【陰陽師】黄金夜航ストーリーまとめ【ネタバレ注意】
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『陰陽師』の黄金夜航イベントのストーリー「金爪紀行(シナリオ/エピソード)」をまとめて紹介。章ごとにストーリーをそれぞれ分けて記載しているので参考にどうぞ。
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「黄金の爪号」の大広間—— 「金色の夜明け前」の宴が始まった。多くの客人たちが盃を交わしながら、こそこそと耳打ちしている。声は次第に騒々しくなっていくが、噂の張本人は、一同の視線を浴びながら、泰然自若といった様子でお茶を飲んでいる。落ち着き払った態度に陰陽師の格好は、どう考えても周りから「浮いている」。それだけでなく……明らかに只者ではない雰囲気を漂わせている。その堂々たる姿を目にして、この人間の陰陽師の機嫌を損ねたらまずいのではないか……と、大声で噂話をしていた者も無意識に声を抑えた。この時、「黄金の爪号」の舵取り——瀧は、舞台の影に隠れ、静かにその光景を眺めていた。【瀧】 「声を発さずとも、これほど強い存在感を放つ……面白い人ですね。」舷窓から見える景色が夜の帳が下りたことを告げる。瀧は暗流が逆巻く海に向き直る。そろそろ時間だ。船の下にいる「金タコ」が夜闇の中で大きな音を立てると、舞台はすぐさま明るく照らされる。その中で、瀧はゆっくりと舞台の中央に向かう。」【瀧】 「「黄金の爪号」は出航しました。冒険家の皆様、どうぞ「金色の夜明け前」での不思議な出会いをお楽しみください——「海妖怪冒険」、「宝物展覧」、「情報交換」、全部で三つの会場があります。お好きな会場に足をお運びください。それと、もう耳にされた方も多いでしょう。今年の「金色の夜明け前」には、特別な参加者がいらっしゃいます。ですので、私は特別会場——「船員選抜」の試験官として特別な試験を行います。ご興味がある方はこの場に残っていただき、共に「新船員」の誕生を見届けましょう。さて、それでは選抜に参加されるこの方についてですが——まずは、契約です。」瀧が手を上げると、妖力で作られた「契約の書」が客席に飛んでいく。まばゆい光が、その人物を照らし出す。晴明は宙に浮かぶ契約の書をそっと手に取る。」【晴明】 「ふっ……死んでも責任をとらないという契約か。まあ、これも想定内だが。」晴明が躊躇なく己の二つ名——「大名士」の名前で署名する。すると紙に込められた妖力が、契約の締結を告げた。晴明が頭を上げると、瀧と目が合った。瀧の肩に乗った仲間が、晴明に反応する。【スス】 「スー!スース——!」【瀧】 「あまりの潔さに、「スス」も感心しています……それでは、「黄金の爪号」の試練を始めましょう。」【晴明】 「ああ、始めてくれ。」【瀧】 「まずは試練についての説明です。「黄金の爪号」の試練は三つあります。それぞれ「冒険家」の運命に大きく関わるものとなります。もちろん、試練の評価は「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下されます。結果は各試練終了後すぐに私から発表いたします。そして、一度でも不合格になると、その時点で退場となります。」冒険家たちが喝采する中、晴明は相変わらず平然としている。それを見た瀧の微笑が一層深くなり、試練の内容が発表される。」【瀧】 「最初の試練は、「嵐の航路」です。航海において、嵐は避けられない問題です。ですが、冒険家の使命、あるいは楽しみというのは……——嵐に打ち勝ち、自分だけの「航路」を見つけることに他ならないでしょう。」瀧の言葉に応えるように、舷窓の外から雷の音が聞こえてくる。「黄金の爪号」が出航した後、いつの間にか大雨が降り始めていたことに、一同はようやく気づいた。一部の手練れの冒険家は、海の異変を察知していた。今夜は……刺激的な夜になりそうだ。【瀧】 「思う存分お楽しみいただくために、「黄金の爪号」は三つの航路を用意しました。それぞれ——」瀧の妖力に呼応するかのように、晴明が持つ「契約の書」に三つの絵が浮かび上がってきた。【瀧】 「最も安全で、制限も最も多い「雨夜航路」。簡素な小船に乗り、嵐や海妖怪を避けながら、夜明けまで生き残ってください。ただし、防具も妖術も一切使用禁止です。そこそこ安全で、いくつかの制限がある「霧の航路」。多くの船乗りがいる護衛船に乗り、霧の中で指定の島を見つければ合格となります。防具に制限はありません。妖術は三回まで使うことができます。最後の航路は最も危険ですが、行動に制限はありません。その名も——「魔の航路」です。「行動に制限はありません」ので、「黄金の爪号」に残り、好きに過ごしていただいても構いません。この試験に合格するには……船の案内人として、嵐を乗り越えてある場所——伝説の「航海者の墓」にたどり着いてください。つまり……船を導き、嵐をくぐり抜けることができれば合格です。」一同に緊張が走る。晴明は静かに「契約の書」の三つの絵を見つめる。大雨、霧、そして……最後の絵は津波に隠れていて、よく見えない。しかし船に乗る前に、危険な海域については調査済みだ。「航海者の墓」というのは、「魔の角」のことだ。その名の通り、「魔の角」と呼ばれる地域は角のような形をしている。そこには百年に一度の大波と言われる「死の浪」が、頻繁に押し寄せる。穏やかな海に、突如として崖壁のような津波が現れる。原因も、いつ出現するのかも分からず、逃れられない悪夢としか言いようがない。多くの冒険家が恐れる地域だが、それを船員選抜の試練に組み込むとは、流石は「黄金の爪号」である。一同が人間の陰陽師の選択を待つ中、一秒、また一秒と時間だけが過ぎていく。決断をした晴明は、手を伸ばしてそのうちの一つの絵に触れた。「冒険家」の真髄とは、自ら危険に挑むことである。【晴明】 「「黄金の爪号」の試練であるからには、「黄金の爪号」に残るのが筋だろう。」晴明がまるで楽な試練を選んだかのように、冷静に、淡々とこう言ったので、群衆の多くは安堵した。しかし「黄金の爪号」に残るということは……次の瞬間、一同はその意味を悟った——なんだと!?ふざけるな!この命知らずの「大名士」、俺たちを連れて……「魔の航路」に行くというのか!?一刻後—— 大広間から晴明の姿は既に消えていた。しかし激昂した乗客たちは、未だに言い争いを続けている……かたや「黄金の爪号」の船員たちは、隅で数人で固まって雑談をしていた。【湍津姫】 「クスクス——瀧兄さん、あたし……あいつのこと、見損なったかな?「魔の航路」を選んだのはすごいけど……あの最後の発言はなに!?ほんとがっかりした!」どうしても晴明の発言を理解できない湍津姫は、机を強く叩き、晴明の真似をした。【湍津姫】 「こほん……「行動に制限はないと言ったな……では、船にある資料を調べさせてくれ。」もう、まじ意味分かんない……資料を調べるってなによ!「死の浪」はいつ出現するか分かんないのよ!過去の難破船について調べておけば無事に「魔の角」を通過できる、なんて思ってないでしょうね?そもそも、例え運良く何らかの情報を見つけられたとしても、「死の浪」が現れた時は、反射速度と保身術が一番重要なんだから。ふん!資料を調べるくらいなら、「陰陽術」とやらをもっと練習したほうがまだマシよ。」隣でそれを聞いていた船医白容裔が、くすっと笑う。【白容裔】 「湍津姫、あなたは彼の術にすっかり惚れ込んでるんじゃない?彼からあの術を学びたいんでしょう。彼が甲板で使ったあの術なら、私も見た。個人の感想に過ぎないけど、今までの参加者と比べて、彼は抜群に強いと思う。陸生まれであることだけが残念だ。海での経験が足りない。例え「死の浪」を見極められても、適切な術で対処するのはさすがに無理かもね。やはり最後は「死の浪」を初めて手懐けた者……瀧の助けが必要になるだろう。とはいえ、彼には期待している。」瀧は一言も発さずに、机を指先で軽く叩いている。これは彼が思案に耽る時の癖だ。【湍津姫】 「うそ、瀧が真剣に考え込んでる……瀧兄さんも大名士さんに期待してるの?なんで?」【瀧】 「白容裔の言う通り、「大名士」の実力は段違いの強さです。恐らく、我々も含め、この場にいる誰にも負けないでしょう。しかし海旅に慣れた我々とは違い、彼は「魔の角」での経験がありません。最後には、やはり私の手助けが必要になるでしょう。とはいえ……聡明な人は優れた方法を考え出すものです。彼は、我々の予想以上の答えを出してくれるでしょう。」【湍津姫】 「どうやって?本当に……「資料を調べれば」見つかるの?」【瀧】 「資料を調べるのは、答えを出すまでの過程の一つです。ただ……彼の本当の狙いは、資料を調べるという口実を使い、私の許可を得て、「黄金の爪号」の所有物の詳細を確認することでしょう。」【白容裔】 「つまり、彼はよくないことを企んでいる、と?試練での「行動に制限はない」という決まりによって、彼はあなたの許可を得たことになるね。」【瀧】 「「よくない」ことを企んでいるとは言っていません。」好敵手を見つけた時のように、瀧は楽しそうに笑う。