ、大事ない。龍を少し休ませたいところではあるが……それはともかく、ひとつ、おかしなことに気づいた。逃げる途中、周りの木がなにかを感じ取ったように、枝葉を伸ばし、道を開けてくれたのだ……」【シシオ】 「(もしかして、これが弘樹が言ってた「森の庇護」?)」【一目連】 「ただ……、小松丸が魔物の影響を受け、少しばかり調子が悪いようだ……」【シシオ】 「小松丸……!?」【山風】 「こっちだ。」一目連、山風と一緒に行く。篝火の横に、小松丸が目をつぶっている。顔色が悪く、なにかブツブツ呟いでいる。【小松丸】 「ひとつ、ふたつ、みっつ……、ああ、だめだ、足りない。よっつ、いつつ、むっつ……、ない、うううー、ないよぉ……」【薫】 「みんな、戻ったんだね!シシオ!よかった、無事で……」【山風】 「薫、小松丸の様子は?」【薫】 「魔物に囲まれた後、いくら呼んでも目を覚まさないの……さっき山風も秘術を施したけど……」【シシオ】 「(顔色がひどい……小松丸のことだ。そう簡単に魔物に臆することはないはずだ。もしかして……)」【薫】 「シシオ、小松丸が何を念じてるのか、わかる?」A.道に落ちた松の実だ…… B.もしかして昔みたいに……シシオが前に出て、小松丸のかごから松の実を一袋取り出して、小松丸の手のひらにそっと乗せた。【シシオ】 「小松丸、大丈夫だ。松ぼっくりはここにある。穢されてないよ……約束する。みんなで絶対七角山に戻ろう。君の頑張りは、みんなちゃんとわかってるから……」【小松丸】 「うっ……ぅぅぅ……」【薫】 「あ、目が覚めるみたい!」【小松丸】 「うっ……ぅぅぅ……」小松丸が目を覚ます。【小松丸】 「シシオ!!ううう……本当にシシオだぁー!もう一人で突っ走らないでよ……!」【シシオ】 「小松丸、もう大丈夫だ。僕はここにいるよ。」【山風】 「シシオ、小松丸の異変に気づいたのだろう。あれはただ、驚かされただけじゃない。撤退の時、あいつは魔物を食べてしまったのだ。それで、こうなってしまった……みんなのために、自分を犠牲にしてるんだ。あんなバカげたことを……しっかり言ってやらないと。」【一目連】 「山風、少し冷静になれ。吾が観察したところ、周りの木々は枯れるし、魔物の数も多くなってきた……この先は、益々厳しくなるぞ。このまま、全員では進めない……」A.わかった…… B.小松丸はここまでだ……【山風】 「薫も残そう。小松丸の世話役も必要だ。フクロウもある程度なら、魔物とやりあえる。ここなら、しばらくは安全だ。」【シシオ】 「薫を……?でも山風、薫から目を離していいのか?」【山風】 「お前たちのことはわかっているつもりだ。自分のことより、仲間のことを大事に思ってる。」【シシオ】 「(山風だって……)」【山風】 「もう誰かが、怪我するのを見たくない。」【シシオ】 「(山風もきっと心が痛いだろう……)」【一目連】 「シシオ、二人にも話してあげよう。きっと、小松丸も、お前に会いたがっている。」小松丸と話す。【シシオ】 「小松丸、体調はどう?」【小松丸】 「シシオ、あたしね、もう治ったから……まだみんなと一緒に行けるよ!」【シシオ】 「小松丸、また無理をしているな。ひとつ、ふたつ、みっつ……だめだとか、よっつ、いつつ、むっつ、もうないとか……」【シシオ】 「さっき寝言で言ってたのは、松ぼっくりなんかじゃない。君がこっそり食べた、魔物の数だ。そうだろう?小松丸、どうしてそんなことを……」【小松丸】 「見つかっちゃった……時間が稼げると思って……大丈夫、辛くないし、死なないから……」【シシオ】 「小松丸、薫が残って君に付き添うから、もう無茶はしちゃダメだ。」【小松丸】 「いい子にしてたら、ちゃんと約束を守ってくれる?「森の心」を見つけて、七角山に戻って、みんなを助ける――」【シシオ】 「ああ、小松丸、終わったら君を迎えに行く。」【小松丸】 「回復したら、こっちから探しに行くから!それと、シシオのために取っておいたよ。あげる。」シシオは小松丸の松の実を受け取る――【小松丸】 「これから、シシオたちはなんにもないところに行くでしょ。お腹が空いたら、ふたつ食べてね。ふたつでお腹いっぱいになれるから。だから……シシオ……頑張ってね!」薫と話す。【薫】 「シシオ、今日はありがとうね。一目連様と一緒に、人面樹から助けてくれて……私、ちゃんとここに残って、小松丸の世話をして、あなたたちの無事を祈るよ。でも、シシオにひとつお願いがあるんだけど、いいかな……?実は……山風が私をかばったあと、様子がちょっと変なの……それに、私も残ったほうがいいって言うし……それとも、私に気づいてほしくないなにかがあって、私に心配してほしくないのか……わからないけど……だからシシオ、山風のこと、見ていてくれない?私の大事な家族で……兄さんだから。」A.約束する【薫】 「ありがとう……シシオ、これはフクロウの羽、受け取って。とても軽いものだけど、いざという時、フクロウの加護を与えてくれる。」シシオは薫のフクロウの羽を受け取る――【薫】 「私はここで待ってるよ。みんなでお家に帰ろう。」シシオは篝火のところに戻り、一日が終わる。夜が更けた。シシオはぐっすりと眠りについた……。 |
第三章
あらすじ |
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仲間に別れを告げたものの、道ゆく先は相変わらず謎に包まれている。謎の結界へと導いてくれた少年は、結界内のことにとても詳しい……厳かな巨鹿神像の前にたどり着いた今、「森の心」の真相はまもなく明らかになるだろう。 |
森の最後の残響 |