【瀧】 「……船員として、「黄金の爪号」の探索に励むのは、悪いことではないでしょう?」最上階の黄金閣—— 瀧は「資料を調べる」というのが口実に過ぎないと見抜いていたが、三階建ての楼閣の探索を終えた「大名士」晴明は、とうとう黄金閣の前にやってきた。見抜かれていても構わなかった。晴明に己を偽る気はなく、正々堂々と振る舞っている。これは彼の選択に与えられた、当然の権利だ。【晴明】 「どうやら船の心臓——宝庫の「黄金閣」に入ることを許されたようだ。」瀧は晴明が思っていたよりも気前がよかった。そして……とても賢かった。黄金閣の中は暗く、宝物は妖術によって隠されている。唯一光を放っているのは、書籍だった。【晴明】 「行動に制限はないが、対象に制限があるのか。あくまでも「資料を調べる」許可が下りただけということか?言葉遊びが上手だな……面白い。まあ、すぐに謎の「札」を見つけられるとは私も思っていない。とにかく最初の試練に集中しよう。」そう言うと、晴明は雑念を振り払った。一番上の棚から『「黄金の爪号」冒険見聞録』という本を取り出し、真剣に読み始めた。時間が過ぎるにつれて、晴明は次第に真顔になっていく。そしてついに、昔「黄金の爪号」が航路「魔の角」を踏破した時の記録を見つけた。しかし……参考になる情報はなかった。報告には、瀧が初めて航路を切り開いた冒険家であり、彼が妖力を使って見事に「死の浪」を突破したことが詳しく記録されていた。ただ——瀧の妖力は強すぎるうえに、あまりにも「独特」だった。例えその秘密や技術を理解できても、晴明がすぐに使うことはできない。そして、見聞録は作者の見聞を記録するものである。「死の浪」に関する記録はそう多くはなかった。晴明は苦笑して、報告の最後に記された言葉を見つめる。「絶体絶命の危機を乗り越えた後、船長は『死の浪』を手懐けたのは瀧が初めてだと言って、賞賛した。」」【晴明】 「どうやら……「死の浪」を手懐けるのは、並大抵のことではなさそうだ。」そう言った途端、船が突然激しく揺れた。まるで警告のようだ。間もなく未知の嵐が襲ってくることに対する警告……残された時間はそう多くはない。暗い蔵宝閣の中、晴明は一旦落ち着き、改めて考えてみる。」【晴明】 「試練そのものの突破口が見つからないなら……試験官はどうだろう。」「黄金の爪号」の船員選抜は瀧が自ら考え出したもの、そして彼には抜かりがない。となると、先程の試練についての説明には含蓄がありそうだ。」── 回想 ──【瀧】 「「黄金の爪号」の試練は三つあります。それぞれ「冒険家」の運命に大きく関わるものとなります。もちろん、試練の評価は「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下されます。」── 回想終了 ──【晴明】 「普通の説明だ……陳腐といってもいい。冒険家の船隊はたくさんあるが、試練の評価は必ず「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下される。これも、瀧の言葉遊びの一つかもしれない。陳腐な説明で、真意を隠している。」晴明は糸口を掴んだ。【晴明】 「「瀧」が練り上げた試練であるからには、彼の立場になって考えるべきだろう。「黄金の爪号」の試験官である瀧は、同時に船の「舵取り」でもある。その役割の背景には、船を大切にし、心血を注ぐ姿勢がある。彼の立場になって考えれば、三つの試練は「冒険家」のために存在するのではない。むしろ……——「黄金の爪号」のためにあると考えるのが妥当だろう。時間を費やして「黄金の爪号」を探索し、理解を深めた者のみが、瀧から信頼され、認められ、決して裏切ることのない船員となる。——これが最初の試練の要だ。重要なのは「死の浪」を突破できるかどうかではなく、「黄金の爪号」の経験を活かして「案内人」の仕事を成し遂げることか。となると……問題は解決したも同然だ。「魔の角」に関する情報は少ないが、「黄金の爪号」の情報ならいくらでもある。根気よく、抜かりなく探せば、必ず突破口が見つかるだろう。」落ち着きを取り戻した晴明は、船が再び揺れるまで、静かに読書に集中していた。今回の揺れは、前回よりもずっと激しい。嵐が近づき、舷窓の外では雨が降っている。無言でそれを見つめる晴明は、真夜中になったことに気づき、そろそろ時間だと悟った。瀧たちの予想通り、嵐の夜に激しく揺れる船を、晴明は何度も陰陽術で守った。その実力は明らかだった。しかし手練れの冒険家たちはずっと深刻な顔をしている。瀧も窓辺に寄りかかり、何か考え込んでいるようだ。【湍津姫】 「気のせいじゃないよね?大浪が出現する頻度が上がってる。それも……ちょっとどころじゃない。」【白容裔】 「今回の嵐は、予想以上かもしれないね。」【瀧】 「もう長い間会っていませんでしたからね。数年が経過した今、ますます怒りやすくなったようです。湍津姫、甲板に来てください。」【湍津姫】 「あたしの力が必要?任せて、足手まといにはならないから——」【瀧】 「いいえ、まだ「大名士」が生きているか、確認してください。」【湍津姫】 「……彼のことが心配ならそう言ってよ。それに、金爪銭貨を五枚かけてもいい。最後は瀧が手助けするんでしょ……」口論しながら、二人は船倉の扉を開く。すると中から漏れる暖かい光が、真っ暗な甲板と、冷静沈着に危機に対応する人影を照らした。晴明は眉ひとつ動かさずに穏やかな海を見つめている。辺りは……不気味なほどに静かだ。叫び声が静寂を破った。【湍津姫】 「大変——「死の浪」が来た!」「黄金の爪号」の大広間—— 「金色の夜明け前」の雰囲気が盛り上がる。たった今、この場にいる全員が完璧な「嵐の案内」を見届けたのだ。恐ろしい「死の浪」に直面した時、新入りの「大名士」はすぐに対応策を編み出した。特別な妖力を持つ瀧とは異なる彼は、「黄金の爪号」の核心を巧みに操縦してみせた——「金タコ」の黄金のえさを利用し、真っ黒な深海で船を安定させた!すぐに打開策を編み出すとは、やはり只者ではない。そして、一部の者は見逃さなかった。彼と瀧と湍津姫の見事な連携は、まるで……瀧たちがどのように「死の浪」に対応するのか、彼は知っていたようだった。しかし……一体どうやって!?鋭い質問をする冒険家たちに、舞台上の彼は冷静に答える。」【晴明】 「「黄金の爪号」の一員になりたいのなら、船のことを把握しておかなければな。「黄金の爪号」は構造においても航行においても、船の下にいる「金タコ」と深い関わりがある。海上における巨大タコの強みは、視野だ。目の構造上「盲点がない」タコは、昼の間、海全体を見渡せる……一方、ご存知の通り、「黄金の爪号」はよく夜間航行する。夜間航行、その鍵は……タコの走光性にある。甲板の至る所に飾られた黄金は、妖術の触媒となる。それを利用すれば船を操縦することもできるし、暗い深海で行動することもできる。「黄金の爪号」の皆さんに協力してもらえて光栄だ。私がしたことといえば……瀧と湍津姫が「死の浪」を突破した瞬間に、船を転覆させる唯一の機会を見逃さなかっただけだ——「黄金の爪号」を安定させた。それだけだ。」【湍津姫】 「簡単に言うけど……大名士さんは、動きが早すぎだから!!!くっ——あんた!「死の浪」の秘密を見破ったんでしょ!?それはあたしたち「黄金の爪号」の船員しか知らない秘密なのに!」舞台下にいる湍津姫はどうしても答えが分からないようで、ぐるぐる回り始めた。一方で、瀧は拍手を送る。【瀧】 「しかし「死の浪」に関しては……ぼろは出していないはずですが。」【晴明】 「たしかに私は、瀧の言葉——彼の巧妙な言葉遊びからひらめきを得た。案内人の仕事を始める前、「黄金の爪号」が航路「魔の角」を踏破した時の記録を確認した。記録の最後……船長の評価に興味が湧いた。——『死の浪』を手懐けたのは瀧が初めてだ。」瀧は一瞬唖然とし、そして笑った。【瀧】 「なるほど……ぼろが出たのは「手懐け」だったのですね。」【晴明】 「自然現象は生き物ではない、だから発生条件がある。しかし「死の浪」には発生条件がない、なぜなら——「死の浪」は「生き物」であり、海妖怪である。だから「手懐ける」必要がある。違うか?」【瀧】 「……素晴らしい。湍津姫は、あなたには冒険家の才能があると言っていました。本当に、陸で陰陽師として生きるなんて、せっかくの才能がもったないですよ。ここで宣言します。「黄金の爪号」の一つ目の試練を、「大名士」は見事突破しました。」場内が騒然となる。次の瞬間、瀧の最後の言葉を遮るほどの拍手と喝采が船中に響き渡った。【瀧】 「「黄金の爪号」の試練は次第に難しくなるので、覚悟してくださいね。それでは——また明日。」 |
嵐が吹き荒ぶ時
嵐が吹き荒ぶ時ストーリー |
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「黄金の爪号」の大広間—— 「金色の夜明け前」の宴が始まった。多くの客人たちが盃を交わしながら、こそこそと耳打ちしている。声は次第に騒々しくなっていくが、噂の張本人は、一同の視線を浴びながら、泰然自若といった様子でお茶を飲んでいる。落ち着き払った態度に陰陽師の格好は、どう考えても周りから「浮いている」。それだけでなく……明らかに只者ではない雰囲気を漂わせている。その堂々たる姿を目にして、この人間の陰陽師の機嫌を損ねたらまずいのではないか……と、大声で噂話をしていた者も無意識に声を抑えた。この時、「黄金の爪号」の舵取り——瀧は、舞台の影に隠れ、静かにその光景を眺めていた。【瀧】 「声を発さずとも、これほど強い存在感を放つ……面白い人ですね。」舷窓から見える景色が夜の帳が下りたことを告げる。瀧は暗流が逆巻く海に向き直る。そろそろ時間だ。船の下にいる「金タコ」が夜闇の中で大きな音を立てると、舞台はすぐさま明るく照らされる。その中で、瀧はゆっくりと舞台の中央に向かう。【瀧】 「「黄金の爪号」は出航しました。冒険家の皆様、どうぞ「金色の夜明け前」での不思議な出会いをお楽しみください——「海妖怪冒険」、「宝物展覧」、「情報交換」、全部で三つの会場があります。お好きな会場に足をお運びください。それと、もう耳にされた方も多いでしょう。今年の「金色の夜明け前」には、特別な参加者がいらっしゃいます。ですので、私は特別会場——「船員選抜」の試験官として特別な試験を行います。ご興味がある方はこの場に残っていただき、共に「新船員」の誕生を見届けましょう。さて、それでは選抜に参加されるこの方についてですが——まずは、契約です。」瀧が手を上げると、妖力で作られた「契約の書」が客席に飛んでいく。まばゆい光が、その人物を照らし出す。晴明は宙に浮かぶ契約の書をそっと手に取る。」【晴明】 「ふっ……死んでも責任をとらないという契約か。まあ、これも想定内だが。」晴明が躊躇なく己の二つ名——「大名士」の名前で署名する。すると紙に込められた妖力が、契約の締結を告げた。晴明が頭を上げると、瀧と目が合った。瀧の肩に乗った仲間が、晴明に反応する。【スス】 「スー!スース——!」【瀧】 「あまりの潔さに、「スス」も感心しています……それでは、「黄金の爪号」の試練を始めましょう。」【晴明】 「ああ、始めてくれ。」【瀧】 「まずは試練についての説明です。「黄金の爪号」の試練は三つあります。それぞれ「冒険家」の運命に大きく関わるものとなります。もちろん、試練の評価は「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下されます。結果は各試練終了後すぐに私から発表いたします。そして、一度でも不合格になると、その時点で退場となります。」冒険家たちが喝采する中、晴明は相変わらず平然としている。それを見た瀧の微笑が一層深くなり、試練の内容が発表される。【瀧】 「最初の試練は、「嵐の航路」です。航海において、嵐は避けられない問題です。ですが、冒険家の使命、あるいは楽しみというのは……——嵐に打ち勝ち、自分だけの「航路」を見つけることに他ならないでしょう。」瀧の言葉に応えるように、舷窓の外から雷の音が聞こえてくる。「黄金の爪号」が出航した後、いつの間にか大雨が降り始めていたことに、一同はようやく気づいた。一部の手練れの冒険家は、海の異変を察知していた。今夜は……刺激的な夜になりそうだ。」【瀧】 「思う存分お楽しみいただくために、「黄金の爪号」は三つの航路を用意しました。それぞれ——」瀧の妖力に呼応するかのように、晴明が持つ「契約の書」に三つの絵が浮かび上がってきた。【瀧】 「最も安全で、制限も最も多い「雨夜航路」。簡素な小船に乗り、嵐や海妖怪を避けながら、夜明けまで生き残ってください。ただし、防具も妖術も一切使用禁止です。そこそこ安全で、いくつかの制限がある「霧の航路」。多くの船乗りがいる護衛船に乗り、霧の中で指定の島を見つければ合格となります。防具に制限はありません。妖術は三回まで使うことができます。最後の航路は最も危険ですが、行動に制限はありません。その名も——「魔の航路」です。「行動に制限はありません」ので、「黄金の爪号」に残り、好きに過ごしていただいても構いません。この試験に合格するには……船の案内人として、嵐を乗り越えてある場所——伝説の「航海者の墓」にたどり着いてください。つまり……船を導き、嵐をくぐり抜けることができれば合格です。」一同に緊張が走る。晴明は静かに「契約の書」の三つの絵を見つめる。大雨、霧、そして……最後の絵は津波に隠れていて、よく見えない。しかし船に乗る前に、危険な海域については調査済みだ。「航海者の墓」というのは、「魔の角」のことだ。その名の通り、「魔の角」と呼ばれる地域は角のような形をしている。そこには百年に一度の大波と言われる「死の浪」が、頻繁に押し寄せる。穏やかな海に、突如として崖壁のような津波が現れる。原因も、いつ出現するのかも分からず、逃れられない悪夢としか言いようがない。多くの冒険家が恐れる地域だが、それを船員選抜の試練に組み込むとは、流石は「黄金の爪号」である。一同が人間の陰陽師の選択を待つ中、一秒、また一秒と時間だけが過ぎていく。決断をした晴明は、手を伸ばしてそのうちの一つの絵に触れた。「冒険家」の真髄とは、自ら危険に挑むことである。」【晴明】 「「黄金の爪号」の試練であるからには、「黄金の爪号」に残るのが筋だろう。」晴明がまるで楽な試練を選んだかのように、冷静に、淡々とこう言ったので、群衆の多くは安堵した。しかし「黄金の爪号」に残るということは……次の瞬間、一同はその意味を悟った——なんだと!?ふざけるな!この命知らずの「大名士」、俺たちを連れて……「魔の航路」に行くというのか!?」一刻後—— 大広間から晴明の姿は既に消えていた。しかし激昂した乗客たちは、未だに言い争いを続けている……かたや「黄金の爪号」の船員たちは、隅で数人で固まって雑談をしていた。【湍津姫】 「クスクス——瀧兄さん、あたし……あいつのこと、見損なったかな?「魔の航路」を選んだのはすごいけど……あの最後の発言はなに!?ほんとがっかりした!」どうしても晴明の発言を理解できない湍津姫は、机を強く叩き、晴明の真似をした。【湍津姫】 「こほん……「行動に制限はないと言ったな……では、船にある資料を調べさせてくれ。」もう、まじ意味分かんない……資料を調べるってなによ!「死の浪」はいつ出現するか分かんないのよ!過去の難破船について調べておけば無事に「魔の角」を通過できる、なんて思ってないでしょうね?そもそも、例え運良く何らかの情報を見つけられたとしても、「死の浪」が現れた時は、反射速度と保身術が一番重要なんだから。ふん!資料を調べるくらいなら、「陰陽術」とやらをもっと練習したほうがまだマシよ。」隣でそれを聞いていた船医白容裔が、くすっと笑う。【白容裔】 「湍津姫、あなたは彼の術にすっかり惚れ込んでるんじゃない?彼からあの術を学びたいんでしょう。彼が甲板で使ったあの術なら、私も見た。個人の感想に過ぎないけど、今までの参加者と比べて、彼は抜群に強いと思う。陸生まれであることだけが残念だ。海での経験が足りない。例え「死の浪」を見極められても、適切な術で対処するのはさすがに無理かもね。やはり最後は「死の浪」を初めて手懐けた者……瀧の助けが必要になるだろう。とはいえ、彼には期待している。」瀧は一言も発さずに、机を指先で軽く叩いている。これは彼が思案に耽る時の癖だ。【湍津姫】 「うそ、瀧が真剣に考え込んでる……瀧兄さんも大名士さんに期待してるの?なんで?」【瀧】 「白容裔の言う通り、「大名士」の実力は段違いの強さです。恐らく、我々も含め、この場にいる誰にも負けないでしょう。しかし海旅に慣れた我々とは違い、彼は「魔の角」での経験がありません。最後には、やはり私の手助けが必要になるでしょう。とはいえ……聡明な人は優れた方法を考え出すものです。彼は、我々の予想以上の答えを出してくれるでしょう。」【湍津姫】 「どうやって?本当に……「資料を調べれば」見つかるの?」【瀧】 「資料を調べるのは、答えを出すまでの過程の一つです。ただ……彼の本当の狙いは、資料を調べるという口実を使い、私の許可を得て、「黄金の爪号」の所有物の詳細を確認することでしょう。」【白容裔】 「つまり、彼はよくないことを企んでいる、と?試練での「行動に制限はない」という決まりによって、彼はあなたの許可を得たことになるね。」【瀧】 「「よくない」ことを企んでいるとは言っていません。」好敵手を見つけた時のように、瀧は楽しそうに笑う。【瀧】 「……船員として、「黄金の爪号」の探索に励むのは、悪いことではないでしょう?」最上階の黄金閣—— 瀧は「資料を調べる」というのが口実に過ぎないと見抜いていたが、三階建ての楼閣の探索を終えた「大名士」晴明は、とうとう黄金閣の前にやってきた。見抜かれていても構わなかった。晴明に己を偽る気はなく、正々堂々と振る舞っている。これは彼の選択に与えられた、当然の権利だ。【晴明】 「どうやら船の心臓——宝庫の「黄金閣」に入ることを許されたようだ。」瀧は晴明が思っていたよりも気前がよかった。そして……とても賢かった。黄金閣の中は暗く、宝物は妖術によって隠されている。唯一光を放っているのは、書籍だった。【晴明】 「行動に制限はないが、対象に制限があるのか。あくまでも「資料を調べる」許可が下りただけということか?言葉遊びが上手だな……面白い。まあ、すぐに謎の「札」を見つけられるとは私も思っていない。