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尽きない長い夜、暗雲の下、かつての風神と森の王が久しぶりに一緒に座った。【山風】 「眠れない……かの風神ですら、悔しさを感じるのか?穢れの影響は今も広がっている。刀を掲げたのは、その進行を少しでも遅らせたかったからだ……」【一目連】 「山風、お前は背負いすぎた。「森の王」である前に、お前はお前だ。人面樹と戦ったとき、吾は見た。薫をかばった時に、穢れに当てられてしまったのだろう。」【一目連】 「小松丸だけじゃない。お前も、自分の体の異変を隠している。」【山風】 「知っていて、あえてみんなに言わなかったのか?」【一目連】 「お前のことは尊重している。だから、お前の本音を聞きたい。」【山風】 「七角山の妖怪たちには皆……重い過去がある。けど、みんなといっしょにいると、なんだか安心する。これが「俺たち」の力だ。それを壊したくない。」【一目連】 「山風……みんなを一番心配しているのはお前なのだな。」【山風】 「俺は仲間に噓をついたんだ……仲間失格だな……」【一目連】 「それが薫を残してきた理由か……彼女は繊細な子だ。お前にとって一番大切な存在でもある。彼女や、われらに心配をかけたくなかったから、お前は……離れる気なのだな。」【山風】 「見透かされるのは、あまりいい気分じゃないな。」【一目連】 「だが解決する方法を、お前は見つけてくる。そうだろう?」【山風】 「ああ、時間をくれ。秘術で治して見せる。成功したら、みんなのところへ行く。出発の後、もうしばらく協力してもらえないか? 理性があるうちに、シシオに話しておきたいことがあるんだ。」薫、小松丸と分かれた後、シシオは仲間と森の中を進む。しかし丸一日過ぎ、鼓紋の手がかりが完全に断たれた。その代わりに溢れてくるのは魔物の大軍……【シシオ】 「山風、左!」土砂降りの中、森の奥深く、魔物が押し寄せてくる。山風の体が制御できずにふらつき、辛うじて攻撃を避けた。【シシオ】 「(気のせいか……? 山風、なんだか……)」【山風】 「シシオ! 集中しろ!」天雷が落ちる。シシオの目の前に白い光がひらめいた。それは山風の短刀だった。彼が魔の気を防いでくれた。魔物が去り、残されたのは寂しい森の一面。【シシオ】 「森の穢れがひどくなっている……って、山風! 刀が……!?」刃先にうっすら黒い影が浮上する。山風はただ黙々と刀を腰に収めた。【シシオ】 「山風、その姿……」いつの間にか、纏わりつく魔の気が山風の顔に襲いかかり、その人全体が果てしない闇に包まれ、飲み込まれる……シシオは悪夢から目を覚ます。目を開けて、瞳にうつったのが夜の森の篝火。その山風は無事に彼のそばに座っている。【シシオ】 「山風……いたんだ。」【山風】 「(刀を拭く)一回。(もう一回拭く)二回。(また拭いた)三回。」A.あの…… B.……【山風】 「シシオ、今日は三回もかばってやった。俺たちはすでに森のさらに奥の場所に来た。いったいお前は、なににうつつを抜かしている?」A.ちょっと迷いが…… B.ちょっと怖いんだ……【シシオ】 「ここで「森の心」の手がかりが途絶えた。もう2日も歩いたのに、次の鼓紋が見つからなくて……なのに魔物はどんどん多くなって……もしかしたら、僕たちは道に迷ったんじゃないかって……そしてさっき、ぼくの夢に山風が出てきて……夢の中で君は離れていった……」【山風】 「だからお前は、ためらった?」【シシオ】 「僕は……」【山風】 「シシオ、お前はいつも、いざという時に臆病者の自分に後戻りする。そんなお前が一番心配なんだ。立て、ついてこい。」シシオが山風についていき、二人は歩きながら話をしていた。【山風】 「シシオ、はじめて山を巡回したときのことを覚えているか?あの時のお前はひどく怯えて、いつまでたっても、妖狼に手を出せなかった。だから俺は、わざとお前に喧嘩をけしかけた。」【シシオ】 「うん……それで僕が負けた。」【山風】 「だが、そのおかげで、お前の勝負欲を引き出せただろう? それから、おまえはずっと俺の後について、修行を積んできた。真に強くなるためには、絶え間ない努力だけでは足りないんだ。いざという時に、自分を信じ、自分を証明しなくてはならない。シシオ、お前にはその道を歩いていく資格がある。それをお前自身が信じなければならない。たとえ最後……お前一人になったとしても。お前は誰よりも遠くへ行くんだ、わかるか?」【シシオ】 「僕に……できるのかな?」【山風】 「強者に言葉はいらない。」山風とシシオは対立の姿勢で木の前に立っている。【シシオ】 「(山風の様子が変だ……黒い陰が額に……まさか……)」【山風】 「想像しろ。俺が魔物になりかけている妖怪で、お前の後ろには仲間がいるとする。これは、お前への試練でもある。この戦いで俺に、強くなったお前を俺に見せろ。」【シシオ】 「(山風……最後まで……僕を導こうとしている……)わかった。ありがとう、山風!僕はもう……逃げたりしない。」山風との戦いが終わろうと、恍惚している中、シシオの腰に短刀が付けられた。【山風】 「シシオ、それをお前に託す。そして……――前に進むんだ。」このとき、シシオはなにか悟った。ここ最近の山風の眉間の黒い影、躊躇した足元……偶然ではない。魔物に侵食されているのは……シシオが気がつくと、山風の姿はすでに森の闇に溶け込んだ。【シシオ】 「山風……山風!山風ーー!!!」奥へ進むほど、倒れた枯れ木が増え、山風の姿も見えなくなった。シシオが傷だらけの森に立ち尽くす。耳覚えのある笛の音が伝えてくる。弘樹が森から現れた。【弘樹】 「シシオ。」【シシオ】 「モジャモジャ――じゃなかった、弘樹。獣の皮をかぶった妖怪を見なかったか?彼はどこに……」【弘樹】 「きみの仲間は強がりだな。今は一人にさせてやれ……彼にも誇りがある。自分の弱っている姿を見せたくないのだろう。」【シシオ】 「でも……」【弘樹】 「シシオ、彼の気持ちを無駄にするな。きみが「森の心」を見つけてこそ、みんなを救うことができる。」A.でも、もうずいぶん探し回った B.何故君はここに?【弘樹】 「実は、痕跡を見つけたが、今のきみにそれを受け止められるかどうか……鼓紋が隠された場所は霊力があふれている。……より強い魔物が潜んでいるに違いない。きみの最後の仲間……あの「風神」の霊力も、尽きかけているのだろう?シシオ、今大事なのは、これからどうすべきかを考えて、決めることだ。」【シシオ】 「(一目連様は七角山が穢されて以来、ずっと結界を修復したり、浄化のことで頭を悩まされている。とても……とても疲れているんだ。でも、一目連様は優しいお方だ……今も何も言わず、力を貸してくれている。あの人に、このまま窮地を一緒に背負わせたままで、本当にいいのだろうか?)今夜はいろいろあったから……もうしばらく、考える時間をくれ。」【弘樹】 「わかった……心が決まったなら、鼓を鳴らせばいい、迎えに来る。」弘樹が振り向いて立ち去ろうとする。 A.待って…… B.聞きたいことがある……【シシオ】 「君……なんでこの森に残るんだ? 