とにかく最初の試練に集中しよう。」そう言うと、晴明は雑念を振り払った。一番上の棚から『「黄金の爪号」冒険見聞録』という本を取り出し、真剣に読み始めた。時間が過ぎるにつれて、晴明は次第に真顔になっていく。そしてついに、昔「黄金の爪号」が航路「魔の角」を踏破した時の記録を見つけた。しかし……参考になる情報はなかった。報告には、瀧が初めて航路を切り開いた冒険家であり、彼が妖力を使って見事に「死の浪」を突破したことが詳しく記録されていた。ただ——瀧の妖力は強すぎるうえに、あまりにも「独特」だった。例えその秘密や技術を理解できても、晴明がすぐに使うことはできない。そして、見聞録は作者の見聞を記録するものである。「死の浪」に関する記録はそう多くはなかった。晴明は苦笑して、報告の最後に記された言葉を見つめる。「絶体絶命の危機を乗り越えた後、船長は『死の浪』を手懐けたのは瀧が初めてだと言って、賞賛した。」【晴明】 「どうやら……「死の浪」を手懐けるのは、並大抵のことではなさそうだ。」そう言った途端、船が突然激しく揺れた。まるで警告のようだ。間もなく未知の嵐が襲ってくることに対する警告……残された時間はそう多くはない。暗い蔵宝閣の中、晴明は一旦落ち着き、改めて考えてみる。【晴明】 「試練そのものの突破口が見つからないなら……試験官はどうだろう。」「黄金の爪号」の船員選抜は瀧が自ら考え出したもの、そして彼には抜かりがない。となると、先程の試練についての説明には含蓄がありそうだ。」── 回想 ──【瀧】 「「黄金の爪号」の試練は三つあります。それぞれ「冒険家」の運命に大きく関わるものとなります。もちろん、試練の評価は「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下されます。」── 回想終了 ──【晴明】 「普通の説明だ……陳腐といってもいい。冒険家の船隊はたくさんあるが、試練の評価は必ず「冒険家」としての総合的な能力に基づいて下される。これも、瀧の言葉遊びの一つかもしれない。陳腐な説明で、真意を隠している。」晴明は糸口を掴んだ。【晴明】 「「瀧」が練り上げた試練であるからには、彼の立場になって考えるべきだろう。「黄金の爪号」の試験官である瀧は、同時に船の「舵取り」でもある。その役割の背景には、船を大切にし、心血を注ぐ姿勢がある。彼の立場になって考えれば、三つの試練は「冒険家」のために存在するのではない。むしろ……——「黄金の爪号」のためにあると考えるのが妥当だろう。時間を費やして「黄金の爪号」を探索し、理解を深めた者のみが、瀧から信頼され、認められ、決して裏切ることのない船員となる。——これが最初の試練の要だ。重要なのは「死の浪」を突破できるかどうかではなく、「黄金の爪号」の経験を活かして「案内人」の仕事を成し遂げることか。となると……問題は解決したも同然だ。「魔の角」に関する情報は少ないが、「黄金の爪号」の情報ならいくらでもある。根気よく、抜かりなく探せば、必ず突破口が見つかるだろう。」落ち着きを取り戻した晴明は、船が再び揺れるまで、静かに読書に集中していた。今回の揺れは、前回よりもずっと激しい。嵐が近づき、舷窓の外では雨が降っている。無言でそれを見つめる晴明は、真夜中になったことに気づき、そろそろ時間だと悟った。」瀧たちの予想通り、嵐の夜に激しく揺れる船を、晴明は何度も陰陽術で守った。その実力は明らかだった。しかし手練れの冒険家たちはずっと深刻な顔をしている。瀧も窓辺に寄りかかり、何か考え込んでいるようだ。【湍津姫】 「気のせいじゃないよね?大浪が出現する頻度が上がってる。それも……ちょっとどころじゃない。」【白容裔】 「今回の嵐は、予想以上かもしれないね。」【瀧】 「もう長い間会っていませんでしたからね。数年が経過した今、ますます怒りやすくなったようです。湍津姫、甲板に来てください。」【湍津姫】 「あたしの力が必要?任せて、足手まといにはならないから——」【瀧】 「いいえ、まだ「大名士」が生きているか、確認してください。」【湍津姫】 「……彼のことが心配ならそう言ってよ。それに、金爪銭貨を五枚かけてもいい。最後は瀧が手助けするんでしょ……」口論しながら、二人は船倉の扉を開く。すると中から漏れる暖かい光が、真っ暗な甲板と、冷静沈着に危機に対応する人影を照らした。晴明は眉ひとつ動かさずに穏やかな海を見つめている。辺りは……不気味なほどに静かだ。叫び声が静寂を破った。【湍津姫】 「大変——「死の浪」が来た!」「黄金の爪号」の大広間—— 「金色の夜明け前」の雰囲気が盛り上がる。たった今、この場にいる全員が完璧な「嵐の案内」を見届けたのだ。恐ろしい「死の浪」に直面した時、新入りの「大名士」はすぐに対応策を編み出した。特別な妖力を持つ瀧とは異なる彼は、「黄金の爪号」の核心を巧みに操縦してみせた——「金タコ」の黄金のえさを利用し、真っ黒な深海で船を安定させた!すぐに打開策を編み出すとは、やはり只者ではない。そして、一部の者は見逃さなかった。彼と瀧と湍津姫の見事な連携は、まるで……瀧たちがどのように「死の浪」に対応するのか、彼は知っていたようだった。しかし……一体どうやって!?鋭い質問をする冒険家たちに、舞台上の彼は冷静に答える。【晴明】 「「黄金の爪号」の一員になりたいのなら、船のことを把握しておかなければな。「黄金の爪号」は構造においても航行においても、船の下にいる「金タコ」と深い関わりがある。海上における巨大タコの強みは、視野だ。目の構造上「盲点がない」タコは、昼の間、海全体を見渡せる……一方、ご存知の通り、「黄金の爪号」はよく夜間航行する。夜間航行、その鍵は……タコの走光性にある。甲板の至る所に飾られた黄金は、妖術の触媒となる。それを利用すれば船を操縦することもできるし、暗い深海で行動することもできる。「黄金の爪号」の皆さんに協力してもらえて光栄だ。私がしたことといえば……瀧と湍津姫が「死の浪」を突破した瞬間に、船を転覆させる唯一の機会を見逃さなかっただけだ——「黄金の爪号」を安定させた。それだけだ。」【湍津姫】 「簡単に言うけど……大名士さんは、動きが早すぎだから!!!くっ——あんた!「死の浪」の秘密を見破ったんでしょ!?それはあたしたち「黄金の爪号」の船員しか知らない秘密なのに!」舞台下にいる湍津姫はどうしても答えが分からないようで、ぐるぐる回り始めた。一方で、瀧は拍手を送る。【瀧】 「しかし「死の浪」に関しては……ぼろは出していないはずですが。」【晴明】 「たしかに私は、瀧の言葉——彼の巧妙な言葉遊びからひらめきを得た。案内人の仕事を始める前、「黄金の爪号」が航路「魔の角」を踏破した時の記録を確認した。記録の最後……船長の評価に興味が湧いた。——『死の浪』を手懐けたのは瀧が初めてだ。」瀧は一瞬唖然とし、そして笑った。【瀧】 「なるほど……ぼろが出たのは「手懐け」だったのですね。」【晴明】 「自然現象は生き物ではない、だから発生条件がある。しかし「死の浪」には発生条件がない、なぜなら——「死の浪」は「生き物」であり、海妖怪である。だから「手懐ける」必要がある。違うか?」【瀧】 「……素晴らしい。湍津姫は、あなたには冒険家の才能があると言っていました。本当に、陸で陰陽師として生きるなんて、せっかくの才能がもったないですよ。ここで宣言します。「黄金の爪号」の一つ目の試練を、「大名士」は見事突破しました。」場内が騒然となる。次の瞬間、瀧の最後の言葉を遮るほどの拍手と喝采が船中に響き渡った。【瀧】 「「黄金の爪号」の試練は次第に難しくなるので、覚悟してくださいね。それでは——また明日。」 |
鎮魂の歌が船中に響き渡る
鎮魂の歌が船中に響き渡るストーリー |
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朝の最初の光が「黄金の爪号」、そして大広間に足を踏み入れた晴明に降り注ぐ。【湍津姫】 「大名士さん、おはよう!」【晴明】 「……おはよう。」【湍津姫】 「クスッ……気のせいかしら?大名士さん、何だか元気がないみたい……昨日の夜、眠れなかったの?」湍津姫の質問に、晴明は珍しく黙っている。【湍津姫】 「(晴明をじっと見る)……あちゃー。大名士さん、もしかして船酔い?」【晴明】 「……」【湍津姫】 「大変、声を出す力もないの?そんなに酔った?だったら、あたしの特製「船酔いの薬」を飲んでみる?」大広間の調理場で湍津姫は慌てて煎茶を淹れ、お粥を作る。そして手際よく、独特な匂いの何かを調合して持ってきた。匂いを嗅いだ瞬間、思案に耽っていた晴明は我に返り、焦る湍津姫に手を振って制止した。【晴明】 「……ありがとう、薬は結構だ。」【湍津姫】 「嗅いだだけで効いたの?じゃあ、もう大丈夫?」しばらく考えた後、晴明は答える。【晴明】 「大丈夫だ。私はただ、二つ目の試練は目覚めた時からすでに始まっているのではないかと、考えていただけさ。」そう言った瞬間、「黄金の爪号」の舵取り——瀧が、落ち着いた様子で楼閣の中から現れた。【瀧】 「おはようございます、みなさん。あなたもここにいらしたのですか、奇遇ですね。今朝の特別なおもてなしはいかがですか?湍津姫、あなたの飲み物のことを言っているのではありませんよ。……あなたに聞こえている声のことです。」晴明の判断は正しかった。今朝目覚めてから、晴明は誰かのささやきが聞こえるようになった。幻のようではっきりとは聞こえないが、声が途絶えることは決してない。声のせいで現実と幻との境が曖昧になっていく中、晴明は青行燈から聞いたある怪談を思い出した。海で長時間航海を続ける際に、同じ船にい続けると、発狂し、自我を無くして仲間と殺し合うことがある、と。【晴明】 「「黄金の爪号」の二つ目の試練は……精神力を試すのか?」瀧はその問いには答えず、話題を変えた。【瀧】 「契約の書を持って、我々の船医——白容裔に身体検査をしてもらってください。その後、二つ目の試練が正式に開始となります。」【白容裔】 「冒険家の界隈には、こんな諺がある——若い冒険家ほど命を粗末にする、ってね。彼らはよく津波や争いのせいで命を落とす……もちろん、人を破滅に追い込む原因はたくさんある。例えば、海上ではいつも同じ食事をしたり、好きなだけ酒を飲んだり、不規則な生活が続いたりする。そもそも、規則正しい生活を送り、鍛錬を怠らない人は極わずかしかいない。ただ……あなたはその一人のようだね。」雅な和室の中、晴明の身体検査が終わった後、船医の白容裔はこう評価した。【白容裔】 「「二つ目の試練」に打ち勝てるだけの精神力があればいいんだけど。」【晴明】 「では、始めてくれ。」神妙な笑顔を浮かべると、白容裔は銀色の砂時計を取り出した。」【白容裔】 「二つ目の試練は、「幽霊の呪い」と呼ばれている。あなたに聞こえる声は、言葉という呪いだ。早く解かないと、生涯幽霊に呪われ続けることになる。肉体が海を彷徨い、魂が囚われ続けている。これは冒険家の逃れられない運命なのさ。さあ、この砂時計を見て。」ゆっくりと話す白容裔の優しい声音には、人を虜にする魔力がある——晴明はそっと目を閉じた。」「黄金の爪号」の甲板—— 午後の海は穏やかで、平和な景色が映し出されている。さざなみ立つ水面を見て、白容裔は我慢できずにずっと聞きたかったことを口にする。【白容裔】 「瀧はいつも、「黄金の爪号」の応募者に無理難題を押し付けるね。今まで、「幽霊の呪い」を突破した者は一人もいない。あなたがこれを利用して「同類を試す」のは理解できるけど……一度も難易度を下げたことがない。——どうして?」鋭い質問に私情を挟んだことを、白容裔は否定しない。しかし、あの「大名士」は比類なき才能の持ち主だ。そして今、彼はすでに幻境の中にいる。彼にここでの会話は聞こえない。つまり、「大名士」のために口添えしても差し支えないはずだ。しかしすぐには答えを得られなかった。日差しを浴びる瀧は、優しい表情をしている。しばらくして、彼は淡々と話し始めた。」【瀧】 「今日はいい天気ですね。昨日の嵐がまるで嘘のようです。航海において、この先待ち構えているのが嵐なのか穏やかな海なのか、それは誰にも分かりません。昨日嵐に襲われたのに、今日は穏やかな日差しが降り注ぐかもしれません。しかしその逆もありえます。我々は日々激しく変化する世界と隣り合わせで生きています。冒険には人を惹きつける魅力がありますが、それは大きな代償が伴います。試練という形を通じて、私は「黄金の爪号」に乗る者に問うのです——冒険の楽しさを経験した後、どれだけの代償を払えますか?あなたが「大名士」に期待していることは分かっています。しかし、彼の目的は我々の仲間になることだけではありません。「嵐の航路」は最初の警告です。この「幽霊の呪い」では、本当に「冒険家」というものを理解しているのか、彼に見せて欲しいと思っています。仲間になりたいのなら、理解が伴っていなければならないのは当然でしょう?まずは……異質な存在ゆえの寂しさからです。」複雑な感情を隠し、瀧は「黄金の爪号」の高閣に視線を戻した。高閣の中—— 船員の休憩室で、湍津姫は巨大な鮫の吊床に寝そべって、こっそり何かを作っている。昨夜海の中で見事な連携技を見せてくれた金タコに感謝を伝えるべく、彼女は金タコの姿になるよう黄金の塊を磨いていた。金タコは湍津姫の一番の親友であり、唯一の親友でもある。永遠に大きくなることのない鮫であるがゆえに、一族の恥だと言われ、追い出された彼女を……金タコだけが受け入れてくれた。金タコは話さないけれど、代わりに触手で優しく抱きしめてくれる。金タコはよく迷子になるから、彼女は明かりをつけて道を教えてあげる。その後、金タコは「黄金の爪号」の一員になった。そして彼女も、たった一つの居場所を手に入れた。湍津姫にも一つだけ秘密がある。ずっと金タコの側にいると決めてはいるけれど、時々、彼女は一族のことを思い出す。巨大な鮫の吊床をくれた瀧には感謝している。寝そべると、今でも子供の頃よく耳にした鮫の子守唄が聞こえるような気がする。一族を追い出された彼女は、記憶にある子守唄の旋律もすでに曖昧になっている。それでも子守唄が聞こえるような気が……いつも側にあったような気がする。湍津姫は眠りについた。彼女が見えないところで、幻境にいる晴明が彼女にそっと布団をかける。試練の幻境に入った晴明はすぐに気がついた。白容裔の妖術の影響なのか、誰も彼を目視できない。同時に、色々な声が聞こえるようになった。しばらく音の聞き分けに集中した後、彼は一つ目の声がする場所を見つけた。晴明は霊視を使って、湍津姫の過去を覗いた。鮫の子守唄は、湍津姫にかけられた呪いだった。しかし……彼女はそれを優しい慰めだと受け止めていた。隠された記憶の中、晴明はようやく子守唄の最初の旋律を見つけ出した。ぐっすり眠っている湍津姫の側で、彼は小声で歌う。霊視という力があることに、晴明は感謝していた。手助けができるからではない……湍津姫が持つ、繊細で傷つきやすい心を見ることができたからだ。」晴明には見えない甲板の上で、白容裔が銀色の魂の砂時計を揺らしている。白い砂粒がゆっくりと落ちていく。すでに三分の一の時間が過ぎた。【白容裔】 「やはり私の目に狂いはない……「大名士」はもう、一つ目の呪いを解いた。私が予想した通り、優しい人は自分に似た優しさに気づくことができる。」【瀧】 「断言するにはまだ早いでしょう。次の呪いはあなたに由来するものですよ、白容裔。彼の優しさを信じているようですが、彼の残酷さはどうですか?人は、優しさと残酷さを同時に持てるものでしょうか?」【白容裔】 「ふふ……私は船医だけれど、以前はただの人殺しだった。……私たちは皆、絶望にもがき、この手で仲間の命を奪う経験をしてきた者ばかり。冒険家は、生と死について学ばなければならない。彼が出す答えが楽しみだ。」晴明は雅な和室に戻ったが、そこに船医の姿はなかった。周囲を見渡すと、ある考えが浮かんできた。海妖だらけの冒険船で、体の傷を癒やす治療は必要ないのではないだろうか。むしろここは、心の傷を癒やすための部屋に見える。部屋の片隅に置かれている箱に入っている道具は、持ち主の以前の身分を示唆していた。そしてこれこそが、次の声の源だった。近づくと、箱の中から辛そうなうめき声が聞こえる。最初、晴明は声を発しているのはきらりと光る癒霊刀だと思ってたが、よく見ると違うようだった……癒霊刀の下には、薄い紙があった。【晴明】 「これは……遭難者の名簿か?」名簿に触れてみると、冷静な告白が耳元で響いた。潮が静かに押し寄せてきて、過去の記憶を呼び起こす。あの時の白容裔は、まだただの人間で、医術に優れた貴族に過ぎなかった。 「何度も自分を問い詰めた。もし過去をやり直せるとしたら、また救援の船隊に入るのか、と。」 「最初、私はあくまで証明したいだけだった。貴族が皆、庶民に対して尊大な態度をとるわけではないと。少なくとも、全員がそうではないということを証明したかった。」 「しかし、すぐに気づいてしまった……運命とは、計り知れないものであると。運命によって、人助けのために船に乗り込んだ我々が海に立ち込める霧に閉じ込められてしまったように。」 「霧の中、一日、また一日と、時間だけが過ぎていった。十五日目になると、浮足立った連中は、残り僅かな水と食料を巡って争いを始めた。」 「幸い、海においても命が危ない時には医術が必要だ。だから皆、船医には敬意を払っていた。その後……三十日目に、謎の疫病が猛威を振るった。」 「一人目の患者は、若い船乗りだった。混乱に陥った時、彼は真っ先に動いて、船の救援物資を守った。」 「しかし突如猛威を振るった疫病は彼の命を、彼の誇りであった屈強な体を、彼の優しさを確実に蝕んでいった。耐えられないほどの痛みが、彼から全てを奪った。」 「船医としてこんな日を迎えることになるとは、思ってもみなかった……狭い寝台に臥した、ひどくやつれた彼が、楽にしてくれと頼んできた。」 「浅はかな私は、言われた通りにせずとも、彼を助けられると信じていた。結局彼は痛みに苛まれ、夜中に死んでしまった。」 「あの日以来、自分の医術を呪いたくなる気持ちを散々味わってきた。疫病の治療は徐々に人の理性を、誇りを、最後に人間としての最低限の矜持を奪っていく。」 「私のところに来る人は増えていた。そして彼らの最後の望みは往々にして……尊厳のある死、それだけだった。それに気づいた時も、私は驚かなかった。」 