君は人間だろ? 魔物が怖くないのか?」【弘樹】 「ここにずっと住んでるから、逃げる術には事欠かないんだ。心配してくれてありがとう。」【シシオ】 「(べ、別に心配なんか……)」【弘樹】 「そして、残る理由のほうは……何年も荒れ果てたこの森が、最も美しかった、最初の姿に戻るのを、この目で見たいんだ。きみも見たいのだろう?」弘樹が森を離れる。シシオは篝火のところに戻る。そこには一目連が待っている。【シシオ】 「一目連様……まだ寝てなかったんですか?」【一目連】 「おかえり、シシオ。」【シシオ】 「一目連様、山風が……」【一目連】 「うむ、わかっているよ。」A.あなたも彼の決断を尊重したの……? B.あなたも彼の帰りを待っているの……?【一目連】 「仲間として、これがわれにできる唯一のことだ。しかし、みんなが離れていくことがつらいのだろう、シシオ。少し話さないか?」シシオが篝火を触れる。一目連の横に座る。【シシオ】 「山風は、僕はいざという時に臆病者の自分に後戻りするって言ってた。そのとおりだ。僕は、怖い……いくら強くなっても、みんなが、かつての家族みたいに、一人、また一人と離れていくのが、とてつもなく怖い。みんなは僕の大切な人たちだ。もう失いたくない……」【一目連】 「シシオ、しっかりするんだ。実は、われにも似たような経験をしたことある。」【シシオ】 「一目連様が?」【一目連】 「……われは神であったが、今はただのあやかしだ。われは信者をすべて失い、独りで廃棄された神社で長い月日を過ごした。今思えば、一瞬の出来事だったな。本来であれば、われは独り、森の奥で消えるはずだった。」A.なにがあなたを変えた?【一目連】 「われの心だよ。われはやはり、この世界が、守っていた人々が愛おしかった。」A.そのために片目を失くしたとしても…… B.捨てられても……【一目連】 「人間というものは、悪い者もいれば良い者もいる。だから、一概に恨むべきではない。この世で善意の温かさを感じられれば、われは幸せだ。人間か妖怪かなんて、関係ない。だからシシオ、「恨み」は問題の解決にはならない。お前の心を、過去に囚えるだけだ。愛する者が去ろうと、敵対する者が襲ってこようと、見極めねばならない……自分の心の在り処を。お前にはわれわれ七角山の仲間たちがいる、もう独りぼっちではないぞ。この先、吾らが最後までついていけなくとも、お前の帰りを待ち、お前のところへ駆けつける。だから、恐れることなど、なにもないのだよ、シシオ。心の葛藤を、断ち切ってみせるのだ。」夜明け前、シシオは早めの出発をして、己の心を決めた。【シシオ】 「(ここはとっくに荒れ果てた鹿人族の森。「森の心」による浄化の伝説は、それ以上に儚いもの……それでも七角山のみんながぼくを信じて、一緒に来てくれた。なのに次々と危ない目にあって、今や僕と一目連様しかいないあの人を起こすべきか? それとも一人で行くべきか?)」A.ぼくはもう怖くない。 B.ぼくの森の力は十分強くなった。【シシオ】 「行こう。」シシオはひとりで、森の方へと進む。シシオは森を歩きながら鼓を叩いている。その音が森を木霊する。【シシオ】 「変だな……あのモジャモジャ――弘樹はどこだ?鼓を叩いたら迎えに来るって言ったくせに……あいつ、約束をやぶるような人間には見えないけど……まさか……」シシオがふと足を止めた。森の先に大勢の魔物が現れ、同じ木を取り囲んでいる。【シシオ】 「なんで魔物たちがあの木を取り囲んでいるんだ……?いや違う……木の前に誰かがいる!!モジャモジャ頭!!弘樹!!まずい……あいつを助けなきゃ!!(僕が……僕があいつを助けたいのは――!!)」A.あいつを助けたいのは弘樹の真心と善意を感じたから。 B.助けたのはほかでもなく、弘樹が掴んでいる「鼓紋」の手がかりのためだ。【シシオ】 「きりがない……これじゃあ、どうやって進めば……えっ?雨……雨だって?」雨が降って、魔物が駆逐され四散する。【シシオ】 「ただの雨じゃない……これはっ!透明で澄み切った雨……風神の雨だ!一目連様……僕を見守ってくれてたんだ……」霧雨が森を潤す。風が一枚の風符を運び、シシオの手のひらに乗せた。【シシオ】 「最後の力で、道を示してくれて……ありがとうございました。」彼方、一目連が雨の中、自分の目にそっと触れ、また手を上げて、雨に向かっているように、遠くに向かっているように伸ばした。【一目連】 「シシオ、われらの覚悟と信念を連れて、進め。」森の中の魔物は消え、大雨の中、シシオと弘樹だけが前後になって歩いていく。弘樹が前で、シシオが後ろ。【弘樹】 「ありがとう、シシオ。」【シシオ】 「別に……これで借りは返した。あと、この先は頼んだ、弘樹。」弘樹は立ち止まった。【弘樹】 「きみは、きみの仲間たちに僕のことを話してないようだったから、僕のことが嫌いなのだと思ってた。でもまさか、そのきみから「頼んだ」なんて言葉を言われると思わなかった。」【シシオ】 「弘樹、僕は……」【弘樹】 「気にしなくていい。さっき、魔物に取り囲まれていたのは……結界の裂け目をみつけたからだ。あそこは一つの断崖絶壁。きみが鼓紋を奏でると、森の力が谷の底の魔物をどんどん引き寄せてくる。それが前に話した「さらなる危険」だ。」【シシオ】 「大丈夫、僕は怖くない。」【弘樹】 「なら最後にもう一つ。シシオは、今でも一族に会いたいか?」【弘樹】 「きみが直面しようとしているのが、鹿人族と人間の真実だとしても、前へ進みたいか?」【シシオ】 「真実……」【弘樹】 「覚悟ができたのなら、ついてきて。」【鹿人(女)】 「魂の息吹を木に宿そう。森よ、どうかお忘れなきよう。森よ、どうか最後の鹿人を守りたまえ……」谷の対岸は霧が濃く、目の前には鼓紋の切り株と断橋だけが残っている。【シシオ】 「鼓紋だ……でも霧が濃すぎて対岸が見えない、橋も壊れてるし……」【弘樹】 「鼓紋を奏でるんだ、シシオ。「森の力で故郷への道を繋げ」「鼓の音で鹿人族最後の遺志を継げ」「森で木霊する最後の音を奏でよ」シシオ、これは鹿人族の過去だ。君ひとりで、立ち向かわなければ……これでしばらくお別れだ……森の果てで、また会おう……」霧が晴れ、彼岸の巨大な鹿の神像の残骸が露わになる。【シシオ】 「ここは、何十年も離れていた、鹿人族が暮らしていた地だ。物心がついてすぐ、僕はここを離れた。記憶の中では、ここは花がいっぱい咲いていて、綺麗なところだった。でも、今は荒れ果てている……」【巨鹿神像】 「やっと会えた。」【シシオ】 「この声は……」【人間の首領】 「この場所に……噂の鹿人族の「森の心」が隠されているのか?果てしない森の力、無尽蔵の木々……やれ!今夜中に見つけるんだ。」【鹿人(男)】 「奴らに「森の心」の位置を知られるわけにはいかない……」【鹿人(女)】 「やっぱりあの者たち、鹿人に手を出した……」【鹿人(男)】 「さあ、これ持て、手分けして逃げよう!」【鹿人(女)】 「人間が私たちを裏切った……」【鹿人(男)&鹿人(女)】 「魂の息吹を木に宿そう。森よ、どうかお忘れなきよう。森よ、どうか最後の鹿人を守りたまえ……」【シシオ】 「あれは……僕?」【巨鹿神像】 「やった会えた……シシオ……」【シシオ】 「残ったのは……僕だけなんだ……」【シシオ】 「木々に宿っていたのは、一族の魂だったのか。ずっと探していた一族は、霊として木々に宿り、森に帰ってきたんだね。僕は本当に、独りになったんだね……それにしても、奥へ進むにつれて、木々が枯れていく。森の心はなぜ役立たなかったんだ?それに、この心のざわめき……」【シシオ】 「(以前、鹿人族が奉った鹿の像も崩れ落ちた……)」【シシオ】 「あなたですね。ここで起きていた過去を見せてくれたのは……」【巨鹿神像】 「最後の鹿人よ、なぜ汝はこの地に戻ってきた。」A.伝説によると、「森の心」は森を浄化するものだ…… B.伝説によると、「森の心」ははてしない森の力を生み出せる…… 穢れが蔓延るなか、森の結界が崩れ、妖怪たちは霊力を失った。「森の心」はみんなにとって最後の希望になった。【シシオ】 「森の心の在り処を、教えてくれませんか。」【巨鹿神像】 「幼き鹿人よ、ここまでたどり着くのは大変だったであろう。その前に、森の心にまつわる、この森について話をしなくてはならぬ。」【巨鹿神像】 「鹿人が森を守ってきたと汝も知っていよう。だが、すべては人間が飢えで倒れた鹿人夫婦を助けたことが始まりだった。」【シシオ】 「人間が!?」【巨鹿神像】 「あの頃は、鹿人と人間は平和に暮らしていた。長い冬を乗り越えようと、人間は鹿人に工具や火の使い方を教えた。その後、またひどい飢饉が起きた。森を生き返らせることしか、全員を救う方法はなかった。」A.「森の心」はどうやって作られたの……【巨鹿神像】 「鹿人夫婦は秘法を用い、「最初に救った木」に、森全体の力を集中させた。こうして、森の心が誕生したのだった。だが、それほど膨大な力を、鹿人族だけで賄えるはずもなかった……」A.じゃ鹿人族の役割はいったい……【巨鹿神像】 「鼓をたたき、音で霊力の流れを調整することだ。その後、森の心を守るために、鹿人はその所在を鹿人族だけが起動できる鼓紋によって、隠した。そのおかげで、盗伐者は森の心を見つけることができなかった。さらに、あの鹿人夫婦は自らの命を犠牲にして、この地を結界で覆い、霊力の流出を防ぎ、外界と隔離させた。だが、やはり鹿人族の力だけでは、森全体を守り切れない。穢れによって、森は魔物が溢れるようになった。森の心の力は、日に日に弱まっていく……」A.「森の庇護」は本当に存在しているんだ……【巨鹿神像】 「それでも、焼け石に水だった。森を再び生き返らせるためには……いや、何を言っても、もう手遅れだ。吾がここまで意識を保ってきたのは、汝に伝えねばならなかったからだ。汝は、遅かった。森の心は――すでに空っぽなのだ。」鹿の像が言い終わった後、最後の息を吐き出し、光らなくなった。驚いたシシオは鹿の像を呼び起こそうとしたが、何にも起きなかった。【シシオ】 「遅かったって、そんな……大変な目に遭って、仲間たちが傷ついてまで、僕をここまで送ってくれた……なのに、森の心の力が、もう枯れたっていうの……今までの努力は、全部無駄だったんじゃないか……」静寂の中、鹿の像の言葉が頭をよぎる。シシオは篝火の方へ戻る。【巨鹿神像】 「だが、それほど膨大な力だ。鹿人族だけで賄えるはずもなかった……森に再度生き返らせるためには……<ためいき>、いや、何を言っても、もう手遅れだ。」【シシオ】 「鹿の像は一体、何を言おうとしてたんだろうか……僕しかいないから、もう何を言っても無駄だというのか……悔しいよ。まだしたいことが……できることがあるのに!諦めてたまるか。あの「最初の木」を見つけて、「森の心」を見つけるんだ!どんなに困難だろうと、僕は自分の力で解決の方法を見つけてみせる!たとえ、力を使い切ってもだ。シシオは篝火のところに戻り、一日が終わる。 |
第四章
あらすじ |
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木々の枯れ果てた地に大雨が降り、その森はついに鹿人の最後の生き残りを迎えた。仲間たちの決意と信念を胸に、道の果てまで突き進もう。 |
遥かな響きへの別れの詩 |
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夜、シシオは夢を見た。夢で懐かしい光景を見た。【一目連】 「目覚めたか?」【小松丸】 「シシオ!いいところなのに、寝ちゃうなんてひどいよ!」【山風】 「小松丸のいたずら武勇伝は、もう耳にたこができるぐらい聞いたからだろう。」【小松丸】 「ふん!山風は黙って!薫ちゃ~ん、山風がいじわるするの~!」【シシオ】 「これは…みんなの声?僕は……七角山に戻ったのか?でも……何だかいつもと、どこか違うような……これが僕が目指していた強い自分なのか……?かがり火はこんなにも眩しいのに、何のぬくもりも感じない。僕は、やっぱりまだ夢を見ている……夢だとしても、みんなが無事なら嬉しいよ。でも現実のみんなは、まだ森の中にいて、魔物の脅威に脅かされている。なにより、いまも僕を待っている……そうか……僕の一番の望みは、七角山に戻って、篝火の前でみんなの笑顔を見たかっただけなんだな。みんな、もう少しだけ時間をくれ。」シシオは鼓を鳴らし、双鹿石像を呼び覚ました。【双鹿石像】 「……(反応しなかった)」A.もう一度を鳴らす。 双鹿石像はかすかに光った。木々から木の葉がはらはら落ちる。【双鹿石像・女】 「ついに……」【双鹿石像・男】 「最後の鹿人……」【双鹿石像・女】 「やっと会えたね、シシオ。」