「だから私は素早く、躊躇なく手を下せるようになった。最後に私のところに来たのは、年老いた船長だった。」 「——この船は救援を目的としている。だから、何があっても必ず物資を届けてくれ。」 「死の間際になっても、船長は我々の使命を忘れなかった。」 「——お前は船医だ、人の命を救うことができる。」 「船長は昔、肩を叩いてそう励ましてくれたこともあった。しかし最後に生き残った私は、ただの人殺しになってしまった。」 「それでも、船長の言葉を——この船は救援を目的としているという言葉を、私は忘れていなかった。霧が立ち込める中、私はついに正しい方向を見つけた。」 「ある穏やかな午後、船は港につき、人々は山積みの物資を手に入れるだろうが、この独白は誰にも届かない。なぜなら、その前に私は、最後の一人を楽にするからだ。」 「そして……遭難した皆の名前を残す。私の名前もだ。」晴明の耳元の声は聞こえた。同時に、何らかの術が発動したかのように、遭難者の名簿にあった名前が消えていく。この瞬間、晴明はようやく「幽霊の呪い」という試練の意味を理解した。同類を試すというより……同類になれという意味が込められているのだろう。並んで立つためには、彼らを理解する必要がある。目を開け、辛そうなうめき声を思い出しながら、晴明は真っ白な紙切れに遭難者たちの名前を書き込む。最後の名前は、死に際に告白を残した者——白容裔だった。」夕日の最後の光が「黄金の爪号」を優しい金色に染め上げ、甲板にいる白容裔が微笑む。【白容裔】 「そういえば、ちゃんとお礼を言っていなかったね。あの時、助けてくれてありがとう。まあ……妖になるはめになったけど。「黄金の爪号」のおかげで、私は生まれ変わることができた。」【瀧】 「……我々の仲ですから、礼には及びません。それより砂時計を見てください。いつの間にか、「大名士」はあなたの試練を突破したようですよ。」【白容裔】 「ふふ……彼にとって、「幽霊の呪い」は怖くもなんともないのかもしれないね。人は等しく心の中の幽霊に取り憑かれ、運命に呪いを刻まれている。所詮それに気づいたかどうかだけの話だ。だけど、私の記憶が正しければ、あなたの呪いを見つけた人は今までいなかったね。だから、この試練に合格した者も一人もいなかった。」しかし瀧は頭を横に振った。砂が落ちる速さが少し速くなった。【瀧】 「過去という話でしたら、私の過去はむしろ分かりやすいでしょう。肝心なのは、私と同類になってくれるかどうかです。私は一度全てを手に入れ、そして……一瞬で全てを失いました。冒険家が払う最も大きな代償とは、世界の真実——運命が我々を嘲笑い続けていることを受け入れることです。裏切られ、全てを失う覚悟を決めなければなりません。唯一我々に許されるのは、過去から遠ざかることだけです。過去の全てに別れを告げる覚悟を決めなければなりません。私は以前の自分に、そして父に別れを告げました……一度も振り返らなかったからこそ、今の「私」がいるのです。」【白容裔】 「真の残酷さとはこういうことか。彼にできるかな?」白容裔がためらっていると、砂時計の砂の流れはますます速くなり、もうすぐ全てが落ちようとしている。それはあることを意味していた……【瀧】 「彼はやり遂げました。」【白容裔】 「なっ……!?」【瀧】 「ただ、船に乗る前に。」【白容裔】 「仮面の下に隠された彼の正体を見抜いたのか!?」【瀧】 「残念ですが、今日はとうとう彼の「ぼろ」が出ました。」【白容裔】 「……つまり、彼は試練を達成したというのか?」【瀧】 「その通りです。」瀧が続けて意味深な言葉を口にする。【瀧】 「計り知れない過去を背負う者は、とうに世界の真実を見抜いていました。運命の悪戯にからかわれ続けても、彼は全てを投げ出して、人々を救いました。彼は我々と同じなのです。我々と同じで……彼も決して振り返りません。」夕日が完全に沈み、甲板に人影が現れた。晴明だ。瀧はその人影を見つめ、自ら近づいていく。【瀧】 「おかえりなさい。——ようこそ「黄金の爪号」へ。」 |
魂に錨を授け
魂に錨を授けストーリー |
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時は数年前に遡る…… 「黄金の爪号」の隠し部屋—— それは瀧が初めて仲間を率いて「収穫の夜」を迎えた日だった。海妖怪と数時間にわたって激戦を繰り広げた後、彼らはやっと巨大な沈没船を引き上げることができた。その夜、無数の秘宝が再び発見された。瀧が静かに宝物を確認していく。それらは全部……幼い頃、何度も見たことのある宝物だった。それは全て、彼の父が築き上げた、葬り去られた伝説だった。【スス】 「スー……スースー……(元気がない)」【瀧】 「スス、あなたも昔のことを思い出したのですか?」瀧が小さな銀蜥蜴の彫像を手に取る。これは父からの最後の贈り物だった。【瀧】 「……父さん、あなたが言ってた「信頼」の意味が、ようやく理解できた気がします。」瀧はさっき仲間と共に戦った時のことを、仲間が勝利を掴んで歓声を上げた時のことを思い出す。そして初めて、純粋な喜びを噛みしめた。商人の息子として生まれた瀧は、日夜問わず争い続ける商人しか見たことがなかった。しかし父には常日頃から、仲間を信じるようにと教えられていた。……だから、「黄金の爪号」の今回の冒険で、瀧は初めて他の船員に背中を預けた。【瀧】 「やりましたよ、父さん。「信頼」も悪くありませんね。しかし……私が理解できるようになるまで、時間がかかりすぎました。……もう父さんに見ていただくことは叶いません。」【スス】 「スースー……」ススが足元に落ちた金貨をぐるぐる回し、重い空気を吹き飛ばそうとする。【瀧】 「慰めてくれてありがとう、スス。悲しいわけではありません。父の言っていたことを思い出しただけです。」それは運命の嵐の訪れだった。船長の父が死に際に残してくれた言葉は、瀧への最後の教えだった。 「長になれば、みんなの魂のような存在に、船の『錨』のような存在になれる……そう思っていた時期があった。」 「しかしそれは間違いだ。船において、真の『錨』とは、側にいる仲間のことだ。」 「だから何が起きても、決して『信頼』を諦めるな……自分の『錨』を諦めるな。」 「俺の息子として、お前はよくやった。次は船員として、船長からの最後の命令を聞け——」 「生き残れ。そして……絶対に振り返るな。」 やがて、嵐は父の姿を、瀧が暮らしていた巨船を呑み込んだ。……瀧は現実に戻ってきた。今「黄金の爪号」の隠し部屋にいる彼は、間もなく一人前の舵取りになろうとしている。喜びの最中にいる船員たちが扉を叩き、彼を祝宴に誘う。これは瀧だけの、第二の人生だ。運命は彼から全てを奪ったが、再び彼に新しい人生を与えた。今度こそ、彼は自分の運命を掴んで離さないだろう。ススが瀧の肩に飛び乗る。瀧は隠し部屋の扉を開く。何年も経った今、また大雨が降っていた。「黄金の爪号」の上の晴明が目を開ける。真夜中、彼は「黄金の爪号」の最後の試練に挑んだ。 ——「魂の錨」。 晴明が妖力で作られた契約の書を手に取ると、ぎっしりと書かれた瀧の言葉がすぐに浮かんできた。 「『魂の錨』。その名前通り、『黄金の爪号』の今の『錨』を見つけてください。」 「その間、『黄金の爪号』の船員として一日を過ごしていただいても結構です。」 「錨を見つけたら、それを持って最上階の黄金閣に来てください。再会を楽しみにしています。」 「正しい錨をご提出いただいたら、伝説の——黄金の鍵を進呈させていただきます。それはあなたが『黄金の爪号』の一員になった証です。」 「締切時間は、次の真夜中です。」 「それでは、『黄金の爪号』での一日を楽しんでください。」 瀧が書いた文字は消えた。しかしこの二日間の冒険を体験した晴明は、今回の試練の説明の裏を読むことができた。なぜならば彼はすでに瀧——「黄金の爪号」の舵取りの思考の癖を把握したからだ。晴明は「黄金の爪号」で過ごした数日の間に、瀧に出くわした時のことを思い出した。例えば……」【瀧】 「……湍津姫。鮫の吊り床で手芸をしてはいけないと、何度も注意しましたよね。ここで手芸をすると、ごみの掃除が大変なんですよ。」【湍津姫】 「ふん……分かったって!自分で掃除するから……」【瀧】 「それと、これを。」【湍津姫】 「瀧……「金タコ」のおもちゃを作ってくれたの?」【瀧】 「「嵐の航路」に参加してくれたご褒美だと思ってください。それに、こういうのは私のほうが得意ですから。」【湍津姫】 「やっぱり——さすが瀧兄さん!」それから…… 「黄金の爪号」の甲板——【湍津姫】 「ええっ!?大名士さんが「幽霊の呪い」を突破したの!!?瀧!白容裔!午後の間ずっと二人だけで甲板でお喋りするなんて……しかもあたしを差し置いて……ちょっと寝坊したらもう全部終わってるし……な、何が起きたか全然分かんない!誰か説明してくれない?ねえ、そこの大名士さん!どうやって試練を突破したの?最初から詳しく……」晴明が足を止める。【瀧】 「こほん……陰陽師殿はもうお疲れではありませんか?」隣の白容裔もふふっと笑う。晴明が見上げると、二人と目が合った。【晴明】 「ああ……少し疲れたかもしれない。」晴明は頷くと、曖昧な言葉を口にする。【瀧】 「そういうことなら、そろそろ日も暮れてきましたので、このあたりで夕食にしましょう。みなさん、ついてきてください。」【白容裔】 「うん、行こう、湍津姫。」【湍津姫】 「だから、大名士さんはどうやって試練を突破したの?……ちょっと待って!今日の夕食は何?まだ何も聞いてないけど……岩国の寿司と豚骨ラーメン、あとお団子が食べたい……」【白容裔】 「はは……」【晴明】 「「黄金の爪号」のみんなは、瀧のことを頼りにしているな。逆に言えば、瀧は自分が他人よりも偉いとは思っていない。なぜなら、瀧にとっては——「黄金の爪号」の魂……「黄金の爪号」の錨とは、仲間たちのことだからだ。そしてまた、試練の難易度は決して低くはないが、だからこそ試練の参加者は船員のみんなに実力を披露することができる。つまり……知らず知らずのうちに、船員たちとの距離を縮めることになる。巧妙に仕掛けられているな。」晴明は再び周囲を見渡す。鮫の吊り床、船医室……船員たちの身の上を知った後、晴明は優しい気持ちになっていた。さながら彼は少しずつ周りに溶け込み、「黄金の爪号」の一員になっていくかのようだ。明け方、湍津姫があくびをしながら鮫の吊り床から飛び降りる。【湍津姫】 「大名士さん……おはよう!今日の試練は、もう始まった?クスッ……「黄金の爪号」での一日をどう過ごそうか考えてるって?ここだけの話だけど、あたし今日は暇だよ。」【晴明】 「分かった、湍津姫。一つ質問してもいいか?海に冒険に行く以外に、普段あなたたちは何をしているんだ?」【湍津姫】 「大名士さんったら、もうあたしたちの日常に興味が湧いてきたの?あたしはね、暇な時は船の補修をしてるかな。たまにお菓子を作ったりもするし……そうだ!あそこの金貨が入ってる箱、見た?新しい遊びを思いついたの!——運試しルーレット!金貨がぐるぐる回るの……あたしはすごく運がいいんだ!」【晴明】 「そうなのか?」【湍津姫】 「クスッ!疑ってるの?」晴明が「誘導」する。【晴明】 「勝負してみないか?」【湍津姫】 「忘れるところだった。開幕式であんた、運良く「スス」に選ばれてたっけ……いいわ、勝負よ!……待って、一つ条件を追加する!言っとくけど、あんたが負けたら……——「陰陽道」を教えなさい!あたしが使えるようになるまで。これでどう?」【晴明】 「いいだろう。だが、もし私が勝ったら、真夜中まであるものを貸してほしい。」【湍津姫】 「いいよ!」黄昏時——【白容裔】 「……また会えたね。」【晴明】 「驚かないのか?」【白容裔】 「ふふ、今後よく会うようになるかもしれないからね。「幽霊の呪い」が解けた後、体に不具合はない?」【晴明】 「君の催眠術がよく効いたから、もう大したことはない。会いに来たのは、聞きたいことがあるからだ。例の身体検査の後、君は気づいていたはずだが……私は半妖だ。しかし君は、この件について口外せずにいてくれた。」【白容裔】 「医者として当然のことをしたまでさ。それに「黄金の爪号」の船員として、そんな失礼なことはしない。他のみんなも同じだと思う。とはいえ……私情を挟んだのも、あなたに興味があるのも事実だ。」白容裔は瀧の前で口添えしたことを思い出した。運命の導きなのだろうか?この人は瀧と同じ半妖なのだ。もしかしたら彼らは、似たような境遇に置かれることがあるかもしれない。【白容裔】 「あなたはどうやって瀧の呪いを?まさか……」【晴明】 「……「スス」だ。私の匂いを覚えていてくれていた。」【白容裔】 「やはり、あなたは「スス」に好かれている。私たちの間にもう遠慮はいらないね。この「癒霊刀」をお貸しするよ。これは私の魂の象徴であり、「黄金の爪号」の「錨」の一つでもある。あなたに必要なもののはずだ。ただ、これだけでは足りない。あなたに対して、湍津姫は気前がいいかもしれないし、私は期待しているかもしれない。「スス」もまた、あなたを助けてくれるかもしれない……それでもあなたは、あなたの「錨」を見つけなければならない。それを見つけて始めて、瀧と対面する時の切り札を用意できる。」白容裔が一瞬だけ表情を変えたのを、晴明は見逃さなかった。瀧が何か見つけたと、彼は暗に伝えてくれたのか……?【晴明】 「……ありがとう。真夜中まではまだ時間がある。この後しっかり考えておく。」「黄金の爪号」の錨を全て集められれば、それは即ち「黄金の爪号」の船員たちの信頼を勝ち取ったということでもある。しかし決めの一手はまだこれからだ。ここに来た目的を忘れていない晴明は、すでに手を回していた。なぜなら……ここで数日を過ごした晴明は、すでに「黄金の爪号」の秘密を見つけたからだ。これは白容裔が言ってた、晴明の切り札となる。……晴明は目の前にいる小さな友人に目を向ける。机の上の銀蜥蜴「スス」は頭をかしげ、隣の小さな彫像を突く。……これを持っていってと言っているようだ。これが最後の「錨」だ。【スス】 「スー……スス!」【晴明】 「役に立てて嬉しい……そう言いたいのか?」ススが嬉しそうにぐるぐる回る。開幕式の時、ススはすでに目の前の人物から、主と似たような匂いがすることに気づいていた。それだけではなく……密かに悩みを抱えているところまで、二人はよく似ていた。悩みが何なのか、ススには分からない。が、とにかく気が合いそうだ!もし二人が出会えば……互いの悩みを解決できるかもしれない。だから、少し協力しよう!そうしてススも、「黄金の爪号」のために一肌脱ぐ決心をした。ススが再び机の上の小さな彫像を突く。【晴明】 「……ありがとう、スス。」【スス】 「スー、スス!」【晴明】 「ああ、私もだ。」間もなく真夜中になる。黄金閣の中は真っ暗だ。この後、「隙を見つけた」者と「秘密を見抜いた」者がここで出会う。これは……「黄金の爪号」の試練の終わりを意味する。同時に試験官と応募者が、本当の駆け引きを始める。何かに反応するように、高く掲げられた「黄金の爪の心」が暗く輝く。一足先に黄金閣に入った晴明は、中心に置かれた、秘密が隠された鏡に目を向ける。鏡の中にいる仮面をつけた自分を、晴明はまっすぐに見つめる。時を同じくして、近づいてきた何本かの触手に、晴明は持ってきたものを手渡す。それは船員たちの魂の象徴、「黄金の爪号」の錨。湍津姫のタコの帆、白容裔の癒霊刀、瀧の銀蜥蜴の彫像……魂の錨を下ろすと、「黄金の爪の心」はまばゆい光を放った——落ちてきた「黄金の鍵」を、晴明がそっと拾う。【晴明】 「君の望み通り、「黄金の爪号」の封印は解かれた。鏡の中から出てこい、瀧。」 |
夜明け前の宴を祝う
夜明け前の宴を祝うストーリー |
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黄金閣の中——【晴明】 「君の望み通り、「黄金の爪号」の封印は解かれた。鏡の中から出てこい、瀧。」……【瀧】 「取引をしましょうか、陰陽師殿。それとも、本名でお呼びしたほうがよろしいでしょうか……晴明?」晴明と、札を持った瀧が対峙している。しばしの沈黙の後、瀧が指を鳴らすと、黄金閣はたちまち明るく照らされた。」【瀧】 「さすがは平安京の天才陰陽師ですね。ここまで追ってきただけでなく、たった三日でこの船の秘密を見抜くとは。難しい陰陽師の言葉で説明するより、わかりやすく説明したほうが良さそうですね——「黄金の爪号」は「心界」という未知の力に乗っ取られていました。私はただあなたの手を借りて……「黄金の爪号」の主導権を奪い返した、それだけの話です。」晴明が「黄金の爪号」に乗る前—— 瀧は黄金閣で静かに座り、船長からの密書を眺めていた。密書はとても短く、船長は未だに「刻世命」と名乗る者の依頼に対応しているとだけ記されていた。【瀧】 「「刻世命」……?」瀧は目を細め、その名前を呟く。これはよく船長に依頼を出すが、滅多に姿を現さない人物の名前だった。一度だけ、瀧は甲板で彼に出くわしたことがある。不思議な札を手に、烏の群れに囲まれたその人は、異様な存在感を放っていた。しかしその顔をよく見ようとした瞬間——その者は幻のように、跡形もなく消えた。そしてそれ以来、瀧は警戒を怠らなかった。ススの力を借りて、瀧は「黄金の爪号」に現れたある力の波動を突き止めた。」【スス】 「スー……!スス!」【瀧】 「ええ、烏が建物の中に入っていきましたね!」黄金閣に駆けつけた瀧は——「黄金の爪の心」が輝きを失い、机の上に烏の羽根が落ちていることに気づいた。瀧が一瞬で深刻な目つきになる。船員たちの「魂の錨」は、一つ残らず「黄金の爪の心」の中に保管されているからだ。」【晴明】 「つまり……「刻世命」が「黄金の爪号」に何かしたと思っているのか?」【瀧】 「はっ。彼の行方を特定するのは極めて困難ですが、それでも私は調査を諦めませんでした。そしてついにあることを発見したのです……彼が現れる場所には、必ず烏の群れが出現します。烏と共に、次々と幻境が出現します。一口に「幻境」と言っても、通常の幻境とは異なるようでした。」晴明は先日の平安京の異変を思い出した。それらは三尾の狐の一件とも合致している。烏、幻境……そして、札。晴明はまた、賀茂家の情報についても思い出した。【晴明】 「「幻境」は札の中に封印されている。