【シシオ】 「(どこか懐かしい声だ……)あなたたちは、あの鹿人夫婦ですか?もしかして……僕のことを知っていますか?」【双鹿石像・女】 「森は言の葉を発することこそないけれど、静かにあなたを見守っているのよ。」【双鹿石像・男】 「私たちの体を流れる森の力も、そろそろ尽きる……今は最後の力であなたに最後の言葉を残したい。「森の心」はもうすぐ消える。引き返すなら、まだ間に合う。」【双鹿石像・女】 「魂の息吹である私たちは、最後まで魔物に抗うでしょう。でも、あなたはまだ生きている。命を無駄にする必要はないわ。」A.前に進むんだ B.もう退かない。【双鹿石像・男】 「よく考えるんだ。「森の心」を見つけたところで、無駄だ。」A.「森の心」の手がかりを教えてください。【双鹿石像・男】 「シシオ…あなたが「森の心」に霊力を注げたとしても、あなた一人の力だけでは…足りないのだ。」【シシオ】 「望みが薄いのは分かっています…でも、僕はやってみたいです!」【双鹿石像・男】 「覚悟はできているのか?」A.「森の心」の手がかりを教えてください。【双鹿石像・女】 「頑固なところは、誰に似たのでしょうね。ずいぶん長い時が過ぎたね。あの「最初の木」は、すでに巨大な大木となった。」【双鹿石像・男】 「どうしても行きたいのなら、今から、あの木に続く道を示そう。これは孤独と困難に満ちた長い道のりになる。覚悟ができたら、教えてくれ。」【シシオ】 「守るべきみんなを想えば、僕は寂しくありません。」A.覚悟はできてる B.…… A:ギミックが発動し、双鹿石像が逆方向に分かれた。そして、鼓紋が現れ、微かな光が道を示している。【鹿人(男)&鹿人(女)】 「魂の息吹を木に宿そう。森よ、どうか最後の鹿人を守りたまえ……」森の奥へ進む道の始まりに立つシシオ。大雨が降り出し、周りの木々が枯れる。【シシオ】 「これは「森の心」へ続く道だ。どんなことが待ち受けていても、僕は最後まで歩き続ける。みんなからもらった餞別はまだちゃんとある。みんなの期待に応えないと。さあ、先を急ごう。」丸一日間歩き続けたシシオは、篝火の前に座る。【シシオ】 「(おなか……空いた……)」疲れたシシオは、小松丸の言葉を思い出した。【小松丸】 「七角山の森にね、松ぼっくりをたーくさん埋めたんだ。だから、ここに来る時は、少ししか持ってこられなくて。それと、シシオのために取っておいたよ。あげる。これから、シシオたちはなんにもないところに行くでしょ。お腹が空いたら、ふたつ食べてね。ふたつでお腹いっぱいになれるから。だから……シシオ……頑張ってね!」【シシオ】 「(そうだ。仲間の餞別がある……)」A.小松丸の「松ぼっくり」(正解) B.薫の「梟の羽根」 C.山風の「刀」 D.一目連の「護符」 シシオは小松丸の松ぼっくりを食べて、おなかを満たした。そして、前へ進む。魔物が現れてきた。【シシオ】 「(また魔物か……厄介だな)」シシオは薫の言葉を思い出した。【薫】 「ありがとう……シシオ、これはフクロウの羽、受け取って。いざという時、フクロウの加護を与えてくれる。私はここで待ってるよ。みんなでお家に帰ろう。」【シシオ】 「(仲間の餞別を使えば……)」A.小松丸の「松ぼっくり」 B.薫の「梟の羽根」(正解) C.山風の「刀」 D. 一目連の「護符」 シシオは薫からもらった梟の羽根で魔物を追い払った。そして、前へ進む。シシオは枯れた藤に道をふさがれた。【シシオ】 「(道が、枯れた藤に塞がれている……)」シシオは山風の言葉を思い出した。【山風】 「お前は誰よりも遠くへ行くんだ、わかるか?それをお前に託す。お前は前に進むんだ。」【シシオ】 「(僕には仲間の餞別がある……)」A.小松丸の「松ぼっくり」 B. 薫の「梟の羽根」 C.山風の「刀」(正解) D.一目連の「護符」 シシオは山風からもらった刀で藤を断ち切った。そして、前へ進む。森の果てから、新しい鼓の音が途切れ途切れに聞こえてくる。【シシオ】 「風の中で最後の鼓紋が聞こえる……でも、途切れ途切れで、はっきり聞こえない……」シシオは一目連の言葉を思い出した。【一目連】 「だから、恐れることなど、なにもないのだよ、シシオ。シシオ、われらの覚悟と信念を連れて、進め。」【シシオ】 「(仲間の餞別を使おう……)」A.小松丸の「松ぼっくり」 B. 薫の「梟の羽根」 C.山風の「刀」 D. 一目連の「護符」(正解) シシオは一目連からもらった護符を使い、風の中に消えそうになる鼓の音をはっきり聞こえるようになった。そして、前へ進む。【シシオ】 「やっと、たどり着いた。」シシオの目の前には、空へ向かって伸びる大木。やみそうにない雨水がこの木々が枯れた地に集まってくる。この森には、ようやく最後の鹿人が訪れた。大木が吐き出した最後の息は、小さな緑の光に変わった。そして、シシオの後ろに落ちて、消えた。シシオは息を潜めて森の奥へ、「森の心」の方へ歩く。【シシオ】 「僕はシシオ。地味な名前を持つ僕は、一族で一番年下の鹿人だ。生まれて間もなく、一族と一緒にふるさとを離れた。物心がついた時から、僕はみんなに守られている。風雨に晒されるときは、みんなが庇ってくれた。僕にめがけて飛んでくる矢は、みんなが防いでくれた。でも、渡りの旅はあまりにもつらく長かった。みんなが目の前で次々と倒れていくのを、ただ見ていることしかできなかった。みんなは目を閉じる前に、僕に教えた。「シシオ、強くなれ」、と。」シシオは鼓を鳴らした。しかし、「森の心」は反応しなかった。【シシオ】 「しかし、強さとは、一体何なのか?みんなが僕から離れた後、僕はいろんなところへ行った。でも、胸から溢れそうになる悲しさが消えない。僕は寂しくて、どうしたらいいかわからない。家族を失った悲しさ、居場所がない寂しさ、盗伐者たちに追いつめられる憎しみ……いつかから、僕の心は自分を苦しめるいばらに巻き付けられてしまった。そして、僕は七角山のみんなに出会った。彼らは、ひ弱いな僕のすべてを受け入れてくれた。みんなのおかげで、僕はやっと分かった。心を開いて笑うこと。助け合って戦うこと。それから、心を縛るいばらを断ち切ることを教えてくれた。七角山のみんなは出身も能力も違うし、血もつながっていないけど、僕たちはみんなで互いに頼り合うことができる。仲間からもらった温もりのおかげで、僕はいつの間にか、偏見とわだかまりを捨て去ることができた。」シシオは鼓を鳴らし続けた。しかし、「森の心」は反応しなかった。【シシオ】 「僕は独りぼっちじゃない。今なら、真の「強さ」がなんなのか、分かった気がする。強さとは、たとえ僕一人だけしかいなくても、大切な思い出や大切な人々を守るために、力を尽くして歩き続けることなんだ。無駄な努力だなんて、諦めるな。それでも前に進むんだ、この命が――燃え尽きるまで。僕は……森の心をもう一度作り出す!」シシオは鼓を鳴らし、森の力で押し寄せてきた魔物に抗っている。【シシオ】 「森の力を駆使すればするほど、魔物の大群が押し寄せてくる……せっかく森の心に力を宿して光らせたのに、たちまち魔物たちに邪魔されてしまう。あ、光が、消える!このままでは……」シシオは魔物に呑み込まれそうになり、ピンチに陥る。【シシオ】 「魔物に囲まれそうだ……いや、まだだ!」シシオは失敗した。【シシオ】 「失敗した……杖も、折れたか……先達たちも、この絶望に陥ってしまったのだろうか。これが最後の、奥の手だ!魂の息吹を木に宿す……か。なら、僕のすべてを、この森に刻もう!」シシオの周りの木々が光り始めた。そこで、弘樹が現れた。【弘樹】 「森の力が木々の方へ集まっている。なのに、そこに留まろうとしない……「森の心」の力が、半分欠けているからだ……鹿人が憎しみで忘れたとしても……僕は「森の心」の最初の姿を、決して忘れない。最初から「森の心」は、人間と鹿人との絆でできたものだ。人間と鹿人の、平和の力で――一緒に作り出したもの証だ!僕があの時、唯一生き残った人間だった。そして今やっと……最後の鹿人に会えた。シシオ、黙っていてごめん。きみは優しいから、きっと納得してくれないだろう。でも、悪いのは人間のほうだ。シシオ、僕の魂を、君が前へ進む力に代えるから……!」弘樹の体は薄青い半透明の魂形態になった。そして、弘樹が笛を吹き、森の鼓動が聞こえるようになった。【弘樹】 「シシオ、森の力で、最後の道を進め。この森に、「森の心」を取り戻すんだ!」シシオの体に力が漲る。族人の応援を受けたシシオは尋森シシオに生まれ変わり、魔物の駆除を再び手がける。【シシオ】 「聞こえた……森の鼓動だ!「森の心」が応えてくれたのか?無数の魔物がまた襲ってきた。だけど、僕は諦めない。絶対にこの森を救うんだ――歯を食いしばれ、シシオ!」万物が蘇り、優しい星の光が森を照らす。【シシオ】 「太陽の光が差し、枝葉が茂る。森は最初の姿に戻った。でも確か……あいつの笛の音が聞こえていた……」シシオは弘樹の言葉を思い出す。【シシオ】 「あそこにいるのは……弘樹だ。」遠くないところに立つ弘樹は、光に包まれ、だんだん透明になっていく。弘樹はもうすぐ消えそうだ。【シシオ】 「弘樹……森は元に戻ったよ。でも君……なんだか……」【弘樹】 「シシオ、僕もうれしいよ。やっと願いが叶った。この森が救われる日を、見届けることができた。」A.君の願いは…… B.これはどういうこと……【弘樹】 「何年も前に、山津波があった。ぼくは森の中にいた。洪水が襲ってくる瞬間、ある若い鹿人がぼくの手を掴んで、助けてくれた。でも目を覚ますと、鹿人族はいなくなって、鹿人族が守った森も荒らされた。だから、ぼくはここに残って、鹿人の帰りを待つと決めたんだ。ねえ、まだぼくのこと、思い出せない?」思い出がだんだん鮮明になる。弘樹を助けたのは、シシオだった。【シシオ】 「思い出した……憎しみで忘れていた。昔、僕にも善の心があって、人間に手を差し伸べたことがあったんだ……」【弘樹】 「あの日から、僕はずっと、この森で待ち続けた。妖怪の長い寿命に比べて人間の命は短かった。本当なら、僕は年寄りの姿のはずだった。あれから数十年、僕は森に留まり続けた。鹿人族の神社を修繕したり、凶悪な盗伐者を追い払ったりした。孤児とか変わり者とか周りから言われてしまったが、僕にはそうする理由がちゃんとあった。これは罪滅ぼしだ。あの時、人間ができなかったことの、ね。真の「森の心」は、人間と鹿人の力でできたものだ。だから分かっている。いつか「森の心」の霊力が尽きたら、鹿人には僕が必要になる。」【シシオ】 「まさか、鹿の像が言いそびれたのは……鹿の像。森を再び生き返らせるためには……」【シシオ】 「鹿人と人間が力を合わせること……なのか……」A.だから、さっきの森の鼓動は…… B.君だったか……【弘樹】 「鹿人はずっと戻らなかった。だから、どれだけの月日が過ぎても、僕の心は安らぎを取り戻せなかった。未練があったせいか、君に助けられた時の姿のまま、霊体になって森を徘徊するようになった。君と、もう一度出会うために。」A.君はもう、死んだんだ…… B.君は消えそうだ……【シシオ】 「弘樹……」【弘樹】 「僕の願いはようやく叶ったから、シシオ、僕は、ここまでだ。もしかしたら、人間と鹿人族の間に不幸が起きなかったら、僕たちは友達になれたんじゃないかってずっと思ってた。あの時の人間と鹿人みたいに、ね。でも、この夏に君と再会できて、僕にとって生涯最大の奇跡だと思っているよ!あのさ……実は、君に言わなければならないことがある。助けてくれて、ありがとう。それから——人間の一人として鹿人族の君に謝りたい。申し訳なかった。」弘樹の体は光の粒に変わり、消えていった。シシオは手を伸ばして触れようとしたが、光の粒は地面に落ちて消えた。見上げたら、森は優しい光の粒に照らされている。【シシオ】 「見えるか、弘樹。この森の……最初で、綺麗な景色を。」シシオと七角山の仲間たちと森を離れようとするそのとき、シシオは森のあるところで、倒れた枯れ木を見かけた。【小松丸】 「シシオ、何を見てるの……あれ?なんでまだここに、枯れ木があるの!?」【シシオ】 「さっき見たんだ。この木の幹が突然枯れて、不気味な枝を伸ばして……そして、倒れたんだ。異質な力を感じた。前の穢れより、もっと強いものだ。森の結界の中まで侵されている。まさか、外の森も侵されているのだろうか……」ほかの仲間が近寄せてくる。【山風】 「シシオ、どうやら、おまえも気づいたんだろう。外で起きていることに。さっき俺たちが道を探しているとき、遠くにある、大きな黒い蔓に気づいたんだ……しかも、あれらは土から生えてきたものじゃない!」【薫】 「空から垂れてきたんだ!しかも私たちのほうへ近づいてきている……遠くで見ていたら、まるで、空を泳ぐ蛇の群れみたいだ!」【一目連】 「吾の風であの不気味な蔓を調べたが、あれはまるで女の髪のようだ。もしかような女が本当に存在しているのであれば、この世に死と滅びをもたらすに違いない。」【山風】 「恐らく外の世界はすでに、ひどい状況になっている。」【シシオ】 「僕は覚悟できてる……浄化の旅はまだまだ終わっていない。思っていたより、ずっと辛くて長い旅になるかもしれないけれど……僕はもう、恐れない。――だって、みんながずっと僕のそばにいてくれるから。そうだろう?」ほかの仲間が近づき、一堂に会したところで物語は終わる。 |