そして幻境の主は、幻境を利用して「現実を塗り替える」ことができる。ゆえにこの種の幻境は……——「心界」と呼ばれている。」【瀧】 「どうやら、そちらの調査も進んでいるようですね。ですが、こちらのほうが一歩進んでいます。密書には、「黄金閣」に入れておいてほしいと、あるものが添えられていました。」瀧が手の中の「霊狐の札」を回す。【晴明】 「これが「刻世命」が作った札なのか?この中には……「心界」があるのか?」【瀧】 「調べようとしたのですが、この札は私の妖力を拒みました。幸い、その時札から漏れ出た霊力が、霊狐に姿を変えて舷窓から外に出ていきました。それをある種の信号と捉えた私は、それによって誘き出される人物をずっと待っていたのです。しかし……あなたが現れるとは夢にも思っていませんでした。」【晴明】 「……(考え込む)」【瀧】 「あなたが知りたい札の情報は……これで全部です。晴明、私が知っていることは全てお話ししましたよ。今度はあなたの番です。嘘偽りなく答えてください。「黄金の爪号」の秘密についてですが。あなたがこの船に来てからまだ三日しか経っていません。なのになぜ————「黄金の爪号」に「心界」が隠されていると分かったのです?」しばらく沈黙し、考えをまとめてから、晴明は答える。【晴明】 「もしかしたら……「黄金の爪号」の秘密を見抜くのに我々が使った方法は、同じかもしれない。」沈黙が訪れる。晴明と瀧は同時に、側でじっとしている銀蜥蜴「スス」に目を向けた。【スス】 「スー……スス?」【晴明】 「君が言った通り、私も調査の中で「心界」の力に——「現実を塗り替える」力に気づいた。しかし「黄金の爪号」の異常を発見したきっかけは……やはりススだな。」【晴明】 「あれは「幽霊の呪い」に参加した時のことだった……一つ目の声を辿り、鮫の吊り床を見つけた後、振り返るとススがいた。」【スス】 「スス、スー!」【晴明】 「あの時、私はすでに白容裔の催眠術によって幻境に入っていた。現実世界にいるススが現れるのは矛盾している。そこで私は、寝ている湍津姫にそっと布団をかけてみた。……すると、あることが分かった。私の行動は、確実に「現実」に影響を与えている。あの時、ススは私の行動を観察していた。ススの存在は私の古い友人、三尾の狐のことを想起させた。彼女の本体である子狐も……現実と幻境を行き来する力を持っている。これは幻境の主が持つ力だ。そして三尾の狐が作った幻境も、「心界」であることが証明された。とはいえ、これは所詮推測の域を出なかった。本当におかしいと感じたのは、「魂の錨」の時だ。」【晴明】 「「黄金の爪号」のみんなから魂の象徴を借りた時……この試練には抜け穴があると悟ったのだ。——試験官である君が、「三つ目の試練」を変更した。」【白容裔】 「それでもあなたは、あなたの「錨」を見つけなければならない。それを見つけて始めて、瀧と対面する時の切り札を用意できる。」【晴明】 「私の知る限り、信頼を得て船員から持ち物を借りるという「三つ目の試練」は、君らしくなかった……本来の試練は——自分の魂の錨を見つけることだった!「黄金の爪号」の舵取りともあろう者が、よそ者に大切なものを預けるだろうか?だから霊視を使ってみた。そして私は気がついた……タコの帆も、癒霊刀も、銀蜥蜴の彫像も、何の記憶も宿していなかった。「幻で現実を塗り替える」ことができるなら、「現実を幻にする」こともできるはず。瀧、君ももう気づいているのだろう?君たちの「魂の錨」は、すでにすり替えられている。つまり——「黄金の爪号」には、「心界」の一部が隠されている。そして船員たちの魂は、いつの間にか「心界」に取り込まれたのだ。」【晴明】 「想像に難くない。「黄金の爪号」と船員のみんなを何よりも大切に思う君にとって、これはあってならないことだろう。だから君は危険な賭けをし、札の存在を公開して「刻世命」と対峙する準備を進めた。しかしそこに現れたのは、私だった。だから君は計画を見直し、試練を利用して私の手を借り、「黄金の爪号」の中枢——「黄金の鍵」を再び発動させた。そうすれば「黄金の爪号」の「心界」を打ち破り、船員たちの本当の「魂の錨」を取り戻すことができる。」【瀧】 「……素晴らしい推理です。あなたを「黄金の爪号」の本当の船員として迎え入れたいと、思わず考えてしまいました。いくつもの試練を乗り越えたあなたは、新たな船員への贈り物——この「札」を、もうすぐ手に入れることになります。しかし残念なことに……あなたは「黄金の爪号」の船員になる気はない。そうでしょう?まあ、どのみち、「札」はもうあなたのものです。さっきも言ったように、これは取引です。なにより、あなたが躊躇なく「黄金の爪号」の力を呼び起こすのを、私は間近で見届けましたから。」【晴明】 「瀧、私は君の人柄を信じている。君はいつもこの船のために、そして仲間のために動いている。」【瀧】 「そうですね、それに……晴明、我々は同じなのです。一人で「黄金の爪号」に乗り込み、未知の未来を一身に背負い込むのは、簡単なことではありません。あなたにも仲間や大切な人がいます……彼らはあなたの「錨」なのです。彼らを守り抜いてください。「心界」の影響は大きすぎて、すぐには収まらないでしょう。それに、なぜ「刻世命」が「心界」を作ったのかも未だに分かっていません。ですから、最後に一つ頼みがあります。「黄金の爪号」の船員にならなくてもいい。「黄金の爪号」の盟友になってください。晴明、いつの日か、あなたと共に戦うことを楽しみにしています。」側で隠れていたススは誰も自分を責めていないことに気づくと、また表に出てきた。【スス】 「スス……スス?」晴明が微笑む。【晴明】 「ああ、これは借りていく。」明け方—— 「黄金の爪号」の大広間—— 「金色の夜明け前」の幕は間もなく降りようとしている。しかし宴の参加者は、彼が現れるのを待ちわびていた。そしてついに、「大名士」が大広間に現れた。その後ろには、「黄金の爪号」の舵取り、瀧がいる。群衆が楽しみにしている結果発表の時間が来た。一刻後—— 大広間で、湍津姫は未だに信じられずにいた。【湍津姫】 「ってことは……すごく強い大名士さんは、実は平安京に名を轟かせたあの英雄、天才陰陽師なの!?瀧!瀧兄さん——どうやって見抜いたの!?」【瀧】 「……ススが先に気づいたのだと答えたら、あなたはどう思います?」【湍津姫】 「ええ!あたし、ススにも及ばないってこと!?」ススが得意げに頭をもたげる。真夜中、「黄金の爪号」の「秘密」はすでに暴かれた。まだ明らかになっていないのは、瀧が言ってた晴明の「隙」だけだ。その答えは、とても簡単なものだ。「幽霊の呪い」の試練で、湍津姫のために鮫の子守唄を探した時、晴明は一度霊視を使った。その時、ススは彼の肩に飛び乗り、人知れず仮面を少しだけ外した。それほど没頭していたのか、周囲は安全だと確信して油断していたのか、とにかく晴明はススの悪戯に何の反応も見せなかった。これが晴明が見せた、微笑ましい隙だ。瀧は何も言わず、ただ微笑んでいる。真相が分からない湍津姫は、もう一つの問題について頭を捻っている。【湍津姫】 「そんなすごい人が……「黄金の爪号」の盟友になってくれたなんて……盟友ってかっこいい響きだけど……大名士さん、ううん、晴明さんは、船員にはなってくれないの……?船員になってくれたらしょっちゅう会えるし……!「陰陽道」が使えるようになったら、見てもらおうと思ってるのに!」【白容裔】 「きっといつか叶うよ、湍津姫。」【湍津姫】 「そういえば、晴明さんはどこに行ったの?」【白容裔】 「こんな時くらい、静かに喜びを噛み締めさせてあげましょう。」【湍津姫】 「クスッ……分かった!きっと瀧からもらった贈り物を確認してるんだ!」側にいる瀧は、先程晴明が「札」を受け取った時の光景を思い出した。【瀧】 「贈り物というより……あれはむしろ彼が待ち続けていた……再会、というべきでしょう。」甲板で、晴明は「霊狐の札」を優しく撫でている。すると温かくて優しい光が、晴明を包み込んだ——そして彼は、長い時を越えて届いた……とても懐かしい声を聞いた。 「晴明……ごめんね、こんな形で再会することしかできなくて。」 「時代は変わった。あの時私は最大の努力をしたけれど、世界に襲いかかる災いの正体を見抜くことはできなかった。」 「でも、私の知らないところで、あなたは私の期待通り、立派に育ってくれた。」 彼が「我が子」であることは、永遠に変わらない。 「足を止めないで。唯一私にできることは、あなたの運命を導くことだけ。」 「そしていつの日か、私たちはきっとまた会える。」 眩しい光が急速に収まっていく。最後の光を掴もうと、晴明は手を伸ばした—— しかしやはり何も掴めなかった。短すぎるぬくもりは、往々にして悲しみを引き起こす。しかし晴明は悟った……これは葛葉が手を尽くして残した情報なのだ。だから大変な思いをしたが、その声を聞いた瞬間、彼はもう満足していた。それに……何年待つことになっても、彼らは必ず再会できる。響き渡る潮音に囲まれて、晴明は黄金に染まる夜明けの空を見上げる。新しい旅は、もう始まっている。 |
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