印・会話ストーリー
山風&蒼風一目連
印 | |
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風札 |
【蒼風一目連からの印】「例え最後まで側にいることができなくても、力になれるように、ずっと待っている。」 |
短い刀 |
【山風からの印】「シシオ、お前は誰よりも遠くに行くんだ。」 |
山風&蒼風一目連との会話 |
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【シシオ】 「もうこんな時間だよ、山風。まだ練習を続けるのか?」【山風】 「俺は、もっと早く魔物を切ることができるはずだ。」【シシオ】 「じゃあ僕も付き合うよ、一緒に明日に備えよう。」【山風】 「……シシオ、さっきからずっとそこにいるだろう。何か話があるんじゃないのか?」【シシオ】 「うん……実は気になることがあって……山風は、どんな時も側で薫を守ってあげるんだと思ってた。でも今日、薫に残るように言ったよね。」【山風】 「……ここに残るほうが、俺たちと来るよりも安全だ。この先、ますます危険になるだろう。もし彼女を守りきれなかったら……ふん、そんなことは俺が絶対に許さない。それに、薫も弱くない。薫にも守りたいやつがいる。小松丸は……俺たちよりも、彼女を必要としている。」【シシオ】 「(そうか……兄として、山風も彼なりに考えているんだ……)あ、一目連様。やっぱり山風のことが気になったんですか?」【蒼風一目連】 「急がば回れだ、山風。今は力を温存すべきだ。だから今日はもう休め。」【山風】 「……放っとけ。」【シシオ】 「(言われてみれば……さっきの山風の動き、普段より少し遅かった……)」【蒼風一目連】 「だが、シシオ。実はお前を探しに来たのだ。」【シシオ】 「え、何かありましたか?」【蒼風一目連】 「人面樹と対峙した時、はっきり聞こえたわけではないが、笛の音がしていた……お前の鼓の音に似ていた気がしたが。何か知らないか?」【シシオ】 「(弘樹だ……!そういえば、みんなには彼が見えなかったのか?分からない、みんなに言ってもいいのだろうか……人間が助けてくれたって。)」【蒼風一目連】 「我々がお前を見つけた時も、お前は一人で崖下の空き地に座って、何か呟いていた。」【シシオ】 「(え……僕、一人で?)……」【蒼風一目連】 「だが、無事で何よりだ。お前に伝えておきたかっただけだ。話したくなったら、いつでも話してくれ。」【シシオ】 「はい……(混乱してきた……もじゃもじゃ頭についてちゃんと考えをまとめないと。でも今は、「森の心」を見つけるのが先だ……)」 |
薫
印 | |
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梟の羽根 |
【薫からの印】「いざという時に、これが梟の守りをもたらしてくれるよ。」 |
七角山の仲間たちの再会 |
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【蒼風一目連】 「シシオ、来たか。」【尋森シシオ】 「みんな、ありがとう……最後の時に、僕の側に来てくれて。」【蒼風一目連】 「むしろお前がいたから、ばらばらになった我らもようやく再会することができた。」【山風】 「あの時一人になった俺は、森の魔物を増え続けるのただ見ていた……でもお前の鼓の音が届いたんだ。鼓の音が魔物を浄化し、おかげで俺も目が覚めた。シシオ、お前は期待を裏切らなかった。」【小松丸】 「あたしもあたしも、聞こえたよ!森の奥から届いてきた音は、きっとシシオからの合図だと思った!だからね、すぐに、松ぼっくりに乗ってここに来たんだ……シシオ、あたし、頼りになるでしょ?」【薰】 「うん……小松丸がすごい勢いで動き出したからびっくりしたの。幸い梟が力を貸してくれたおかげで、間に合った。再会できて、みんなも無事でよかった。」【蒼風一目連】 「シシオ、立派になったな。」【尋森シシオ】 「みんながいなければ……「森の心」を創ることに集中できなかった。きっと、一族のみんなと再会することもできなかった。これから、しばらく森に残って、最後の浄化をやり遂げたい。」【蒼風一目連】 「我らも一緒だ。」【尋森シシオ】 「みんな……本当にありがとう。実は、ありがとうすら言えなかった……もう亡くなってしまった人がいるんだ。尋森シシオは空を見上げた。その目に映る星々は輝いて、誰かへの思いを語っているようだ。しかし、数々の言葉は、やがて全て思いに変わった。魂の息吹を木に宿そう、いつかまた……森で会えるかもしれない。森が全てを覚えていてくれることを願って……君にも森の祝福があらんことを。」 |
小松丸
印 | |
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松ぼっくり |
【小松丸からの印】「大きい松ぼっくりに乗って、みんなに会いに行くよ!」 |
小松丸との会話 |
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【小松丸】 「シシオ、悩みがあるみたいだね。」【シシオ】 「実は、今日ある人に会ったんだ……」【小松丸】 「え?」【シシオ】 「(分かってる、少なくとも君は僕と仲間になることはない……もじゃもじゃ頭はこう言っていた。多分、僕たち妖怪の仲間になりたくないんだろうな。)」【小松丸】 「シシオ?今日、一体誰に会ったの?」【シシオ】 「……ううん、やっぱり何でもない。」【小松丸】 「何かあればちゃんと言ってね、隠すのはよくないよ。」【シシオ】 「うーん……小松丸、人間のことをどう思う?」【小松丸】 「人間?人間は変な生き物だよ。弱いのに偉そうだし、いつもいやなことばっかりする。」【シシオ】 「(弱い……偉そう……なんだか聞き覚えがあるな。やっぱり、妖怪と人間は仲間にはなれない。もじゃもじゃ頭のことは黙っておこう。)」【小松丸】 「でも……人間はみんながみんな変なわけじゃない。ここにくるまで、人間の陰陽師たちも「鹿探し」に協力してくれた。」【シシオ】 「鹿……探し?」【小松丸】 「あ、言い忘れてた!シシオがいなくなってから、みんな心配してたんだよ。一目連様が「鹿探し」の紙を用意してくれて、みんなで配ったの。全部配ったから、もう一枚も残っていないけど……ちなみに、肖像画は山風が描いたんだよ。」【シシオ】 「山風が……?どうだった?その絵は僕に似てた?」【小松丸】 「うーん……(シシオをじっと見る)うーん……そこそこ似てたかな……」【シシオ】 「やっぱり山風はすごいな……できればこの目で見てみたい。みんな、心配してくれてありがとう。」 |
弘樹
印 | |
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森の笛 |
【弘樹からの印】「森の最果ての地で、必ずまた会える。」 |
弘樹の日記 |
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荒れ果てた森、廃れた神社の中。机には、ぼろぼろの日記が置かれている。しわくちゃになった本を紐解くと、かろうじて読める少年らしい殴り書きの文字が目に映る。 「今日も大雨が降った……雨の中、僕は最初の木を植えた。」 「これからもたくさん植えるつもりだけど……最初の木は、神社の隣に植えよう。」 「故郷に帰る時、鹿人族は必ずここを通る。」 「僕を助けてくれた鹿人は、ここに帰ってくるだろうか?」 「小さい頃、森で遊んでいたら、よく鹿人の鼓の音が聞こえてきた。うろ覚えだったけど、旋律は少し覚えている。」 「よし、今日から、練習に励もう。」 「鹿人たちが帰ってきたら……きっと気づくだろう、森に響き渡る懐かしい旋律に。」 「僕もあの若い鹿人と再会できる……彼が故郷に帰れるように、導いてあげよう。」 |
鹿人夫婦
死の記憶 |
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時は数十年前にさかのぼる。恐ろしい山津波が、森を襲っている—— すべてを呑み込もうとする大雨の中、ある鹿人夫婦が、破滅を迎えようとしている大地を黙って眺めていた。鹿人族が避難の旅を始めようという時、とある年寄りの鹿人が足早にやってきた。年老いた鹿人は、険しい表情で聞いた。「千尋、森守……本当にそうするつもりか?この森は……もう終わりだ。」鹿人夫婦が振り返る。二人を包み込む森の息吹が優しい光を放ち、覚悟を決めた二人の顔を照らした。【鹿人夫婦(女)】 「最初に、みんなをここに連れてきたのは私たちだった。」【鹿人夫婦(男)】 「鹿人族の森の力は、ずっと世間に狙われてきた。正体を隠しても、流離い続ける運命からは逃れられない。ここの村の人々が私たちを受け入れてくれた。貧しい地ではあったが、私たちは力を合わせて困難を乗り越え、豊かな生活を手に入れた。」【鹿人夫婦(女)】 「それなのに、外から来た盗伐者が……この森を壊している!」鹿人夫婦は遠くにある、鹿人族に感謝を伝えるために村の人々が作った巨鹿神像に目を向けた。【鹿人夫婦(女)】 「どんなにささやかな善意も、忘れてはいけない。盗伐者たちは森の平和を、鹿人を、そして罪のない村の人々をも脅かしている……」【鹿人夫婦(男)】 「もし「森の心」が連中の手に渡ったら……もし我が一族の森の力が乱用されることになったなら、無数の民、無数の土地が影響を受けてしまう。私たちの意思は変わりません。山津波が起きるまでもう時間がない、残りの鹿人を連れて行ってください……」【鹿人夫婦(女)】 「私たちは残って「森の心」に封印をかける。そして盗伐者を阻むために、鹿の像に結界を張る。」年寄りの鹿人は震えると、心配事そうな顔で言った。「盗伐者はもうすぐここを突き止めるだろう、もし……やつらに見つかったら……まもなく山津波が起きる。お前たちがどれだけ力を尽くしたところで、最後には……やはり逃れられないかもしれない!千尋、森守……あの子が……待っているのに。この時、森の果てにいる鹿人たちが鼓を鳴らした。避難を促す鼓の音は、鹿人夫婦の耳にも届いた。鹿人たちみんなが、一緒に来てほしいと訴えかけている。隊列の最後尾にいる幼いシシオは、何かを感じたように、故郷を振り返った。」【鹿人夫婦(男)】 「私たちはもう決めたんだ。」【鹿人夫婦(女)】 「これが、私たちからの最後のお願い。」しばらく黙り込んだあと、鹿人夫婦は手作りの鼓を手渡した。【鹿人夫婦(女)】 「私たちの代わりに、この鼓を……あの子に渡してほしい。鼓を作りながら、二人で色んなことを考えた。あの子に鼓の叩き方を教えたり……あの子が大きくなったら、家族で鼓を叩いて野原を駆け回ったり…雨が降ったら洞窟で休んで…そして雨があがったら、一緒にお日様を眺めたりするの。私たちは未来が楽しみだった。あの子にこの世界の美しさを、人間の善意を教えたかった……でも今、もし誰もこの役目を引き受けなかったら、鹿人族とこの森は……」【鹿人夫婦(男)】 「私たちが望んでいた美しい明日は、永遠にやってこない。覚悟ならできている。シシオも大人になったら、きっと理解してくれるだろう……この鼓は私たちの希望そのもの。鼓を背負ったのなら、絶対に諦めず、前に進み続けるのだ。それから……」【鹿人夫婦(女)】 「あの子に名前をつける時、散々悩んだ。でもやっぱりこのままでいい。普通の名前だけど——あの子がいる限り、鹿人族は忘れられたりしない。だから私たちの代わりに……シシオを見守ってあげてください。」【鹿人夫婦】 「鹿人族の使命は、森を守ること。命を犠牲にして盗伐者を止められるなら、魂が石像に宿ってこの地に留まる私たちは、後悔なんかしない。例え石像になっても、長い月日が過ぎて鹿人だった記憶が薄れても、私たちの魂の息吹は、きっとこの地を見守り続ける————いつか、シシオが……ここに帰って来れるように。」 |
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